グリュック王国大決戦~落日のテューリンガー

    作者:泰月

    ●だってソーセージ食べるの日課みたいなもんだし
     北海道は帯広、グリュック王国跡地。
    「た、たたたた大変だ!! ゲルマンシャーク様が灼滅されてしまったぞ!」
    『な、何だってー!?』
     突如、そんな一報がもたらされた。
    「これから一体どうすれば……」
    「いや待て落ち着け。レディ・マリリン司令官代理の帰還を待っ――」
    「あの人も灼滅されたってさ」
    「何だってー!?」
     とまぁ、ゲルマン怪人達の多くが右往左往する中、1人のソーセージマンは静かに建物の中へと入って行った。
    「ドイツ伝統のソーセージだ。ソーセージがあれば、きっとゲルマンシャーク様も帰って……帰って……うっ」
     冷蔵庫から豚肉のブロックを取り出すと、それを細かく刻み香辛料と混ぜ、腸に詰める。
     あっという間に白いソーセージが一山完成した。
    「……。……もっと作るか」
     ポツリと言って、追加のブロック肉を取り出す。
     また肉を刻む音が小さく響き始めた。

    ●ソーセージは教会の正午の鐘を聞くことを許されない
    「ロシア村の決戦、お疲れ様。すごい戦果だったね」
     教室に集まった灼滅者達に、夏月・柊子(中学生エクスブレイン・dn0090)は笑顔を見せた。
    「中でもゲルマンシャークを倒せたのは大きいわ。4体のご当地幹部の中で最強と思われていたから」
     とは言え、戦果を労うだけなら、こうして教室に灼滅者達を集める事にはならない。
    「お疲れ様って言った直後だけどね。グリュック王国攻略の決行が決まったわ」
     告げられたのは、次の決戦の計画であった。
     ゲルマンシャークを灼滅したと言う事は、即ち、グリュック王国跡地にあった『灼滅者を闇堕ちさせる結界』がなくなった事を意味する。
     加えて、レディ・マリリンと言う指揮官をも失った彼らは、混乱の真っ只中。
     もしこの混乱から立ち直る時間を与えてしまえば、再組織化されるか、他のご組織の軍門に下るか――ともあれ、新たな脅威になるのは間違いないだろう。
     そうなる前に一気に攻め込み、此処で各個撃破してしまおうと言う事だ。
    「皆に担当して貰うのは、ロシア村にも現れたソーセージマンよ。身に着けてるソーセージが全部白いけど」
     別にゲルマンシャーク灼滅のショックで血の気が引いたとかでなく、元々だ。
     ソーセージマン・テューリンガー。
     ドイツはテューリンゲン州で作られる、香辛料の効いた辛いソーセージの怪人である。
     スモークをかけない為、火を通す前は白いんだとか。
     炭火でグリルすると、とても美味しいらしい。
    「そんなテューリンガーがいるのは、グリュック王国の一角にある建物よ」
     元はレストランか何かだったのだろう。調理施設が残ってる場所に篭っていると言う。
    「そこで、ドイツのソーセージ作ってるわ」
     ゲルマンシャーク様を偲びつつ、お肉刻んで香辛料混ぜて腸に詰め詰め。
     そんな現実逃避によって、ソーセージの山がいくつか出来ているそうな。
    「正面突入で大丈夫よ。ゲルマンシャークを倒した灼滅者だと判ったら、逃げる事は考えなくなるから」
     おのれゲルマンシャーク様の仇、となるとの事。
    「戦闘能力だけど、まずビームとキック。これはご当地ヒーローに似てるわね。
     あとは、ケーシングって言うソーセージの皮になる腸を作り出して締め上げたり巻きつけたりして来るわよ」
     更に、ソーセージを食べて体力回復も可能と中々バランスの良い能力の様だ。
    「今回の攻略が成功すれば、ゲルマンご当地怪人を一掃出来る筈よ」
     ゲルマンシャークの灼滅により生まれた絶好の機会。
     これを逃す手はない。
    「折角の春休みに戦いが続く事になっちゃうけど、よろしくね。それじゃ、気をつけて行ってらっしゃい」


    参加者
    笠井・匡(白豹・d01472)
    砂原・鋭二郎(中学生魔法使い・d01884)
    小碓・八雲(鏖殺の凶鳥・d01991)
    村井・昌利(吾拳に名は要らず・d11397)
    瀬河・辰巳(宵闇の幻想・d17801)
    豊穣・有紗(小学生神薙使い・d19038)
    オリシア・シエラ(アシュケナジムの花嫁・d20189)
    村正・九音(東照宮のお庭番・d23505)

    ■リプレイ

    ●突入
     グリュック王国の開園は、丁度、世間が平成になった年の事だ。
     二十を越える年月が過ぎた事を物語る中世ドイツを模した風景の中を、灼滅者達は駆け抜けていた。
    「ドイツ風と言っときながら、色々中途半端だな」
     駆ける足を止めないまま周囲の景色を見回し、瀬河・辰巳(宵闇の幻想・d17801)が冷めた声を漏らした。
     故あって髪を染め日本人としての名を持っているが、実はドイツ生まれのドイツ人。
     本当のドイツを知っている彼の目には、どうにも中途半端にしか映らない。
    「ふむ。此処が仲間が闇堕ちさせられた場所か」
     一方、村正・九音(東照宮のお庭番・d23505)は、どこか興味深げに周囲を見回していた。
     ゲルマンシャークの率いるゲルマン怪人の拠点となった此処には、ほんの少し前まで『灼滅者を闇堕ちさせる結界』が張られていた。
     最初に調査に訪れた仲間の多くが闇堕ちさせられてしまった事だってあった。
     九音は話でしか知らない事とは言え、そう考えてみると色々と感慨深い。
     その隣を駆けるオリシア・シエラ(アシュケナジムの花嫁・d20189)は、笑顔の裏で静かな怒りを燃やしていた。
    (「……よくも友人を闇落ちさせてくれましたね」)
     声に出さずに胸中で呟いて、紅白の隊章を握りしめる。脳裏に浮かぶは、一度は結界の餌食となった同じ隊章を持つ友人の顔。
     とは言え、今となってはもう彼らの足を阻むものは何もない。
     ソーセージマンの1人が篭っている建物まで、何事もなくあっさりと到達した。
    「此処まで障害ゼロ。指揮系統がトップダウンに過ぎると、頭を潰された時の混乱が酷いな。こちらにとっては好都合だが」
     少しずれた帽子を直しながら、砂原・鋭二郎(中学生魔法使い・d01884)が淡々と呟く。
     好都合、と言う割りにその顔には笑みの1つも浮かべていない。
    「鍵は……かかってないねぇ。じゃ、行くよ。ごめんくーだーさーい!」
     扉を確認した笠井・匡(白豹・d01472)が、まるでレストランに入るようなノリで言って扉を開け放つ。
    「む? 何だお前達。イッヒは今忙しいのだ」
     奥にいた縦長の白い顔が、突入してきた灼滅者達の方を向いた。
    「ああやって、ただひたすら作ってるだけの怪人だったら平和なのにねー」
     肉を詰め詰めする手を止めないその姿に、豊穣・有紗(小学生神薙使い・d19038)が思わず呟く。
    「でも、ソーセージあんなに沢山作ってどーするんだろう? ん? 夜叉丸も食べたいの?」
     足元で鼻をこすり付けてくる霊犬に言葉を向けると、ふるふると首を横に振った。
     いや今はそんな事気にしてる場合じゃない、とか言いたげな感じだ。
    「あ、僕ら武蔵坂学園の灼滅者ですけど、ソーセージ貰いに来ました!」
     そこに、しれっと匡が言い放つ。
     そうじゃない、と突っ込む声が1つも上がらないと言う現実が、あわよくばソーセージ持って帰ろうって思ってるのが彼だけではない事を物語っている。
    「このソーセージは売り物じゃな……ってス、灼滅者だと!? 何故闇堕ちしてない!?」
     侵入者が灼滅者だと知り、流石にテューリンガーの手が止まった。
    「まさか結界がなくなった事すら気付いてなかったのか?」
     予想を裏切る敵の反応に、小碓・八雲(鏖殺の凶鳥・d01991)が僅かに目を見開いた。
     本当は判っているからこその、現実逃避だと思っていたのだが。
    「幾らソーセージを作って現実から逃避したところで、ゲルマンシャークは帰って来ない。奴はオレ達が殺した」
     多少想定と違ったが、それでも八雲は鋭く告げる。
     自分達こそ、仇であると。
    「ゲ、ゲルマンシャーク様……」
     その言葉に打ちひしがれるテューリンガー。
    「おのれ灼滅者どもが! そうはさせるか!」
     が、割とあっさりと立ち直って来た。
    「ゲルマンシャーク様の仇に渡すソーセージなど、イッヒのソーセージが白い限り1つもないわ!」
     ササッとソーセージを放り込んだ冷蔵庫を背後に庇い、ソーセージの顔でキリリと睨みつけてくる。
    (「流石に腸詰を戦塵に塗れさせはしない、か」)
     制止する間もなくソーセージの消えた冷蔵庫に視線を送りながら、鋭二郎の口が短く、灼滅開始、と呟いた。
    「……なんかまるでボク達が悪者みたいじゃないかー!」
     テューリンガーの言動に、思わず有紗が声を上げる。
    「いいさ、結局は生存競争なんだ。ドイツ怪人が生き残るか……或いはオレ達、出来損ないが生き残るかのな」
     己の中で戦いをそう位置づけ、八雲が右に刀、左に剣、2つの刃を構える。
    「ま、追撃戦も戦の習い、だ」
     喧嘩用の指貫グローブを嵌め手首を揉みながら、村井・昌利(吾拳に名は要らず・d11397)が進み出る。
     相手が弱っている所を叩くのは兵法の基本。そこに罪悪感などない。
    「とりあえず、ここで滅んでもらう」
    「ええ。ドイツの面汚しには、しっかりと落とし前をつけていただきましょう」
     辰巳が冷めた様子で告げ、オリシアも笑顔を浮かべたまま言い放つ。
    「全力で来い。アンタのご当地愛を見せてみろ」
     昌利が脱ぎ捨てた上着の落ちた音が、戦いの開始を告げる合図となった。

    ●テューリンガーの意地
    「燻製してないのって食べた事ないんだよねぇ。お勧めの食べ方は? 炭火焼? ボイル? ホットドッグ?」
     まばゆい光を纏った刃を振り下ろしながら、匡の視線はテューリンガーの体のソーセージへ。
     斬りつける手が鈍る事はないが、頭の中はソーセージの食べ方に大分占められていた。
    「マスタードやらなんやら言うけど、炙り立てをそのまま食うのが一番美味い」
     答える辰巳も、実はちょっとソーセージが気になっていたり。
    (「勿論、世界で一番美味いのはムッティの手作りソーセージだ」)
     母の味を思い浮かべながら、辰巳が影を操ってテューリンガーに絡み付かせる。
    「穿て」
     更に長銃の様にマテリアルロッドを構えた鋭二郎が、影の刃を放つ。
    「ソーセージは渡さん!」
     2人の影に抗するかの様に、テューリンガーの掌中より生み出された白いものが張り巡らされ、灼滅者達へ巻きついた。
    「うわっ。随分とねっとりするねぇ、これ」
     手足に絡んだそれの何とも言えない感触に、匡が思わず声を上げる。
    「これぞイッヒのケーシング! 近頃は人工のケーシングもあるようだが、腸が一番よ!」
     つまり本物の動物の腸に限りなく近い質感で作り出しているらしい。
    「……ああそうそう。スモークしていないソーセージは、しっかり火を通さないといけませんね。後でその顔、ズタズタに切り裂いて火の通りを良くして差し上げます」
     魔力を宿した霧を展開しながら、オリシアの金の瞳がテューリンガーを見据える。
     元々怒りを覚えていた所に、実に不快なねっとり感。浮かべる笑顔は変わらずに、言葉の節々の棘が少し鋭くなる。
     その後ろから、八雲が飛び出した。
     更にもう一度空中を蹴って、ケーシングを掻い潜る。
    「アンタの意志を……殺すッ! 奔れ! 意志の刃ッ!」
     一気にテューリンガーに肉薄すると、左手に構えた刃なき剣を振り抜いた。
    「ぬぐぅっ!?」
     物質としての姿を失くした刃が斬るは霊魂。文字通り、意志を斬る一撃。
    「っ!」
     続いてケーシングを飛び越えた昌利が、短い呼気と共に雷光を纏った拳でテューリンガーの顎をかち上げる。
    「今更だけど、お前って見た目が怖いと有名だぞ」
     巨大な杭打ち機を構え、九音が続く。
    「しかも、お前らみんな同じ姿だよな。双生児なのか? ソーセージだけに」
     高速回転する杭はテューリンガーに届く前に、絡みついたケーシングに軌道を逸らされる。
    「何を訳の判らん事を。ソーセージがソーセージなのは当たり前だろ。しかもこの顔の良さが判らぬとは、所詮なり損ないだな!」
     叫ぶテューリンガーの顔が、輝きを放つ。
    「夜叉丸、お願い!」
     間合いを離そうとする九音に放たれた白光が追いつく直前、有紗の指示で霊犬が割り込んだ。
     同時に有紗が優しい風を招いて、霊犬を含む前の仲間達へと吹き渡らせる。
    「ふぅ。助かったぞ。しかし双生児は通じないか……」
    「まあ所詮ドイツの怪人です。それにほら、あの顔、頭悪そうじゃないですか?」
     そう指摘するオリシアの言葉で、改めて敵の顔を見る九音。
     ソーセージだった。
    「うん、そうだな。きっと頭悪いな」
     顔を見合わせ、頷く2人。
     向こうで聞こえてるぞとか怒鳴ってるのはスルー。
    「でも、攻撃は結構強力だよ」
     先ほどの風でダメージを癒しきれなかったのを確認し、有紗が告げる。
    「幹部を失って混乱しても、ダークネスはダークネスか」
     淡々と敵の強さを再確認する鋭二郎。
     楽に勝てる相手ではない。同じ事は、全員が感じていた。自然と、空気が引き締まる。
    「くくく。お前ら纏めてケーシングに詰めて特大ソーセージにしてくれ――」
     テューリンガーが言い終わるより早く、八雲が飛び出した。
    「反応が遅い! 止められるものなら、止めてみろッ!」
     独自の歩法で一気に間合いを詰めた八雲の右の刀が、ケーシングが生み出されるより早く敵の掌を貫いた。
     呻いて飛び退いたテューリンガーの頭を、後ろから伸びた昌利の掌がむんずと掴む。
    「ふっ!」
     昌利は片手で敵を掴んだまま、全身を使って振り上げて天井に投げ付けた。
    「ソーセージの材料になるのはそっちだろ」
     天井にくっきりと跡を残して落ちたテューリンガーに、辰巳が魔力を流し込む。
     爆ぜた魔力で、ソーセージも爆ぜる。
    「ああ、勿体無い。全部割れる前にソーセージ毟り取りたいなぁ」
     盾を纏わせた拳で殴りつけながら、匡の視線はやっぱりソーセージへ。
    「お前らに渡すくらいなら自分で食うわ!」
     パリッと焼けたソーセージを頬張ると、テューリンガーの顔にてかてかとしたツヤが戻る。
    「貫け」
    「串も通しませんとね」
     その顔を、鋭二郎の放った魔力の矢とオリシアの放った瑞兆の矢が容赦なく貫いた。
    「ふふん、腸詰め怪人を超冷たくしてやるのな」
     ツヤが消えた所に、九音が放った鋭利な氷が突き刺さる。
    「冷たっ! 腸詰め言うな! イッヒはソーセージマン・テューリンガーである!」
    「くそう、腸詰めと掛けても通じないのか! この脳までソーセージめ!」
     また(言葉の方が)通じなくて、九音は悔しそう。
     どうやらテューリンガーはツッコミにはなれそうにない――のはさておくとして。
     勢いを増した灼滅者達の攻撃は、確実にテューリンガーの体力を削っていった。
     相手も黙ってやられてはいない。ケーシングで縛り、重たい蹴りを放ってくる。
     有紗の放つ光輪が盾となりオリシアも霊力を放ち、2人で戦線を支え続けた。
    「大人しくテューリンゲンの森にでも住んどきゃ良かったのにな……あ、でも動物に食われるか」
     冷めた視線は変わらぬまま、辰巳は手足に狙いを定めて影で斬りつける。
    「喰らえ」
    「ダメ押しだ! 傷を抉らせてもらうぞ!」
     鋭二郎の影が膨れ上がり、それが収まった直後に、影を宿した刃で八雲が斬りつける。
     二重のトラウマは、テューリンガーに何を見せたか。
    「ゲルマンシャーク様の仇……せめて1人はッ!」
    「おっと、させないって」
     ふら付きながらも飛び上がったテューリンガーが振り下ろした蹴りを、匡が光の盾をかざし体で受け止める。
     その隙に、昌利が懐にするりと潜り込んだ。
     言葉は不要。
     両の拳に込めるは、この戦いと敵に対する最大限の敬意を。
     連続で叩き込んだオーラを纏った拳が、テューリンガーの体を壁まで吹き飛ばす。
    「く、くく……ゲルマンシャーク様とドイツソーセージに栄光あ……れ」
     崩れ落ちたテューリンガーの体が爆散すると、ソーセージの焼けた匂いが辺りに漂った。

    ●勝利の報酬はソーセージ?(早めに食べてね)
     冷蔵庫を開いて中を覗き込んだ瞬間、数人が思わず息を呑んだ。
     上から下までずらりと、大量の白ソーセージ――テューリンガー・ロストブラートヴルストが格納されていたのだ。
    「白ソーセージ……美味そう」
     本場の味を知っている辰巳も思わず小さく喉を鳴らす。
    「すっご。え、これどうするの? ボク達食べちゃっていいのかな?」
     余りの数に戸惑い、目を瞬かせる有紗。足元では霊犬が尻尾パタパタ。
    「その内に通電も止まり、腐るだけだろう。その前に有効利用しなければ」
     大量のソーセージにも表情を動かさず、鋭二郎は横から手を伸ばして未使用のブロック肉を掴んで自分のポケットに放り込む。
     まずは大物から回収だ。
    「ま、貰えるもんは回収しときゃいいんじゃないすか? 土産になりそうだし」
     上着を拾いに行っていた昌利も、後ろから冷蔵庫へ手を伸ばす。
    「うん、いくらダークネスが作ったものでも食べものに罪はないよね。って言うかスモークしてないソーセージってどんくらい日持ちするの?」
    「ヴァイスヴルストじゃないから少しは持つけど、早めに食べた方がいいよ」
     問いつつ答えつつ、匡と辰巳も自分の分のソーセージの確保に取り掛かった。
    「放っておくわけにもいかなかったとは言え、ただソーセージ作っていただけ。少しだけ申し訳ない気がするな。ゲルマンシャーク……本当に慕われていたんだな」
     ちょっとしたソーセージ争奪戦状態になりつつある仲間達の背中を眺めながら、省エネモードに戻った八雲がポツリと呟く。
    「周辺の探索は、あれが終わってからかな? ゲルマンシャークのいた本部の場所、聞き出しておけば良かったか」
    「その辺のゴミ箱にうっかり機密情報を捨てていたりしないでしょうか」
     そんなにソーセージに興味がない九音とオリシアは、壊れてない椅子に座って話をしながら争奪戦を眺めている。
     ゲルマン怪人の拠点となっていた場所だ。
     探索をしておきたいとはほぼ全員が少なからず思っていたが、切り上げるラインを決めていなかった。
     誰も倒れていないとは言え、消耗は軽くない。
     安全を取るならば、真っ直ぐに帰還した方が良いのだろう。
     少なくとも、充分な戦果とソーセージというお土産はあるのだから。
     いずれにせよ、冷蔵庫前のソーセージの分配が終わるまで、まだもうしばらく掛かりそうだった。

    作者:泰月 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年4月15日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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