アメェリキャン・ヒーウィー・ゴー☆

    作者:陵かなめ

    「あー、空いてる席あったわー。早く食べようぜー」
     数人の若者が、ファストフード店の席についた。テーブルには、ハンバーガーにポテト、飲み物はコーラやオレンジジュースなど。
     店内は同じような若者の集団で賑わっていた。
    「あ、そのコーラ、味見させて」
    「今日、フィッシュにしたわ。チキンも好きだけどな」
    「なあ、これからどこ遊びにいく?」
     和やかに、昼食が始まった。
     ところが。
    「あーハンバーガーうめー……ぐ……ぁ」
    「あ、ぁあああああ」
    「おい、どうしたんだよ?!」
     食事を始めてすぐに、数人がうめき始めた。
    「ふー。はー。あ、アメェリキャァァン」
    「ヤー!! ヒーウィーゴー」
     気づけば、店内のそこかしこで、アメリカンな声が上がる。ハンバーガーを片手に立ち上がった若者達は、皆、ジーンズを穿いていた。
     騒然とする店内。変化の起こらなかった客達が逃げ出す。
    「行こうぜ、ブラザーッ」
    「オゥケェイ」
     変わってしまった彼らは、指を鳴らしステップを踏み、徒党を組んで外を目指した。
     
    ●依頼
    「あのね。とあるファストフード店で、ジーンズを穿いてハンバーガーを食べたりコーラを飲んだ人達が、いきなり強化一般人にされてしまう事件が起こるみたいなんだよ」
     困惑を隠しきれない表情で、千歳緑・太郎(中学生エクスブレイン・dn0146)が話し始めた。
    「えー?! ハンバーガーで?! しかも、ジーンズを穿いた人たち限定なんだ」
     空色・紺子(高校生魔法使い・dn0105)も、驚きを隠せない。
    「うん。強化一般人になっちゃった人達は、徒党を組んで周囲の街に被害を与えながら、新潟方面に向かっていくんだよ」
    「はあ。それは……、迷惑な話だねえ。その強化一般人って、どんな風になっちゃうの?」
     紺子の質問に、太郎が頷く。
    「えーと。古き良きアメリカの若者? みたいなイメージかな」
    「んー。なるほど、ジーンズ。で、その事件を解決したらいいんだね?」
     太郎は頷き、説明した。
     彼らが現れる時間と場所は分かっている。事件が起こり次第、速やかに解決してほしいのだと。
     なお、事件が起こる前に、人々を避難させたりファストフード店を閉鎖したりしてしまうと、事件は発生しない。代わりに、予知とは違う場所で事が起こってしまい、被害が大きくなる危険があるので注意したい。
    「変わってしまった人達を、ヤンキー戦闘員って呼ぶね。今回事件が起きるのは、ショッピングモール内にあるファストフード店だよ。かなりの大型店舗だね。店内は混んでいて賑わってる。一般の人も沢山食事してるんだ」
    「うーん。店内で戦うには、一般の人を避難させないとね。あ、店の外で戦うとしたら?」
     紺子が首を傾げた。
    「ショッピングモールも、賑わってるよ。どこで戦うかは任せるけど、一般の人の避難とかは、絶対に必要だね。でも、重ねて言うけど、一般人の避難は、事件が起こってからだからね。注意してね」
    「そっかー。ヤンキー戦闘員に変わるまで待ってから行動開始だね。ファストフード店で食事しててもいいのかな。あー。何食べよう」
     待機場所は店の中でも外でも良いとの事だ。
    「ヤンキー戦闘員は、30人くらいいるんだ。強化一般人とはいえ、凄い数だよね。でも、彼らは戦闘員に成り立てで、不完全な状態なんだ。だから、彼らと同じように若いアメリカ人ぽく振舞ったりしたら、攻撃を躊躇わせることが出来るんだよ」
     もちろん、全ての攻撃を防ぐことは出来ないけれど。
    「あ、服装とかアメリカンっぽくしてもいいよね」
    「うん」
     上手く利用すればかなり有利に戦うことが出来るだろう。
    「この強化一般人を生み出しているのは、何者か分からないんだ。けど、強力な力を持つダークネスには間違いないと思うよ」
    「ハンバーガーにジーンズって、もろアメリカンって感じだね」
    「うん。もしかしたら、アメリカのご当地幹部の仕業なのかも」
     紺子の言葉に、太郎が頷いた。
     最後にと、太郎が皆を見る。
    「みんな、十分注意して、頑張ってね」


    参加者
    神坂・鈴音(記者を目指す少女・d01042)
    椎那・紗里亜(魔法使いの中学生・d02051)
    エーミィ・ロストリンク(壊されぬ絆のメイデン・d03153)
    ナタリア・コルサコヴァ(スネグーラチカ・d13941)
    ジャック・サリエル(死神神父・d14916)
    丹下・小次郎(神算鬼謀のうっかり軍師・d15614)
    廻谷・遠野(ブランクブレイバー・d18700)
    水無月・蛍(ブレーキは置いてきた・d25236)

    ■リプレイ

    ●ヘイ、ゴーゴーゴー☆
     避難経路の確認などを終え、灼滅者達は席についた。広い店内にはテーブルが所狭しと並んでおり、客の数も多い。
    「やっぱりここのハンバーガーはおいしいね!」
     エーミィ・ロストリンク(壊されぬ絆のメイデン・d03153)が顔を上げた。さりげなく店内を見渡すと、そこかしこにジーパンを穿いた若者が目に付いた。
    「ねー。看板を見ると味が思い浮かぶのもいいよね、ハンバーガー」
     咀嚼していたハンバーガーを飲み込み、空色・紺子(高校生魔法使い・dn0105)が力いっぱい頷く。
    「で、私がすることって言うのは……」
    「はい。店内での避難誘導と一般客の護衛をお願いします」
     アップルパイを食べていた椎那・紗里亜(魔法使いの中学生・d02051)が説明する。今日はポニーテイルに裾のひらひらしたワンピースを身につけている。まるで昔のアメリカ青春映画から抜け出してきたようだ。
    「サポートメンバーの取り纏めも可能であれば」
     ナタリア・コルサコヴァ(スネグーラチカ・d13941)が付け加える。テンガロンハットに白いシャツ、デニムのパンツを身につけ、アメリカンな保安官風に纏めている。
    「おっけーおっけー、沢山サポートが居るから、大丈夫だよー」
     紺子の返事を聞きながら、ナタリアはハンバーガーをかじる。
    「アメリカか。いい国だよねー。自由を求めて旅だった人達によって作られた国だからね」
     力強い、エネルギーに満ち満ちているよねと、ハンバーガーを手に廻谷・遠野(ブランクブレイバー・d18700)が言う。
     ウェスタンハットにポンチョ姿だ。
     ポンチョの裾から、ホットパンツがちらりと覗く。
     そうしているうちに、店内から異様な叫び声が聞こえてきた。
    「ふー。はー。あ、アメェリキャァァン」
    「ヤー!! ヒーウィーゴー」
     目星をつけていたジーンズ姿の若者が雄たけびを上げる。店内に居た客達は、呆然と彼らを見ていた。
    「先輩方! 避難完了までの間、よろしくお願いします!」
     言うなり、水無月・蛍(ブレーキは置いてきた・d25236)が王者の風を発動させる。
    「皆さ~ん、私に付いて……一緒に避難して下さい!」
     すかさず、星野・えりな(スターライトエンジェル・d02158)が声を上げた。良く通る声と可愛いアメリカンウェイトレス姿のえりなの誘導で、一般の客が避難を始める。
     その様子を見て、戦闘員と化した一人の若者がパチンと指を鳴らした。
    「ヘィ、ユー! 勝手な行動は謹んでくれ、ベイベ」
     独特のステップを踏みながら、ナイフを構える。標的になった一般人が、短い悲鳴を上げた。
    「ハロー、ボーイッ! そこを動かないっ。お姉さんたちが、相手してあげるわ!」
     そこへ神坂・鈴音(記者を目指す少女・d01042)が躍り出る。カウガール風の衣装に身を包み、びしりと指を指した。
    「なにぃ?! お前も、アメリカンなのかっ!!」
     鈴音の姿に戸惑い、戦闘員は攻撃の手を止める。
    「ヒャッハーハハハ! ワタシはアメリカ人ジャナイデスケド、似タ雰囲気ヲ感ジマース」
     店の隅で様子を窺っていたジャック・サリエル(死神神父・d14916)も立ち上がった。つまんでいたポテトを処理し、地面を滑る様に歩き移動する。
    「デモ、暴レルノハダメデスネ!」
     避難経路を守るべく、位置を取った。
    「フリーの精神はアメリカンスピリット、意思に反してバトルアーミー化なんて間違ってマース」
     テンション高く、丹下・小次郎(神算鬼謀のうっかり軍師・d15614)も加わる。
     ウェスタンウェアにカウボーイハットと、見るからにアメリカンだ!!
    「止めるな、ブラァザー!!」
     灼滅者達の姿を見て、何となく洋画チックに戦闘員が片手を上げた。
    「俺達は、行かなきゃならねぇんだよ、なぁ!!」
    「オウケェイ、行こうぜ、共によぉ」
     店内に、同意の声が上がる。
     ヤンキー戦闘員30名が、一斉にナイフを構え、戦いが始まった。

    ●イッツ、ソゥ、クーーーール
     一般の客を避難させるべく、店の出入り口付近でも仲間が奮闘していた。
    「お客様の安全が第一よ」
     諭すように店員に語りかけ、避難誘導を指示する。
     関係者を装った喚島・銘子(糸繰車と鋏の狭間・d00652)にぎこちなく頷き、店員達も客を誘導し始めた。
    「お客さん、スムーズに流れ始めたね!」
     状況を知らせるため走ってきた紺子と二人、互いのアメリカ風ウェイトレス姿に笑い合う。
    「ヘイ、どこに逃げようとしてるんだ?!」
     ふいに数人の敵戦闘員がステップを踏みながら迫ってきた。二人は咄嗟に逃げる客を背に庇う。
    「アメリカンロック、最高だぜいっ」
     それを見たファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)がコートを脱ぎ捨てた。古き良きロック歌手テイスト衣装だ。
     敵を引き付けるべく自慢の歌声を披露すると、近くのドアにピシリとひびが入った。
     そこへ、新たにオールディーズ音楽が流れる。
    「Hey nice GUYs!」
     ワンピースの裾をひらひらと揺らし、紗里亜がステップを踏んで近づいてきた。
     悪戯っぽく魅惑的に投げキッスをすると、一般客に迫っていた戦闘員から指笛が鳴る。
     紗里亜は微笑み、それはそれとしてフリージングデスを放ち、敵を一網打尽にした。
    「サンキュー、サリー」
    「メイ、ファルケ、コニー。引き続き、よろしくお願いします」
     互いに手を振り合う。
    「さあ、出口はこっちだよ!」
     蛍が声を張り上げる。店の奥から、残っていた一般客を誘導してきたのだ。
     後ろを振り返り、敵を警戒する。
    「大丈夫、敵は来てないよ」
     戦闘員を警戒していたレオン・ヴァーミリオン(夕闇を征く者・d24267)が声をかける。
     今のうちにと、客を順に出口から逃がした。

    「楽しくレストランでランチたべてたらいきなりこれとか、ついてないわね一般人の人たちも」
     客が避難していく姿を確認し、鈴音が炎の翼を顕現させる。
    「さっさと目をさまさせてあげないと!」
    「そうだね。きっちり止めてみせるよ! ヒーローだからね!」
     遠野が頷き、ポンチョの前を肌蹴させた。見えた衣装は、星条旗の水着にホットパンツだ。
     片方の腕を巨大異形化させ、目に付いた戦闘員を殴りつける。
     DOOM!
     重い効果音と共に、戦闘員が吹き飛ぶ。
    「ぐわぁっ。ヘルプミー、ブラザー」
     片手を挙げ倒れこんだ味方を庇うように、戦闘員達が押し寄せてきた。とにかく、敵は数が多いのだ。鈴音と遠野は、すぐに次の攻撃の体勢を取った。
    「HEY! アメリカの魂ファーストフード店で暴れるなんてイイ根性してるNE!」
     エーミィが龍砕斧・双頭を持つ黒き破壊獣(オルトロス)の死爪を構える。
     敵に答える間を与えず、高速で切り込んで行った。
    「NOOOOOO!」
     纏めて薙ぎ払うと、戦闘員から悲鳴が上がった。
    「HAHAHA、楽勝デース」
     続けて、小次郎が魔導書・五雷天心正法を構える。こういうノリは世界共通で血沸くもの。燃える魂に国境はないと、アメリカンなテンションで、大きく身体を開いた。
     勢い良くカオスペインを繰り出す。
    「シィッッーーート!! 何しやがる、この野郎!!」
     戦闘員たちは、転がりながらも小次郎に怒りを向けた。
    「アメリカはロシアとの長きに亘るライバルでした」
     ビハインドのジェド・マロースを伴い、ナタリアはクルセイドソードを抜刀した。
    「昨日の敵は今日の友、強敵と書いて『とも』と呼ぶ。強敵の掲げる星条旗に賭けて、この戦い負ける訳にはいきません」
     まだまだ敵の数は多い。狙いを定め、フリージングデスを放った。
    「ク、COOOOOOOLッ」
     急速に体温を奪われ、戦闘員たちが凍り付く。
    「サア! 覚悟ハヨロシイデスカ!」
     すいすいと滑るような独特の歩き方でジャックが近づいてきた。今はまだ仲間の被害は少ない。そう判断し、自分も攻撃に加わる。
    「ヒャッハーハッハッハッ!」
     大鎌を大きく振り、敵の群れを薙ぎ払った。
    「オゥ、マァイ……」
     うめき声をもらし、戦闘員達が床に転がった。

    ●グッバイ、エンジェル
     戦闘開始から数分で、一般客の姿は店内から無くなった。数多かった戦闘員達は、少しずつダメージを負い、最初の勢いをなくしていた。
     それでも、まだまだ元気で向かってくる者が多い。
    「ヘイ、覚悟しなッ」
     一人の戦闘員がナイフを逆手に構え、ポーズをつけてエーミィへ襲い掛かってきた。カウガールの姿が見えてはいるけれど、お構い無しの様子だ。
     瞬間、ナタリアが身体を滑り込ませる。
    「ここは通しません!」
     身を挺して、斬撃から仲間を庇った。
    「WOW! 愉快な友達が着てくれたYO!」
     アメリカン的に声を上げながら、エーミィは有難うと視線をナタリアに向けた。
    「オゥ、クレイジィー?!」
     ナタリアの見事な行動に、戦闘員も目を見張る。
    「ジグザグスラッシュじゃないっ、どうやって手に入れたのボブ」
     その戦闘員に適当に名前をつけて、鈴音が声をかけた。
    「え、いやぁ、何か出来ちゃったって言うか。あと、オレ、タケオだからケニィって呼んでくれYO」
     何故かちょっとテレながら、戦闘員(自称:ケニィ)が頭をかいた。
     それを見て、鈴音は容赦なくマジックミサイルを飛ばす。
    「死の舞踏(ダンスマカブル)を始めましょう」
     続けてジェドが霊撃を飛ばし、合わせるようにナタリアがクルセイドソードを振るった。
     剣と杖が死を撒き散らすように踊る。
    「ノォ……」
     ケニィはあっけなく沈んだ。
    「お待たせしました! 水無月・蛍! 行っきまーす!」
     ちょうどその時、避難誘導を終え蛍が店内に戻ってきた。拳にオーラを集め、すでに臨戦態勢だ。
    「待ってたよ、蛍ちゃん! さあ、一緒に行こう」
     遠野がバベルブレイカーを担ぎ上げ、声を張り上げる。
     足元に勢い良く杭を打ち込み、衝撃波を生んだ。
     BANG!
     弾ける様な音と共に、戦闘員達が宙に舞う。
    「はいっ」
     落ちてくる一人の戦闘員に目星をつけ、蛍が地面を蹴った。
     凄まじい連打を繰り出すと、戦闘員は悶えながら地面に這い蹲る。
     残りの戦闘員も、地面に叩きつけられた。
     まだ立ち上がる者に紗里亜が駆け寄る。
    「ベイベ、オレのこと気遣ってくれるのかい?」
     何か勘違いした戦闘員が真剣なまなざしで紗里亜を見つめた。
     紗里亜は一瞬顔を突き合せるも、
    「イーッ」
     と言う表情を作り、思い切り相手を何度も平手打ちした。容赦ない閃光百裂拳が炸裂したのだ。
    「……オゥ、まいエンジェル」
     また一人、戦闘員が沈む。
    「HEY、下がっていろ」
     バベルブレイカーを手に、小次郎が最前列へ躍り出た。仲間達は小次郎に場を譲るように、一歩下がる。
    「こいつはソーマッチハイパワーだからフレンドがいるとユーズできないのサ」
     言うなり、最大限にジェットを噴射させ蹂躙のバベルインパクトを放つ。
    「……ッ」
     死の中心点を貫く強烈な一撃に、かろうじて立っていた戦闘員が声も無く崩れ落ちた。
    「傷ツイテモ、ドンドン癒シマース!」
     その間にと、ジャックが癒しの風を呼び起こした。
     エーミィもオーラを癒しの力に換え、ナタリアの傷を回復させる。
    「くっ、こいつら強いぜ」
     仲間が倒されるさまを見て戦闘員がうろたえた。
    「だ、だが、俺たちには、ハンバーガーがあるじゃないか!!」
     しかし、他の戦闘員が高らかにハンバーガーを掲げると、そうだそうだと声が上がった。

    ●グッバイ、アメリカン
     一方、店外では戦闘員の逃走防止に師走崎・徒(高校生神薙使い・d25006)、獅子鳳・天摩(高校生ゴーグル・d25098)、前田・和真(高校生デモノイドヒューマン・d25629)が目を光らせていた。バスケチームのユニフォームを身に纏い、バスケットボールを持ち、完全にバスケスタイルで決めてきた。
    「一人、こちらへ向かって来るようです」
     同じように、戦闘員の逃走を警戒していた色射・緋頼(兵器として育てられた少女・d01617)が声を上げる。
    「ノゥ、オレは逃げるんじゃないぜ? でっかい夢をこの手に掴むには、戦場から離れる時も必要だということさ!!」
     というような、調子のいい事を言って、戦闘員が店の外へ出ようとした。
    「うん。来たみたいだね、皆行ける?」
     徒が仲間を見る。和真が頷き、声を上げた。
    「Hey! ハリウッドサイコー!」
    「ディーフェンス!」
     ビクリ、震える戦闘員に向かい、天摩と共に援護するように射撃を行う。
     さらに緋頼が射撃で足止めし、徒が店内へ戦闘員を投げ返した。
    「どうやら、あとは店内だけでケリがつきそうだね」
     アロハ柄の浴衣を着た四月一日・いろは(剣豪将軍・d03805)が中の様子を窺った。商店街に被害が出ないよう、細工をして帰ってきたのだ。
     彼女の言う通り、もう逃げてくる戦闘員の姿は無い。
    「それじゃあ、店内のサポートに行こうかな」
    「そうですね。誰も死なせたりしません!」
     貴志・蘭花(中学生サウンドソルジャー・d23907)と室崎・のぞみ(世間知らずな神薙使い・d03790)は、仲間の回復を手伝うべく、店の中へ走った。

     店内では、一人また一人と戦闘員が沈んで行った。
    「バーガーを食べて回復トハ、サスガデスネ。ワタシにも1個モラエマセンカ?」
     ハンバーガーをかじり、体力の回復を試みる戦闘員にジャックが声をかけた。
    「オゥケィ、ブラザー。実は、お前、いい奴だったんだな!! ハンバーガーは、最高だよな!!」
     何となく流され、戦闘員がハンバーガーをジャックに手渡す。
     兄弟の証か何かは分からないが、手渡されたハンバーガーは食べかけだった。口に入れるのもためらわれる一品だ。
    「代ワリニ回復ノ光ヲオ返シシマース! ヒャッハーハッハッハッ!」
     ハンバーガーを片手に、ジャックは裁きの光条をぶつけた。
    「あっ……」
     当然だけれども、ジャッジメントレイは戦闘員に多大なるダメージを与えた。
    「そこに、弱っている敵が居ます」
    「了解です」
    「こっちからも、行くよっ」
     ナタリアの掛け声に、紗里亜と蛍が答える。
     仲間達も、次々と戦闘員を撃破して行った。
    「さあ、キミで最後だね!」
    「ひっっ?!」
     最後の敵を鈴音が沈め、戦いの幕は閉じる。
    「アーメン」
     ジャックが静かに十字を切った。

    「……あう、散らかっちゃったところ片付けないとね」
     アメリカンからすっかり元に戻り、エーミィが後片付けを始めた。ひっくり返った机を元に戻し、椅子を入れてやる。
    「うーん、ジーンズはいてハンバーガー食べてるだけで強化一般人にされちゃうなんてね、やりたい放題だよね、ほんと」
     やはり放っては置けないと遠野が腕を組む。
     一方、店の隅で小次郎が何か呟いていた。
    「サポートにミーのシスター分がカムしてくれているのでね、ルーズな姿をルックさせるのはノットデース」
     どうやらサポートに感謝を伝えようとしている様子だ。
     けれども、アメリカン風に言うならと思い立ったところで、
    「だめだ。恥ずかしさで」
     悶えそうだと。ノリノリだった自分を思い出したようだ。
     真っ赤になった顔を隠すように手を当てている。
    「はー、終わったねー。皆、怪我は無い?」
    「はい。大丈夫ですっ」
     全体を見渡すようにしていた紺子が声をあげ、蛍が元気に答えた。
     ヤンキー戦闘員30名を無事撃破しつくし、灼滅者達は勝どきを上げた。

    作者:陵かなめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年3月20日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 8
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ