春来る、忘れられた悲しみの

    作者:陵かなめ

    「こんな噂を聞いたんだが……」
     東堂・秋五(君と見た夕焼け・d10836)が話を切り出した。
     それは、哀しい箪笥の肥やしの話。
     春物の衣類を部屋で試着していると、この冬一度も着ることがなかった冬物衣料が襲ってくるという都市伝説。
    「クローゼットの前で、できるだけウキウキ気分で春物衣料を着ると良いらしい」
     しかし、ウキウキ気分って。秋五はやや困惑気味だ。
     まあ、さておき。
     一度も着てもらうことなく冬が終わってしまった、冬物衣料たちの話だった。
     
    ●依頼
     千歳緑・太郎(中学生エクスブレイン・dn0146)がくまのぬいぐるみを抱え話し始めた。
    「と、言うわけで、都市伝説の灼滅をお願いしたいんだ」
     クローゼットの前で春物衣料を着ると現れる、都市伝説だ。できるだけ、ウキウキ気分で着ると良いと言う。
    「えーと、まず春物の服をクローゼットの前で着る。そうしたら、都市伝説が現れるんだよね? 春物衣料だったら、別に新しく買ったのじゃなくてもいいんだよね?」
     空色・紺子(高校生魔法使い・dn0105)が手を上げた。
    「そうだね。とにかく、ウキウキと楽しげな雰囲気を出すことが大切だよ」
    「ふむふむ。じゃあ、皆で楽しくファッションショーといきますか」
     春の服をあれやこれと、お披露目しよう。
     紺子は楽しげに笑う。
    「現場は、クローゼットのある部屋の他にもいくつか部屋があるから、もし順番に着替えて見せ合うなら、使ってね。手っ取り早く、春の服を着て現場に行ってウキウキしても良いみたい。そこは、皆に任せるね」
     次に、太郎は都市伝説について詳細を説明した。
    「一度も着てもらえなかった冬服の都市伝説は、全部で3着。部屋のウキウキ気分が高まるとクローゼットの中から飛び出してくるよ。古めかしいダッフルコート、昔誰かが編んだ手編みのセーター、派手な色のニットキャップだよ」
     主な攻撃は、ニットキャップのスラッシュ、手編みのセーターのビンタ、ダッフルコートのボディプレスだ。
    「一応、衣料品だけど、炎に弱いとかじゃないから、普通の攻撃方法を考えてね。あと、気をつけて欲しいのは、都市伝説が現れるまでクローゼットを開けないこと。絶対にだよ」
     最後に、太郎は皆を見た。
    「油断しなければ大丈夫だと思うけど、くれぐれも、ウキウキ気分全開でお願いします」


    参加者
    若宮・想希(希望を想う・d01722)
    梅澤・大文字(張子の番長・d02284)
    雪片・羽衣(朱音の巫・d03814)
    東堂・秋五(君と見た夕焼け・d10836)
    卦山・達郎(包帯界のコマンドー・d19114)
    ルエニ・コトハ(小学生魔法使い・d21182)
    葦原・統弥(黒曜の刃・d21438)
    武藤・雪緒(道化の舞・d24557)

    ■リプレイ

    ●集まった仲間達
     大きなクローゼットのある部屋に、灼滅者達が集まってきた。
     事情を聞いた雪片・羽衣(朱音の巫・d03814)が言う。
    「そっかー、一度も着られなかったのかー」
     せめて一回くらい着てあげればいいのにねと、隣の空色・紺子(高校生魔法使い・dn0105)へ目を向けた。
    「もったいない」
    「そだねー。もったいない気がするよね」
     紺子も、うんうんと頷く。
    「とにかく、まずは春ものうきうきファッションショーよね!」
     気持ちを切り替えるように、明るく羽衣が仲間達を見回した。片手を挙げ、さあウキウキしようと気合を入れる。
     しかしながら一瞬訪れる、微妙な沈黙。
    「どうしてこう男ばっかりになるんだろうな……、世の中ままならないことばかりだ」
     東堂・秋五(君と見た夕焼け・d10836)がやや遠くに視線を向け、ポツリと呟いた。
    「なにこの男率……」
     武藤・雪緒(道化の舞・d24557)がふよふよと天然石を浮かべながら集まった仲間を数えてみる。
     男子7名、女子1名。何度数えても、男子7名、女子1名。さらに確認するように、男子7名、女子1名。圧倒的なまでの男子率だ……!
    「まあまあ、良く見ろ、……空色に雪片、それに他の女子達が来てくれるってことで俺の気合は十分だぜ!」
     最初は男だけかとも思ったが、と、卦山・達郎(包帯界のコマンドー・d19114)が励ますように手を広げた。
    「そ、そだよー。サポートの男子は2名。女子が8名。私も入れて、最終的には男子9名、女子10名になります」
     紺子が最終的な人数を読み上げると、その場は少し明るくなった。
     それに、と、葦原・統弥(黒曜の刃・d21438)が続ける。
    「男性陣は、デートに行く時用の服装をお互い披露しませんか?」
    「お、おお。バンカラってのぁ年がら年中学ランにマントなモンだ。衣替えとぁ縁が遠いってモンだが……、が、頑張ってうきうきしてこ」
     梅澤・大文字(張子の番長・d02284)が大きく腕組みをし、口にくわえた草をぴこぴこ動かした。
     男子陣も服を着替えることになり、ルエニ・コトハ(小学生魔法使い・d21182)がうれしそうに笑顔を見せる。
    「確かに冬の服は、冬に着ないと来年まで出番がないのです。お洋服さんもちょっと寂しいのかもしれませんね」
     言いながら、周りの背の高い仲間達を見上げた。
     いつか自分も背の高い男の人になりたいと、憧れを抱いているのだ。
     サポートのメンバーもクローゼットの前に集まり、ウキウキタイムが始まろうとしていた。
    「想希まずコレや。偉い人にしか見えん服!」
     どーんと東当・悟(の身長はプラス十センチ・d00662)が取り出したのは、隠す面積が極端に少ない、大胆な水着だった。
    「……! 着れるか! 春物ですよ、春物!」
     若宮・想希(希望を想う・d01722)が顔を真っ赤にして却下した。
    「ちえー」
     一瞬膨れるも、悟はいそいそと次の衣装を取り出す。
    「よーし、じゃあ皆もファッションショー頑張ろう!」
     その様子をニコニコと見て、羽衣が明るく声を上げた。
    「雪片さんと空色さん、二人にまざってきゃわきゃわする! スライム髑髏なんて見た目で性別わからないから混ざってもいいよね!」
     そうだ、まだ希望は残っているさ!
     雪緒もおしゃれアイテムの準備を始めた。

    ●春色ファッションお披露目
     統弥はデニムのズボンとカーキのTシャツに着替え、その上にベージュのジャケットを羽織った。
    「葦原先輩のお洋服、かっこいいのです」
     ルエニが興味深そうに眺める。
    「有難う。普段は黒のジャケットに白のシャツと言う組み合わせが多いので、今回は春らしくしてみました」
    「たしかに、とっても春らしいです。そのお洋服で、デートするのですか」
     問われて、統弥が微笑んだ。大切な人とのデート用に購入した服だ。
    「コトハは何か着替えないのか?」
     そこに秋五が近づいてきた。
    「あ、東堂先輩は新しいカーディガンですね」
     ルエニは、長身の秋五を見上げた。自分も将来これくらい伸びるのだろうか。そんな風に考えると、自然とわくわくしてくる。
    「サポートの女子が盛り上げてくれるはずだとは思ったが、一応俺も春物を着てきた」
     グレーのカーディガンを見せながら秋五が言った。
    「それで、ルエニ君はどんな服を用意しているのでしょうか?」
     統弥がルエニを見ると、その手に黒地のトレーナがあった。
    「一応、これを持って来たのです」
     広げると、小さな星と月のマークがついている。
    「あらー。良いね。ねえ、一緒に着ようよ!」
     気づいた紺子が近くから声をかけた。
    「お星様のついた服は好きなのです」
     促され、ルエニがトレーナーに袖を通す。今は子供用でも、将来は先輩方のように格好良い服を着ることができるだろうか。未来の自分の姿を考えると、ちょっと嬉しくなる。
    「さて、女性陣はどうでしょうか?」
     統弥が周囲を見回すと、女子達は色んな服の披露を始めていた。
    「普段は制服にパーカー羽織ってるだけだから……こういう服着るの久々ね」
     春物の服をありったけ持ってきたエフティヒア・タラントン(枯れないダンデライオン・d25576)が、鏡の前で服をあてがう。
    「かわいい! その色合わせ、とっても可愛いです」
     火土金水・明(黒い三連ボンクラーズ・d16095)が声を上げた。
    「でしょ?」
     春らしい明るい色合いの服が、鏡の中で揺れる。
    「卦山さんからお願いされた通り、可愛い衣装に身を包んで私参上……!」
    「山田……チャイナ服、ばっちり似合ってるぞ!」
     真っ赤なミニのチャイナ服を身に纏い、山田・透流(自称雷神の生まれ変わり・d17836)がクローゼットの前でポーズを決めた。
     グッジョブと、達郎が親指を上げる。
     その後ろでは、鏃・琥珀(始まりの矢・d13709)と朝田・芽衣子(のんびりだんぴーる・d22082)が撮影の準備を着々と進めていた。
    「なんだ、撮影に来るとか言いつつお前ら二人も可愛らしい服装を……って、なんだその時代遅れっぽいヤンキ―服は!?」
     達郎は芽衣子の手にしている衣装を見て頬をひくつかせた。
    「卦山君用の衣類です」
    「大丈夫なの。達郎さんなら、ばっちり着こなせるのよ」
     芽衣子と琥珀は、ぐいぐいとピンクの学ランを達郎に押し付ける。良く見るとラメ入りだし、背中には春の字の金色の刺繍が施されている。一体このような衣装を誰が着ようと言うのか。
    「く、梅澤……。この衣装はさすがに無いよ、な?」
    「ああ……まァ(どうでも)いんじゃね?」
     達郎は大文字にやんわりと助けを求めたが、返ってきたのはわりとそっけない言葉だった。
     結局勢いに押され、達郎は黒のジャケットを脱いだ。白のシャツとレイヤードで決めていたし、ボトムに黒を選んでシルバーアクセなども準備していたけれど。
     最終的に、達郎はピンクの学ランに身を包み、透流と共にカメラの前でポーズをしっかり取った。
     何だか、それはそれで、とても楽しそうに見えた。
    「ナナー、これ、どうかしら♪」
     着替えを終え、蒼羽・シアン(蒼星の絢爛蝶・d23346)が銀城・七星(瞳に玉兎を抱く少年・d23348)に笑顔を向けた。
    「姉さん、すごく素敵だよ」
     七星の言葉に、シアンが大きく頷く。その時、紺子がスプリングコートを羽織る姿が見えた。
    「あ! そのコートだったら、スキニーと合わせるのもありじゃない?」
     さっそく、シアンが近づく。
    「なるほどねー。スカートしか考えてなかったけど、それも良いかも!!」
     紺子が嬉しそうに頷いた。
    「ねえ見て見て! ういのワンピース」
     ふんわりバニラカラーのワンピースの裾を揺らし、羽衣がくるりと回った。
    「おう、悪くねぇな。似合ってんじゃね?」
    「えへへ。ありがとー」
     大文字がうんうんと頷く。服の良し悪しなんざわからねぇが! これぞ漢のファッションチェックだ。
    「可愛い! 何を合わせるのかしら?」
    「うーん、萌黄色のストールか桜色のカーディガンかなぁ」
     シアンと羽衣がコーデの相談を始める。アクセサリーや帽子など、紺子も加わりあれやこれと試してみた。
    「姉さんの瞳の輝きようがすごい……姉さんが楽しそうで何よりだ」
     周りに突撃していった姉を最初こそハラハラしながら見ていた七星は、安心したと言うように息を吐いた。
    「やっぱ女子のファッションは華があるねぇ……」
    「ありがとう! 卦山くんも輝いてるよ!」
     主に、ラメがね!!
     達郎と羽衣の会話に、明るい雰囲気が広がる。

    ●ウキウキ上昇↑
    「女の子はやっぱり楽しそうですね」
     白シャツにネクタイ、カーディガンとラフなカーゴパンツに着替えた想希は、皆の春物を観賞している。二折ハンチング帽もかぶり、春の装いだ。
    「悟、この服ありがとう。ますます大学が楽しみです」
    「おー想希キレイや」
     笑顔を向けられた想希は、照れながらも満更でもなさそうにくるりと回ってみた。
     次に、想希は悟に選んだ服を手渡した。
    「決意の白えぇな。ブルゾンのもふもふ感もサイコーや」
     目を輝かせ、悟が想希に抱きついた。
    「どや。もっふりやろ」
     想希は。こくりと頷き返した。
     どうしよう、ウキウキが止まらない。
     クローゼットの前は随分と賑やかになってきた。
    「おう、アガッてきたな! おれぁ春用の黒マントを試着するぜ」
     満を持して、大文字が普段のマントから春用のマントに着替えた。クールにマントを靡かせて見せるのだが……。
    「……って春物の……マント?」
     想希が首を傾げる。
    「デートに着てけば、涼しげなおれに彼女もクラクラだよな!」
     ぐっと拳を握り締め、周囲に同意を求めた。
    「どうだ! 似合うか!」
    「いや、まあ、似合ってはいるが」
    「そうですね。とても似合ってはいるのですが」
     秋五と統弥が曖昧に頷く。
    「ねえ、それって、さっきとどこが変わったの?」
     皆の気持ちを代表して、雪緒が聞いた。
    「よく見ろよ! 生地がちょっと薄手だろ!」
    「ええー! うい、わかんなかったー」
     羽衣が笑う。
    「あぁ?」
     とは言うものの、なかなか女の子にはそれ以上強く出ることが出来ない大文字であった。
    「ね、見て。武藤くんすっごくキラキラしたと思わない?」
     紺子の言葉に、皆の視線が雪緒に集まった。
    「スライム髑髏なりのおしゃれ! どうかな」
     雪緒は髑髏に帽子をかぶり、触手にリボンをあしらっている。
    「ういも一緒にビーズを張ったんだよ!」
    「ねー!」
     羽衣が指差したスライム体には、沢山のビーズが張り付いていた。
    「ちなみに、浮いてる鉱石、可愛いハート型の天然石にしてみたんだよ」
    「あっ、本当です、これも、こっちもハート型です」
     確かに、言われてみると雪緒の周囲に浮いている鉱石がハート型になっている……!
     ルエニは雪緒のおしゃれに興味津々の様子だ。きらきらビーズが、ちょっといいなと思う。
    「武藤くんには……桜のシールでも貼ろう」
     そこに、大文字がいそいそと近づいてきた。
    「おしゃれの仕上げだね! いいよ、貼って貼って」
    「よし、俺も手伝うぜ!」
     スライム体を差し出す雪緒に、撮影を終えた達郎もシールをペタリする。
    「みんな、クッキーと紅茶はここにあるから、良かったら食べてね」
    「あ、ありがとうー!」
     唯済・光(つかの間に咲くフリージア・d01710)の用意した焼きたてのクッキーに、一息つきたい仲間が手を伸ばした。
    「まあなんだろう、こういう和気藹々としたのも悪くないな」
     楽しげな雰囲気の部屋を眺め、秋五が言う。
     春の装いで、皆が最高にウキウキとしてきた頃。
     突然大きな音を立て、クローゼットが内側から勢い良く開いた。

    ●悲しみの都市伝説達
     飛び出してきたのは、ダッフルコートにセーター、ニットキャップだ。それぞれが、この冬着てもらえなかった悲しみと恨みのオーラを纏っているようにも感じられた。
     瞬間、灼滅者達は戦闘態勢に入る。
    「っと、出てきたなァ冬物!」
     大文字が武器を構え、セーターに向かって駆けた。
    「業炎番長漢梅澤! 参る!」
     斬影刃を放つと、セーターの一部が切り刻まれ飛び散る。
    『なによ、なによっ。そんなに、春の服がいいって言うの?! 馬鹿にしないで!!』
     激昂したセーターが、自身の袖を巧みに操り、大文字の頬をビシリビシリとビンタした。
    「うむ、デザインも質も悪くねぇのに、何故か着まわしローテからはみ出る服ってのぁあるよなァ……」
     言いながら、一歩下がる。
    「オロピカは皆を庇ってね!」
     霊犬に指示を送りながら、羽衣が祭霊光ですかさず傷を癒す。
    「手編みのセーター……誰が編んだか分からないって」
     それは、ちょっといかがなものか。言いながら、想希は眼鏡を外した。ガンナイフを構え、けん制するように援護射撃を繰り出した。
     灼滅者に迫っていた都市伝説達が、戸惑うようにその場で止まる。
    「きちんと倒すのです」
     危害になる可能性がある以上、放ってはおけない。ごめんなさいと。心の中で思いながら、ルエニは一気に距離を詰めた。
     マテリアルロッドで殴りつけると、セーターは簡単に爆発して消えた。
    「可哀想ですが、人に危害を加えて良い理由にはなりません」
     クルセイドソード・ムーングロウを手に、統弥が走る。
     素早く繰り出した神霊剣で、ニットキャップの霊魂と霊的防護を確実に破壊した。
    『うえーん。結構良い色なんだよ!! かぶってくれたって、いいじゃないかー!!』
     ダメージを受けたキャップは泣きながら抗議した後、前衛の灼滅者達を狙いスラッシュを仕掛けてきた。
    「確かに一度も着なかったのは悪かったと思ってるよ。でもさ……お前ら、着こなしが難しいんだよ!」
     特に派手な色のキャップなど、着る服を極端に選んでしまう。秋五は狙いを定めキャップとコートを凍り付かせた。
    『冷たいのは、我慢できる!! 俺を着れば我慢できる!!』
     纏わりついた氷を振り払おうと、コートが捩れた。
    「よし、狙いもばっちりだよ!」
     にょきりとスライム体から銃口を伸ばす。
     狙う力を上昇させた雪緒が、畳み掛けるような連射でキャップを射抜く。
     たまらずキャップが距離を取り、逃げの姿勢を見せた。
    「悪いが、もう冬は終わってんだよ!」
     だが、逃がさないと、達郎が飛び込んでいく。バベルブレイカー・三牙ノ顎で死の中心点を貫けば、あっけなくキャップは崩れ落ちた。
    『くっ、春に重いコートを着てもいいじゃないか!!』
     残されたダッフルコートが、ひらり舞う様に跳ぶ。
     上方から、全てをかけてルエニにのしかかろうとする。その間に身体を滑り込ませ、オロピカが庇った。
    「ありがとうございます」
     ぺこりと頭を下げ、ルエニは至近距離からシールドでコートを叩き付けた。
    「よくやったね。さあ、回復するよ」
     その間に、羽衣がオロピカの傷を癒す。
    「……こう考えると、人は新しい服に目が行ってしまうものなのですね」
     そうして、都市伝説となってしまった古着達に、少しだけ同情する。
     統弥は、それでも武器に炎を宿し、敵に叩きつけた。
     炎はコートへ移り、燃え続ける。
    「らぁ! これで締めだ!」
     身悶えする様な動きのコートの背後から、大文字が迫った。
     堂々とした振る舞いで、炎を叩きつける。その姿は、まさしく漢だった。
     最後にビクリと一度だけ動き、コートも消え去る。
     こうして、クローゼットに潜む都市伝説は灼滅された。

     古着達の消滅を確認し、秋五がそっとクローゼットの扉を閉じ、しめやかに合掌する。
    「僕、帰ったらクローゼットさんの中を確認します。お洋服さんは、着てあげないとかわいそうなのです」
     消えていった古着を思い、ルエニが目を伏せた。
     いつだって、最後は訪れる。
    「普段集まれない面子で春服衣装を着てきたんだ。良かったら最後に一枚、集合写真でも撮って行かないか?」
     だが、楽しかったファッションショーもまた事実。
     達郎の言葉に、仲間達はカメラの前でポーズを取った。

    作者:陵かなめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年4月10日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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