グリュック王国大決戦~不意に怒るは想定の外

    作者:幾夜緋琉

    ●不意に怒るは想定の外
    「なんだと……そ、それは本当でござるか??」
    「本当でビアー! まさかまさか、本当にゲルマンシャーク様が灼滅されてしまうとは、驚きだビア!!」
    「うう……こんな時にこそ居るべきなレディ・マリリン司令官代理様さえいないとは……ど、どうすればいいのだ?」
    「し、知らないでビア! そんなの、お前が考えろでビア!!」
    「何ぃ? お前はぎゃーぎゃー騒いでるだけだろうが! そういう時位、ちょっとは考えろ!」
    「なにをぉぉ!!」
     ……ゲルマンシャークが倒れ、慌てふためいて、罵声の嵐を掛け合っているのは、ゲルマンシャークの配下である、ゲルマンご当地怪人達。
     彼ら彼女らにとって、ゲルマンシャーク様が倒されるのは万が一にも想定外……当然ながら、こんな事になるなど思っていなかったのだろう。
     だから彼らは、ぎゃーぎゃーと大声で言い争い……最早一瞬即発の状態であった。
     ……そして、ゲルマンご当地怪人が言い争い、数刻。
     その言い争いに割り込む様に。
    「こ、ここで言い争っていてもしょうがないソーセージ!! この様な言い争い、無駄でソーセージ。それがしは、自室に戻らせて貰うでソーセージ!!」
     と、言い争う場を出て行くソーセージマン。
    「ううー、むしゃくしゃするでソーセージ。もう、こうなりゃやけ食いでソーセージ!!」
     と、すっかり茹で上がったソーセージと共に、彼は仲間達の下を去るのであった。
     
    「皆さん、集まって頂けた様ですね。それでは、説明を始めさせて頂きますね」
     と五十嵐・姫子は、集まった灼滅者に対し、まずは微笑む。
    「まずは、先日の新潟ロシア村の戦い、お疲れ様でした。皆さんのお陰で、4体居るご当地怪人の中で、最も最強と思われるゲルマンシャークを打ち破るという事が出来ました」
    「そして今回、皆さんに集まって貰ったのは、このゲルマンシャークが灼滅された事により、灼滅者を闇墜ちさせるという結界がなくなったグリュッグ王国を攻略する作戦を開始しよう、という事になったのです」
    「ゲルマンシャークを失ったゲルマンご当地怪人達は、今は指揮する者もおらず、混乱している様です。この混乱から立ち直れば、再組織化されるか、他のご当地の組織の軍門に降るなど、新たなる脅威になるのは間違い無いでしょう……今がチャンスなのです」
    「グリュッグ王国には、多数のご当地怪人が居ますが、現在は連携等が全く取れていない状況です。今ならば、一気に攻め寄せる事により、それぞれのご当地怪人を各個撃破する事が出来る筈です」
    「昔から、兵は拙速を尊びますと言います。皆様の迅速な活躍を期待しているのです」
    「そして皆さんに倒してきて頂きたいゲルマンご当地怪人ですが……ソーセージマンです」
    「ソーセージマンは、ビアホールみたいな所でジャーマンポテトとソーセージをやけ食いしているみたいです。基本的には油断している状況で襲撃出来ると思います」
    「しかし、彼の周りには、彼に従うゲルマンペナント怪人が3体います。つまり4人で、ジャーマンポテトとソーセージをやけ食いしながら、ゲルマンシャークの灼滅を哀しんでいる様です」
    「……とは言えゲルマンシャークの配下の一人であったソーセージマンです。下手なご当地怪人よりは強い相手となるでしょう……なので、決して油断せずに、相対してきて頂きたいと思います」
     そして姫子は、皆を再度見渡すと。
    「ゲルマンご当地怪人を倒す、今回は千載一遇のチャンスだと思います。皆さんの力で、どうかゲルマンご当地怪人達を倒してきて下さい。宜しくお願いします」
     と、深く頭を下げるのであった。


    参加者
    内藤・エイジ(高校生神薙使い・d01409)
    九条・有栖(高校生シャドウハンター・d03134)
    叢雲・秋沙(ブレイブハート・d03580)
    桃野・実(水蓮鬼・d03786)
    銀・紫桜里(桜華剣征・d07253)
    渡部・アトリ(黒龍騎ファントムブラスター・d10178)
    紅羽・流希(挑戦者・d10975)
    篠歌・誘魚(南天雪うさぎ・d13559)

    ■リプレイ

    ●やけ食い?
     姫子の招集に集まった灼滅者達。
     新潟ロシア村との戦いを経て、ゲルマンシャークを打ち破った結果……ゲルマンシャークの生き残りである一つ、ソーセージマンが居るビアホールへと向かう灼滅者達。
    「しかしですねぇ……こうやって士気が下がった組織ほど、脆いモノはありませんよねぇ……」
    「そうよね。でも何か、あのヘコミ方を傍から見てると可哀想になってくるけど……でも、結局は自業自得なのよねぇ」
     紅羽・流希(挑戦者・d10975)と、九条・有栖(高校生シャドウハンター・d03134)の言葉。
     そんな二人に叢雲・秋沙(ブレイブハート・d03580)と、銀・紫桜里(桜華剣征・d07253)も。
    「でもヤケ喰いダメ、ゼッタイ。そしてホラーで死亡フラグ全開なセリフを吐き捨ててるなんて、真っ先に灼滅者に各個撃破の標的にされちゃうよね? まぁ、遅かれ早かれ今の内に、全員灼滅するつもりだったけどね」
    「そうですね……まぁ、もとよりこのまま放置しておく訳にはいきませんでしたしね……まぁ、姫子さんからの話を聞いてると、罪悪感が無い訳ではありませんが……」
    「そうだね。何というか……くだまいてるだなんて、ダークネスっぽくないしね」
    「うんうん。ソーセージマンでしたっけ? おもしろおかしい顔ですしね」
     笑う秋沙に、篠歌・誘魚(南天雪うさぎ・d13559)が冷静に頷く……そして誘魚は自分に言い聞かせるように。
    「ともあれご当地怪人は見かけによらず強敵です。手加減抜き……本気で攻めさせて貰いましょう」
     との言葉に、渡部・アトリ(黒龍騎ファントムブラスター・d10178)、桃野・実(水蓮鬼・d03786)、そして内藤・エイジ(高校生神薙使い・d01409)も。
    「ま、ゲルマン怪人を追い出せるチャンスを活かさないとね」
    「……うん。宿敵だから、灼滅しないといけない。平気、平気だ……平気じゃないと、ダメだ……」
    「ゲルマンご当地怪人を倒す為にも……今の内になんとかしないとっ。い、いくぞおっ!」
     と、口々に気合いを込めていき……そして有栖と流希も。
    「ま、本人達には悪いけど早い事灼滅させて貰いましょ」
    「そうですねぇ……とは言え油断は出来ませんしねぇ……と、ここですか」
     流希が指差した場所……ソーセージマンが居ると言われる、ビアホール。
     そーっと、そのビアホールの中を見てみると……。
    『クソッ、あんな言い争いをしているなど、無駄の境地でソーセージ! ほら、ゲルマンペナントーズも、やけ食いするでソーセージ!!』
     ビアホールのど真ん中でビールとジャーマンポテトを喰らっているソーセージマン。
     周りには彼の配下、ゲルマンペナント怪人が従うようにいる……。
     ……既にソーセージマンは結構酒を飲んでいて、クダと辛み始めてるのがよーくわかる。
    「……で、でかっ! 近くで見たらでかっ!! ソーセージっていうサイズじゃないでゲスゥゥ」
     と、脅えるエイジに流希が。
    「まぁ……確かにソーセージマンという名前に偽りありって感じですしねぇ……ともあれ、始めましょうかねぇ……」
     と呟き、そして灼滅者達はいざビアホールの中へと侵入するのであった。

    ●不意の怒り
    『クッソー、本当イライラするでソーセージ!! 何でこんな事で言い争わなければいけないでソーセージ!!』
     ビールを片手に、叫ぶソーセージマン。
     その叫びはビアホールの中に響き渡り……その声に、周りの一般客達がヒソヒソと話しあい……一組、また一組と出て行ってしまっている。
     ……ある意味これも、立派な営業妨害をしていると言えるが……彼自身はそんな事、全く気に掛けてはいない……いや、気に掛ける余裕なんてない。
    「……傍迷惑ですね……一般人を傷つけないのは、まだましだとは言えますけれど……」
    「そうね……」
     紫桜里に頷く誘魚……そして更に秋沙が。
    「何はさておき、ここじゃまだ遠すぎるよね……見つからないように隠れつつ近付こうか。幸い、椅子とか机とかが多いから、隠れながらいけばいいよね?」
    「そうですね。この為に、音のしにくい靴を履いてきましたしね」
     と紫桜里が頷き、灼滅者達は机椅子に隠れながら、ソーセージマンの席へと近付いていく。
     ……そんな灼滅者達の動きに、更に周りの一般人達が何コレ、と怪訝な表情をしながら、どんどん店を離れていく。
     そして、酒を飲んで上機嫌なソーセージマン以外の客が、店から出て行った所で……秋沙がサウンドシャッターを使用し、音を遮断。
     そして視線で合図……皆が準備OKなのを確認してから。
    「では……いきます」
     紫桜里の合図に、一斉に灼滅者達が姿を現わす。
    『ヌ、なんだそおまえらはソーセージ!!』
     その言葉が出るかでないかの所で、即座に有栖が援護射撃で敵を足止めする。
    「……伊達に後方射撃はやってきて無いわよ?」
     そんな有栖の言葉に対し、ソーセージマンは。
    『グ、ぐぬぬ、あぶないだろーがソーセージ!! おまえらは何だソーセージ!』
     顔を湯だた……いや、激昂させ、怒るソーセージマンに対し、流希は冷たく。
    「……統率者が有能ならば、こんな風に隙を突いて強襲など出来なかっただろうが……油断しすぎじゃないのか?」
    『ゥ? ……も、もしかしておまえらは、灼滅者かソーセージ!!』
    「まぁな……決して相容れない存在同士だ。さぁ、殺し合うとしようか。文句は俺があの世に行ったときに、纏めて聞いてやるからよ」
    「ええ……ゲルマンシャークを倒されて哀しみの果てなのかもしれませんが……私達はそれを放置しておく事は出来ませんから、ね」
     更なる流希、紫桜里の言葉に、プルプルと手を握りしめ、振るわせながら。
    『く、くそおおお、こんな所まで追いかけてくるとはソーセージ!! しかーし、ここで負ける訳には行かないでソーセージ!! ほら、ゲルマンペナントーズも一緒に行くでソーセージ!!』
     ソーセージマンの言葉に、周りの三人のゲルマンペナント怪人達が立ち塞がり、一斉攻撃。
     ……その攻撃を、ガッ、と仲間達から庇う実、クロ助、そして紫桜里。
    「……確かに、中々強い様ですが……こちらも、決して引けは取らないと思いますよ……っ!」
     押し返すように紫桜里が戦艦斬りの一閃を、ゲルマンペナント怪人に喰らわすと、実も六文銭射撃で、実も……旋風輪で反撃。
     そして、ディフェンダー三人の動きに続けてエイジが。
    「ひ、ヒィィ、こんなことなら部屋の炬燵でポテチ食べながらのんびりしていたかったでゲスゥゥ、フライドポテトを渡しますから許して下さいでゲスゥゥ!!」
    「……エイジさん!?」
     有栖が驚く間もなく、エイジが何処からもってきたか解らないフライドポテトを差し出そうとする……が、ソーセージマンは。
    『フライドポテト等外道でソーセージっ!! 最上はソーセージ以外に認めないでソーセージっ!!』
     ……怒りに、更に油を注ぐ状況に……いや、もう既に油が沸騰しているような状態ではある気がするけれど、そんなソーセージマンは更に怒る。
    『これでも喰らえソーセージィィィ!!』
     と、攻撃を仕掛けるが……カバーリングする実。
     かなり強力な一撃に、その腕から血飛沫が飛び散る……が、実は努めて静かな口調で。
    「……信じてたり、頼りにしている人がいなくなったら動けなくなるって……あるよな。だから、ごめんな……?」
     不意に実の投げかける言葉。
    『な……何を言ってるでソーセージ!?』
    「……壊滅? 殲滅? 灼滅? ……ひとごろそ……逃げないのは、死にたいのか? ……なぁ、学園に来ないか? ……ゲルマンシャーク達を倒したのは俺達だ……だから、嫌かもしれない。けど……」
     と、実が更なる言葉を投げかける。
     ……だが。
    『う、うるさいでソーセージ! ゲルマンシャーク様を倒したお前達を、俺は決して許さないでソーセージ!!』
     一歩、間合いを取るソーセージマン。そしてそれに、実は悲しげな表情を浮かべる。
    「………まぁ、仕方ないわよね。彼らにとっては、私達は仇以外の何者でもないのだから……余り時間も掛けて居られないし、早速だけど全力で行くわよ」
     誘魚はそう言い放ち、螺穿槍。
     それに続き、同じくクラッシャーの流希、アトリ、秋沙も。
    「という訳だ。まぁ……あの世に行ってから他のゲルマンシャークの配下達と一緒に飲んでろよ」
    「そうだね。周りのゲルマンペナント怪人達も一緒にね!」
    「ええ。行きます……スカーレットスラッシュ!!」
     雲櫂剣、鬼神変、クルセイドスラッシュ、と次々放つ。
     しかし、それら攻撃は、ゲルマンペナント怪人達が次々と庇うを発動……ソーセージマンには攻撃を通さない。
    「中々鉄壁の守り、って訳ね……となれば、先にゲルマンペナント怪人達を始末した方がよさそうね」
     と有栖が言うと共に、彗星撃ちを撃ち放つ……更にエイジも、傷を負った実を防護符で回復。
     そして次のターン……ターゲットを完全にゲルマンペナント怪人達にロックオン。
     クラッシャー、ディフェンダー陣がゲルマンペナント怪人に全力で攻撃を嗾け……ジリジリと体力を削る。
     しかしソーセージマンは、仲間を回復するような事は無い……むしろ彼も、ゲルマンペナント怪人達と一緒に攻撃一辺倒。
     ある意味怒りに陥り、冷静な判断力を忘れていたのかもしれない。
     その怒りを、攻撃をディフェンダーに集中させるように利用し……結果、ダメージは実、紫桜里、クロ助に集中していく。
     エイジの回復に加え、適宜ディフェンダー陣も自己回復を使用していく事で対処。
     ……そして、10ターン目。
    「これでも喰らえ、ブラッドザッパー!!」
     と、アトリの紅蓮斬が、最後のゲルマンペナント怪人を打ち砕き、残るはソーセージマンのみに。
    『く、くそおお、まけてたまるかぁぁ、まけるかでソーセーージイイイ!!』
     すっかりゆだったソーセージ……いや、ソーセージマン。
     ソーセージキックやら、ソーセージパンチを次々と繰り出していく。
     かなり強力な攻撃ではあるが、大きい動きが禍いしてか……二発に一発程度しか、その攻撃は決まらない。
     その一方、灼滅者達の攻撃は次々と命中し、ソーセージマンの体力を削り去って行く。
    『ウウウ、クッソオオ、まけない、負けないでソーセージ!!』
     悲痛な叫びをあげるソーセージマンだが……冷静さを奪う作戦は、かなりの効果があった様で。
    「……さぁ、これで終わりですッ!」
     紫桜里が上段の構えから繰り出した斬艦刀の戦艦斬りが、ソーセージマンの体を一刀両断。
    『ウガアアア……死にたく無いでソーセージィィイ!!』
     断末魔の叫びを上げながら、ソーセージマンは消滅していった。

    ●思うは何か?
    「……終わった様ね……まったく……本当に傍迷惑な存在よね」
    「ええ……まぁ、仕方ないですねぇ……ともあれ次は、別の形で出会いたかったものですよねぇ……」
    「ええ。それで、これでゲルマン怪人達が大人しくなってくれるといいんだけどね……」
     有栖、流希、アトリの言葉……。
     三人の言葉に対して他の仲間達も頷き、苦笑しつつ、肩を竦める。
     ……とは言えゲルマン怪人達も、これで多少は落ち着くことだろう……いや、そう信じたい。
    「まぁ何にせよ、一応周りを調べておきましょうか」
     と有栖が周りを調べている中、流希は。
    「……と、ポテトとソーセージが残っていますねぇ……怪人が作った物ですからきっと、美味しいと思うので、レシピを盗んでしまいましょうかねぇ……」
     と、残っていたジャーマンポテトをパクリ。
     ……素朴ながらも、味わいよし。
     ポテトと一緒に食べれば、なおも良し。
     実際……まだ、このジャーマンポテトが、彼が作ったのか……このビアホールの商品なのかは解らないけれど、それはさておき。
     ……暫し調べ、食べて……特段何かが見つかるという事もなくて。
     そして調べ終えた後、有栖は最後に一つ、小さな花束を捧げて。
    「……相手はダークネス。とは言えこれが、せめてもの供養になればいいかな……」
     と、ソーセージマンの冥福を、静かに祈るのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年4月15日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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