ヤンキーフリーダム

    作者:天木一

    「おお! これこれ、やっぱバーガーは佐世保だよな、この手作り感がたまんねー」
     個人店舗のバーガー屋で、ジーンズにスタジャンというラフな格好をした男が、大きなバーガーを前に目尻を下げる。
     それは柔らかそうなパンズに分厚いミートパティ、それを覆うように蕩けるチーズが乗せられ、レタスにカリカリベーコンと続く。そしてソースには特製マヨネーズと粒マスタードにピクルスを刻んで混ぜた物が入っていた。
     男はその大きなバーガーに齧り付く。口元や鼻にソースをつけながら、美味そうにバーガーを頬張った。
    「ぐうっ」
     美味そうに食べていた男の表情が突然凍りつく。そして胸を掻き毟るように苦しみ出すと、椅子ごと仰向けに倒れた。
    「大丈夫ですか!?」
     店員が慌てて駆けつける。見れば他にも周囲の客達が何人も同じような症状に襲われていた。
     倒れていた客達がゆらりと立ち上がる。そして指を鳴らして体を揺らすと、足でステップを踏みながら振り向く。髪の毛はいつの間にか派手な色に染まっていた。
    「ハーハーッ最高にハイな気分だぜー!」
    「俺たちゃ今日からヤンキーライフをエンジョイするぜ!」
    「ファーックユーー」
     芝居口調で口々に叫びながら、若者達は何処から取り出したのか、バットで机を壊し、人々を脅して店のバーガーとジュースを略奪する。
     突然の暴力に客も店員達も慌てて逃げ出した。
    「かかって来いジャーップ!」
    「シィット! 逃げずにバーガーを作りやがれ!」
    「ファーック! ファーック!」
     ヤンキー達が全員同じリズムで踊りながら外に出る。すると近くのバーガー屋からも同じように踊りながら出てくるヤンキー達が大勢現われた。
     それらは集合し、一斉にリズムを取って踊り出す。集まったヤンキー達の共通点、それは全員がジーンズを履いていることだった。
     
    「やあ、みんなハンバーガーは好きかな? どうやらハンバーガーショップで事件が起きるみたいでね」
     教室で待っていた能登・誠一郎(高校生エクスブレイン・dn0103)が、事件について説明を始める。
    「ジーンズを履いた若者達が、ハンバーガーやコーラを飲食する事で、強化一般人にされてしまうんだ」
     首を傾げ何を言っているのか理解できない灼滅者達に、誠一郎はもう一度繰り返す。
    「理由は全く分からないけれど、ジーンズを履いた若者がハンバーガーやコーラを口にしたら強化一般人になってしまうんだよ」
     とりあえず無理やり納得する灼滅者達に、説明が続く。
    「強化一般人となった若者は、古きよきアメリカの若者、ヤンキーみたいな雰囲気を持つみたいだね。徒党を組んで街に被害を与えるんだ」
     殺人までは行かないが、暴行を加えられたり、建物や車なんかを壊しながら、新潟方面へと進むようだ。
    「事件が起きる場所と時間は分かってるから、みんなの力で解決して欲しいんだよ。ただ、事件が起きる前に、事件が起きないように行動すると、予知が外れて違う騒動が起きる可能性があるから気をつけてね」
     故に起きた事件を迅速に解決する任務となる。
    「ヤンキー達は昼の繁華街に現われるんだ。周りにはまだ逃げてない人も居るから、戦いに巻き込まれないよう避難させてあげて欲しいんだ」
     バーガーショップの客は逃げるが、他の人々は絡まれるまで逃げ出さない。
    「ヤンキー達は周囲の店でも発生し、全員で30体ほどになるよ。数が多いけど、彼らはまだ不完全で、同じような若いアメリカ人っぽい言動や服装をする事で、仲間と誤認して攻撃を躊躇するみたいなんだ。それを上手く利用すれば、戦いが有利になると思うよ」
     数の力は大きい、まともにぶつかればこちらの受ける被害も大きくなるだろう。何とか敵の性質を利用して作戦を練りたいところだ。
    「どこの誰がどうしてこんなヤンキーを作り出しているのかは分からないけど、事件が起きるのを放っては置けないからね。みんなに解決してきて欲しいんだ。お願いするよ」
     誠一郎が頭を下げると、灼滅者は頷き教室を出ようとする。
    「しかし、ヤンキーにハンバーガーとくればどこの国の手の者かは想像がつく気がするね」
     ロシアンだけでも大変だっていうのにと呟く誠一郎の手には、一番有名なハンバーガーショップの袋があった。


    参加者
    朝山・千巻(スイソウ・d00396)
    本堂・龍暁(朽龍・d01802)
    リーリャ・ドラグノフ(イディナローク・d02794)
    霧島・絶奈(胞霧城塞のアヴァロン・d03009)
    城・漣香(焔心リプルス・d03598)
    此花・大輔(ホルモン元ヤンキー・d19737)
    守御・斬夜(護天の龍華・d20973)
    狼川・貢(高校生殺人鬼・d23454)

    ■リプレイ

    ●ヤンキー
    「アーユーレィディ?」
    「イエェーー!」
    「オーケー、ロックンロール!」
     ザッザッ。ザッザッ。ジーンズを穿いた集団が同時にステップを踏む。幾つものバーガー屋から現われ、回ったり、ジャンプしたり、走ったりしながら合流する。
    「ヘイユー、俺達の邪魔をするんじゃあないぜ」
    「俺達ヤンキーの通る道を塞ぐんじゃねぇ!」
     道に路上駐車している車をヤンキー達が群がってひっくり返す。自転車を投げ飛ばし、バイクを薙ぎ倒す。
    「ハッハッー! 最高にイカすアートになったじゃねえか!」
    「俺達は誰にも止められねぇ! 俺たちゃ自由だ!」
    「フリーダムフリーダム!」
     パチンッパチンッと指を鳴らしながらリズムを取って、感情を表現するように体が激しく揺れ動く。
    「さっさと消えな! 目障りなんだよジャップ!」
     そう叫んで進行方向に居る一般人を追い散らしすのは朝山・千巻(スイソウ・d00396)だった。ロカビリー系のワンピースとジャケットを着て、リズムに乗ってステップを踏む姿はジーンズ姿のメンバーに混じっても違和感は無い。
    「殴られたくなかったら失せろジャッープ! ついてくんじゃねー!」
     続いてI・LOVE・NYと描かれたシャツとジーンズを着た城・漣香(焔心リプルス・d03598)も、人が近づかないように周囲を威嚇する。
    「微妙にオッサンっぽい気もするけどまあ良いや」
     ブルージーンズにスタジャンを着た守御・斬夜(護天の龍華・d20973)も、ヤンキー達に混じりに行く。
    「ダンスの邪魔だぜジャップ、道を譲りな」
     洋画でヤンキーについて学習しておいた狼川・貢(高校生殺人鬼・d23454)は、ジーンズを穿きヤンキー達に混ざって踊りながら罵声を浴びせる。ダンスは微妙だが、台詞は堂に入っていた。
    「アメリカ万歳ーアメリカ最高ー」
    「オーブラザー! その通りだぜアメリカ最高ー!」
     だるそうな斬夜の言葉に、ヤンキーはノリノリで返す。
    「HAHAHA!」
     ジーンズに革ジャンを着た霧島・絶奈(胞霧城塞のアヴァロン・d03009)は、笑い声を上げながらヤンキーの集団に混じる。
    「ヘイ! ブラザー! 俺達は何処に向かってるんだい?」
    「オォーブラザー、そんな事も知らないのかい? 新潟ってところに向かうらしいぜ」
     芝居口調で尋ねる絶奈に、やれやれと大きく首を振ったヤンキーの1人が答えた。
    「ブラザー、新潟の何処なんだい?」
    「さあ? そもそも新潟ってのがどこにあるのかも知らないしな」
    「ハハハッ」
     面白い冗談を聞いたとヤンキー達が腹を抱えて笑う。
    「この特攻服、ナイスだろ、ブラザー!」
     ダメージジーンズに星条旗柄の特攻服という、目を引く衣装の此花・大輔(ホルモン元ヤンキー・d19737)が自慢げに服を見せる。
    「クール! ブラザーそいつは最高にクールだよ!」
    「まさにカミカゼ! ハラキリ! ニンジャ!」
     そんな大輔の姿をヤンキーは興奮して称える。
    「多対一……久しぶりだな。まぁ昔とは勝手が違うし、少しは楽しめるかね」
     少し離れた場所から鋭い視線でヤンキー達を観察し、本堂・龍暁(朽龍・d01802)は呟いた。
     離れた場所にラジカセを置いたリーリャ・ドラグノフ(イディナローク・d02794)がスイッチを押す。
    『アメリカはピザやコーラばかり食べてデブばかりでゴザル! それに比べて日本料理はヘルシーで文化遺産レベルでゴザル!』
     そんなアメリカを貶し、日本を賞賛する声がスピーカーから大音量で流れる。
    「シィット! どこかにUSAのエネミーが潜んでいるデス! 皆集まるデース!」
     チアリーダー姿のリーリャが、ポンポン振ってヤンキーに呼びかける。
    「ファーック!」
    「誰だ! 俺達のステイツを貶す奴はぁ!」
     ヤンキー達は大きな身振りで怒りを表し、声のする方向へ向かう。

    ●ダンス
     一般人はそんな荒れ狂う集団から逃げるように離れていく。
     遠巻きに携帯の写真を撮っているような連中も、灼滅者達が威嚇して追い散らす。
    「こっちから聞こえてきたかな?」
     斬夜が先導するようにヤンキーの前を歩いた。
    「なんだこりゃ!?」
    「ラジカセかよファーック!」
    「ノンノンノン! USAの真の強さは物量デース。全員で破壊して圧倒的強さを見せ付けてやるのデース」
     挑発する声を辿ってヤンキーが見つけたのはラジカセ。リーリャが煽ると、ヤンキーは腹いせに思いきりバットを振り下ろしてラジカセを破壊する。
    「ふざけやがって!」
     潰れたそれをさらに足蹴にする。
    「まったく、これだからジャップは、ステイツの素晴らしさが分からんのか!」
     LOVE&PEACEと描かれたシャツを着たヤンキーが咆える。
     それを見て思わず真顔になった漣香は、自分のシャツを見下ろす。
    「ぶっちゃけそんなNY好きでもないです、なんだこのシャツだっせえ!」
    「「ワット!?」」
     一斉にヤンキーの視線が漣香に集中する。
    「やだもう、そのジョーク寒いよぉ」
     千巻が口だけ笑いながら、漣香の首に腕を絡ませて引き寄せる。
    「く、首絞まる! 自称ギャルのちろるさんってアメリkあっデコピンやめて!」
     それでも軽口を叩く漣香は、額が赤くなるほどのデコピンを食らって大人しくなる。
    「なんだジョークか、ビビったじゃねぇか」
    「ステイツをバカにされたんだ、こんな悪戯をした奴を探し出してヤっちまおうぜ!」
    「ナイスアイディア!」
     ヤンキー達がキョロキョロと周囲を見渡す。その時、偶然ビルの中から外の騒動に気付かないで出てきた男性が居た。
    「まずはアイツだ!」
    「行くぜファッキンガイズ!」
    「「イェア!」」
     ヤンキー達が男に近づく。その時、背後から背中を剣で斬りつけられた。
    「マイ……アス?!」
    「手が滑っちゃった! ソーリー☆」
     千巻が失敗失敗と片手を挙げて悪びれなく謝る。そこに続けて漣香が鈍色に光るガトリングガンを向けて無数の弾丸を撃ち込んだ。
    「ギャー!」
    「ひぃ誤射だ!」
     悲鳴を上げて伏せるヤンキー達。
    「あ、ごめん手が滑っちゃった!」
     漣香は千巻を真似てテヘペロと謝る。だがその態度にぶち切れたヤンキー達はバットを振り上げた。
    「キスマイアス!」
    「少し……暴れさせてもらおう」
     龍暁はバットを手で掴み、ヤンキーの腹に拳をぶち当てた。くの字になって宙を舞うヤンキー。
    「ファックユー!」
    「てめぇ何者だ!」
     ヤンキー達の注意が龍暁に向かう。その隙に一斉に灼滅者が動き出す。
    「今のうちに逃げてください」
     何が起きたのかと混乱する男性に絶奈が声をかけると、近くに居たヤンキーに巨大な杭を打ち込み吹き飛ばして道を示す。
    「来いよアメ公。ワル同士、ワイルドにバトルしようぜ!!」
     挑発した大輔は、ヤンキーが近づくと腕に装着した巨大な杭を地面に叩き込む。すると地面が陥没し衝撃が周囲に広がってヤンキー達を飲み込む。
    「ジャァァップ!」
     跳躍したヤンキーがバットを振り下ろす。それをビハインドの実理が受け止める。ヤンキーはそのまま吹き飛ばされた。見れば腕を異形化した斬夜が鞘で打ち抜いていた。
    「ここからは力ずくでいいよな」
     斬夜は更にもう1人張り倒しながらゆるく喋る。
    「この野郎!」
     ヤンキーの1人がそこへ襲い掛かる。だがバットが届く前にその体を槍が貫いた。
    「ヘイ、ヤンキー。ダンスがなっちゃいないな」
     貢は槍を捻りヤンキーを払い落とす。
    「シィット! よくもやりやがったな!」
     囲もうとするヤンキーを覆うように炎の渦が生まれる。
    「燃えるといいデース」
     リーリャは更に炎を生み出しヤンキー達を包み込んだ。ヤンキーは炎に巻かれながらも這い出してくる。

    ●シィット
    「ヘイユー、よくも舐めた真似してくれたな。ヤンキーの力を見せてやる!」
     体勢を立て直したヤンキーは、指を鳴らしながら灼滅者を取り囲み。リズムに乗って次々と襲い掛かる。
    「昔はよくこうして不良に絡まれたものだが……ま、今考えれば別に嫌なものでもなかったかね」
     龍暁は迫るバットを腕で受け止め、膝蹴りを腹に入れて頭が下がったところへアッパーを放ってヤンキーを打ち上げた。続いて背後から振り下ろされるバットを手刀で切り返す。カランカランと地面に硬い物が転がった。それはバットの先端。手刀がバットを切断したのだ。
    「残念だが、慣れてるんでね」
     裏拳がヤンキーの顔にめり込み、ぐるんと体が一周して崩れ落ちる。
    「ゴートゥーヘル!」
     ならば数で押し切ると、一斉にヤンキーが突っ込む。そこに千巻が割り込んだ。
    「貴方ってすごくチャーミングね、まるでポテトみたいで!」
     ヤンキーに向かってウィンクすると、思わずヤンキーの足が止まる。
    「やっぱポテトはアイダホだよねー!」
     その隙に漣香が炎を放射状に放つ。火の海に飲み込まれてヤンキー達が呻く。
    「ファッキンホット!」
     火に炙られ踊るように散るヤンキーの群れに、絶奈が飛び込み情熱的に踊るように剣を振るう。
    「HAHAHAHA! さあブラザー、一緒にソードダンスでもどうだい?」
    「ガッデム!」
     火傷を負った体に剣撃を受けて、なんてこったと天を仰ぎ倒れていくヤンキー達。
    「オゥブラザー!」
     仲間を倒された怒りに身を任せ、周囲のヤンキーが絶奈に殺到する。
    「ノンノン、そんな攻撃じゃダメダメデース!」
     その前に立ち塞がるようにリーリャがポンポンを構える。すると光が奔りヤンキーが吹き飛ぶ。ポンポンから銃が現われていた。
    「そら、そこに並べ。一人ずつぶっ飛ばしてやる!」
     大輔は杭打ち機から発するジェット噴射の勢いを利用して踏み込み、ヤンキーをぶっ飛ばす。更に回転して勢いを保持すると、続けて横にいたヤンキーも薙ぎ倒した。
    「シィィット!」
     死角からヤンキーがバットを投げつける。それを実理が弾いた。
    「どうした? もっと踊れよヤンキー」
     貢は地面に杭を撃ち込む。すると衝撃が駆け抜けヤンキーの足場が崩れる。
    「さて、ここからはマジメにやるかな」
     斬夜は刀の柄に手をかける。すると気だるげな雰囲気が一変して、まるで抜き身の刃のような気配を放つ。
    「ヤンキー退治だ」
     踏み込みながら腰を捻り刀を抜き放つ。切っ先はヤンキーが構えたバットを切断してそのまま胸を斬り裂いた。太刀を返し振るう。刀から剣風が飛び、隣でバットを振り上げて投げようとしていたヤンキーを斬り倒す。
    「サノヴァビッチ!」
     バットが龍暁の肩を殴る。続けて腹、背中と3人のヤンキーが同時にバットを叩き込んだ。だがその体は微動だにしない。まるで巌の如く強固だった。
    「この程度では俺は倒せんぞ」
     龍暁は背後の敵を掴んで投げ、前の敵にぶつけると、もう1人に向かって拳の連打を放った。滅多打ちにされて仰向けに倒れるヤンキー。
    「オーマイガッ」
     続けて残り少なくなったヤンキー達が一斉にバットを投げつける。それをリーリャと千巻が仲間を庇って防ぐ。だが隙間を抜けて漣香に飛来するバットをビハインドが踊りながら防いだ。
    「お前ノリノリだな……」
     楽しそうにステップを踏むビハインドを見て、思わず漣香はドン引きした。
     そこにバットを投げたヤンキーがナイフを抜いて迫る。その腕を千巻が受け止めた。
    「誰に断って、うちの後輩に手ぇあげようとしてるわけ? ちゃんとアタシの許可を取ってからにしてよね!」
     千巻はヤンキーを殴り返すと、漣香がガトリングを向けて蜂の巣にした。
    「許可制なんだ……ってかオレの意思は?」
     漣香は唖然として呟く。更に続けて迫るヤンキー達もナイフを突き出す、それを絶奈が剣で弾いた。
    「sorry,その程度の攻撃では私達は倒せないよブラザー」
     絶奈の剣から穏やかな風が仲間の間を吹き抜けた。それは傷ついた体から痛みを取り除く癒しの風だった。
    「もっとファッキンガッツでガンバルデース!」
     向かってくるヤンキーに対し、リーリャは応援しながら銃で殴りつけ、バランスを崩したところへ拳の一撃で意識を奪う。
    「ファック! 避けるんじゃねぇ!」
     貢は打ち込んだ杭を避けられると、罵声を浴びせながら冷たい炎を放った。凍えたようにヤンキーの動きが鈍る。
    「全て斬る」
     そこに斬夜が駆け抜け、幾重にも剣閃が奔った。刃は疾風のように次々とヤンキーを斬り倒していく。
    「お前で最後だな、かかってこいよアメ公」
    「ジャァップ!」
     大輔の挑発にヤンキーは全力で向かってくる。それを避けてカウンターで剣を振るう。胴に赤い線が奔った。
    「スクリュゥーガイズ、アイムゴーイングホーム!」
     唾を吐いて手負いのヤンキーが逃げ出す。そこへ向けて大輔は跳躍した。
    「ジャパニーズホルモンキック!」
     大阪の力を宿した飛び蹴りがヤンキーの背中を打ち、吹き飛ばされたヤンキーは地面を転がり意識を失う。

    ●ファック
     倒れたヤンキー達は強化が解け、元の一般人へと戻っていた。
    「偶にはこういう戦いも悪くない」
     龍暁は体のあちこちに怪我を負いながらも、その痛みと疲労に心地良さそうに笑みを浮かべた。
    「ラヴ&ピース! 作戦終了デース!」
     戦い終わっても似非外人風の喋りを演じたまま、リーリャがVさんを掲げた。
     千巻が漣香に向かって手を差し出すと、漣香は何のことか分からずに首を傾ける。
    「守ったお礼はお菓子500円分でイイよぉ」
    「無料じゃないんだ!?」
     ウインクする千巻に、漣香が思わずツッコンだ。
     灼滅者達は倒れた一般人の無事を確認すると、逃げた人々が戻る前に佐世保バーガーの店に入る。
    「これが彼等が食べていたのと同じハンバーガーですね」
     絶奈がまだ手のつけられていない佐世保バーガーを試しに食べてみる。だがこれといって変化は起きなかった。
    「何も起きませんね。灼滅者には効果がないということでしょうか?」
     もぐもぐとそのまま美味しそうに食べてしまう。
    「とりあえず食べかけのは持って帰ってみようかな」
     斬夜は食べ残しのバーガーを1つ包んで確保していた。
    「ジーンズに、バーガー食ってコーラ飲むだけで人格変わっちまうなんて恐ろしい世の中だな……」
     大輔はぽつりと呟く。実際にそれだけで変化するとなると、どれだけ被害が広がるか分かったもんじゃないと、想像して首を振った。
    「試食は……こ、怖いからオレはやめとく」
     そう言う漣香の口に、千巻がバーガーを突っ込んだ。
    「むぅ!?」
     漣香の顔が青くなる。何か変化があったのかと思ったが、単に喉に詰まらせただけだった。慌ててコーラを飲み、炭酸で咽る。
    「げほっげほっ」
    「もう、汚いなー」
     千巻は服が汚れないよう飛び退く。
     一先ず事件は解決したと、灼滅者達は帰途につく。いずれこの騒動を起こした黒幕を倒すと思いながら。
    「ファックオフ!」
     帰り際、突然叫んだ貢に視線が集まる。貢は手で口を押さえた。別にそんな台詞をいうつもりは無かったのだが、つい口から出たのだ。帰るまでにこの口調を元に戻しておかなくてはと、皆が思うのだった。

    作者:天木一 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年3月20日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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