「あっはは、そんでさー」
「それヤバくね?」
放課後を過ぎているせいか、駅前のハンバーガーショップは若者達でいっぱいだった。
店中がガヤガヤとして色々な話し声が混ざり合って、隅っこでノートパソコンを開いているビジネスマンは肩身が狭そうだ。
――しかし、そんな日常の一幕は急展開を迎える。
「で、そん時コイツが……うぐっ!?」
「どうし……う……」
ジーンズ姿の若者達が、急に苦しみ出したのだ。
「大丈夫か?」
「お客様、どうなさいましたか!?」
他の客が様子を窺い、店員が飛んでくる中、若者達は姿や雰囲気を変化させた。
「な、何!?」
「きゃーっ」
異様な光景に、変化しなかった人々は悲鳴を上げてドアに殺到する。
一般人達がいなくなった後。
「アイムメリケン、ヨアメリケン?」
「オフコォース!」
「オーケーオーケー、レッツゴー!」
「イェア♪」
なんかコミュニケーションが成立したらしく、ジーンズの集団――ヤンキー戦闘員達は一様に指を鳴らし、曲もないのにステップを踏みながら出口へ向かった。
「どういうことだ……一般人がいきなり強化一般人に変異してしまうなんて」
訝しげに呟く土津・剛(高校生エクスブレイン・dn0094)。
「ええと、強化一般人になった人達は、ハンバーガーやコーラを摂っていて、かつジーンズを履いていたっていう共通点があるってことだよね?」
矢車・輝(スターサファイア・dn0126)の質問に、剛はそうだと頷いた。
突然古きよきアメリカの若者のような雰囲気を纏い、徒党を組んだ若者達は周囲の街に被害を与えながら新潟方面に向かって移動していくと予測されている。
「彼らが出現する時間と場所はもう分かっているから、事件が起こり次第速やかに解決して欲しいんだ。どうやら、まだ強化一般人としては不完全な状態のようだから、今倒せば命を失うこともないだろう」
「そうだね……訳も分からないうちに何者かに従わされるなんて、絶対に阻止しなきゃ」
「注意しなければならないこともある。事件が起こる前に店を封鎖したり、人々を避難させたりなど状況を変えてしまうと、そこで事件が起こらなくなる代わりに予測とは別の場所で事件が発生してしまう可能性があるんだ」
「なるほど、強化一般人が発生するまでは、僕達も近くで大人しくしておいた方が良さそうだね」
剛の忠告を聞いて、輝も得心がいったようだ。
ヤンキーな強化一般人化が発生するのは、ある都市にある駅前のハンバーガーショップで、時間は17時頃。
店内は広く、時間帯もあってか若者達が多く利用しているようだ。
席は殆ど埋まっており、客席側の出入り口は通りから見て左右に二ヶ所配置されている。
「強化一般人化してしまうのは30人前後の若者達だ。彼らはそれぞれ、主にバトルオーラや解体ナイフ、無敵斬艦刀など何らかの武器に似たサイキックを使い、何処からか取り出したコーラやハンバーガーを口にすることで回復する」
「やっぱりそこでもコーラとハンバーガーなんだ」
徹底してるなぁ、と輝は目を瞬かせる。
「一度に相手をするには、数が非常に多いが……先程言ったように、彼らはまだ強化一般人として不完全な状態なせいか、自分達と同じように若いアメリカ人っぽい言動や服装をした相手には攻撃を躊躇する傾向がある。勿論全ての攻撃を防げる訳ではないが、上手く利用すればかなり有利になるだろう」
「ってことは、逆にアメリカを悪く言うようなことをしてしまうと、良くない状況になりかねないってことでもあるね」
「そうなるな。……しかし何者かはまだ分からないが、ここまでアメリカに拘るとなると、元凶はアメリカのご当地怪人の仕業という可能性はあるかも知れない」
剛が同意を示して続けると、輝も逡巡する。
「それにしたって、これだけの人達を一気に変化させられるとしたら……相当強い力を持つダークネスだよね」
「あぁ、皆が力を合わせればきっとなんとか出来ると思うが……くれぐれも油断せず、気を付けて戦ってきてくれ」
激励の言葉を掛ける剛。
輝はまだちょっと考えていたが、やがて顔を上げた。
「とりあえず、ジーンズ買ってこよう」
参加者 | |
---|---|
橘・彩希(殲鈴・d01890) |
桜倉・南守(忘却の鞘苦楽・d02146) |
ルーパス・ヒラリエス(アスピリンショット・d02159) |
綾木・祇翠(紅焔の風雲・d05886) |
南条・忍(パープルフリンジ・d06321) |
星空・みくる(お掃除大好きわん子・d13728) |
渋谷・チカ(ギャル・d15375) |
鳥辺野・祝(絶縁体質・d23681) |
●アメリカン・ショウは突然に
「ううぅ……」
「なん、で……」
突然苦しみ出したジーンズの若者達に、ハンバーガーショップは騒然となった。
中には懸命に介抱しようとした店員や客もいたのだが……。
「WHOOOOOOO!」
「イェーイ!」
「身体が軽い! もうひとりぼっちじゃないYO!」
若者達は一斉に変貌を遂げた。
そんな訳でアメリカンな戦闘員、爆☆誕!
「うわ、お前どうしちまったんだよ!?」
「きゃーっ!」
「逃げろー!」
混乱の坩堝と化した店内から、次々と一般人が逃げていく。
幸い出入り口が2つ、押し合いへし合いしながらなんとか外へ出て行ったり、奥にいる店員はスタッフ用の通用口を使ったようだ。
「さぁさぁ、あの世まで行ってロックシンガーのサインが欲しいんでもなきゃ、とっとと逃げなさい」
片側の出入り口でガトリングガンの銃口を空に向け、ルーパス・ヒラリエス(アスピリンショット・d02159)が声を上げる。
「ひぃッ、わ、分かってます、分かってますッ」
王者の風に追い討ちを掛けられた人々は、へっぴり腰になって逃げていった。
「甘ったれたガキどもの脳天に開拓者精神を叩き込みに、正真正銘のアメリカ人のお出ましよ!」
アメリカンな若者達だけになった店内に、のっしと踏み入った今日の彼は荒野のガンマン、流れる砂塵にダスターコートの裾がはためくようだ。
「まだポテト残ってるのにー!」
威風堂々とした姿に戦闘員達が若干気圧される中、食べ掛けのフライドポテトを咥えたロックスターの娘、渋谷・チカ(ギャル・d15375)がライドキャリバーのスミスの上で、指を鳴らしながら登場した。
テンガロンハットを被り、アーミージャケットにデニムの短パン、ウエスタンブーツに星条旗柄の派手なタイツで、こちらはカウボーイアレンジだ。
星条旗にキラキラ模様をデコったスミスの上で、ダウンタウンを舞台にしたミュージカルナンバーをハミングしている。
スミスがさっと横にスライドすると、入り口前の階段でジャンプしたスケートボードが、華麗に店内に滑り込む。
「Hey! アイムメリケン、ユー達も楽しんでるかい?」
乗っていたのは、80年代を意識したパーカーにジーンズ、スニーカーと腕時計を身に着けた綾木・祇翠(紅焔の風雲・d05886)。
脇のソファ席に向かってジャンプすると、空中で舞うボードをぱしっと手で掴む。
「俺のアメリカンと言えば、ストリート系さ」
艶やかな深紅の髪が、中性的な容姿を引き立てている彼の頭に乗った霊犬の紫雲も、サングラスにマフラーを掛けてクールに風を感じている。
「ストリートボーイが街の人に迷惑掛けちゃ、ダメじゃない」
続いて、Vネックのカーディガンにプリーツスカート、明るい茶色のウィッグを着けたカレッジ・スタイルの橘・彩希(殲鈴・d01890)が、真面目な女学生らしい口ぶりで現れた。
敵を斬る時と同じ笑顔も魅力的だ。
「Oh……」
「Cool!」
「ぷりてぃ……」
3人娘(間違いを探せ!)の登場に、戦闘員達の視線は釘付けになった。
バルンバルンバルン!
しかし、突如響いた爆音に彼らはなんだなんだと店の外に目を向ける。
●カウボーイ、襲来
「ハイヨー!」
西部開拓時代風のウェスタンウェアに身を包んだ南条・忍(パープルフリンジ・d06321)は、なんと白い特攻服の兄ちゃんが運転する白いバイクの後ろに乗って登場した。
本当はヒッチハイカーで白馬を捕まえたかったのだが、流石に馬は都会の道を走ってはいなかった。
「おぉ、なんじゃアレ! 坊主ホントに大丈夫か、仲間呼んだろーか?」
「これは僕らの戦いなんだ、気持ちだけ貰っておくよ!」
大量のヤンキー集団に面食らった兄ちゃんに心配されるも、テンガロンハットを傾けた忍は余裕の表情を返す。
「ハハッ、威勢がいいな。負けんなよ!」
ビシッと親指を立てた兄ちゃんは、ドルンドルンと去っていった。
どう見ても、チーマーか何か同士の喧嘩だと思われてます。
「あのー、そろそろいいかな?」
様子を見ていたアメカジスタイルな矢車・輝(スターサファイア・dn0126)がそっと顔を出す。
「やあ矢車殿!」
「A班の方はもう突入してますから、急ぎましょう」
「ナノ~!」
こちらも西部劇のガンマンのような服装の星空・みくる(お掃除大好きわん子・d13728)と彼女のナノナノ・ノノが急かし、B班の面々ももう一方の扉を潜った。
忍はやおらテーブルに飛び乗ってガンナイフを抜く。
「通りすがりの忍者……いやガンマンだっ! 決闘だっ!」
「Wow、ウェスタン・カウボーイ!?」
戦闘員達がオーバーアクションで見上げた。
アメリカのベースボールを思わせる音楽が、鳥辺野・祝(絶縁体質・d23681)の携帯音楽プレイヤーに繋いだスピーカーから流れる。
「ゴー ファイッ ウィン!」
両手に持ったポンポンを振り、チアリーダー姿の祝が店内に飛び込んだ。
中学二年生にしては背が高い彼女が躍動する姿に、戦闘員達は感嘆の声を上げる。
「ワーオ!」
アンダースコートで守られた足が跳ね、ノースリーブの腕が眩しい。
(「いやもう、なにがどうなってこうなったかまったくわからないけれど、わかるっていうか!」)
と思いながらも、笑い話で終わらせることが出来るようにと笑顔でステップを踏んだ。
「あ、あれを見るデース!」
戦闘員の1人が驚いて指を差す。
祝の背後から現れたのは、メジャーリーガー!
もとい、その格好をした桜倉・南守(忘却の鞘苦楽・d02146)だった。
「俺はスラッガーさ、うつなら俺に任せとけ」
南守はバットの先を戦闘員達に向け、不敵な笑顔を浮かべる。
アメリカのお家芸・ベースボールのプレイヤー登場に、戦闘員達は興奮した。
しかし、彼は鮮やかにバットをバスターライフル、三七式歩兵銃『桜火』に持ち替え一発ぶっ放した。
「「ふぉおおぉおぉ!?」」
「ま、銃の方だけどな」
銃口に息を吹き掛ける仕草をして、メットの下のハンチングに手を遣り口端を吊り上げた南守。
ボルトアクションも忘れない。
「イッツクレイジイィ!」
「気を取られてる場合じゃナカッタデース」
「やるのかぁ、ッシャオラー!?」
それが引き金となって、戦闘員達は椅子やテーブルを蹴倒しながら向かってきた。
「行きます」
エアガンをホルスターに納め、みくるはいつものモップ(日本刀)とハタキ(マテリアルロッド)を手にする。
ルーパスが眼鏡を直しながら、ガトリングガンを構えてニッと笑んだ。
「悪ガキどもは昼寝の時間よう? ケツの穴増やされたい奴から掛かってらっしゃい」
●みんなで弾けりゃアメリカン
彩希の殺気が場に満ち、祝がサウンドシャッターで戦場の外に聞こえる音を遮断する。
これで暫くは、一般人も寄り付かないだろう。
「西部劇、格好良いですよね」
まずはみくるが、モップに仕込まれた刃で居合い一閃。
「スト~~~ンプ!?」
怯んだ隙に、祇翠が閃光百裂拳を叩き込む。
「アクロバティックなブレイクダンスは得意さ、ダンスバトルといこうぜ」
ステップで間合いを取る彼と入れ替わりに、彩希と南守のクラッシャーズが仕掛けた。
「雄大なアメリカ……東西をバイクで横断とか良いわよね。国土も広くて、羨ましいわ」
戦闘員がうっかり思いを馳せてしまいそうな話をしながら、彩希の左手で解体ナイフ『花逝』が踊る。
雄大な大地に気を取られている戦闘員の服をティアーズリッパーで切り裂き、そこへバットに見立てたロッドを手にした南守が突っ込んで魔力を思いっきり叩き込んだ。
そこへ降り注ぐのは、ルーパスのガトリング連射。
次々と降り注ぐ銃弾に、1人目の戦闘員は意外と呆気なく倒れた。
「……私よりこいつらの方が田吾作じゃない?」
ふと、ルーパスは零した。
普段は田舎者と言われるのが嫌いな彼も、にわかアメリカンからしたらよっぽどモノホンの立派なアメリカ人だ。
「う、うるせぇYO! お前アレか、テキサスのご当地ヒーローかYO?」
ガガガガッ!
「私は立派な殺人鬼よ!」
「ぐはっ」
ダブルでお見舞いされるガトリングおかわり。
そこへ忍がホーミングバレットで確実にダメージを加え、
「正義の国の人だよな! カッコイイ!」
と褒めそやしながら、祝がポンポンを持った手に装着しているシールドから展開させたワイドガードで前衛陣の守りを固めた。
戦闘員達はといえば……迷っている!
「フゥーン、彼らもメリケ~ンデース?」
「ヌゥーン……」
灼滅者達が皆アメリカンナイズされた格好で盛り上がっている為に、多くの者達が攻撃を躊躇った。
その隙に、灼滅者達は次々と攻撃を叩き込んでいき、1人1人確実に倒していく。
双方の入り口から入った2班は、難なく合流を果たした。
灼滅者達を取り囲みながらも、二の足を踏むことの多い戦闘員達。
みんなパチンパチン指を鳴らしながら、困った顔で汗を垂らしている。
「なんだか、可哀想な気もするね」
そのリズムに合わせてチカが歌っていると、戦闘員達の様子を見た輝が呟いた。
「でも、倒さないと元に戻してあげられないわ」
それに答えて、彩希は花弁散るようなオーラに包まれた身を躍らせる。
「ねぇ、面白いアメリカンジョークがあったら、教えてくれない? 一応調べたんだけど、本場の人の方が詳しいわよね」
「ある日授業で先生がぶほっ」
何か言い掛けた戦闘員が、無数に分裂したように見える早い拳を食らって吹っ飛ぶ。
「……あぁ、戦ってる時に長い話なんて出来ないわよね」
大袈裟に肩を竦める彩希。
「ナ、ナイスジョーク」
ガクッ。
戦闘員は気絶した。
「Oh……」
残っている戦闘員達も、自分もこんな目に遭うのかと戦慄した。
「ハァイ! 一緒にハンバーガー食べましょうよー」
そこでウィッグにカラコンで金髪碧眼、デニムのショートパンツにスニーカーで健康的なアメリカンガール風の真夜が『彩光六花』を翳して明るく援護する。
脚線美と強調した胸元が意外と、こうナイスなので、輝はあまり見ないようにしつつ。
「私、塩の利いたポテトが好きだわ」
「……私、ハンバーガーとコーラよりチリコンカンとサルサパリラのほうが好きなのよね。日本じゃどっちも滅多に見やしないったら」
彩希の言葉に、ルーパスは攻撃の手を休めず溜息をつく。
「アメリカって広いもんなぁ」
場所が違えば名物も違うと、南守は感心した。
床に手を突き、祇翠はトーマスフレアの要領で振った足で戦闘員を捕まえる。
「Oh!?」
腕と上半身のバネで跳躍して相手を思いっきり床に叩き付けた。
南守はバット代わりのロッドを翳し、あの選手のバッティングポーズを取った。
「と、こりゃ日本人か」
「Oh、サムラーイ!」
「サムラーイ! ファンタスティック!」
意外といけた。メジャーリーグ枠ならOKなのか。
すると突然、
「忍者がいるぞ!?」
と忍は手裏剣甲から手裏剣を乱れ飛ばす。
「ニンジャ! ハイブリッド!?」
「サムライのみならずニンジャもいるだと……流石ジャパン、侮れないデース」
戦闘員達は騒然としたが。
「Hip! Hip! Hurrah! がんばってこーう!」
ガラリと曲調が軽やかなものに変わり、高くジャンプして踊る祝。
「アメリカンな服装超楽しいー! 特に国旗っていいよね。超クール!」
メディックとしてヒールサイキックを放ちながら、チカも一緒に踊り、歌う。
「皆でアメリカンな服装してこうやって歌うと、ホントにミュージカルみたいでちょっと楽しいね」
くるりと回るついでに、祝は戦闘員の死角に影を伸ばして腱に斬り付けた。
「アウチッ」
「コーラ美味しい!」
戦闘員が足止めを食らっている間に、自己回復で事足りると見た忍がシャウトする。
「コーラ最高デース」
「ハンバーガーも忘れるなよ!」
ハンバーガーを取り出した戦闘員に、紫雲が襲い掛かった。
「No! 俺のバーガーが!」
紫雲から逃れ、潰れたハンバーガーに涙目でかぶりつく戦闘員。
「でしたらボクの特製ハンバーガーは如何ですか? 宜しければお召し上がり下さい」
そこでみくるがハンバーガーを取り出した。
「……具がマッカーッカでーす」
「激辛もまた良いと思います」
「Oh……遠慮しときマースぐはっ」
戦闘員、喋っている間にスミスに轢かれ撃沈。
敵の数が減って、灼滅者側もいよいよあまり回復に手間を取られなくなる。
「ノノ、お願い」
「ナノ~♪」
みくるの声に、メディックのノノはふわふわとハートを飛ばして味方の体力を回復していった。
ディフェンダーとしてはあまり忙しくなかった紫雲も、浄霊眼で皆を癒していく。
「ノノと紫雲のお陰で、チカもかなり余裕よ!」
軽快な音楽にステップを踏みながら、チカは回復の合間にマジックミサイルやフリージングデスをお見舞いしていく。
サイキックに付加されたブレイク効果が、折角戦闘員達がエンチャントした効果を打ち消した。
「ノ~ゥ」
「Oh、ブレイキンガール……」
オーバーに肩を竦める仕草もアメリカン。
忍の乱れ手裏剣が唸り、止めとばかりに祝はコールドファイアを叩き込んだ。
がくりと2人が膝を突く。
「オーライ!」
残るは3人、かなり消耗しきっている。
みくると祇翠、彩希がテーブルや椅子を蹴り付け素早く懐へ飛び込んだ。
ダイナミックな攻撃が次々炸裂し、戦闘員達は吹っ飛び、気を失った。
「新しい外国ご当地怪人か……かなりのご当地パワーを感じるぜ」
祇翠は元の姿に戻って気絶している若者達を眺めた。
対策を講じていたお陰で苦戦はしなかったが、この人数を各地で一気に強化一般人化するなんて、一体どれ程の力を持つのか。
灼滅者達は、まだ知らぬご当地怪人の息吹を感じていた。
●弾けた後は、お片付け♪
「お店が……」
静けさに包まれ、机や椅子、食べ掛けのハンバーガーなどが散乱した店内を、みくるは見回す。
「机や椅子、アメリカンに蹴っ飛ばしちゃったからね。お店にこれ以上迷惑が掛からないように、出来る限り片付けないと」
肩を竦めて取り掛かる忍に、彼女も微笑んで頷いた。
「お掃除、頑張りたいと思います」
クリーニングで自らとノノを綺麗にして、モップを握り締める。
「チリコンカンは知ってるけど、サルサパリラって?」
「コーラみたいな飲み物よ。同じ名前の植物が材料なの」
「へぇ~」
ルーパスの答えに輝が感心していると、忍がカウンターに放置されていたポテトを摘んだ。
「何かを倒した後って、何かくすねていきたくなるわよね」
「お金はちゃんと払うけどね!」
2人は軽く笑い合った。
「でも日本の日の丸もいいよね。ご飯の上に梅干だけ乗せて『日の丸弁当!』って最初に言った人って天才だと思う!」
「そういえば、最初に言ったの誰だろうね?」
片付けながら楽しげに話すチカに、輝も相槌を打つ。
自分も将来は国旗を背負える人になって、歌って踊りたい。
チカは広い天井に夢を馳せた。
「う、うぅん……」
気を失っていた若者達が、すっかり元の姿に戻って意識を取り戻し始める。
「気が付いたのか!」
チアガールの服装のまま、そのひとりの許に祝が駆け寄った。
「……え? あれ?」
見ればがちゃがちゃな店内を片付けている、アメリカンな服装の灼滅者達。
「一体何が……うっ」
「何があったかはともかく、思ったより元気そうで良かったよ」
忍はポテトを彼の口に入れてやった。
店の被害はともかくとして、彼らも彼らと同席していた一般人達も、今日のことは「一体何だったのだろう?」というくらいで終わるのだろう。
「俺もハンバーガー食べたくなっちまったよ」
一仕事終わって、南守はお腹を押さえた。
確かに、みんな小腹が空いただろう。
「店員さんがいないから、他のお店にいくしかないわね」
彩希の言葉に話が纏まると、紫雲も嬉しそうに尻尾を振る。
「お前は食いしん坊だな」
それを見て、祇翠も笑った。
作者:雪月花 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年3月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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