殺人ビルの脱出ゲーム

    作者:刀道信三

    ●オフィスビル1F
    『もう確認されていると思いますが、このビルから出ることはできません』
     週末の閑散としたオフィス街にある20階建てのビルの1階エントランスホールには、十数名の一般人達が集められており、スピーカーからは少年の声が聞こえる。
     入口も窓も何かに阻まれているように出口として使うことができなかった。
    『このビルから出られるのは一人だけです。脱出方法は屋上に用意してあります』
     その声の直後1階のエレベーターホールに一斉にエレベーターが降りて来て開く。
     中には週末にもかかわらずこのビルにやって来ていた一般人達の死体の山。
     それを見た者達から悲鳴が上がると同時にエレベーターが内部から爆発炎上、爆音が響き渡る。
    『大変だと思いますが、屋上までは階段で昇ってきて下さい。あとこのビルの屋上に続く扉の鍵と爆弾がこのビルには隠してあります』
     悲鳴を上げる者、嘔吐する者、錯乱する者もいるが、目の前で起こっている異常事態に対して集められた一般人達の反応は比較的冷静なように見える。
    『制限時間は24時間、一斉に爆弾が爆発して誰も助かりません。繰り返しますが、脱出できるのは一人だけです』
     まあ、爆弾はビルを倒壊させるためというよりは金属片をバラ撒いて人を殺すタイプのものなんだけどね、と少年は心の中で付け足した。
    『私達は本気です。それでは皆さんの健闘をお祈りしています』
     それだけ言い残すと少年は閉鎖空間から去って行った。
     十数時間後。
    「何だ。パラシュートもヘリコプターも何もないじゃない……」
     血塗れの少女が何もないビルの屋上に立っていた。
     最初は集団行動に従う振りをして、二人きりになった相手を背後から刺し殺した。
     最後の方は相手が大人の男の人でも正面から殺すことが出来た。
     新たな六六六人衆となった少女は、磨り減って既に何者でもないダークネスとなっていた。
     脱出方法、ダークネスである彼女にとってもうビルの屋上から抜け出すことは造作もないことだった。

    ●武蔵坂学園の教室
    「あの、お願いがあるんです……」
     園川・槙奈(高校生エクスブレイン・dn0053)は放課後教室に集まった灼滅者達を前におずおずといった様子で切り出した。
    「みなさんはもう『縫村委員会』という新たな六六六人衆を生み出す儀式をご存知でしょうか?」
     灼滅者達の活躍で、多くの六六六人衆が灼滅された事で、それに危機感を覚えたのか、縫村針子とカットスローターという2体の六六六人衆が、新たな六六六人衆を生み出すための儀式を行っているらしい。
    「儀式の内容は、閉鎖空間で殺し合いをさせられた一般人が、六六六人衆となって、閉鎖空間から出てきてしまうというものです」
     この儀式によって生み出された六六六人衆は、完全に闇堕ちしており救うことはできない。
    「閉鎖空間から出てきたばかりの六六六人衆は、ある程度ダメージを受けていて、配下も連れていません」
     強力なダークネスであるのは間違いないが、万全な状態で対峙するよりは、灼滅する好機であると言えるだろう。
    「この儀式によって生み出される六六六人衆は、六六六人衆の中でも残虐な性質を持つようになるそうです」
     ここで灼滅する事ができなければ、大きな被害を出してしまうだろう。
     それを防ぐためにも、確実に灼滅するべきだろう。
    「この儀式で六六六人衆になってしまう人は、もともとは内向的な女の子だったみたいなのですが、儀式での殺し合いを経て、人殺しの技術を磨くことを楽しむような六六六人衆になってしまうようです」
     六六六人衆は万全な状態から三割ほどのダメージを受けているが、武器やサイキックなどを使って普通に戦闘できるだけの能力を持っている。
    「六六六人衆と接触できる戦場は二つあります」
     ひとつは閉鎖空間が解けた直後のビルの屋上。
    「ただ閉鎖空間が解けるまでビルの中に入れないので、閉鎖空間が解けるタイミングに屋上で接触するには、何か工夫する必要があります」
     閉鎖空間が解けた後でビルの階段を昇っては六六六人衆と行き違いになってしまう。
     屋上で戦闘が始まってしまえば、六六六人衆は屋上から逃げることはないので、あとから階段で屋上に昇って合流することもできる。
    「あとは六六六人衆が降りて来る場所も未来予測でわかっています」
     そこで待ち伏せをすれば、最初から全員で六六六人衆と戦闘を開始することができる。
    「ただそちらの戦場は入り組んだ夜のビル街で、六六六人衆が戦況を不利と判断した場合、逃げられてしまうかもしれません」
     一度六六六人衆が夜闇に紛れて逃走に成功してしまえば、追跡することは不可能だ。
    「儀式によって強制的に闇堕ちさせられてしまったのは可哀想ですが、完全に闇堕ちしてしまっている以上、彼女の中にもう元の人間としての魂は残っていません。そうである以上、これ以上彼女の体で六六六人衆が殺人を繰り返してしまう前に、みなさんの力で灼滅してあげて下さい……」


    参加者
    風真・和弥(壞兎・d03497)
    天槻・空斗(焔天狼君・d11814)
    星陵院・綾(パーフェクトディテクティブ・d13622)
    月村・アヅマ(風刃・d13869)
    ベリザリオ・カストロー(罪を犯した断罪者・d16065)
    難駄波・ナナコ(クイーンオブバナナ・d23823)
    川原・香代(虚ろなる・d24304)
    宇佐・紅葉(紅蓮浄焔・d24693)

    ■リプレイ


    「中に入れないなら外から、ってね」
     難駄波・ナナコ(クイーンオブバナナ・d23823)は仲間達と一緒に夜のビルを壁歩きで登って行く。
     どうやらビルの外壁までは閉鎖空間の中にはなっておらず、壁伝いに屋上を目指すことは可能なようだ。
    「生き延びさせる為に他を全部殺す……ね、色々間違ってるけど合理的ね。自分の命かかってるならそりゃアタイだってそーする、死にたくないもんね」
     誰だって自分の命は惜しい。
     屋上に現れる六六六人衆の少女が傷を負っていることから、彼女一人が他の一般人達を一方的に殺していたわけではないのだろう。
    「これで何件目ですかしら? 少なくとも暗殺ゲームで減った以上の数にはなっているはずですわ。一刻も早くこの悪趣味な委員会を潰したいものですわね」
     ベリザリオ・カストロー(罪を犯した断罪者・d16065)も憂いげな表情でありながら優美な足取りでビルの壁面を歩いていた。
     組織的な行動をあまり取らない六六六人衆ではあるが、欠員が出ればこのような手段で補充されたのでは堪ったものではない。
    (「縫村委員会……巻き込まれた人達は助ける術も無し、か。くそ、六六六人衆ってのはなんでこう……!」)
     月村・アヅマ(風刃・d13869)は内心で憤りながら、今にも駆け出してしまいそうな歩調で屋上へと向かう。
     このビルに集められた一般人達、このビルに偶々居た一般人達、そして六六六人衆になってしまう元一般人の少女、誰もがただ巻き込まれただけだ。
    「罪もない人々を殺し合わせて六六六人衆を作り出す儀式。何ともやるせないですね……最後に生き残った彼女も犠牲者なのでしょうが、ここで見逃してはまた新たな被害につながります。何としてもこの場で決着をつけましょう!」
     まだ閉鎖空間の解けていない屋上の縁、そこに身を潜めながら星陵院・綾(パーフェクトディテクティブ・d13622)は現状を整理するように言葉にしながら仲間達と自分自身を激励するように声を掛ける。
    「何だ。パラシュートもヘリコプターも何もないじゃない……」
     扉が開く音がし、少女の呟きが風に乗って聞こえてくると同時に閉鎖空間が解除される。
    「目覚めろ。疾く翔ける狼の牙よ。吼えろ、焔天狼牙」
     スレイヤーカードから両刃の大剣、焔天狼牙を取り出しながら天槻・空斗(焔天狼君・d11814)は屋上へと躍り出る。
    「ま、逃がすつもりもないし……境遇に同情するつもりも無いんだな……これが」
     空斗は焔天狼牙の刃で親指の皮膚を切ると、流れ出す血を手を振るって撒き散らし、クリエイトファイアによる炎で六六六人衆の少女を取り囲んだ。


    「ヒトの頃の彼女に殺されたのでしょうか」
     閉鎖空間が解けると同時に川原・香代(虚ろなる・d24304)は地上に残った仲間達と一緒にビル内に突入し、急ぎ屋上に向かって階段を駆け昇っていた。
     その道中、特に階段の踊り場などにはポツポツと死体が転がっている。
    「……極限状態で自分が生き延びる為に他者を殺す、というのは否定までは出来ないな。もし俺が同じ立場ならどうしてただろうな……?」
     惨状を目の当たりにしながら風真・和弥(壞兎・d03497)は足を止めることなくそう呟いた。
     六六六人衆となった少女はあくまで最後の生き残りであり、このビルの中で行われていたのはおそらく殺し合いだったのであろう。
    「こんな蠱毒みてえな胸糞悪い事までして闇堕ちさせたいのかよ、縫村委員会とかいうクソ共は……アイツも、暫く前までは普通の人間だったのに……!」
     儀式の現場であったビル内を走る宇佐・紅葉(紅蓮浄焔・d24693)の目にはどうしてもその凄惨な儀式の名残りが目に留まった。
     香代、和弥、紅葉の三人は一刻も早く屋上の仲間達と合流すべく先を急いだ。
    「残念、ゲームはまだ続いているのよねぇ」
     そう言いながら空斗に続きナナコも屋上に着地する。
    「えっ……あ、それで屋上にまだ何もないとか……?」
     六六六人衆の少女は視線を合わせることを避けるように少し俯きながら身を縮こまらせた。
    「初めまして、探偵の星陵院と言います。よろしければお名前をお聞かせ願えませんか? 六六六人衆さんでは味気ないですし」
     少しでも合流までの時間を稼ぐため綾が六六六人衆の少女に話し掛ける。
    「わ、私の名前は……小春、佐藤小春です……」
     おどおどして気の弱そうな様子で六六六人衆の少女改め小春は綾の質問に素直に答える。
    (「彼女は本当に灼滅すべき存在なのか……?」)
     未来予測では彼女は完全に闇堕ちしており、彼女を救う術はないと言われていた。
     彼女が巻き込まれた被害者であるという境遇から若干の迷いを持っていたアヅマは注意深く彼女を観察する。
     血痕に汚れた眼鏡は街灯りに反射して俯いた彼女の表情を隠していた。
    「…………!」
     しかし臆病そうに振る舞っている彼女の両手は後ろ手にしっかりと血塗れのナイフと注射器を握っていた。
     アヅマは帽子を被り直すと灼滅対象として彼女を見据える。
    「あーあ、上手く騙せれば一人くらい殺せると思ったのに」
     その声はアヅマの隣から聞こえてきた。
     アヅマの殺気に反応した小春と名乗った六六六人衆は、アヅマより早く戦闘態勢に切り替えて注射器を振り被っていた。
    「させん」
     最初から臨戦態勢だった空斗がアヅマと小春の間に割って入り、焔天狼牙の刀身で注射器の針を受けようとするが、小春も巧みに狙いを空斗へと切り替えて深々と空斗の腕に注射器の針を突き刺す。
     注射器から生命エネルギーを吸収されるのを嫌って空斗が片手による斬り上げでクルセイドスラッシュを繰り出し、連携するようにアヅマも縛霊撃の振り下ろしでビルのコンクリートを砕くが、小春は軽い身のこなしでその両方を連続したバックステップで躱した。
    「ベリザリオさん、天槻さんの回復を!」
    「わかっているわ」
     仲間の中で一番耐久力が高く、守りを固めていた空斗が今の一撃で体力の3分の2を奪われていた。
     綾は防護符で、べりザリオは癒しの矢で集中的に空斗の傷を治療する。
    「すばしっこい」
     ナナコも飛びかかりながら鬼神変で殴りつけようとするが再びコンクリート片を巻き上げるだけで小春を捉えることができなかった。
    「5人もいるのは厄介だけど、貴方達一人一人は大して強くないのね」
     そう言いながら小春は再びアヅマへと注射器の針を向ける。
     小春はあくまで合理的に殺し易そうな相手を狙う。
     だから狙いを読むことが出来た空斗が再び小春の前に出てアヅマの代わりに注射器の針を受けた。
    「が、ああ……!」
    「今度は貴方に邪魔されてもいいように毒薬入りよ」
     毒薬による身を焼かれるような痛みに空斗の意識が漂白されそうになるが、ギリギリのところで膝を突かずに気合いで足を踏みしめる。
     小春と距離を取ろうと空斗は朦朧とする意識で咄嗟にサイキックソードを振り回すが、小春はそれを嘲笑うかのように回避した。
    「天槻先輩から離れろ」
     アヅマは小春の懐に踏み込み足許から影業で小春を縛りつける。
     空斗の負った傷は応急処置で何とかなる深さではないと判断した綾とベリザリオも攻撃に参加し、綾が背後からティアーズリッパー、ベリザリオが正面から縛霊撃で挟み撃ちにしようとするが、アヅマの影業に動きを制限されながらも小春はそれを器用に躱す。
    「さすがにこれは避けれないわよね」
     そこへすかさずナナコが体勢を崩した小春にフォースブレイクを叩き込むが、冷静に衝撃に逆らわず屋上の地面を滑ることで灼滅者達の包囲から抜け出した。
    「お待たせしました、援護しますね」
     その時小春の背後で屋上への扉が開き、香代、和弥、紅葉が屋上に姿を現した。


    「貴女が一番殺し易そう」
     新手の灼滅者達に一瞬視線を走らせると、今度は香代を狙って小春は注射器を振るう。
    「やらせないわよ」
     攻撃後も小春に追随していたナナコが香代を庇って注射器の針を受ける。
     ライフブリンガーでゴッソリと体力を奪われたナナコは、あと一撃といわず風が吹けば倒れてしまいそうなほどのダメージを受けていた。
     もし回復が間に合わなければ、次に狙われるのはナナコで間違いないだろう。
    「俺が相手だ」
     和弥がナナコと小春の間に入るように立ちながら鏖殺領域の黒い殺気で牽制した。
    「人造だからって甘く見んなよ!」
     和弥の殺気に紛れるように接近した紅葉が手にしたナイフで殲術執刀法を繰り出すが、小春はナイフでそれを弾きながら後退する。
    「アスラ、ナナコさんの回復をしますよ」
     小春が距離を取ったのを見てすかさず香代と霊犬のアスラが、自分の代わりに攻撃を受けてくれたナナコに闇の契約と浄霊眼で回復を施す。
    「負傷しているのは相手も同じ、泣き言をいってはいられないな」
     階段組が合流するまでの攻撃を一身に受けて自分も満身創痍であったが、ナナコの傷を癒し体勢を立て直す時間を稼ぐため空斗も前に出て焔天狼牙を振るう。
    「動きが速いなら、少しづつその足を奪っていくまでだ」
     空斗の斬撃を大きく回避した隙を狙ってアヅマの縛霊撃が小春の胴を捉え、仰け反った小春を引き戻すように霊力の網が放射された。
    「さっきから女の子相手に縛るような攻撃ばかり、良い趣味じゃないわね」
     霊力の網に捕らわれながら小春は忌々しげに毒づく。
    「さー、いくわよぉ!」
     綾とベリザリオからも回復を受けて、現状怪我を治しえる限界まで治癒されたナナコがバナナ状の杭を持ったバベルブレイカーを構える。
    「迂闊に動かれちゃ困るのよねぇ」
     動きの鈍った小春の太腿にバベルブレイカーが叩き込まれ、高速回転した杭が打ち貫いた。
    「片脚をやられたくらいで……!」
     小春は歯を食いしばりながら霊力の網を引き千切るように駆け出すと、執拗に注射器の針で香代を狙う。
    「アスラ!」
     未だに鋭さの衰えることない小春の一撃を、隣に控えていた霊犬のアスラが身を挺して主を守る。
     注射器に入っていた禍々しい液体を注ぎ込まれるとアスラは一時的消滅を迎えて存在を霧散させてしまった。
    「くらえ」
     攻撃後の隙を狙って和弥は上段に構えた風牙で小春の手許を狙うが、小春は素早く手を引くことでそれを回避する。
    「鈍ってきたんじゃねぇか?」
     和弥の攻撃に気を取られた小春の懐に潜り込んだ紅葉の鬼神変による一撃が抉り込むように入る。
    「ヒトを材料とした蠱毒といったところでしょうか……ダークネスとはいえ生まれてすぐ死ぬ、不憫と思わなくも無いですがご容赦くださいね」
     香代から伸びた影が波打ち覆い被さるようにして小春を飲み込んだ。
    「諦めろと言いたいところだが、最後まで油断はできないな」
     空斗の片手で持った焔天狼牙の横薙ぎの一閃を小春は影に覆われたまま殺気に反応して回避するが、空斗が反対の手に逆手に構えていたサイキックソードが影ごと小春を斬り裂く。
    「格上の相手と戦うのに、こちらも手段を選んでいられないんだ」
     ビルの地面についたアヅマの手から伸びた影業が小春に巻きつき拘束した。
    「今度は捉えました」
     回り込むように走った綾が背後から小春の背中をナイフで斬り裂く。
    「もらいましたわ」
     前に体勢を崩した小春にベリザリオの縛霊撃が決まり、更に霊力の網が小春を雁字搦めにしていく。
    「もう身動き取れないんじゃないかしら」
     ナナコのマテリアルロッドのフルスウィングを再び受けて、今度は衝撃を逃すこともできずに小春は屋上の地面を転がった。


    「まだまだ……!」
     ナイフで影業や霊力の網を切り裂くと、小春はクラウチングスタートをするように飛び出した。
     狙いは愚直なまでに香代を狙って空の注射器を構える。
    「合理的なのかもしれないが、先が読めていれば……」
     弱っても動き出してからの小春のスピードに灼滅者達は反応することが出来なかったが、その力量差に驕って単純な戦術しか繰り返さない小春の動きを読み、先回りしていた空斗が我が身を盾にして香代を守った。
    「一人は一人……あと七人……!」
     小春の注射器に生命エネルギーを吸い尽くされて空斗が意識を失い地面に倒れる。
    「悪いが念には念を入れてだ」
     その死角から和弥の刃が小春の無事な方の脚を払うように斬り裂く。
    「お前の中の六六六人衆、燃やし尽くしてやる……!」
     両脚の支えを失い転倒しかけた小春に至近距離から紅葉のブレイジングバーストによる炎弾が容赦なく叩き込まれた。
    「空斗さんのためにも時間はかけられません」
     夜空に向かって上がった火柱に照らされて伸びた香代の影から無数の杭状の刃が伸びて小春を串刺しにする。
    「お前は危険だ。さっさと灼滅されろ」
     鬼神変によって異形化したアヅマの拳の振り下ろしで小春はコンクリートに頭を強打しながら跳ね飛んだ。
    「せめてもの情けです。苦しまずに」
     屋上を転がる小春に綾の放った導眠符が何枚も貼りついていく。
    「ナナコさん、あとは任せましたわ」
     ベリザリオの影業が絨毯を丸めるように小春を飲み込み、そのままナナコの方へと放り投げた。
    「わかったわ。いくわよぉ、バナナブレイカー!」
     待ち構えていたナナコのドグマインパクトによって射出されたドリルの様な杭が小春の頭を柘榴のように砕く。
     頭部を失った小春は生命活動を停止し、夜闇に融けるように消滅した。
    「ここまで含めての蠱毒……考えすぎでしょうか」
     小春の灼滅を確認し、香代は屋上から街を見下ろしながら、そう呟く。
     自分達の中にもダークネスは眠っている。
     今回の戦いでもっと苦境に追い込まれていれば、自分達の中から闇堕ちする者もいたかもしれない。
    「コイツも好き好んで六六六人衆になったわけじゃないんだ。せめて弔ってやろうぜ……」
     空斗の応急処置を済ませ、撤収の準備を終えたところで紅葉が口を開く。
     紅葉は小春と名乗った六六六人衆と今回の縫村委員会に巻き込まれた一般人達を思って黙祷を捧げ、仲間達もそれに倣った。
     殺人儀式により生み出された六六六人衆は灼滅者達の手によって灼滅され、灼滅者達はそれ以上の被害を食い止めることに成功したのだった。

    作者:刀道信三 重傷:天槻・空斗(焔天狼君・d11814) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年4月5日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 10/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ