春色を束ねて

    ●綾色
     それはいつものことだった。
     身支度を整え長い黒髪をまとめる。
     仕上げにとアクセサリーホルダーにかけたリボンを取り上げて、
    「あ」
     気付いた。
     リボンの端が、ほつれかけている。
    「……参ったな」
     お気に入りのリボンなのに。考えながら別のリボンを取った。
     仕方がない。

    ●春色
    「リボンを買いに行かないか」
     いつもよりややトーンダウンして、白嶺・遥凪(中学生ストリートファイター・dn0107)が声をかける。
    「リボン?」
    「お気に入りのリボンがほつれかけてしまってな。それはまた別に使うとしても新しいリボンがほしくて、一緒にどうかと」
     よく見ると、確かに彼女の髪をまとめるリボンはあまり見たことがないものだった。
     遥凪が普段身に着けているリボンはそう派手なものではない。だが、ただ髪をまとめるだけならヘアゴムでも充分だろう。
     彼女にとって、それはとても大切なことなのだ。
    「お気に入りってよく使っちゃうしね」
    「ああ。だからすぐダメになる」
     ふう。と溜息をつきながら鞄から小物入れを取り出す。ローズ柄のアンティークな小箱は、ふんわりと花びらを広げたレースのバラがアクセントについていた。
    「よく行くアーケード街にリボンやレースの専門店があって、そこでいつも買っているんだ。小物も置いているんだが、すべてハンドメイドで同じものがないから一期一会の気分でよく覗いている」
     たとえばこんなの、と小物入れから取り出したのは、シルクのリボンで花をかたどりラッセルレースで包み込んだ花束のようなコサージュや、トーションレースをくるりと巻いて蝶結びにしたリング。また或いは、チロルテープやレースとくるみボタンを組み合わせたストラップ。
     小物入れもその店で買ったものだと言う。
    「扱っているのはリボンやレースを主に使うもので布製品ばかりだ。リボンモチーフのシルバーリングやスタンプといったものはないから注意してくれ」
     レースのハンカチやリボンのポーチはあっても、レースデザインのペーパーナプキンといったような『モチーフにしたもの』の取り扱いはないらしい。
     あくまでも、リボンとレースがメインのようだ。 
    「ひとつ訊いていいかな」
    「何だ」
    「これ、遥凪が身に着けてるの? 見たことないんだけど」
     その問いに遥凪はすっと眼鏡をはずした。
    「すまないが、何を言われたのか分からなかった」
    「声を聴くのに眼鏡関係ないよね!?」
     ちなみに彼女は眼鏡がなくても視力に問題はない。
     ともあれ。
     普通にリボンやレースを選んでもいいし、それらを使った小物を選ぶのもいい。
     春に合わせて、新しいお気に入りを探すのもいいだろう。
    「新しい出会いを探すのも一興」
     微笑み、遥凪は眼鏡の奥の瞳を細めた。

    ●ところで
    「リボンはどれくらい持っているの?」
     訊かれて携帯電話を出して操作し、撮影した画像を表示して、
    「ひとつあたりこれくらいか」
     写っていたのは、セイルを畳んだ状態の帆船を模したアクセサリーホルダー。マストのところには色とりどりのリボンがかけられている。
     およそ20本はあるだろうか。高さがあるからカラフルなセイルのようにも見えた。
    「結構あるね」
    「一部なんだがな」
     ……一部?
    「リボン専用のアクセサリーホルダーだけで5つか6つはあるんだ」
     そう言えば確かに、『ひとつあたり』って言っていた。
     埃がかぶらないようにするのが大変なんだ、となぜか薄い胸を張る遥凪に、一同は脱力するのだった。


    ■リプレイ

    ●綾色
     ストライプやタータンチェックの賑やかなリボンに、白や淡いパステルカラーの華やかなレースがお出迎え。
     天井からお客様を眺めるのは、星をかたどったバテンレースのガーランド。
    「すごいねすごいね、ふわふわできらきらだよ……」
    「ここはゆめのせかいですよ」
     目を輝かせるたまきに、昭子も控えめな表情で頷いて。
    「それでは、お互いのものを探して戻ってきましょう」
     よーいどん、です。
    「って、え? え? よーいどん?」
     いろいろうろうろ迷って、たまきがこれっと差し出したのは、クロムイエローの生地で花を模した大きなサテンシュシュ。優しいお日様色の花は、彼女の綺麗な髪に合うかなって思って。
     じゃーん、と昭子が差し出したのは、オフホワイトのオーガンジーとレースをふわりと巻いたリボンコサージュ。髪につけても、鞄や帽子につけてもかわいいのです。
     お誕生日、おめでとう。思いを込めて。
    「わ、凄い綺麗だよ。え、誕生日プレゼント……? うわ、どうしよ……すごく嬉しいよぅ」
     てのひらの花を交換して同じ仕草で髪に翳し。照れる気持ちと嬉しい気持ちでふわふわ。
    「ね。ケーキ、食べて帰りませんか」
     お誘いはもちろん快諾。
    「えへへ……うん、ケーキ食べ行こ。昭子ちゃんにもっと祝ってほしい、な……」
     本当にありがとね。とびきりの笑顔で。

     商品を手に取り、優歌はゆっくりと思い描く。
     クラブで服や造花を作っている彼女は、その素材となるようなリボンやレースを探して。
     様々な色や形のそれらは、単品で見て楽しめる、もちろんそういう素敵なものではあるけれど。
     それをもとにどんなものを作れるか……そういうことを思い描きながら見て回る。
     これはこんな風に使ってみたらどうだろう。こちらはあれと組み合わせてみようか。考えるだけでも楽しくて、自然と口元がほころんだ。
     それは、物作りが好きな彼女にとっては素晴らしいひととき。

     たくさんのリボンやレースを目の前に莉茉は目移りしながらも、買えるだけ買っておかないと、と品定め。
     必死に選んでいる従妹の邪魔をしないようにと凪流も他所を物色し、ふと目についたのは小花の刺繍が入ったチュールレース。
    「か、可愛い……」
     いや、でもこんな可愛らしいものきっと似合わないしなあ……
    「……このレースで髪飾り、作れますよ?」
     莉茉がそっと言う。
    「……え、これで髪飾り作れるの!?」
    「違った生地も使えば、お姉ちゃんも普段使い出来るものが作れると思います……」
    「他の生地も使うと普段使いできそうなのか~」
     私は裁縫できないし……と考え、
    「莉茉、作ってくれる?」
    「……お姉ちゃんに頼まれたら、断れませんね」
     ふわりと微笑み頷いた。
     ぱっと破顔して、いい子! 頭を撫でてくれる手が優しくて。
    「莉茉の手にかかればきっと素敵な髪飾りになるね!」
     楽しみ! と嬉しそうな凪流に彼女が浮かべた笑み。
    「(可愛いお洋服もきっと似合うでしょうね……)」
     髪飾りに合う洋服を企みひっそりと微笑む莉茉が、凪流にはちょっと気になるけれど。

     様々な小物へ目をやって、本当に色々な種類の小物が置いてあるな、と溜息。
     そんな里桜にかすかに笑みを浮かべ、勇騎は品定め。
     彼が店長を務める喫茶店用の、夏場使えそうなレースのコースターを見に。
     デートと言ったらやたら身構えられそうだし、買い物付き合ってぐらいのが気が楽だろ。と思って。
    「……これとこれ、どっちのがいいと思う?」
     ふたつのコースターを示して問えば真剣な表情で両方を見やり、
    「どちらも捨てがたいけど……うーん、私は右の方がいいな」
     答えて、ふと途中で見つけたそれを手に取り。
    「勇騎、こういうのもどうだ?」
     差し出したのは控えめながらかわいらしいコースター。
    「あぁ、それいいな。……あのグラスに合わせりゃ映えるかねぇ……」
     賛同に、嬉しさのあまり思わず微笑みを浮かべる里桜の視線の先をチェック。
     彼女は少しだけ、ある物に目を留めていたことに気付かれないよう、すぐ視線を逸らし。似合わないからな。ぽつりとこぼす。
     けれど勇騎は、彼女が目を離した隙にこっそりとそれをコースターに紛れさせた。

     同じ青い爪を並べ手を組むように繋いで。
    「恋人繋ギ! 念願成就♪」
     ふにゃり笑う夜深に芥汰も微笑み、彼女の髪にリボンをあてがっては、どれもかわいいしで気付けば結構な量に。
    「……あくたん、其。全部、購入?」
     考えて、首を傾げ。
    「我モ、リぼン。御留守番、猫さン達、に。購入しヨ、かナ?」
    「ウチの猫達にもくれるのか?」
     それじゃ、夜深ン家の蛇サンにも。とお土産選び。
     海色の瞳が見つけて足を止めたコサージュは、永遠に朽ち枯れぬ青い薔薇。
    「ん、他に何か気になるのあった?」
    「青薔薇さン。少々高額、でスが……」
     迷う彼女の手のひらにそっと乗せた。
    「それもプレゼントしましょ。きっと似合うし」
    「あイや? プれぜンと?」
     戸惑う視線を向ければ、蝶ネクタイを見せて。
    「あ。俺が買うの、どうしても気になるなら、この蝶ネクタイを蛇サンに届けるのと、今度の機会に、猫達にリボン付けるの手伝ってくれない?」
    「蝶ネくたイ御届ケも、猫さン、リぼン装備モ、勿論、喜ンで、助力すルけド……」
    「では、交渉成立ということで」
     何ならキスも付けてくれて良いよ? 言われて夜深は真っ赤に染まる。
    「其。御礼言うヨり、我への御褒美……かモ……」

    「ほら、こいろさん!早く早く!」
    「わわ、待ってください早いですっ」
     元気いっぱいなギンにこいろがこっそり笑う。可愛いリボンやレース、小物の数々。早足になるのも分かる。
     大好きなお友達とお買いもの。そして、今日はお互いのリボンを選び合っちゃおーぜ!
     色とりどりのリボンはどれも可愛らしくって、ギンは何度も大好きなお友達とリボンを交互ににらめっこ。
     似合うリボンを選び合いっご、素敵だなぁ。思いながらも目移りする中、こいろは思わず二度見。そして迷わずレジへ一直線。
     ジャーンとギンが見せたのは菜の花色のチェックのリボン。
    「あったかい瞳の色、こいろさんに絶対似合うと思って!」
     同じ色の瞳を瞬いて笑い、喜んでいただけたらとクリーム色に茶色の水玉模様のリボン。を、薩摩芋にくくりつけてプレゼント。
    「じゃが芋みたいでビビっときちゃいました」
    「キャー!? お芋に……リボン、だと!?」
     斬新なセンスは乙女心を直撃。
    「薩摩芋とじゃが芋のコラボです……!」
    「ハイセンス! ナイスセンス! こいろさん素敵すぎます!」
     家宝にさせて頂く所存! とテンションMAX! で喜ぶギンに、こいろも心からの笑顔で応えた。

     野郎どもは抜きにして、ましろと美夜は女の子同士でのんびり春のお買いもの。
     美夜は割と自分そっちのけでましろに合いそうなのを選ぶ体勢で。
    「ちょっと大人っぽく行くなら、ベルトとかどう……?」
     薄ピンクのレースベルトを選んでみたり。
    「このベルトだったら、お洋服はどんなのが良いかな……」
    「普段来てる服に合わせるだけでも、雰囲気変わるよ。きっと……」
     首を傾げるましろに、美夜はそんなアドバイスを。
    「でも倭先輩に魅せるなら、身長差を考えるとヘアアクセが安定かしら……?」
     こっちのカチュームはこの前買ったワンピースに合いそう。とましろも品定め。
    「普段は赤いリボンが多いけど、たまには白とか探してみようかな……?」
    「美夜ちゃんは普段赤が多いから、白だと印象が変わりそうだね」
     優志くんの反応が楽しみ。
    「次は、今日買った物を身に付けてお買い物に行くのはどうかな」
     その時は、お互いの王子様もお誘いしてWデート?
     提案に美夜も微笑んだ。
    「あぁ……約束だったもんね、Wデート。いいね。お弁当とか持って、ゆっくり出かけたいかな」
     きっと、ふたりとも喜んでくれる。

     色とりどりのリボンに溜息をこぼす紗奈とひより。
    「すごい、こんなにたくさんの中から決められないよーっ」
     ひよりの悲鳴に紗奈も迷ってしまう。どうするの? 訊くと。
    「今日は髪飾りに使うリボンを探そうかなって。時々ね、自分で作るんだよ」
    「髪飾り自分で作れるの? すごいすごい! お店屋さんみたい」
     感激する紗奈に笑い、彼女の髪にリボンを合わせてみる。自分のそっちのけで、つい夢中になっちゃったりして。
     だって。きっと可愛いな、見てみたいなって思ったんだもの。
     紗奈も、髪にリボンを当ててくれるのがうれしくてくすぐったくて。
    「ひよりちゃんの手、大好き」
     その告白に笑顔が応える。
     目の色とおんなじ緑とかどうかな。ひよりちゃんのお花がきれいに咲くように、春のお花の葉っぱの色。
     きょろきょろと紗奈も探し視線をさまよわせたら、ひよりと目が合う。
     何だか楽しい気分になってひよりが笑うから、嬉しくなって紗奈も笑顔になる。
     ふわふわリボンがいっぱいもしあわせだけど、いっしょが一番しあわせ!

     柚羽はリボンたちの豊富さに目を輝かせて店内を散策。
     色々種類があって目移りするけれど、なんだかシンプルなものがほしい気分。それに絞って探したら、ひとつ気になるものが。
     二つセットの蝶結びのリボンで、結び目には銀の鈴が二つ。色は紅く、好きな色。
     手に取ったら鈴がりんと鳴って、それが何だか気に入ってしまって。これに決めた。
     髪飾りが増えて、気分によって付け替えられる楽しみもまた増えた。
     明日は早速このリボンをつけてみようかと思いつつ、そっとリボンをつまんでみる。
     りん、と柔らかな音が鳴った。

    「おぉぉ……リボンや小物が一杯です……!」
     専門店なんて初めてのラツェイルは思わず感嘆の声が漏れてしまい、そんな彼に奏恵がくすりと笑う。
    「すごいよね! あ、これとかラツェくんに似合いそうー」
    「僕に、ですか?」
     当てて見られるがまま、首を傾げる彼女と同じく首を傾げる。
    「おめめとそっくりの赤いリボンとかどーかな!」
     リボンとよく似た色の瞳をぱちぱちと瞬いて。
    「赤いリボンですか……そうですね。僕自身赤は好きですし、奏恵さんが似合うと感じたのであれば良いかと思います」
     ふわと笑い、目に止まっていた青いレースシュシュを差し出す。
    「では僕もお返しにコレなんてどうでしょうか? 奏恵さんの瞳と同じ色」
    「可愛い! あ、でもこれピンクもある!」
     色違いを見つめて目がキラキラ。
    「ピンクはラツェくんの方が似合うよね」
     ピンクのシュシュを手に取って、満面の笑みで彼の髪に当ててみる。
    「お揃いとかどーかな!」
    「ピンクも赤系ですから抵抗はありませんが……なるほど、お揃い! 良いですね」
     ラツェイルも笑顔を返して頷いた。

    「わぁ……!」
     リュシールが目を輝かせ、店中の品を見ては髪に当て、傍目にもうきうきと。
     希紗も思わず声が漏れてしまい、
    「なにこれ! なにこれ! アレもコレも可愛いのばっかりなんだよ!」
     よし! 全部買おう! お店ごと買っちゃおう……と振り切れたテンションで考えて。
    「落ち着けわたし! こういうのは選びに選んでお気に入りの1つと出会うのが楽しいんだから!」
     そんな彼女に笑みがこぼれる。
    「ここでお気に入りのリボンを見つけようね♪」
     かの子の言葉に、もちろん! といいお返事。
    「こんな風に結んじゃうのも手かしら……かの子さん、これどうです?」
     リュシールが訊くと、ふぬ? と首を傾げ。
    「ちょっと細めで長めリボンでオトナのお姉さん風にしてみたらどう?」
     髪に軽く結んであげるのを徹は見つめた。
    「これ、似合うでしょうか?」
     可愛いお姉さんを前に少し緊張しながらかの子に訊いてみる。
    「徹さんなら、そだねー。幅細めの派手な色のリボンをつけたらどうかな。つけるだけでも全然雰囲気変わると思うよ♪」
    「ね、徹さん。こんなのどう? ……私、そう言うのもありだと思うんだけど」
     お兄ちゃんに昔して貰ったようなツインテールはまだ、難しいけど。
     リュシールはちょっと変えた髪型をけしかけてみたり。悪い気はしない。お兄ちゃんの手を思い出すから。
     ふと視線を移した先。
    「あ、色違いだけど形同じ! ねえ希紗ちゃん、ほら。お揃い♪」
    「あ、本当だ! お揃いだね~!」
     笑いながらリボンのつけっこ。
    「希紗ちゃんと一緒にいるうさこちゃん、リボンに負けないくらいカワイイ♪ うさこちゃんにもリボン付けたらどう?」
    「それいいかも!」
     うさぎの髪飾りを褒められて希紗はごきげんに。提案に乗ってリボンを探し始める。
     かの子が選んだのは、びびびっ! と来たレース付きのリボン。
    「お買い物に後悔と妥協はしちゃダメだよ!」
     にっこり微笑む彼女にリュシールも微笑んで。
    「遥凪さんはどんなのを選ぶんですか?」
     声をかけられて遥凪は彼女に向き直る。
    「まだ決めていないかな」
    「たまにはリボンタイなんてどうです?」
     それもいいなと視線を彷徨わせる彼女に、リュシールはくすっと笑って自分が選んだリボンを見た。
     いつも自分の服は仕立てて繕ってとことん使い抜き、家計の為に諦めているお洒落だけれど。リボンくらいなら……

     目を白黒させながら流希が店内を見回す。
     いやはや、何も考えずに入ってしまったけれども、すごいものだ。
    「そして、物凄い場違い感が凄いですねぇ……」
     少しだけ居心地の悪さを感じながらも、こういったところも見て回ると案外楽しいもの、とゆるりと歩を進める。
    「海外にいる妹に送るものを見繕うのも良いかも知れませんねぇ……」
     あちらの小物は趣味が合わないと嘆いていた。それを延々3時間も国際電話で言われたので、その対策でもあるのだけれども。
     さて、どんなものがいいだろう。考えてかすかに笑みを浮かべる。
    「適当に趣味が合いそうな小物を購入いたしましょう……」

     普段物を創って売っている民子は、仕入れとインスピレーションをもらうのを兼ねて。
     色々な幅と色のストライプリボンを大量買い。刺繍があったりビーズがついているのは、高いからちょっとずつ。
    「あっ、これ巻きで欲しい……」
     値段交渉出来ねぇかな。店員に訊いてみると大丈夫との答え。
    「白嶺の解れかけたお気に入りは、もう捨てちゃうの?」
     リメイクしたらいいのになー。言われて遥凪は首を傾げ。
    「名残惜しいから、取ってはあるな」
    「あたし今勲章風アクセにハマってんだけど、そーゆーのどう? よかったら持っといでよー」
     クリエイターの彼女なら、きっと素敵なものが出来上がる。

     お気に入りを探しながらのんびり見て回るなおは、気に入ったものを手にとっては微笑み。
    「わぁ……! このレースリボンきれいですぅ」
     優雅なリボンに目を奪われ、ふわふわのコサージュに目移りし。
    「このコサージュもとってもかわいいですねぇ」
     これもいいな、と悩んでしまう。
    「遥凪さんは、お気に入り、見つかりましたかぁ?」
     訊かれて遥凪は首を振った。
    「ふふ、どれもかわいらしくて目移りしてしまいますよねぇ」
    「本当に」
     苦笑するその傍で、なおは気になる2種類のリボンを手に選びきれず、薄紫色のサテンリボンと薄荷色のレースリボンを。
     髪に飾るのが楽しみですぅ♪ 嬉しそうに笑う彼女に遥凪も微笑み返し、菫と目が合う。
     お久しぶりです、と言われ一瞬不思議そうな顔をして、
    「会うのはバレンタインぶりですね」
    「あっ……!」
     地面につきそうなほど頭を下げる遥凪に笑い、よければ一緒に見ませんか? と。
    「これはどうでしょう?」
     きっと似合いますよ。ニコニコしつつ自分が付けているリボンと同じピンクのものを勧める菫に、遥凪は気恥ずかしげに頷く。
    「もしよければ、私のも選んでくれますか?」
    「もちろん」
     遥凪が選んだのは紅掛空色のリボン。色味が強すぎず、使いやすいものをと選んだのだけど。
     気に入ってくれるかと不安げな遥凪の前で、菫はこれにしますね、と喜んで笑う。

     大好きなリボンにレース。あふれる店内に目を輝かせれば、一番の親友も微笑んで。
    「宝箱の中にいるみたい、ですね」
     華凛が言うと紡も素敵な時間になりそうと笑う。
     店内を見渡し、どれも綺麗で視線は定まらず、本当に宝箱の中にいるみたい。
     踊る心はあふれる色に負けないくらい、ふわふわ気持ちも浮かぶようで。
    「華凛ちゃん、もし良ければ、選び合いっこしない?」
     ふたりの恒例になり始めた選びっこが嬉しくて、華凛は二つ返事の笑顔で返し。
     紡は素敵な森の色に映える綺麗で愛らしいリボンを探し、目に留まったひとつに手を伸ばす。
     蔦と花刺繍の白のレースリボンを添えた淡い桃色の薔薇コサージュ。その下に密かに咲く鈴蘭。柔らかな布が織成す花園。
     夜色が似合う親友だけど、お日様のやさしさも持っているから。穏やかな春の日を思い描いて華凛が手に取ったのは、淡い陽だまり色のサテン地リボン。
     生成りのレースが縁取って、端には菫色のビーズと青い鳥の羽。大事な友達の柔らかな髪、結んで揺れるその傍に幸せも寄り添うようにと。
     選んだリボンをせーので互いに手渡し、嬉しくて笑う。
    「ね、結びっこもしましょう、か?」
     華凛が笑い、紡も幸せそうに笑顔を浮かべる。
    「うん、お互いに結んでみよう」
     選んだものは違っても、思いは同じ。

     たくさんの笑顔を優しく包んで、重ねて、束ねて。
     織りなす思いはいつまでもほどけず、ほつれないように――

    作者:鈴木リョウジ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年4月12日
    難度:簡単
    参加:28人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 8/キャラが大事にされていた 5
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