
●
――今日も疲れた。次の休日こそは、絶対に猫カフェに行こう!!
本日も会社で残業。お疲れモードな女性は、心の中でこぶしを作って決心する。
「よし、猫カフェ猫カフェ猫カフェ……癒されたい」
スタスタと歩きながら帰り道でもある公園に入り、呪文のように呟く女性の手をとる小さな手。いや、肉球グローブ。
「ん?」
「お姉ちゃん、お願い。癒しにきてほしいの」
猫耳をつけた茶髪の小さな女の子が、女性の手をくいっと引いたのだった。
「猫たちが待っているの」
「お嬢ちゃん……猫カフェの勧誘かしら? ぜひぜひ、喜んでいくわ」
通勤途中に猫カフェがあるのか、と女性は喜ぶ。それならいつでも会社帰りに寄れそうだ、と。
だが案内された場所は公園の敷地内で。
にゃーにゃーと、猫たちが沢山寄ってきた。そこまでは良い。女性も最初は癒されていた。
しかし。
『にゃ……(え。カリカリもないの? 食べもの何もないの?)』
『んなあう(あら、肉球がとても冷たくなってしまったわ。貴女のお膝の上で、温めてあげてもよろしくてよ?)』
『にゃあん(私も乗るわ。あら、お膝ぷにぷにね。もみもみしてあげるわ)』
『にゃ!! (おい! もっとしっかりその紐を振ってくれ!)』
『……。(猫好きなら、猫じゃらしを常備しておくものだにゃあ)』
お腹撫でてよ、とばかりに寝転ぶ猫。猫タワーばりに女性によじ登る猫。添い寝して欲しいな、と見つめる猫。
離れた場所で女性を観察する猫もいる。
何匹いるのだろう。三十匹くらいいるんじゃないかな、と女性は遠い目をして数えることを放棄した。
「ご、ごめんなさい。出直してきます……」
ふええと涙目になった女性は、猫耳少女にリタイア宣言するのであった。
●
「良いですね、猫カフェ。あ、猫語の翻訳はミケさんにお願いしたものです。ありがとうございました、ミケさん」
報告を受け調べた五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)のノート。
それを読みながらミケ・ドール(凍れる白雪・d00803)が猫語を翻訳してみたのである。
「猫のしぐさで読み取れる部分は、頑張ってみたつもりだよ。でもこれでは猫カフェというよりは……」
「人間カフェですね」
「だよねぇ」
人間のための猫カフェ。
猫のための人間カフェ。
猫も癒されたい時があるのだろう。
「猫耳少女がお水とマタタビを用意してくれているようです」
唯一のカフェ要素が、ここ。
姫子は話を続けた。
「猫カフェには飼い主さんを探すのも兼ねていたり、怖がらせない、とか、嫌がることをしない、などのルールがありますが、この人間カフェには無いみたいです。
……でも、猫さんと戯れることが出来るのなら、虐げられるのも些細なことですよね」
ほわっとした笑みを浮かべた姫子は、言い切った。
あの柔らかな肢体を、もふもふな毛並みを、たくさん触れるのだ。辛いことなどない。
「猫カフェと言えば、猫耳少女が現れます。集まる猫は本物の猫と、猫耳少女の配下的存在な猫です」
配下的存在の猫は、都市伝説の一部だ。
集まった全ての猫たちがストレス発さ……いや、癒されるまでこの都市伝説は存在し続けてしまうだろう。
「都市伝説の猫たちは本物の猫と変わりはありませんが、満足すると消えてしまうようです。同様に、猫耳少女も全てを見届けてから消えます。
そして近所の猫さんは、ちゃんと帰っていきますから心配しないでくださいね」
微笑みながら言った姫子は、灼滅者の手にそっと触れ、何かを手渡す。
――灼滅者は 猫じゃらし を 手に入れた。
| 参加者 | |
|---|---|
![]() 羽坂・智恵美(古本屋でいつも見かけるあの子・d00097) |
![]() 陰条路・朔之助(雲海・d00390) |
![]() ミケ・ドール(凍れる白雪・d00803) |
![]() 夕永・緋織(風晶琳・d02007) |
![]() 響野・ちから(ポップンガール・d02734) |
![]() 犬蓼・蕨(犬視狼歩の妖異幻怪・d09580) |
![]() 棗・螢(黎明の翼・d17067) |
![]() 巻島・瑠璃華(華夜・d25589) |
――これまでのあらすじ。
「猫カフェ行きたーい!」
公園を歩く陰条路・朔之助(雲海・d00390)の手を掴んだ猫耳少女は、灼滅者たちをある場所へと導いた。
「ここが……今日の戦いの舞台っ!」
響野・ちから(ポップンガール・d02734)が震える声で呟く。
「相手の数も多いようですが、負けませんよ! 頑張りましょう」
羽坂・智恵美(古本屋でいつも見かけるあの子・d00097)もこくりと頷いた。
灼滅者たちのメディックぶりが、今、試される!!
●
にゃーにゃーと催促の声が大きくなる。
「うわあ! ちょっと待った、開店準備中ですっ」
朔之助と巻島・瑠璃華(華夜・d25589)がキャットフードを用意し始めた瞬間に、突進してくる猫たち。
「お腹空いた子はこっちに食事を用意してるぞー」
猫じゃらしを装備した朔之助が集まってくる猫たちの気をそらす間、瑠璃華が沢山の小さな受け皿にキャットフードを盛り付けていく。そんな彼女の足元には猫じゃらしに惑わされない猫が、まだかなまだかなっ? と体を擦り寄せていた。
「できたっ。猫ちゃん達、パーティーの時間だよっ」
ドライタイプとウェットタイプ、猫用ミルクなどを瑠璃華と朔之助が置いていくと、匂いを嗅いだ猫たちはそれぞれが好むご飯をはぐはぐと食べていく。
「ああ、可愛いなあ」
と、呟く朔之助は眺めながら和んでいた。鰹節を舐めとってからドライフードを食べたり、猫用ミルクも直に皿から、または前足をひたしてそれを舐める猫など、様々だ。見ているだけで朔之助は癒される。
「にゃーにゃー。美味し?」
同じく、夢中に食べる猫を眺めながら問う瑠璃華に一匹の猫が近付いた。ふんふんと匂いを嗅いだ後、瑠璃華の膝に前足をたしっと。
デザートですね。分かります。
「食べ過ぎちゃだめだよ?」
瑠璃華は、ペット用チーズとヨーグルトフードを取り出すのだった。
少し離れた場所の茂みで涼しむ猫たちは餌の匂いに一度立ち上がったものの、再び座りなおしていた。
夕永・緋織(風晶琳・d02007)は茹でて細かくしたササミ、猫用ミルクの入った皿を置き、静かに後退する。彼女の静かで流れるような動作に猫たちは驚くこともなく、落ち着いた様子で緋織の動きを観察していた。
しゃがんで待つ緋織と、それを見つめる猫。その距離を縮めたのは一匹の猫だった。
二歩、三歩と警戒の歩みを進めても動かない緋織に安心したのだろう。そこからは猫も警戒することなく、置かれた餌の前までやってくると直ぐに食べ始めた。
一匹目の行動に倣う猫たちが茂みから出てくる。まだ体の小さな猫もいた。
ほっとした緋織が餌を追加して、その指にも猫は警戒の色を見せなかったのでそっと緋織は背中を撫でてみる。木陰にいたせいか少しひんやり。
小さな猫は緋織の持つ猫じゃらしに興味を示していて、尻尾を少し揺らしている。
「……こっちで皆で一緒に遊ぼう? 誰も苛めたりしないから、怖くないよ」
緋織が優しく語りかければ、彼女を見上げる猫は首を傾げて何かを伝えるように震える声で鳴いた。
そして茂みから出てこなかった猫が、二匹。
ミケ・ドール(凍れる白雪・d00803)が怖がらせないよう静かに近付いても、威嚇しながらぷるぷると震えていた。もう一匹は茂みの奥に隠れてしまったようだ。
「ほらほら、怖くないよ」
ゆーらゆらと猫じゃらしを揺らしながら、ミケが語りかける。
猫を追ったり退いたりするミケの猫じゃらし。緑と白の羽根がふわふわと揺れる猫じゃらしの時々行う機敏な動きに、威嚇していた猫が前足を繰り出した。
芝生を這うミケ猫じゃらしを追い、茂みから出てくる猫。
「これとか、好きじゃないかな」
またたびをつけたマスコットを猫の前にぽいっと投げたミケは、猫じゃらしの先でマスコットをつんつんしながら様子を見る。
ごろごろと喉を鳴らし、マスコットを爪で確保する猫。隠れて様子を見ていた猫も茂みから出てきてミケを観察しはじめた。
ゆっくりと首を傾けるミケ。大丈夫、猫じゃらしはまだある――。
「キミには、こんな猫じゃらしとか、どうかな」
猫たちが灼滅者たちに注目するなか、芝生へと進む犬蓼・蕨(犬視狼歩の妖異幻怪・d09580)の歩みはマイペースだ。
まずは芝生の柔軟性を確かめる。春の陽射しを受ける芝生は柔らかい。
くてっと、ぐったりごろごろする蕨。犬のようなしっぽがパタリと振られた。しばらくしてもう一度パタン。
「お昼寝日和だの」
パタリ。もう一度しっぽが揺れると何かがじゃれついてきて、避けるように蕨のしっぽが動く。
「にゃ」
「わう」
蕨の声にも反応しなかった猫は、しっぽを捕まえようと必死になっていた。捕まえると猫キック。
しっぽで遊びながら蕨は遠くから見つめてくる猫を、ジーッと見つめ返すことにした。
ボスっぽい虎猫だった。両者、目をそらさず。
やがて、ぽかぽかの空気のなかで蕨は猫じゃらしを振るのだが、何だかメトロノームな動きに少しずつ眠くなってきたり。
ベンチに座る棗・螢(黎明の翼・d17067)は、膝の上でごろごろと喉を鳴らす猫と一緒にひなたぼっこをしていた。着物姿の螢と白猫。のんびりしているその光景は、縁側的なものになっている。
ジャンプ!
前足が追う先には、智恵美の持つ猫じゃらしがゆらりゆらりと揺れていた。
「ふふ、残念でした」
次はぴっこぴこと機敏に揺らす猫じゃらしを猫の顔に近づける智恵美は、もう一回、と徐々に上に持っていこうと。
「あっ」
だがしかし、一気にがぶりと銜えた猫は地面に猫じゃらしを引き倒す。持ったままの智恵美も抵抗せずに猫じゃらしを預けてみた。繰り出される猫キック。
目がまんまるくなっているし、猫じゃらしを奪ってみれば寝転んだ状態の猫は前足で空中をかきかきしていた。
「か、かわいいです!」
お腹を撫でてみる智恵美。猫はくねくねと動いた後、智恵美の手を抱えると再び猫キックを繰り出した。
無邪気な猫のノーマルモードな遊び方である。猫たちの間では基本中の基本だというマニュアルが……あるかもしれないし、ないかもしれない。
続くはハードモードに挑戦する猫たち――狙うはキャットツリー化したちからの完全制覇!
「ははははは動く人間キャットツリーことちからさんに死角はないのですよー!」
複数の猫じゃらしを腰にぶら下げていると南の島的なフリンジスカートに見えてくる。猫が主に狙うは吊られたネズミのおもちゃ! そして手にあるスティック状の食べ物!
猫数匹がくるくると回るちからを囲んで跳ねている。
「にゃ」
黒猫、木の上からの飛び降り攻撃! 更に三毛猫が援護のつもりで追撃を仕掛ける。
「はうっ!?」
上空から二匹、ちからの頭と肩に着地するがさすがに重くて地面に両手をつくちから。
「やりますねっ。しかし、ここでやられようとも第二、第三のキャットツリー人間が――あ、ちょっとそこだめ服脱げるずれるーっ!?」
猫数匹が乗ったり、よじ登ったりしてくるので色々と大変なことになりつつあるちからが涙目で訴えた。
スティック状の餌がバラバラと零れ落ちたので、よっしゃチャンスだ、という風に別の猫たちが餌を奪っていく。
「とられたあっ」
言葉とは裏腹に、お日様のような笑顔のちからは楽しそうだ。
●
「猫耳少女ちゃんは……猫を撫でたりしないの?」
指をぺろぺろと舐めてくる猫を優しく撫でた後、抱き上げた瑠璃華は水を与えていた猫耳少女に問いかける。
こてんと首を傾けた少女に合わせて同じように首を傾ける瑠璃華。抱いている猫が首と肩の部分に顔を押し付けてきて、少しくすぐったい。
「猫。触ると、悲しい猫もふえちゃうの」
猫耳少女は、蕨の背中でごろごろしている子猫を指差した。灰色の髪の蕨と灰色の子猫は、かがみもちならぬかがみわんにゃん状態。
「あの子、寒い冬の夜に、ひとりで眠っちゃったの」
灰色子猫は、今、ひなたの匂いに包まれている。芝生とあたたかい蕨の体の上で丸まっていた。
「もう起きなくてもよかったのに、私が猫に触っちゃって、子猫は起きちゃったの」
「んむ?」
ふと、背中が軽くなったことに気付いた蕨は眠い目をこすりこすり背中を確認。灰色子猫は満足して消えてしまったようだ。
ぱたりと蕨のしっぽが揺れた。
「猫耳少女ちゃん……」
瑠璃華は都市伝説の少女を見つめる。安らかでなくとも永眠したはずの猫を呼び起こすのだろう。
次に虎猫がのそりと蕨の上に乗った。ちなみに成猫で大きく、ダイエットした方が良いんじゃないかなという猫。
緊張を孕んだ沈黙が場に落ちた。
「わ、わふっ!? がうう……」
ふみふみと蕨の上でベストポジションを探している虎猫。喰いこむ前足はとても痛い。
猫耳少女は眺めながら、声の調子を変えることなく言った。
「わんこお姉ちゃんに乗った猫は、近所のボスで山田・虎太郎さんっていうの」
「わんこじゃないよ! おおかみだよ! ……わううっ」
蕨がすぐに訂正するも喰いこむ前足に思わず唸ってしまう。
やばい。仲間がピンチだ。
「わっわらびちゃーん!? とらたろぉぉくぅぅん、こっちにおいでなのですよー。美味しいスティック……が、もう無いっ!」
がくーんと項垂れるちから。
コンビネーション発動! 猫を肩に乗せていた朔之助が猫じゃらしを振るう。
「虎太郎! こっちおいでー」
蕨から飛び降りた猫は朔之助の膝に乗ろうと……虎太郎的に少女の背中も彼女の膝も狭いものであったが、無理矢理にでも乗るのである。
「お、重いな。いや大丈夫だっ、全く気にならんぜ。満足するまで乗っていけ虎太郎!」
猫じゃらしで子猫と遊びながら朔之助はそう言った。
「ね、美味しいかい……?」
ミケの用意した猫缶各種をはぐはぐと食べる猫たち。
最初の緋織と同様に様子を見ながら餌をあげていたミケの傍には、今や数匹の猫が集まっていた。
「可愛いなぁ……ねぇ、こっちも食べる?」
ソプラノボイスで語りかけるミケの表情は普段のものとは違っていて、声色と同じくとても優しいものだった。
ドライフードをミケの手から食べる猫の触れる口やヒゲがくすぐったく感じる。
懸命に食べ、時々上目遣いでミケを窺う猫。ミケは微笑みを返した。
ふわふわの毛並みをブラッシングするのは緋織だ。ごろごろと喉が鳴っている猫はご満悦状態。
「気持ちいいかな?」
穏やかに尋ねる緋織の傍にはブラッシングを終えた四匹の猫が寝そべっていた。毛玉が結構な勢いで量産されていく。
「はい、ブラッシングが終わったよ」
安心しきったように体を預けていた五匹目の猫は、そのまま緋織の傍に寝そべった。艶のでた毛並みを更に舐めて整える。
猫と一緒にゴロンと寝転ぶ智恵美は、自身の肩を枕にする猫を撫でていた。陽だまりのなかでの毛並みがとてもあたたかい。
眠っているうちにと肉球をマッサージしてみれば猫が身動ぎをして小さな声で鳴いた。きっと寝言なのだろう。前足をにぎにぎして智恵美の指をもみもみする猫。
(「癒されます!」)
可愛さのあまり頬ずりしたくなる智恵美だったが、我慢です、と緩む頬にくっと力をこめた。
しかし次の瞬間、再び寝言のような鳴き声を出した猫がゆっくりと消えていく。
重みやぬくもりが失われていくのを感じとった智恵美は、完全に消えてしまう前にもう一度だけ猫を撫でた。
「ちゃんと癒されてくれたのでしょうか?」
「撫でられて、ひなたぼっこするのは、幸せ」
智恵美の呟きに猫耳少女はこくりと頷きながら答えた。ブラッシングされて寝そべっていた猫も消えていくところで、猫耳少女はその光景を見届けるようだ。視線を巡らせていた。
そんな少女の頭を撫でる緋織。
「私達も癒されたのよ、ありがとう……」
消えていく猫を見てどこか寂しそうにしていた猫耳少女は、緋織に撫でられながら目を閉じた。
螢の膝で丸まる猫が喉を鳴らしながら消えていく。
ミケに撫でられつつ前足で顔を洗っていた猫もまた、その身を薄くしていた。
最後に一撫でしたミケはそっと手を離した。
「……バイバイ、猫ちゃん。楽しかったよ」
小さく手を振るミケを一度見上げた猫はそのまま消える。
緋織に撫でられていた猫耳少女は立ち上がって、八人にぺこりと頭をさげた。
「ありがとうなの」
顔をあげた少女は微笑んでいた。
笑顔で、さようならを。
そしておやすみなさい、と。
名残惜しそうな灼滅者と残った猫たちに見送られるように、都市伝説たちは穏やかな終わりを迎えた。
●
にゃごにゃごと、残った猫たちが残ったまたたびで寛いでいた。
お腹いっぱいで、顔も洗ったし、あとは寝るだけだぞという猫たちだ。
「お疲れ様。紅茶持ってきたから、皆飲まない?」
見ているだけで癒されるような可愛いレジャーシートを広げ、ミケは紅茶の用意をし始める。
「私もお菓子と飲み物を持ってきたよっ」
猫草をはむはむする猫を眺めていた瑠璃華も、お茶の準備。
「私もお茶と長命寺桜餅を。何だかお茶会みたいね」
緋織が手拭いをそっと配りながら言う。即席猫カフェだ。春の陽気のなかでのお茶会。
室内で行われるものとは違っていて新鮮だ。
伸びる猫を見ているだけで癒されるなぁと思う三人。お茶の時間が終わったら、またゆっくり遊んだりブラッシングをしたりと出来そうだ。
智恵美が座った横には一匹の姿勢の良い猫がやってくる。毛並みが良く、きりりとした顔立ちの猫だが口元だけ異なる色の毛で、何だかヒゲ男爵のような。
「ふわわ、お膝にきます?」
智恵美の言葉に目を細めた猫は長考する。膝を見つめたまま動かない。
そうして七人が着席するなか、まだ辿り着かない者が。
「陰条路さん?」
螢が声をかけるも朔之助は動かない。否、動けない。虎太郎がまだ膝の上に居座っていた。
「足が痺れた……っ」
再び仲間のピンチだ。
「虎太郎くーん」
それぞれが猫じゃらしを駆使しつつ呼びかけるが虎太郎は動かない。その時、ヒゲ男爵な猫が朔之助の元に向かうと虎太郎は素直に降りた。たしなめてくれたようだ。
「紳士的な猫さんです!」
智恵美は隣に戻ってきた紳士猫のために、お膝へどうぞ! とエスコートするのだった。
ご馳走になった後、ちからはブランケットをベンチに敷いて昼寝することにした。
猫を背中に乗せて、うとうととしているのは蕨だ。
猫に爪をたててモミモミされつつもしっぽを振る蕨に、再びしっぽにじゃれついてくる猫たちが現れた。
「わう。安眠妨害だよう」
「わらびちゃん! 一緒にお昼寝しましょー! この魔のブランケットの力で、猫さんたちを熟睡モードにするのです」
陽射しで暖かくなったブランケットは、どんな猫をも眠りに落とす。そんな力がある。
そんな風に一日が過ぎていく。
ある春の日の、癒し癒され猫尽くしな一日だった。
| 作者:ねこあじ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
![]() 公開:2014年4月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 1
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