グリュック王国大決戦~さよならドイツのソーセージ!

    作者:高橋一希

    「ゲルマンシャーク様が灼滅されてしまった……だと!?」
    「レディ・マリリン司令官代理もいらっしゃらない。我々はどうしたら……?」
     頼れるものが居なくなったゲルマン怪人達はただひたすらにオロオロしていた。
     そんな中、一人のソーセージマンが場を離れる。
     彼の向かった先にあったものは豚舎。恐らくグリュック王国のゲルマン化を夢見て作ったものなのだろう。
     豚舎に入るなり小豚たちがピキーピキーと鳴き、つぶらな瞳で彼を見つめる。
     彼はそんなかわいい子豚たちへと話しかけた。
    「ゲルマンシャーク様亡き今、お前達を美味しいソーセージにしてやる事はできそうにない……普通のソーセージにしか出来ないが、我慢して欲しい……」
     自分でそう述べてソーセージ怪人は何か感極まってしまったらしく、がしり、と小豚たちを抱きしめた。
    「アイン、ツヴァイ、ドライ! おまえたちの美味しいソーセージになれない無念はしかと受け止めたぞおおおお!」
     一生懸命鳴く小豚たちと、慟哭するソーセージマン。
     ……なんていうか、ダメだった。
     
    「新潟ロシア村での戦い、お疲れ様でした」
     五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)は訪れた灼滅者達をにっこり微笑み労った。
    「それも、4体のご当地怪人の中でも最強と思われるゲルマンシャークを打ち破るという功績!」
     普段は落ち着いた雰囲気の彼女にしては、語調は僅かに興奮気味。それだけ灼滅者達が素晴らしい戦果を上げたという事だろう。
    「そこで、です」
     姫子は興奮を冷ますようにすこしだけタメを作る。
    「ゲルマンシャークが灼滅された事で、灼滅者を闇堕ちさせるという結界が無くなったグリュック王国を攻略する作戦を行う事になりました」
     ゲルマンシャークを失ったゲルマンご当地怪人達は、指揮官不在の為混乱に満ちている。もしこの混乱から立ち直るまで放置しておけば、再組織化されるか、他の組織の軍門に下るなどするかもしれない。
     そうなれば新たな驚異となる事は間違い無いだろう。
     グリュック王国には、多数のご当地怪人が居るが、混乱により連携は取れていない。
     つまり、いつ攻めるのかと言われたら――今なのだ。
     一気に攻め寄せて、それぞれのご当地怪人を各個撃破する。それが狙いだ。
    「戦争直後でお疲れかもしれませんが、皆さんの活躍に期待しております」
     姫子はそう述べ敵の情報を語りはじめる。
    「今回皆さんに戦ってもらう相手は、1体のソーセージマンです。彼は森を開拓してつくった豚舎に居ます」
     何故豚舎? と灼滅者達が不思議そうな顔をするも、姫子は意に介した様子もなく続ける。
    「育ててソーセージにする予定だった子豚に話しかけていますね」
     ……意味が分からなかった。
    「しかも子豚の名前はそれぞれアイン、ツヴァイ、ドライというそうです」
     名前付けてるのはともかく、ネーミングは雑だった!
    「現実逃避なのか、小豚に一人で話しかけている所なので、間違い無く各個撃破が狙えます」
     姫子は敵の攻撃方法についての解説をはじめる。
    「まずは巨大なフォークで刺してきます」
     ブスっと刺さると痛いだけではなくドレイン効果もある。近距離単体への攻撃だ。
    「二つめ、同じくフォークで刺してくる攻撃なのですが、こちらはフィニッシュ効果があります」
     ご当地キック相当ですね、と姫子。こちらも対象は近距離単体。
    「三つめ、フォークで相手をひっかけて投げ飛ばす攻撃。これはご当地ダイナミック相当です」
     近距離単体への攻撃だが、ブレイク効果があるので油断はならない。
    「そして、美味しいソーセージを食べる事で気合いを入れ、体力を回復し、更にバッドステータス耐性を得る技と、シャウトを使います」
     ご当地ビーム相当の攻撃をする事は無く、全体的に気魄にすぐれた敵らしい。また、ポジションはクラッシャーの為、攻撃によるダメージ量も大きい。ヒールは重要だろう。
     愉快な外見、かつ愉快な敵ではあるが、例によってダークネスは1体でも大変強いので、油断は大敵。
    「折角素晴らしい戦果を上げたのですから、これを盤石なものにするべくどうか頑張ってください」
     姫子はそう灼滅者達を激励し、送り出すのであった。


    参加者
    宇佐・兎織(リトルウィッチ・d01632)
    殿辻・尚都(アルミニウムプライズ・d01744)
    ストレリチア・ミセリコルデ(妖怪肉おいてけ・d04238)
    流鏑馬・アカネ(紅蓮の射手・d04328)
    淳・周(赤き暴風・d05550)
    榊原・和希(黄金週間後は毎年生ける屍・d14787)
    ユメ・リントヴルム(竜胆の夢・d23700)

    ■リプレイ

    ●七人の荒ぶる女子と、一人の男子
     グリュック王国への道をただひたすら突き進む灼滅者達。
     ソーセージは最強の食材! 宇佐・兎織(リトルウィッチ・d01632)!
     ソーセージは粗挽き派! 殿辻・尚都(アルミニウムプライズ・d01744)!
     お肉大好き! ストレリチア・ミセリコルデ(妖怪肉おいてけ・d04238)!
     豚は鑑賞用、食用どちらでも! 淳・周(赤き暴風・d05550)!
     ナポリタンにはやっぱ赤ウインナー! 榊原・和希(黄金週間後は毎年生ける屍・d14787)!
     エリスフィール・クロイツェル(蒼刃遣い・d17852)は「怪人の言う『普通のソーセージ』と『美味しいソーセージ』とでは、養豚の手法などに差違があるのだろうか?」と真剣に考え込んでいる。
    (「何かコツでもあるなら、少し聞いてみたい気もするな……」)
     それぞれが胸中に思いを抱える中、エクスブレインに伝えられた情報から知るソーセージマンの外見を思いだし、流鏑馬・アカネ(紅蓮の射手・d04328)は既にちょっぴり胸焼けしそうな気分。
     ユメ・リントヴルム(竜胆の夢・d23700)の「悪い奴はドイツだー? なんちゃって」という素敵なギャグにすこーんとすっころびかけたりもしつつも、ドイツ感溢れる怪人達の息の根を止める為に。
     ――いざゆけ! 灼滅者!!

    ●目には目を、歯には歯を、ソーセージにはソーセージを……?
     そんなわけで豚舎へと辿り着いた灼滅者達。
     ここにやってくるまでの灼滅者達の行動は極めて迅速。
     廃園になる前の地図を周が探し、予知を参考にエリスフィールがルートを確定。万端の準備だった。
     また迷わないようにとユメがそっと目印をつけつつやってきた事もあり、戦闘後の撤収も恐らく迅速に行える事だろう。
     壁越しに豚舎の中の音に気を配ると、ぶつぶつと何かを語る声が聞こえてきている。小豚のピキーと鳴く愛らしい声も。
     合間に、偶に妙に高ぶっちゃった感じの叫びとかも混ざるあたり、どうやらここが例のソーセージマンの居場所らしい。
    「開拓して豚舎を作るとか、怪人ってマメだよね」
     ユメの言う通り、一体何がそこまで彼を駆り立てたのか。いや、いうまでもなく美味しいソーセージだろう。そして美味しいソーセージで世界征服をしようと企んでいるのだろう。落ち着いて考えると意味がわからないが。
    「ここまで動揺するとは……本気で予想してなかったんだなゲルマン怪人共……」
     ひそひそと気づかれないように灼滅者達は話し合う。
    「……別れ言ってたって事は今からソーセージにするつもりなのかね」
     だとしたら、子豚大ピンチ? と周。小屋の中からは相変わらず小豚に話しかける怪人の声が聞こえてくるし少々憐れな感じではある。だが倒さない道理もない、と彼女は拳を握り、兎織へと視線を送る。
     兎織は小さく頷きそっとサウンドシャッターを展開。これでどれだけ戦闘音が響こうが、偶然目にされたりでもしない限り援軍がくる事はありえない。
     あとは――タコ殴りだ!
     豚舎の扉をユメが蹴りあけ、灼滅者達がなだれ込む。
    「な、なんだきさまら!」
     慌てふためくソーセージマンを兎織がじっと見つめ、そして目を瞬く。
    「あんまり美味しそうじゃない???」
    「うん、キミはちょっと美味しくなさそーだ」
     尚都の他にも食欲減退してるメンバーは結構居た。
    「果物とかお菓子ならいいけど、肉はちょっと生々しいんだよ……」
     アカネはついには視線を逸らし始めた。一方彼女の霊犬わっふがるは。
    「わっふ! わっふ!!」
     怪人は美味しそうな匂いがするのか嬉しそうに尻尾を振っている。
    「……そのソーセージはやめときなよ」
     口元押さえた主の言葉に赤毛の霊犬はしょんぼりしたように尻尾を下げた。
     一方的かつ連撃のごとき灼滅者達からの「美味しくなさそう」コールに怪人は怒りに打ち震える。
    「貴様ら……このぷりっとしたソーセージを見てそのような事を……! 半分に折ればぱきんといい音がして、肉汁したたるジューシーで歯ごたえのある素敵なソーセージなんだぞ! そう、いうなればソーセージ界のバラを背負った超絶美形!!」
     意味不明な形容をしつつ右手には鋭く輝く銀のフォーク。そして左手にはあっつあつのボイルしたソーセージ! そいつを口に放り込みむと咀嚼し嚥下。
    「嗚呼……やはり自分の作るソーセージは最強であり最高……! ドイツ万歳!」
     妙にうっとりしているのが少々キモチワルイが、周は敵への距離を詰める。
    「さっき、何者だ、って訊いたね」
     赤い長い髪をはらりと舞い、足元の、夜闇のように真っ黒な影が針のように鋭く伸びた。
    「――アタシが、どこにでもいる正義のヒーローさ!」
     影が敵の手足を貫き、その場へと縫い止める。
    「うおぉおぉ!?」
    「ゲルマンの日本侵略に引導を!」
     未だ事態が把握できていない怪人へとビシリと宣告する。
     続けてアカネも片手に構えたガトリングガンを発射!
    「上手に焼けてもっと美味しいソーセージになりなよっ」
     爆炎の魔力が込められた弾丸がソーセージマンを焼く。そして漂うこんがりと美味しい匂い。わっふがるも尻尾を振ってちょっと喜んでいるし。
    「もう一回言うよ! そのソーセージはやめときなよ」
     無理しないようにね、と言い含めると霊犬の尻尾がしょぼんと垂れた。
     ストレリチアが手を祈るように組み語る。
    「貴方はダークネス、私は灼滅者……決して相容れぬ存在同士ですわ」
     悲しげに、それこそ恋愛ものの古典文学の如く仰々しく語るも……狼尻尾がぶんぶんと。美味しい匂いにテンション上がっているらしい。あまりに尻尾を振りすぎてちょっと見えてはならん感じのものが見えかけている。
     だが彼女はそこいらへんまで気遣っていないのか、ただ滔々と語り続ける。
    「ただし! 美味しいお肉を求める志は共通のものっ! 貴方の素晴らしいソーセージ作りの技は、失われるものであってはいけませんわ!」
    「おお……判るか! このソーセージのすばらしさ!!」
     怪人もまた理解者が居ると思ったのかフォークを収めつつ距離を詰める。
    「その小豚達には何の罪も無いとあれば尚更ですの! ええ――貴方が倒れても、決して彼らを無碍にはしないと約束いたしましょうっ!」
     ……しかし、ストレリチアは遠まわしな言い方ながらも倒す気満々。
    「どうか私にご伝授下さいな師匠ー!!」
     握手に見せかけ彼女の腕は巨大化し、そして異形へと姿をかえる。ぶん、と振るった一撃は、紙一重でソーセージマンに回避される。
     ちょっぴり残念な顔をしつつも、ストレリチアの目的は余所にある。全力での攻撃は次からだ。
     そんな愉快なやりとりの合間にも兎織は自身を覆うバベルの鎖を瞳に集中。
    「宵闇の顎……喰らい付け」
     エリスフィールの声にあわせるように、それまでどこか穏やかにたゆたっていた漆黒の影が、鋭い刃の如く牙を剥き、敵を呑み込んだ。

    ●全てには終わりがある、ソーセージには終わりが2つある。勿論戦いにも終わりはある。
     激戦の中、二人と一匹のディフェンダーはかなり持ちこたえた。
     さすがにディフェンダーだけでもこれだけの人数が居れば、仲間が攻撃されても、誰かしかは庇いに入れる。それに、うまい事発動させたトラウマや捕縛なども敵の動きを封じる良いはたらきをしていた。深めの傷を負うことがあっても、そこは尚都をはじめメディックがフォローする。
    「白衣の天使が如き回復、頑張っちゃうヨー!」
     ばさりと白衣をはためかせ尚都はリングスラッシャーを分裂させ、そして和希の前へと配置。
    「ありがとな! これで次の攻撃に備えられる!」
    「ふっふーん、まっかせろー!」
     礼へと元気に答える尚都。
    「断罪の時間だコラー!!」
     白軍服のユメがサイキックソードを手に敵へと迫る。そんな彼女は部分的に水晶を纏っている。
     彼女としてはこのソーセージ怪人は大変許せなかった。
     というか、色々やらかしているドイツな怪人達は大体許せなかった。
     何故なら、彼女はドイツ出身。ドイツのイメージダウンになる、というわけだ。
    「風評被害の原因は、バッサリ切り裂いてあげるから!」
     じりじりと間合いをつめつつも彼女と和希が問いかける。
    「「つか、ソーセージとウインナーの違いって何?」」
     二人からかけられた言葉に怪人が更なる怒りの為か、茶色っぽい頭が赤に染まる。
    「ソーセージとウインナーの違いが分からんだと……!? ウインナーは太さ20mm未満で羊腸を使用したソーセージで、ウインナーの語源は――」
     話が長いので略する。
    「――ええい。ソーセージとウインナーの分からん連中は魚肉ソーセージでも食っ……ああ、だが美味しいソーセージを食べさせなければソーセージのすばらしさが理解されない……」
     一人悶絶するソーセージマン。なんというこんにゃくメンタル。
    「成程、違いはそこにあったんだね!」
     問いかけた二人は納得の表情をし……。
    「なんていいつつ、隙あり!!」
     ユメがサイキックソードで文字通りエンチャントごとバッサリ切り裂き、和希も雷纏ったアッパーカットで続く。
    「く……猪口才な……!」
     二人の連係攻撃に蹌踉めきつつもソーセージマンは巨大フォークをフルスイング!
    「ふき飛べぇぇぇぇ!!」
     わっふがるへとジャストミートし、霊犬は豚舎の壁に叩きつけられた。ずるりと崩れ落ちた様子を見るに恐らく、戦いの間は立ち上がる事もままならないだろう。
     灼滅者達はそれでも退く事なく戦い続ける。
     火線が奔り、武器が打ち合わされる鋭い音が響き、あるものはステップを踏み敵の攻撃を躱し、時に攻撃に転じる。
     戦いの最中、周は問いかける。
    「なあ、ソーセージはドイツ発祥なんだし普通にあんた作りゃ美味しいんじゃねえの?」
    「きさまは何も分かっていない……! その為には素晴らしい肉が必要! だからこそ、今ここでソーセージにぴったりな肉になるよう小豚たちを育てていたのだ!
     敵は首を振り、そしてフォークを構え治す。
    「次はきさまだッ! ソーセージを馬鹿にした報いは受けて貰うッ!!」
     異様なスピードで繰り出されるフォークの一撃。しかし……。
    「危ねぇッ!」
     和希が周の前へと滑り込む。内臓を貫くような痛みが身に奔り、僅かに遅れて口内、鼻腔にも凄まじい血臭が満ちた。
    「凹んでても流石にダークネス。つえぇや……」
    「きさま……何故自分の攻撃を態々受けに来る……?」
    「俺にも意地あっからな! それに……負けらんねぇもんよ!」
     今だ! と彼が叫ぶ。
    「フォークは自分の頭に刺してりゃいいだろ!」
     幾度目かの炎弾をアカネが放ち、ストレリチアがマテリアルロッドで殴りつける。蜂の巣にされ燃え上がるソーセージマンに、魔力が流し込まれ敵は内部から爆発。猛攻の前に、その身がぐらりと傾ぐ。
    「はじけるお肉の脂! えくせれんとっ!!」
     コメントこそ愉快だが、この一連の連携攻撃は今までで一番効いている。つまり、敵の弱点は――。
     おもちゃの魔女っこステッキのたぐいを思わせるロッドを、兎織はタクトの如く操る。
    「よーし、わんわんさんたち、ソーセージをもぐもぐするんだよーっ!」
     足元にとどまって居た影が、猟犬の如き形状をとり敵を呑み込む。
     その合間にエリスフィールは自身の武器を寄生体へと取りこませる。彼女の腕は今や巨大な砲台と化していた。
     漸く影から逃れ出たソーセージマンの鼻先へと彼女は銃口を向ける。
    「……これで、デッドエンドだ」
     落ち着いた一言とともに、エリスフィールの腕から一条の死の光線が放たれる。
     灼かれた敵は断末魔すら上げる間もなく、ぱりん、と素敵な音を立てて爆発四散。
    「師匠ーっ!」
     慟哭するストレリチア。その目からは滝のような涙が。
     もしかしたら、美味しいソーセージが食べられない事への涙だったかもしれないけれど。

    ●多少やんちゃでもいい、美味しく育って欲しい……かも?
    「まさに、歯ごたえのある敵、だったね……!!」
     ユメは纏っていた水晶を収納し普段通りの白軍服姿に戻りつつ述べる。
     ソーセージだけに、という所か。
    「しっかし、名前、なんで数字だったんだろなー」
    「一郎二郎三郎みたいなネーミングセンスだよねー」
     早速小豚の前にしゃがみ込み、首を傾げる和希。それに彼女も頷く。
     小豚は円らな瞳でふたりをじっとみつめてぴきーと鳴く。
     将来、ソーセージにする時に情が移んないよーにとかなんだろか? と考えつつも、小豚の動き回る姿をみていると、可愛らしいという感情が湧いてくる。
    「やっぱり野生に放すのがいいのかなぁん?」
     きゃわわー♪ 等と小豚と戯れつつ兎織が言った所で、エリスフィールが思いだしたように仲間達へと問いかける。
    「そう言えば、豚舎の豚たちはどうするのかは聞いていないな……」
     エクスブレインはそのあたりについては指示をしてきていなかった。
     放置するのは無体な気がするが、私達とて何か出来る訳でもないし、とエリスフィールは真剣に小豚たちの今後について悩んでいる。
    「ウーン、このまんま豚舎に閉じ込められたまんまってーのもカワイソかナー」
     尚都は小豚を前になでていいものか、それともいかんものかと悩む。そうこうするうちに白衣の端っこを小豚に引っ張られはじめる。フランスパン食べるかネー? などと言い乍らポケットから出したパンをちぎってバラ撒き様子をみつつ、仲間達へと問いかけた。
    「元気に育てヨーって放すのがイイカンジ? それとも大学にちょーどイイ学部とか有ったっけー?」
    「武蔵坂の大学に農学部があったと思うから、連れていけないかな」
    「畜産体験とかで働いてもらうのがいいんじゃない?」
     尚都からの言葉に、ユメとアカネが顔を見合わせる。
     ストレリチアも小豚を保護する気満々。問題は……。
    「貴方達に私から、この言葉を贈りますわ――おいしくなあれ!」
     仲間達の視線が生温い。
    「えっ!? ダメですか? そっ、そんな!? 約束がっ!?」
     ソーセージマンに小豚たちは美味しいソーセージにすると約束したわけだが、なんとなく仲間達の視線が心に刺さる。
    「……ってかこの豚何処から入手したんだ……?」
     根本的な疑問を口にする周。
     もしかして、どこかから浚われてきていたりするんだろうか……?
     迷い豚として届け出るにせよ、畜産関係の学部に連れて帰るにせよ、将来的に小豚がソーセージになる日も来るかも知れない。だがそれはそれとして、灼滅者達は学園へと帰還する。
     ――とりあえず保護した三匹の小豚の先行きを考えながら。

    作者:高橋一希 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年4月15日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 7
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