●precognition
その山の頂上には人の背丈以上の大岩がごろごろと転がっている。
日本の山にしては珍しく、辺りには草木も少ない。ある夜、ひときわ大きな岩の前で、白い炎が燃えていた。
いや、白い炎で身体を覆う幻獣、スサノオだ。
静かにたたずむそいつの顔には歌舞伎役者のようなクマドリ。いかつい表情を作っているはずのクマドリは何故かスサノオの無表情さを引き立てていた。
しばらく辺りをにらんでいると、スサノオはひらりと飛び上がって岩の上に乗る。そのまま向こう側に超えると、ためらいのない足取りで去っていった。
ふと気が付くと、スサノオのいた辺りに木の芽が出ていて、それは急速に大きくなり始めた。
●meeting
「ついにスサノオをとらえた」
教室で説明を始めるなり、神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)はそういった。
「本来ならスサノオはエクスブレインの予知を邪魔する力があるようだが、お前たちが一歩一歩追い続けたことで、スサノオと因縁を持つ灼滅者が増えた。だからこそ、不完全ながらも介入できるようになったようだ」
これはまぎれもなく灼滅者たちの成果だ。
「スサノオは今回も古の畏れを呼び出そうとしている。だからそれに対してこちらが取れる作戦は、大枠で二つだ」
一つ目は、スサノオが古の畏れを呼び出そうとしている所を襲撃し、戦闘を行う方法。 この場合の長所は、やり方次第ではスサノオだけを相手にすれば事態を解決出来る事。短所は、時間がかかると古の恐れが現れ戦闘に加わってくる事と、その場合スサノオが逃走する可能性がある事だ。
二つ目は、古の畏れを呼び出した後、去っていくスサノオを襲撃する方法。こちらの長所は、少し離れた場所で仕掛ければスサノオとの戦闘に古の畏れは関与してこない事。短所は、古の畏れを放って帰るわけにはいかないので、スサノオと戦った後に古の畏れも倒して帰る必要がある事。
「短期決戦と二回戦闘のどちらを選ぶかは、作戦に当たる者たちに任せる。どうかよく相談して決めて欲しい」
そして重要な相手の戦闘能力は、次の通り。
「スサノオは爪を使った重い一撃や芯を揺さぶり体勢を崩す咆哮、更には風や身体の炎を使って攻撃してくる。爪を使った攻撃以外は複数人を対象に出来るだろうな」
戦闘中は積極的に攻めてくる事に加え、スサノオの操る風をもろにくらえば、風は灼滅者たちの行動をさえぎりこちらの攻撃は当てづらくなるだろう。少しマシかもしれないのは、炎による攻撃は近くにいる灼滅者たちにしか届かない事。
「古の畏れの方は、急速に成長する大樹だ。山全体に対する恐れの象徴のようなものだが、放っておけば山で仕事をしたり山に出入りする人間に被害が出る。戦闘になれば鋭い葉を飛ばしたり、根を使って生命力を奪うといったことができるようだ」
また、近づくものを圧倒する一種の結界を張ったり、枝を増やして防御力を上げたりする。動き自体はゆっくりだが、枝が攻撃の邪魔をするため、しっかり狙わないと本体まで攻撃は通らない。
「どちらの方法を取っても、能力と気迫の求められる戦いになるだろう。だが、スサノオと戦える機会はもう一度あるかどうかも分からない。今回しか戦えないと思ってくれ」
と、念を押した後で、ヤマトはあえて力を抜いて笑った。
「とはいえ、やっとつかんだチャンスだ。俺はお前たちが、そんなチャンスをみすみす逃すとは思ってはいない。今までのようにやれれば大丈夫だ。この機を逃さず、しっかり灼滅してきてほしい」
参加者 | |
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氷室・翠葉(キュアブラックサンダー・d02093) |
九凰院・紅(堕月流丙三種第一級戦鬼・d02718) |
星野・優輝(戦場を駆ける喫茶店マスター・d04321) |
斎賀院・朔夜(愛すべきを護る餓娑羅鬼・d05997) |
森村・侑二郎(尋常一葉・d08981) |
夜桜・紅桜(純粋な殲滅者・d19716) |
システィナ・バーンシュタイン(マスカレイドミラージュ・d19975) |
アルディマ・アルシャーヴィン(詠夜のジルニトラ・d22426) |
●夜を歩く。
月明かりが夜に張った薄膜を引き裂いて、炎の塊がこちらに向かって歩いてくる。
スサノオ。
日本古来の種はもういない獣として有名なオオカミ、それによく似た、燃える身体の幻獣種。そいつは顔に、真っ赤なクマドリがあった。
「あれがスサノオ、古の畏れを呼び出すダークネス。やはり呼び出すには条件があるのか? だとしたら、まずは場所だろうか?」
星野・優輝(戦場を駆ける喫茶店マスター・d04321)が疑問やトピックを上げては、反論や付け足しをして考えをまとめる。一応口に出しておいたそれに、アルディマ・アルシャーヴィン(詠夜のジルニトラ・d22426)が答えた。
「加えて……今までに起きたスサノオとの戦いの報告を見る限り、スサノオは自分が呼び起こした古の畏れの力を手に入れて成長しているように見える。……この場で取り逃せばより強力なダークネスになってしまうのだろうか……」
「という事は、方法はともかく目的は自己の強化か」
「さて? 一番の目的が何かは分からないが、まずは被害が出る前にこのスサノオを倒さなくてはな」
「ようやくご対面だね!」
声を潜めて、夜桜・紅桜(純粋な殲滅者・d19716)が跳ねた。
と、スサノオの足が止まる。紅桜に反応したわけではないだろう。それよりも、はっきりとはしない空気の変化を感じ取ったようだ。スサノオは何かを探る様な気配を漂わせ、スサノオが判断する前にシスティナ・バーンシュタイン(マスカレイドミラージュ・d19975)は動いた。
「今、もしかして逃げようとした? 逃がすわけないでしょ?」
不敵な笑みを浮かべてスサノオの退路を塞ぐように構える。
「……無駄、だ」
スサノオが視線を巡らすと、その先に斎賀院・朔夜(愛すべきを護る餓娑羅鬼・d05997)が現れた。朔夜もまた退路を断つ。
二人に注意を引かれた隙に、炎を纏った弾丸が飛来した。
とっさに飛び上がったスサノオに合わせて一つの影が飛び上がり、引き寄せられるように空中で接近すると、スパイクを打ちこんだ。弾かれたスサノオは、着地すると即座に居場所を移して岩影に伏せる。
左腕に炎を纏わせ、森村・侑二郎(尋常一葉・d08981)は着地した。ガトリングガンを構えた九凰院・紅(堕月流丙三種第一級戦鬼・d02718)と回復に備えた氷室・翠葉(キュアブラックサンダー・d02093)が姿を現す。
「こいつがスサノオですか、見るのは戦争の時以来ですかね」
「こうも早くスサノオに会えるとはな……サイズは小さいが。……毎回畏れを呼ばれるんじゃキリがない。ここで灼滅する」
「はい。そうですね、なかなか興味深いですが……おとなしく倒されてもらいますよ」
翠葉にも追撃の機会はあったかもしれない。けれど今回は、使えるタイミングは全て仲間たちの回復に使うつもりだった。
「連戦……かぁ……。ちょっと大変そうだけど、みんなで頑張ればなんとなかるよね、うん」
翠葉の呟きの答えを待つ暇はなく、戦闘が始まる。
●炎風。
再びの紅の弾丸が、機先を制する。弾丸がスサノオに炎を移していく間に、前衛たちが距離を詰めた。
「いくよっ、夜桜!」
「ミッション・スタート!」
紅桜の回転する一突き、続けて優輝の魔力を持った一打がスサノオに叩き込まれる。優輝がいつの間にかかけた眼鏡の緑のフレームが光った。スサノオの体内で叩き込まれた魔力が爆発した。
動きの止まったスサノオに向けて、朔夜が腕を振るう。朔夜の動きに一瞬遅れて、鋼糸がスサノオを斬り裂いた。
「行くぞ、我が名にかけて!」
「出始めが肝心だよね」
接敵しながら、手の中にクルセイドソードを握る。アルディマとシスティナが駆け抜けると、白光を放つ斬撃がスサノオに十字傷を刻んだ。
その白光をスサノオの炎が飲み込む。一瞬身体が大きくなったかと思うと、スサノオは身体から炎をまき散らした。
近くにいたシスティナはあえて炎に突っ込み仲間を庇う。
「大丈夫、この時をまってたよー」
翠葉と佐藤さんがすかさず回復をかける。翠葉は聖句を風に変え炎を払い、佐藤さんはシスティナへと癒しの力を向けた。
「ありがとうございます」
システィナを後ろから跳び越え、侑二郎が一撃。魔力を纏った攻撃でスサノオを弾き飛ばす。
スサノオは地面の小石を弾き飛ばしながら着地、低く唸って風をよぶ。オン、と吠えると、集まった風が辺り一面を吹き飛ばした。
「……止める」
風の中、朔夜は身体を低くしスサノオまで突っ切る。固く握った拳を砲弾のように突きだした。スサノオは獣特有の滑らかな動きで前に進み、攻撃をかわすと同時に朔夜の懐に潜り込む。スサノオの爪が光を反射して光った。
「それ、隙ありだよ!」
朔夜のわきから、紅桜がスサノオに拳とオーラを叩きつけて弾きだす。苦し紛れのスサノオの爪は空を切った。
「次お願い!」
「はい」
「まかせてくれ」
追撃する侑二郎と優輝。しかし四足で立つスサノオは侑二郎のバベルブレイカーを身体を上下に振ってかわす。続く優輝が、非物質化させたクルセイドソードを大きく振り抜き、斬った。
風を押しとどめていた何かまで斬ってしまったかのように、再びスサノオから暴風が吹き荒れる。
「うっとおしい」
風に身を刻まれながらも紅はガトリングガンに炎を纏わせ、強引に振り回してスサノオを狙う。不意を突いたはずの一撃だったが、先程の風が動きを邪魔し、スサノオは素早く身をひるがえして攻撃をかわした。
「あの風、邪魔だね」
「手伝おう」
翠葉はスサノオの風を、佐藤さんがダメージの大きい防御役を回復する。続いてアルディマも、仲間にまとわりつく風を浄化。
「今度は外れないよ」
風は消え、システィナの炎を纏ったよこなぎの一撃がスサノオをとらえた。
●爪。
スサノオは吠える。獣らしくない、理知的な遠吠えをあげ、灼滅者につけられた炎を払い落とす。
先程までの全体への攻撃から一転、手近な攻撃役に向かって飛びかかり爪によって斬り裂くスタイルへと変わった。灼滅者達の攻撃と互い違いに繰り出されるうちの数発が灼滅者たちをとらえる。
「紅! すまない!」
「……星野は攻撃しろ」
優輝をとらえるかに思えた爪撃を紅が割り込んで受け止める。攻撃後、動きの限定される隙をついて優輝は魔力をスサノオへと叩き込んだ。
スサノオは声を上げて吹き飛ぶが、すぐさま体勢を整え紅桜へと爪を振るう。
鋭い動きだった。スサノオの攻撃が、ではない。紅桜は閃くスサノオの爪を、回避と言うには攻撃的すぎる鋭さでかわしていく。
「おかえしっ!」
攻撃を避け切る動きの最後に、紅桜はマテリアルロッドを叩きつけた。軽く見えた一撃は、スサノオの芯に問答無用のダメージを叩き込んでいる。
「もうちょっとだよ、頑張って。ね、頑張ろう」
翠葉に呼びかけられた佐藤さんも奮起し、紅へと回復の力を注いだ。翠葉も被害の大きな仲間へと回復の光を下ろし、光は傷を塞いでいく。
スサノオの唸り声。爪の攻撃が当たり難いことに見切りをつけたのだろう、スサノオが三度、風を呼ぶ。近くの大岩に駆けあがり、地面ごと灼滅者たちを襲わせる。
「そろそろ、怪我も重なってくる。こちらとしても無駄な長期戦は望むところではない!」
辺りを吹き飛ばし、小さな切り傷を増やしながら荒れ狂う風に、アルディマは祝福の言葉を解放し風に乗せてぶつけた。ダメージを減らす事は叶わずとも、こちらの攻撃の邪魔はさせない。スサノオの風は、吹き抜け、消えた。
紅は風に向かって走った。それはつまり、風の方向にスサノオがいるという事。風が消えた時、紅はスサノオのほぼ真下へと滑り込んだ。銃口を真上に立てる。
「このタイミング……撃ち尽くす!」
落ちてくるスサノオに、真正面からありったけの弾を撃ち込んだ。スサノオの反撃が来る前に、体勢を整え飛び退く。
反撃も不可能と悟ったか、スサノオは着地と同時に鋭く飛び退ろうとし――鋼糸が斬り付けスサノオはその機を失った。
「……スサノオ……逃さない……」
「終わりですね」
侑二郎がバベルブレイカーを構える。スサノオは、とっさに身体から炎を吹き散らすが、悪あがきにしかならなかった。
炎に耐え、侑二郎が杭を回転させて打ち出すとあっさりとスサノオを貫いた。最後にどこか遠くを見つめながら、スサノオは炎と一緒に燃え尽きてなくなった。
●休。
「倒したね! 皆、大丈夫?」
紅桜が軽くガッツポーズをする。
「……強敵だった、な」
と、朔夜は息を整えながら言った。
「だが、まだ終わってはいない」
アルディマはそう言うと、山の下方に目を向ける。そこには、先程まではなかったはずの大樹が黒々と夜に枝を伸ばしている。侑二郎も同じ方向を見て、相槌。
「はい、そうですね。もう一戦、気を引き締め直して挑みましょう」
「とにかく、今は心霊手術だね。一番きつい人からいこう」
システィナは回復の用意。隣で翠葉がしまったという顔をする。
「失敗しちゃったな。回復用のサイキックをもっと持ってくれば心霊手術に回せたんだけど……」
「まあ、ないものは仕方ない。庇ってくれた四人は、まず自分の傷を治してくれ。足りないなら俺からも融通しよう」
「了解した」
答えた紅は早速回復に取り掛かる。翠葉も心霊手術は行えずとも、できる範囲で治療を手伝い、各々がダメージを回復していった。
その間にも、灼滅者たちの視界の中で大樹は少しずつ、少しずつ月に向かって枝を伸ばしてゆく。
「これは、焦るな」
優輝の呟きをきっかけに、アルディマが提案した。
「一通りは終わっただろう。まだ続けるかはともかく、近くまで行こう」
「なるほど、賛成です」
侑二郎が賛成すると、紅桜もぴょんと立ちあがる。
「うん、もう一回、いくよ!」
「……歩む足は、止めない」
朔夜の呟きが尾を引いて夜に消えた。灼滅者たちは、今ひとたび戦場へ。
●樹。
「いくぞ」
「……ああ」
「おっけーだよ!」
大量の枝を蓄えた大樹に、紅と朔夜がガトリングガンから大量の弾丸を吐きだして打ち込む。枝に阻まれはしたが、いくらかは本体まで通ったはずだ。続いた紅桜が、本体に槍を回転させて一撃。
攻撃を受け、大樹は泣き声のような音を出しながら身体を軋ませ、辺り一帯を大量の葉で斬り付けた。回復しきっていない身体を押して、システィナと紅が仲間を庇う。
「治せる傷は任せてね」
翠葉は傷を治す事に注力し、佐藤さんとそれぞれ一人ずつ治せる限界まで回復する。
「無理だと思ったら、多少通してもいいからな!」
優輝が大樹の真正面まで突破。そのまま勢いを乗せ魔力と一撃を叩き込んだ。幹から弾けるような音がして、とたんに枝が周囲で暴れ狂った。
「まずは、再び体勢を整える所からか」
「倒れてなんか、やらないからね」
アルディマとシスティナはクルセイドソードを構え、もう一度周りの枝を払い落す。システィナの最後の一振りが、幹をとらえた。
「よっしゃ、見えたね。お願いするよ」
「はい。ありがとうございます」
機を逃さず、侑二郎はバベルブレイカーを押し当て、杭の一撃をぶちこむ。大樹が震え、空気が変わった。
大樹の内から、神々しいような結界が張られ、近くにいた灼滅者たちの動きを止める。
「ぐぅ……」
全方向から何倍もの重力を受けるような感覚に、システィナは思わず膝をつきそうになり、地面にクルセイドソードを突き刺して耐えた。剣にすがる格好になるがそれでも倒れる気はない。
「く……おお……!」
身体を抑えつけられながらも、朔夜は銃口を向け、炎と弾丸を打ち出した。弾丸はまっすぐに幹に吸い込まれ、火をつけた。
「なるほど、助かる」
朔夜の弾道を見て、紅も圧迫感の中ガトリングガンを構え、炎を纏わせた弾丸に同じ弾道をたどらせる。弾丸は大樹に突っ込み、大樹を燃え上がらせる。
「いい加減、うっとおしいね」
翠葉から流れる祝福の言葉の乗った風が灼滅者たちを抑えつける力を拭い去る。佐藤さんはシスティナへ援護。
「ありがとう。でも、次からはいいからね」
恐らくもう治り切らない。だったら自分は倒れてもいいから、他の仲間に支援を回してほしい。強い思いを映して、システィナのクルセイドソードが燃え上がる。枝葉など無視して、まっすぐに大樹へとぶつけた。
身を包む炎が広がるのに合わせて大樹も枝を増やし、守りを固くしていった。大樹の攻撃に体力を削られ、数人が膝をつきながらも灼滅者たちは残った力で渾身の攻撃を叩きつけた。
「やはりその枝、やっかいだな」
優輝は非物質化させたクルセイドソードを振るう。大樹が幾重にも重ねた枝を断ち切り、斬り開き、本体の幹を斬り付けた。
「よし、道は開いたぞ!」
「いきます」
優輝の拓いた穴に侑二郎が飛びこむ。打撃に魔力を込め、内部に向けて叩き込むが大樹も反対側の枝をしならせ叩きつけた。枝は折れたが、攻撃は本体には当たっていない。
同じ場所を狙って、朔夜が炎の弾丸を打ち出す。それでも大樹は一気に少なくなった枝を犠牲に本体へと届かせない。
「もう、この炎は止まらない」
アルディマは空いた空間に躊躇なく踏み込む。武器の刃を変化させ、大樹に斬撃を一度。炎が更に激しく燃え上がった。
「これでっ、終わりなんだよ!」
走り込む紅桜。大樹は枝を振り回し、地面から根を飛びださせ紅桜を止めようとするが素早く駆け抜けた紅桜には当たらない。紅桜の打撃と、同時に打ち込まれた魔力の爆発が大樹の一番根幹の部分を破壊した。
一瞬の静寂の後、炎に包まれた巨大な木が音を立てて折れていった。
●明へ。
大樹が消えると、どこからともなく息を吐く音が聞こえた。倒れていたものも起き上がり、倒れてはいなくともほとんどの者がそこらの岩に身体を軽く預けていた。
「……お疲れ様、だった……」
朔夜が労いの言葉をかける。
「大きな怪我とかない?」
紅桜も早速元気に続けた。疲れも見えるが、日ごろの癖で元気な声が出た。紅桜の声に触発されて、ぼちぼちと、大丈夫だと声が帰ってくる。
「皆お疲れ様。そういえば、すぐで悪いけど何か気になった場所とかあった?」
髪を払いながらシスティナは雑談ついでに確認する。
「いや、そういうのはないな」
いつも以上に必要な情報だけを返す紅。長期戦と仲間を庇い続けた事で、装備や服も傷だらけだ。
「あまり気を抜ける戦闘でもなかった、調査はまた別の機会だ」
「そうですね、結構大変でした」
アルディマの言葉に同意しながら、侑二郎はそれでも何かあるかと周りを見渡してみる。
「……だが、スサノオも討伐できた……。働きは……十分だろう」
「そうだな。ひとまず結果としては文句なしだ」
そう言いながら、優輝は岩から身体をはなした。翠葉がいかにも疲れた風に言った。
「あー、疲れたー。もう、早くお菓子食べて寝たいよね」
皆から、自然と笑いが漏れた。
作者:示看板右向 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年4月11日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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