畑の続く道を、長く伸びた影を追うように車が走り抜ける。その目指す先は人々が集まって住まう町の方向。
その後を追うように一匹の獣が駆け抜け、そのまま町に足を踏み入れた。
それは風に靡く美しい灰色の毛を持つ狼。その額には一房の白い毛が三日月のように揺れていた。
「グルル……ウオオォォォォン!」
雄叫びが町中に響く。同時に町に住む獣達の脅えた声があちこちから聞こえ出した。
近くに居た猫が毛を逆立てて狼に脅える。
「チゥチゥ」
そんな中、小さな鳴き声が響く。見れば溝から一匹の鼠が這い出てきた。
「オオオォォンッ」
それを見届けると、狼は悠々と立ち去る。
狼が居なくなり恐怖から解放された猫は、本能的に鼠に襲い掛かった。
「チゥッ!」
猫の爪が鼠を捕らえる。そう思った瞬間、鼠の牙が猫の首に突き立てられた。悲鳴を上げる猫。だが鼠はそのまま喉を食い千切ると、息絶えた猫を食らい始めたのだった。
「やあ、みんなよく集まってくれたね」
教室で待っていた能登・誠一郎(高校生エクスブレイン・dn0103)が、入ってきた灼滅者に声をかける。
「またスサノオが古の畏れを生み出そうとしているんだ。だけど今回はとうとうスサノオの尻尾を掴んだよ」
興奮したように誠一郎は話を続ける。
「どうもスサノオは予知を妨害する力があるみたいなんだけど、みんなが何度も戦い因縁を持った事で、ようやくスサノオを直接攻撃する事ができるんだ」
今回はスサノオよりも早くこちらが手を打つ事が出来る。。
「スサノオと戦う方法は2つ。1つは古の畏れを呼び出そうとしているところを襲う事。もう1つは古の畏れを生み出した後に、帰ろうとしているところを襲撃する事だよ」
古の畏れを呼び出す前に戦うのなら、6分以内に倒さなくては古の畏れが目覚めてしまい、スサノオの配下として戦闘に加わる。その隙にスサノオが逃げてしまう事も考えられるだろう。だが6分以内に倒してしまえば古の畏れは現われない。
古の畏れが現われた後に戦うのなら、古の畏れが現われた場所から離れた位置で戦えば、古の畏れが参戦する事はないし、時間制限もない。だが、スサノオを倒した後に古の畏れも倒さなくてはならない。連戦となる事を考えた作戦が必要だろう。
「どちらの作戦をとるかはみんな次第だよ。自分達に合った戦い方でスサノオを灼滅して欲しいんだ」
誠一郎の言葉に灼滅者は頷いた。そこで資料を手にした貴堂・イルマ(小学生殺人鬼・dn0093)が前に出て、詳細を話し始める。
「敵は香川県の町中に出現する。ちょうどうどん屋の目と鼻の先なので、その店を目印にすれば迷う事はないだろう」
夕方で仕事帰りの人で賑わいだす時間だ。巻き込まないよう人払いが必要になるだろう。
「スサノオは灰色の狼の姿をしている。そして能力なのだが、どうやら今まで呼び出した古の畏れの能力を得ているようだ。狼の姿から分かるように俊敏でもある。倒しきるには上手く立ち回らなくてはならない」
とはいえまだ成長途中の個体だ。灼滅者が力を合わせれば十分に倒せる。
「古の畏れだが、こちらは大きなネズミの姿をしている。旧鼠と呼ばれる妖のようだ。獰猛で小動物を食らうらしい。獲物が居なくなると、人まで襲い始める。だから現われたなら、被害が出る前に倒してしまわなくてはならない」
古の畏れはスサノオほどの強さはないが、戦う時はこちらも疲労しているから油断はできない。
「今回の作戦にはわたしも参加させてもらう。スサノオをこのまま放っておけばさらに強くなっていくだろう。ここでなんとしても仕留なくてはならない。わたしも全力を尽くすつもりだ、よろしく頼む」
皆を見渡して頭を下げるイルマ。
「それじゃあみんな、お願いするね。今回はようやく何件も事件を起こしたスサノオに挑めるチャンスだよ、これを逃したら今後どうなるか分からないんだ。だからここで止めて欲しい」
誠一郎の見送りを受け、灼滅者は香川県へと向かう。
参加者 | |
---|---|
和泉・風香(ノーブルブラッド・d00975) |
紗守・殊亜(幻影の真紅・d01358) |
三条・美潮(高校生サウンドソルジャー・d03943) |
エリアル・リッグデルム(ニル・d11655) |
姫乃川・火水(ドラゴンテイル・d12118) |
村上・椿姫(夢喰いヒーロー・d15126) |
焔宮寺・花梨(理数が苦手な焙煎士見習い・d17752) |
山田・透流(自称雷神の生まれ変わり・d17836) |
●夕暮れ
日の光が西から差し込み、長い影を地面に描く。
赤く染まる景色の中、人々が帰り道を行く。そんな田舎道にある食事処の前に少年少女が集まっていた。
「こんなとこでちんたらしてんじゃねーよ、帰れ帰れ!!」
三条・美潮(高校生サウンドソルジャー・d03943)は道行く人に強力な精神波を送り、これから夕食でもと思ってやって来た人を追い散らす。
「迷惑をかけるけど、戦いに専念できるように帰ってもらわないとね」
周囲に殺気を放って人払いをした紗守・殊亜(幻影の真紅・d01358)が、残った人が居ないか辺りを見渡す。
「ついに、貴方と対峙する日が来たのですね」
ぐっと握り拳を作る焔宮寺・花梨(理数が苦手な焙煎士見習い・d17752)。
(「首なし馬と戦ったあの日から、貴方を追い続けて……いざ、もふり倒s……いえ、灼滅してみせます」)
想像して思わず緩みそうになる頬をきゅっと堪える。
(「……花梨姉さんはもふもふを考えているんだろう」)
そんな花梨の心中を、村上・椿姫(夢喰いヒーロー・d15126)は一目見て察していた。
「これに成功すればもしかすれば何かの情報が得られるかも知れんの」
和泉・風香(ノーブルブラッド・d00975)は、その為にもまずは勝たねばならなぬと周囲を警戒する。
「古の畏れが参戦するまでの時間との勝負でもあるな……燃えるだろ?」
「厳しい戦いになるだろうが、全力を尽くそう」
そう言って姫乃川・火水(ドラゴンテイル・d12118)は、口元を曲げて不敵な笑みを浮かべて見せる。
頷いた貴堂・イルマ(小学生殺人鬼・dn0093)は、帽子を被り直して何時でも戦えるように準備を整える。
「6分で決着か……けれどやるしかないね」
エリアル・リッグデルム(ニル・d11655)は時間制限のある戦いを前に覚悟を決め、時間が分かるように1分ごとになるようタイマーを設定する。
(「スサノオさんが会話をできる古の畏れさんを呼び出したっていう話は、そういえば聞いたことがない気がする」)
山田・透流(自称雷神の生まれ変わり・d17836)は、会話が出来ないならスサノオとの意思疎通は難しいだろうと思案する。
灼滅者が警戒する中、遠くから小さな影が疾走してくる。
「グルル……」
「見えた、スサノオが来たようだ」
椿姫の視線の先には疾走して来る灰色の獣の姿。それは全長2メートル程の狼だった。
「ウォォォンッ!」
立ち止まったスサノオが咆える。それを見て灼滅者達は一斉に行動を開始した。
●6分の死闘
「往くぞ! 古の畏れを呼び出す前にしとめるのじゃ」
赤いドレスを身に纏った風香は、折りたたんでいたライフルを展開し銃口を獣に向けた。ピタリと銃口が止まった瞬間、引き金を引く。放たれた光線がスサノオの体を照らし、貫いた。
「ギャンッ」
突然の攻撃を受けたスサノオは仰け反って周囲を見渡す。
「まずは先制攻撃だ、行くよ!」
そこへ殊亜とライドキャリバーのディープファイアが仕掛ける。殊亜が槍を振るい、放たれた氷柱がスサノオの足を撃ち抜く。動きが僅かに止まった隙をキャリバーが突進して撥ね飛ばした。
「こいつが本体か……何の為に動いてるかは判らないけど、ここで終わらせる」
エリアルも続けて槍を突く。穂先から放たれた氷柱がスサノオの顔に向かって飛ぶ。
「グルゥァッ」
その氷柱をスサノオは大きく開けた口で噛み砕いた。
「時間はかけねぇぜ!」
白と青のバトルコスチュームに変身し、火水は突進する。その足元から伸びる影がスサノオの足に絡み付く。
「ガァッ」
スサノオは構わず跳躍して爪を振るい、火水の肩を切り裂く。
「他の連中と違う事をするのは不安もあるっス、でも、やると決めた以上はやり遂げるっスよ」
美潮は気合を入れ、すっと背筋を伸ばして弓を引く。放たれた矢は傷ついた火水に当たり、体内に吸い込まれるように傷ごと消えてしまう。
「燃え咲かれ、我が焔!」
スサノオが地面に着地する瞬間を狙い、花梨が槍を突き出す。スサノオは爪を振るいそれを弾いた。
「今です!」
「承知、これで吹き飛べ!」
スサノオが槍を弾いて出来た隙を突き、椿姫がエネルギーの盾を構えて突っ込み勢いのまま体当たりするように盾をぶつけた。
「ギッ」
吹き飛ぶスサノオは地面を転がって体勢を立て直す。
「鬼さんこちら、といったところか」
椿姫が見下ろして挑発すると、スサノオは大きく口を開けて上を向いた。
「アォォォォォン!」
遠吠えが町中に響く。その声は椿姫と近くに居た美潮とイルマの動きを封じる。そこへ向けてスサノオが駆け出す。だがその出足を挫くように氷柱が前足に撃ち込まれた。
「古の畏れさんの力をコピーし続けることになにか意味があるんだったら、私の力もコピーしてみるといい」
槍を構えた透流が続けて氷柱を放って牽制する。スサノオはジグザグに動いてそれを躱す。
「祝福よ、この戒めを祓い給え」
その間にイルマが剣を掲げると、青白く光る剣から風が吹き抜ける。すると遠吠えの呪縛が解けた。
それと同時に、電子音が鳴り響く。それは1分経過を告げるアラームだった。
「6分耐え切るゲームってのも燃えるね。来い!」
「グルル……」
ジグザグに駆け寄るスサノオを殊亜が迎え撃つ。鋭い牙を突き立てようとする一撃を槍で受け止める。そして炎を宿して押し返した。だが離れ際に伸びた爪が殊亜の腕を斬りつける。
「くっ!」
更に振るわれる反対の爪をキャリバーが車体で受け止める。
「何が目的なのかは知らぬが、好きにはさせんのじゃ!」
風香は緋色のオーラを纏ったライフルの銃身でスサノオの爪を弾き、返す一撃を背中に叩き込んだ。
「たのむぜ、無理してんだからなんか見せてくれよ」
スサノオの動きを観察しながら呟く美潮は、傷ついた殊亜に向けて矢を放ち、傷をすぐさま塞いでみせる。
「オォォン!」
スサノオが素早く回り込もうとする。だがその足元を影の刃が襲い、スサノオは飛び退いて避ける。
「このまま追い込む」
透流が影を操りスサノオの動きを制限するように攻撃を繰り出す。スサノオはそれを跳躍してやり過ごした。
「隙を見せたね!」
そこへ間合いを詰めていたエリアルが斧を振り抜く。その刃がスサノオの胴体を叩き斬る。
「ギフゥッ」
深い傷を負って吹き飛ぶスサノオは空中で回転して着地する。傷から溢れる血が美しい灰色の毛並みを赤く染めていく。
好機と火水が全力で踏み込む。
「グオオォ!」
スサノオは大きく咆えながら跳躍した。火水の被るヘッドギアにスサノオの牙が突き刺さる。その先端が額を掠めて血が頬を伝う。
「上等! 無茶は承知の上だ!」
だが火水は避けようともせずに斧を振り抜いた。近すぎる為刃は根元が浅く入っただけだが、力任せに振り抜き柄をぶつけて地面に叩き落した。
「花梨姉さん」
「ええ、行きますよ」
椿姫はビームを放つ。その光から逃げようとしたスサノオに、花梨は炎を纏った槍を突き刺した。動きの止まったスサノオの体をビームが貫く。
「キャンッ」
スサノオは悲鳴を上げながらも、その爪を振るって花梨に反撃をする。それを霊犬のコナが割り込んで代わりに受ける。
2度目のアラームが鳴った。
●手負いの獣
「時間も減ってきてる、一気に行くぜ!」
火水が斧を構えて駆け寄る。その時、スサノオが咆えた。
「ワンワンッ」
構わず火水が斧を振り抜こうとした瞬間、その腕を鞭のように伸びた影が絡め取る。
「イルマさん頼む!」
「了解した!」
殊亜の指示にイルマが霊光を放つ。光が火水を包む。すると火水の目の前にはスサノオではなく殊亜が居た。
「な!?」
驚く火水は慌てて斧を下ろす。見ていたのは幻覚だったのだ。
「その攻撃、あの時の雀のものか……!」
忌々しそうにエリアルは影を解きながら呟く。スサノオはその間に間合いを詰め、縦横無尽に爪を振るう。
キャリバーとコナが攻撃を受ける。勢いを持った一撃に、体を深く刻まれ薙ぎ倒された。それでもスサノオは止まらない。
「まだまだ……倒れるまで受けきるよ!」
殊亜はそれを槍で受け止める。幾度も迫る爪に傷つきながらも仲間へと届かせない。スサノオは押し切ろうと速度を上げる。
「そうはさせんのじゃ!」
風香が歌う。その歌声はスサノオを惑わし、爪の軌道が逸れた。そこへキャリバーが機銃を撃ち込む。
「その動きを封じる」
透流は縛霊手をスサノオの腹に叩き付ける。同時に腕から放たれた霊糸が絡みつきその四肢の動きを鈍らせる。
「厄介な相手ッス」
美潮は剣を振るい風を起こす。その風は傷ついた殊亜を中心に渦を巻き仲間の傷を癒していく。だが幾度も攻撃を受けた傷は治りきらない。
スサノオはまた咆えようと口を開く。
「催眠を止めます!」
花梨は杖に魔力を込めてスサノオの顔面に叩き付ける。
「フギッ」
スサノオの口から息が漏れ動きが止まる。
「このまま何もさせん、一気に追い込むとしようか」
椿姫が素早く回り込み、手にした歪な刃のナイフを振るう。その一撃はスサノオの傷口を広げて深く刻まれる。
3度目のアラームが響く。
「残り半分だよ!」
殊亜が炎を纏わせた槍を振るいながら皆に声をかける。それぞれの顔に鋭い気迫が宿った。
スサノオは槍の一撃が掠めて皮膚を焼かれながらも、喉笛に噛み付こうと口を開けて迫る。その牙の前に火水が腕を差し入れた。オーラを貫き腕に牙が刺さる。
「奴奈川ダイナミック!」
痛みを無視して持ち上げると思い切り地面に叩きつけた。
「ギヤッ」
衝撃に噛み付いた力が弱り、スサノオは叩きつけられた反動で跳ね上がる。
「一気にいくのじゃ!」
そこに風香が跳び上がり、上段から銃身を振り下ろした。緋色のオーラを纏う一撃はスサノオの骨を砕き地面に打ち下ろす。
「時間も少なくなってきました。もふ……灼滅してしまいましょう!」
(「もふりたいんだな。だが我慢だ花梨姉さん」)
花梨の足元から少女の形をした影が現われ、スサノオを斬りつける。続けて椿姫がナイフでその傷口を抉る。
「アォン!」
スサノオは怒り狂うように牙を剥く。だがそこへ透流が氷柱を撃ち込んだ。
「そのまま氷漬けになれ」
続けて放つ氷柱をスサノオは何とか避けると、口を開けて声を出そうとした。しかし目の前にはエリアルが斧を構えていた。
スサノオは飛び退こうとする。だがその前足を矢が貫き、更に後ろ足が影に斬りつけられていた。
「逃して恥っかきにゃなりたくねぇッスから」
「そのまま動くな」
スサノオが振り向くと、そこには弓を構えた美潮と影の獣を従えるイルマがいた。
「その声は不快だよ、口を閉じてて貰おうか」
エリアルが横に振り抜いた斧が顔を襲う。スサノオは咄嗟に頭を下げる。びちゃりと地面に血が散る。見れば左の耳が千切れていた。
「オォォォォンッ!」
4度目のアラームが響く。
●スサノオ
スサノオは泥と血で全身がボロ雑巾のように汚れていた。度重なるダメージの所為で動きも精彩を欠き始めていた。このまま押し切れる。皆がそう思ったその時。
「アオオオオン!!」
高く遠吠えを発す。近くに居た灼滅者の動きが僅かに止まった瞬間。スサノオは走り出す。それは灼滅者の横を抜け町の物陰へと逃げる道筋。
「スサノオさんがそっちに行ったよ!」
オーラを撃ち込んで方向を変えさせた透流の声に、建物の陰に隠れていた者達が現われる。
「ここは任せてなの」
「こちらも仕掛けます」
琥珀が近寄らせないように弾幕を張り、続けて悠仁も攻撃を仕掛ける。
「透流ちゃん、こっちは大丈夫です」
「透流殿、ここは任せるでござる!」
芽衣子とブレイブが左右から加わり、スサノオの足が止まる。
「みんな、今だ!!」
「了解だ」
久良の声に反応し、アルディマを先頭に仲間達が一斉に攻撃を行なう。するとスサノオは被弾しながらも方向転換して逃げ出す。だがそこにも灼滅者が立っていた。ぐるりと首を回すと、いつの間にか周囲を囲むように、数え切れぬ灼滅者達が包囲網を完成させていた。気取られぬよう離れて隠れていたのだ。何とか包囲を突破しようとスサノオは駆ける。
「見学だけではすまないようですね」
「ここから先には一歩も進ませないわ」
絶奈が剣を構えると、隣に並んだ山吹も拳を握る。迫るスサノオの爪を受け止める。そこに颯音、煉、連理が攻撃を仕掛けると吹き飛ばされて地面を蹴った。
「逃がさないよっ」
そこへ和平が攻撃を加え、続いて淼、一葉、黒那、焦、弥太郎が攻撃を加える。スサノオの皮膚が傷つきふさふさだった毛が抜けていく。
「絶対に逃さんのじゃ!」
風香の撃った光線がスサノオの目の前を横切る。それを見て思わずスサノオは足を止めた。
「出し惜しみは無しだ、全力でぶちかまそうぜ風香!」
「うむ、全力でぶちかますのじゃ!」
矜人が援護を行なうと、風香が接近して銃身を振り抜く。スサノオが紙一重で躱した瞬間、引き金を引いた。閃光が0距離からスサノオを貫く。
「ここで仕留める!」
イルマが全力で接近する。
「イルマさん後ろは任せてください」
「お手伝いするよん」
優歌と光はその背後を守るように援護攻撃を行なうと、イルマの剣が振り抜かれる。刃は傷ついたスサノオの体に深く喰い込む。
「グルゥゥォ」
スサノオは興奮して暴れる。近くに居る敵を爪で牙で傷つけていく。
「逃げたいなら、俺を倒してからにするんだね」
それを殊亜が受け止めた。スサノオの牙を影の幻獣が受け止める。そこへジョージは狙いを定めて魔弾を撃ち込む。すると宙に投げ出されたスサノオ向けて新、寵、ミリー、境月、エールが一斉に仕掛けてスサノオの命を削っていく。だがスサノオも負けじと一撃食らう度に反撃して敵を傷つけていく。
「守りを強化します」
アウグスティアが盾を展開する。
「俺達はサポートに回る。キツイのを喰らわせてやれ!」
「背中は任せてね!」
空是、朔和、忠継、奈々、千波耶が敵の動きを封じるように攻撃を加える。
「自分が矢面に立てねーってのは焦れるね。けど仕事ッス、支えてやるからやっちまえ」
そんな仲間に向けて美潮が剣から癒しの風を送って支える。続けて瑠璃羽、アルテミスも回復を手伝いスサノオの猛攻を凌ぎきる。
スサノオの背後に火水は駆け寄る。勢いを殺す事無く走り抜けながら斧を薙いだ。しかしスサノオはそれを避けると反撃の爪を火水の腹に抉り込む。
「ぐぅ……痛く、ない!」
気合で堪えると火水は爪を掴んで抜き、スサノオの体を宙に投げた。そして斧をバットのように構えるとフルスイングする。その豪快な一撃はスサノオの足を切り落とし腹を抉った。
「キャンキャンッ」
スサノオは着地すると同時にウサギ、ホワイト、リケ、源治、力丸、萌愛、クリスティーネに囲まれて猛攻を食らう。
「こちらで治療を行ないます」
「すぐに治療しますね」
誘薙と静佳がすぐに腹に開いた傷を塞ぐ。
一つ足を失いながらも、スサノオはまだ諦めない。何とか逃げようと跳躍した。
「易々と逃げれると思うなよ」
「ここは通さないさねぇ」
流希とルナの迎撃で打ち落とされる。
「そらぁ!逃がさねぇぞ!」
猛がその隙を狙う。
「絶対に逃がさないですよ」
「折角尻尾を掴んだんだもの、ここで逃がしたりしないわ」
マギと栞もそれに続く。
「おいで、きしめん」
地上を走ろうとすると小次郎が霊犬と共に道を塞ぐ。更に蛇目、啓、蓮二、イブも囲むようにして逃走経路を潰していく。スサノオは踵を返す。だがそこにも既に灼滅者が居た。
「貴方たちは攻撃に集中なさってください、ここは私が……!」
菊乃は休まずに治療を続ける。
「すないね、こっちは通行止めだ」
拓馬が攻撃すると、スサノオは姿勢を低くして避ける。
「俺が護りたい女の子が3人も戦っている。なら俺の役目は決まってる!」
ミストは気合を入れてスサノオを迎え撃つ。
「見知った人が居る訳じゃないけど……」
スサノオは逃がしたくないとシスティナも攻撃する手を休めない。
「臨機応変に、だねっ」
セトラスフィーノは一般人に被害が出ないよう、人の居る道筋に立つ。
「こっちです」
夕月がスサノオの向かう方へ攻撃を仕掛ける。
「支援を行ないます!」
「支援は任せて」
空と謡は傷つく仲間を休む間もなく治療していく。
「やれるだけのことはやります!」
詞水、九白、誘薙、シェレスティナも手伝い、受けたダメージをすぐさま治療していく。
「おい行くぜ!」
「俺等の網に掛かったら逃げられねェぜ?」
葉と錠は息の合ったコンビネーションでスサノオの動きを止める。続いて隠れた場所からシュヴァルツが敵を封じる結界を張る。
「アオオ……」
スサノオが咆えようとした時、その頭部に一本の槍が飛来して貫いた。
「言っただろ、その声は不快だってね」
エリアルが投げた槍はスサノオの下顎を消し飛ばした。
「これで決めます!」
「止めだ!」
花梨の槍が胴体を貫くと、身動きできぬところへ椿姫がナイフを突き立てた。
「ガァァァッ……」
苦しみながらスサノオは消えていく。
「特別何か情報は無かったッスね。でも何も無いって事は作戦が上手く行ったって事なのかもしれないッス」
観察を続けた美潮は疲れたように空を見上げる。その時6度目のアラームが鳴った。
うどん屋から暖かい湯気が漏れ出る。灼滅者達はその香りに緊張を解き、一息吐くのだった。
作者:天木一 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年3月27日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 10/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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