レムレース・カルブンクルス(吸血コスプレメイド・d17230)は、こんな噂を耳にした。
『ロマンスグレーのおじ様が、奥様方を虜にしている』と……。
都市伝説が確認されたのは、閑静な住宅街。
この辺りは専業主婦が多いため、石を投げればセールスマンに当たると言われるほど。
そんな中、現れたのが、ロマンスグレー系オジサマ都市伝説であった。
都市伝説は言葉巧みに奥様方のハートをゲットし、骨抜き状態にしているらしい。
その被害は増える一方。
都市伝説に誘惑されると、旦那にまったく魅力を感じなくなり、歩くATM程度にしか価値を見出す事が出来ないようである。
そのため、家事や洗濯、育児までも馬鹿らしくなり、涅槃像の如く横たわってテレビを見る主婦や、『トシさま』と呟きながら朝から晩まで妄想全開。
それが原因で夫婦喧嘩が絶えないようである。
中には、『そんなヤツ、俺がぶっ殺してやる!』と粋がる旦那もいるようだが、都市伝説にあった途端にメロメロ。
奥様と一緒に『トシさま、最高!』と、妙な世界に酔いしれる始末。
そんなこんなで都市伝説のファンクラブが出来ているため、都市伝説を見つける事自体はそれほど難しくない。
ただし、都市伝説はその溢れんばかりの魅力で、奥様方を誘惑して自分の身を守り、その場から華麗に逃げようとするので注意が必要である。
参加者 | |
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艶川・寵子(慾・d00025) |
瑠璃垣・恢(崩壊症候群・d03192) |
三島・緒璃子(稚隼・d03321) |
鈴木・総一郎(鈴木さん家の・d03568) |
成瀬・圭(影空ハウリング・d04536) |
リーファ・エア(夢追い人・d07755) |
レムレース・カルブンクルス(吸血コスプレメイド・d17230) |
ペペタン・メユパール(悠遠帰郷・d23797) |
●ロマンス通り
「ロマンスグレーのおじさま……すてきね。でも、酒浸りでお腹のぼよよんって、垂れてるおじさまも嫌いじゃないわ! 怠惰な生活と性癖が育んだ、たわわな我儘ボディも、それはそれで趣があるわね。もちろん、小奇麗なおじさまだって大好物よ。そんなナイスガイに耽溺する奥様方にだって萌え萌えするわ! 偶像(アイドル)に耽溺する奥様と、もみくちゃぷれい……楽しいわ!」
艶川・寵子(慾・d00025)は妄想を膨らませながら、都市伝説が確認された住宅街に向かっていた。
この場所はいつの頃からか、ロマンス通りと呼ばれているらしく、古き良き昭和の香り漂うお洒落な場所へと変貌を遂げていた。
すべては都市伝説のため。
都市伝説に気に入ってもらい、都市伝説が来るのに相応しい場所にするためのようである。
「それに、渋いオジサマと古風なメイドの組み合わせって絵になるよねー? あれ? 目的が違う?」
レムレース・カルブンクルス(吸血コスプレメイド・d17230)が洋風メイド服姿で、不思議そうに首を傾げた。
一応、都市伝説の雰囲気に合わせて、古風で品のあるメイド服を選んでみたが、何か違う。
まわりを見れば、ご近所の奥様達が無駄に高そうなドレスを着込んで、何処かに向かっていた。
その場所が何処なのか分からなかったが、可能性的に考えて都市伝説のいる場所に向かっているのだろう。
「あ、でも歩くATMって言うのは素敵な響きかもですね。一台欲しいです、歩くATM。じょ……、冗談ですよ?」
リーファ・エア(夢追い人・d07755)がまわりの空気に気づき、小さくコホンと咳をした。
それは都市伝説に魅了された奥様達と同じ思考。
奥様達は、炊事、家事、洗濯、子育てを一切やらなくなってしまい、旦那をATM代わりにしか見なくなってしまうようである。
そのため、夫婦間でのトラブルが絶えなくなり、場合によっては泥沼の裁判にまで発展しているようだ。
「歳ゆえの渋さとかそういうのがあるんだろうか。俺には全く理解できない世界だね」
瑠璃垣・恢(崩壊症候群・d03192)が、やれやれと首を横に振る。
それにしても、変な依頼である。
一体、どんな噂が元になったのか、何故こんな噂が広まってしまったのか、考えれば考えるほど謎が深まった。
「これって、アレだろ。男には自分の世界があるとかそういうの……。喩えるなら空を翔る一筋の流れ星とか、そういうの。まあ、渋さより若さで勝負だよな、オレらは……」
成瀬・圭(影空ハウリング・d04536)が、なんとなく答えを返す。
よく分からないが、つまりそういう事なのだろう。
だが、それを理解するだけの時間はない。
ならば、別の方向から都市伝説に仕掛けるのみである。
「そもそも、何でこげん都市伝説が生じたんかの……。誘惑するらしいけん、淫魔でも出たかち思うたが……」
三島・緒璃子(稚隼・d03321)が、どこか遠くを見つめる。
しかし、都市伝説は誘惑するだけ。
別に何かを望んでいるわけではない。
それでも、奥様方が色々と貢いでしまうのは、それだけ魅力があるという事なのだろう。
「確かに、どんな噂が都市伝説化したらこうなるんだろうね? ……とは言え、こういうロマンスグレーって慇懃ながらお高くとまってる感じがして好きじゃないなぁ」
鈴木・総一郎(鈴木さん家の・d03568)が、げんなりとした。
奥様方の反応を聞く限り、総一郎が心配しているようなタイプではなさそうだが、例えそうであったとしても、好きになれないというのが本音であった。
「どちらにしても、人気である事は紛れもない事実よ。その証拠にほら、あんなに沢山の人達が……」
そう言ってペペタン・メユパール(悠遠帰郷・d23797)が、目の前の一団に視線を送る。
その中心にいたのは、奥様方に囲まれ、困った様子で笑顔を浮かべる都市伝説であった。
●黄ばんだ声
「なんか……、弱そう」
仲間達と物陰に隠れていた緒璃子は、都市伝説の第一印象を口にした。
見るからに紳士ではあるが、すらりと伸びた長身であるためか、とても弱そうに見えた。
「ワイドショーを見ているような女性達が、ロマンスグレーの紳士に集う様子は、学生から見ていると退屈の一言に尽きる、というのだけは、よくわかった気がする」
恢がつまらなそうに溜息を洩らした。
一体、何が楽しいのか分からない。
都市伝説のどこが魅力的なのかも。
それでも、奥様方のハートをガッチリ掴んでいる事は間違いないらしく、みんな瞳にハートマークを浮かべていた。
「あー、なんかどうでもいいけど、すげー殴りてえ。……っていうか、なんだ? なんなんだ? こう、見てると無性に腹が立ってくるんだよ、こういうの。わっかんねぇかなあ、わっかんねえだろうなあ」
圭はメキメキと腕を鬼化させながら、拳を激しく震わせた。
殴りたい、とにかく殴りたい。
殴らせてもらえるのであれば、いますぐダッシュでフルボッコ!
「まぁ、あれだね。確かに、ちょっとムカツクよね」
総一郎が苦笑いを浮かべる。
まわりの奥様方は気づいていないが、都市伝説の笑顔があからさまに胡散臭い。
そのため、圭もヤル気満々!
「おい、成瀬、まだ早い。殴るなら始まってからにしなよ」
恢が警告混じりに呟いた。
圭も納得した様子で、荒ぶる腕を宥め始めた。
「……とは言え、奥様方の欲望にきらめく瞳がとってもキュートだわ! 世代年齢に関係なくきらめく欲望って本当にステキ!! 何年たってもハートの奥にボーイ&ガールを隠し持ってるのね! 滾るわ! 近くで見ても遠くで見ても素敵よ、都市伝説さん! 奥様はおろか旦那様までも魅了するところなんかも素敵!」
寵子がウットリとした様子で、都市伝説に迫っていく。
まるで催眠状態に陥っているように。まるで都市伝説の虜になってしまったかのように。それがただの演技であると、都市伝説に気づかれないように。
「ま、迷惑になっとぉのなら止めねばいけん。夫婦の不和は家庭崩壊の第一歩、ってね」
そう言って緒璃子も魅了されたフリをして、ふらふらと都市伝説に近づいていく。
「トシさま、最高!」
リーファも緒璃子達の後に続く。
都市伝説もまんざらではない様子で、リーファ達を迎え入れた。
「そこのおられるのは、もしかしてご主人様ですか? お探しして居りました」
レムレースが感動した様子で、ラブフェロモンを使う。
まわりの奥様達も『独り占めはいけませんわ』とばかりに、都市伝説の身体に纏わりついた。
「やれやれ、これは困ったな」
都市伝説がまんざらでない様子で、苦笑いを浮かべた。
「あら、とっても人気なのね。『トシさま』? お相手くださいね」
ペペタンがぽやぽやとした様子で、都市伝説に微笑んだ。
「やっぱり、弱そう」
緒璃子が確信した様子で、殺界形成を発動させる。
その途端、奥様達が『そういえば、ご飯を作らなきゃ』、『あたしは犬の散歩を』と言って、都市伝説の傍から離れていった。
「こ、これは……一体、何が起こっているというのだ!」
都市伝説が唖然とした表情を浮かべる。
今までに経験した事のない感覚。あってはならない事。
それと同時に襲ってきたのは、まるで漆黒の闇の如く全身を覆う……孤独感であった。
「あ、ありえない」
都市伝説が悔しそうに唇を噛み締め、拳をぶるりと震わせた。
●都市伝説
「き、君達は私のファンじゃないのか!?」
都市伝説は明らかに取り乱していた。
それだけ、都市伝説にとっては、受け入れ難い事実であったのだろう。
「僕のご主人様は他に居るもんね♪ ……という事で、さよーなら―☆」
レムレースが都市伝説に別れを告げる。
だが、都市伝説に反撃の術はない。
強力な催眠によって操ろうとしても、まったく効果なし。
都市伝説はさらに焦った。
今まであった事もないタイプの相手を前にして。
「これはメロメロの気魄!」
その間に寵子が間合いを詰めて、都市伝説に鬼神変を叩き込む。
「ぐっ! ぬおおおおおおおおおお」
都市伝説が悲鳴を上げた。
傷口から噴き出した大量の血が、雨となって辺りに降り注ぐ。
「悪気はなかったのかも知れませんが……。それでも、やっていた事を考えると、放ってはおけませんね」
そこに追い打ちをかけるようにして、リーファがクルセイドスラッシュを仕掛ける。
「ま、待つんだ、君達! 君達は何か誤解をしている。そ、そうだ。話し合おう」
都市伝説が傷口を押さえて立ち上がる。
「……それは無理じゃ」
緒璃子がさらりと答えを返す。
例え、ここで話し合ったとしても、結果は同じ。
相手が都市伝説である以上、倒さなければならないのだから……。
それと同時に霊犬のプロキオンが、都市伝説の喉元に食らいつく。
都市伝説はプロキオンの体を押さえるのが、やっと。
「はい、トシさま、ちょっと大きいのいくわよ」
その間にペペタンがナノナノと連携を取りつつ、都市伝説に攻撃を仕掛けていく。
だが、都市伝説に身を守る術はない。
彼を守ってくれるはずの奥様達も存在しない。
「とりあえず、何の恨みもないんだけど……」
圭が物凄い勢いで殴った。
あまりにも激しい攻撃に、プロキオンが身の危険を感じて飛び退いた。
「こ、こら! やめたまえ!」
都市伝説が叫ぶ。
それでも、圭は殴った。
殴って、殴って、殴りまくった、なんとなく。
「一昔前の言葉で、そのキレイな顔をフッ飛ばしてやる! ……っていうのかな」
次の瞬間、総一郎がライドキャリバーに乗ったまま突っ込み、都市伝説にトドメをさした。
途端に都市伝説の断末魔が辺りに響く。
「本当に変な依頼だったな」
恢が深い溜息を漏らす。
都市伝説が消滅した事によって、あたりの空気が一瞬にして変わった。
まるで先程まで漂っていた霧状のものが、跡形もなく消え去ってしまったかのように……。
「そろそろ、みんな妄想から覚める時ね」
ペペタンがゆっくりと辺りを見回した。
我に返った奥様達は一体、何を思うのか。
悪い夢を見たと思うのか。
それとも、良い思い出として、胸の内にしまっておくのか。
ペペタンには分からなかった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年3月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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