グリュック王国大決戦~いつか、芽は出る

    作者:波多野志郎

    「まさか、ゲルマンシャーク様が灼滅されてしまうとは!」
     その言葉が、その場の混乱を現わしていた。グリュック王国――ゲルマンご当地怪人達の本拠地において、ゲルマンシャークが灼滅されたという驚きべき悲報は瞬く間に広がっていた。
    「私達はどうすればいいんでビア?」
    「こんな時に、レディ・マリリン司令官代理さえいない、あぁどうすれば」
     ゲルマンご当地怪人達の動揺は、大きい。その騒ぎの中、一人の男が人の輪から離れていった。
    「……どこに行かれるので?」
    「じゃがいも畑だ、それ以外のどこがある?」
     ゲルマンペナント怪人の問いかけにそう答えたのは、ゲルマンじゃがいも怪人であった。そのじゃがいもの頭部に、無表情を称え、ゲルマンじゃがいも怪人は告げた。
    「じゃがいもは、苦難に向かうゲルマン魂の表れ。どんな時にでも、芽は出る、出るのだ」
     低く、渋く、ゲルマンじゃがいも怪人はそう言い残すと、じゃがいも畑へと歩き出す。それに三人のゲルマンペナント怪人は顔を見合わせ――表情はわからないが、確かに笑いあった。
    「オレ達もいきますぜ、旦那」

    「新潟ロシア村の戦い、お疲れ様っす。四体のご当地怪人の中でも最強と思われる、ゲルマンシャークを打ち取れたのは大金星っすよ!」
     湾野・翠織(小学生エクスブレイン・dn0039)は笑顔でそこまで労うと、そこで表情を改めた。
    「で、問題はグリュック王国っす。ゲルマンシャークが灼滅された事で、灼滅者を闇堕ちさせるという結界が無くなった今、攻略するチャンスっす」
     ゲルマンシャークを失ったゲルマンご当地怪人は、指揮するものもおらず混乱に陥っている。しかし、この混乱から立ち直れば、再組織化されるか他のご組織の軍門に下るなどして新たな脅威になるのは間違い。
    「そうなる前に一気に殲滅するっす。今、グリュック王国には多数のご当地怪人がいるっすけど、連携は全く取れてないっす。今なら、各個撃破できるっすよ」
     みんなに担当して欲しいのは、グリムの森を切り開いて作ったじゃがいも畑を耕すゲルマンじゃがいも怪人だ。
    「ドイツには、じゃがいもで食糧難を乗り切った歴史的過去があるっす。彼にとっては苦難を乗り越える象徴が、じゃがいもなんすね」
     だから、混乱している今こそ耕すのだ。そこには、ゲルマンペナント怪人三人とゲルマンじゃがいも怪人の計四人がいる。拓けた場所だ、戦う分には十分だ。
    「じゃがいも畑で戦う事も、ゲルマンじゃがいも怪人は躊躇わないっす。いくら踏みつけても芽は必ず出る、じゃがいもの強さを信じている奴っすから」
     実力も、心根も強敵だ。油断せず、しっかりと準備を整えて挑んで欲しい。
    「ここを抑えて大金星の意味があるっす。どうか、がんばってくださいっす」
     翠織はそう、真剣な表情で締めくくった。


    参加者
    佐々木・侑(風・d00288)
    霧島・竜姫(ダイバードラゴン・d00946)
    ライラ・ドットハック(蒼の閃光・d04068)
    日凪・真弓(戦巫女・d16325)
    ヴィンツェンツ・アルファー(ファントムペイン外付け・d21004)
    水無月・咲良(混沌の傍観者・d21498)
    清浄・利恵(根探すブローディア・d23692)
    優木・ギン(純情ポテトオペレッタ・d25227)

    ■リプレイ


     グリュック王国――グリムの森を切り拓いたそのじゃがいも畑に、優木・ギン(純情ポテトオペレッタ・d25227)は目を輝かせた。
    「大好きなお芋畑、ふふっ、いい眺め」
     確かに、そこにあったじゃがいも畑は見事というしかなかった。寒冷地における四月は、じゃがいもにとっての定植の時期だ。種芋を植えた後の整然とした光景は、どこか生真面目な印象を見る者に与えた。
    「あ、種芋もあるね」
    「え!?」
     ヴィンツェンツ・アルファー(ファントムペイン外付け・d21004)が畑の片隅に置かれた背負い籠を覗き込むと、ギンが目を輝かせて振り返る。そんなやり取りを視界の隅で眺めながら、霧島・竜姫(ダイバードラゴン・d00946)は目を細めた。
    「アレ、ですよね」
    「せやな」
     霧島・竜姫(ダイバードラゴン・d00946)の言葉に、佐々木・侑(風・d00288)は短く肯定する。開拓した畑の片隅で動く、いくつかの人影を見つけたからだ。
     その独特のシルエットから、ゲルマンペナント怪人だとわかる。そして、こちらに気付いたのだろう一人――丸い顔が、こちらへと真っ直ぐに歩いてきていた。
    「――何の用だ?」
     低く重く、ゲルマンじゃがいも怪人が問いかける。何者だ、と問わなかった、その事に水無月・咲良(混沌の傍観者・d21498)は大仰な仕種で畑を見回して、言い放った。
    「ジャガイモがゲルマンなら、差し詰めお前達は根っこって事か――なら。ここで全員消しゃあ、再興はないな。苦難に塗れたまま朽ち果てさせてやる」
    「なるほど、武蔵坂学園か」
     うなずくゲルマンじゃがいも怪人に、ゲルマンペナント怪人達の間に動揺が走る。しかし、それも振り返らずに手を上げたじゃがいも怪人の仕種に、すぐに治まった。
    「さて、混乱しているところ非常に申し訳ないのですが……弱っているところを手を弱めず追撃は戦場の常、ここでゲルマンご当地怪人をしっかり討ち果たし後顧の憂いを断たせて頂きましょう」
    「Ja――構わぬ。立場が逆であれば、こちらも同じ事をしただろう」
     静かに告げる日凪・真弓(戦巫女・d16325)に、ゲルマンじゃがいも怪人は真っ向から受けて立つ。そこにある誇りと自信に、清浄・利恵(根探すブローディア・d23692)は言い返した。
    「その諦めない精神は見事。だが、その精神ではボク達も負けてはいないよ? 武蔵坂の皆も今まで芽を出す好機を伺っていたんだ。ボクはその頃を知らない身だけど、それでも今はその一員。ならば、こちらの芽を出すに尽力するのみ、だからね」
    「……まさか敵前逃亡はしないよね? 少なくとも苦難に立ち向かうじゃがいもの名を――」
     敢えて挑発するライラ・ドットハック(蒼の閃光・d04068)の言葉を制したのは、他でもない。片手をかざした、ゲルマンじゃがいも怪人だ。
    「互いに戦う理由がある。それ以上の言葉はいるまい」
    「敵ながら見上げた心意気っちゅーの? その精神は大したもんや思うわ。そういう強い敵の方が怖いからな、性格的には嫌いやないけど真っ先に潰しときたい敵や」
     つーわけやから恨むなよ、と口の中で侑は飲み込む。それに視線だけでうなずいたゲルマンじゃがいも怪人と付き従うゲルマンペナント怪人が身構える。同時に、灼滅者達も身構えた。
    「日凪真弓……参ります……!」
    「栄えあるゲルマンシャーク様が配下、ゲルマンじゃがいも怪人以下三名――参る」
     互いに、同時に地面を蹴る。整然とした畑が荒らされる――その光景を胸に焼き付けた怪人は、ただ一言呟いた。
    「sprengen」
     シュプレンゲン、その言葉の通り、空間を満たすように爆炎が破裂した。


     ゴォ! と春の北海道の大気が、熱気に炙られていく。その炎の向こうで、エンジン音が鳴り響くのに、ゲルマンじゃがいも怪人は小さく感嘆の声を漏らした。
    「ほう、ドラッヘの咆哮か」
     ボン! と爆炎に穴を開け、ライドキャリバーのドラグシルバーがゲルマンじゃがいも怪人へと跳躍する。それをじゃがいも怪人は、サッカーボールキックで受け止めた。
    「レインボービーム!」
     そして、竜姫が両腕をクロスさせて放つ虹色光線――ご当地ビームが、ゲルマンペナント怪人を打ち抜く。
    「シェリーちゃん! 俺等も行くで!」
    「ラル君、ゴー!」
     侑の指示に、ライドキャリバーのシェリーが加速。ギンの意思に即座に答えたライドキャリバーのニュイ・ミストラルが機銃を掃射した。
     ガガガガガガガガガガガ! と銃弾の雨が降り注ぎ、砂煙が舞い上がる。その中をシェリーがゲルマンペナント怪人に体当たり、侑も縛霊手をかざして除霊結界を展開させた。
    「ボスを倒されたら部下の怪人は出てこーへんもんや。さっさと退場してもらうで」
    「まだだ! まだ、オレ達は終わっていない!」
     侑の言葉を、ゲルマンペナント怪人は否定する。それに、ギンがクルセイドソードを振りかぶり言った。
    「今回の回復は、こっちが!」
     ギンが、横一閃に剣を薙ぎ払うとその風がじゃがいも畑を駆け抜ける。そして、ヴィンツェンツはバイオレンスギターを激しく爪弾いた。
    「その気概に敬意を感じるからこそ、本気でいかせてもらうよ」
     言い捨てたヴィンツェンツの言葉と同時、ソニックビートの振動が大きく傷を負ったゲルマンペナント怪人の体を揺らした。そして、ビハインドのエスツェットが舞うようにその刃を薙ぎ払う。その霊撃に、ゲルマンペナント怪人の体勢が崩れた。
    「く、お……!?」
    「踏むなんてしないよ。捨てるけどなぁ!!」
     そこへ、咲良が口の端へ笑みを浮かべて鍛え上げた拳を叩き付ける。その一撃を受けてゲルマンペナント怪人の体が宙を舞った。
    「ぬ――!」
    「行かせません」
     ゲルマンじゃがいも怪人へ、真弓は契約の指輪をはめた手をかざす。放たれる魔法弾を、ゲルマンじゃがいも怪人はその軍手に包まれた手でかろうじて受け止めた。
    「行かん、あそこは奴等の戦場だ」
     そのじゃがいも怪人の言葉に、ゲルマンペナント怪人は宙で笑う。そして、ひざを揺らしながら着地、倒れる事を拒んだ。踏ん張ったその懐へ、しかし、既にライラの姿がある――!
    「……全力の攻撃で沈める。それが戦の最低限の礼儀よ」
     ギシリ、とライラはプリトウェンを硬く握り締める。マテリアルが蒼く輝いたその瞬間、フォースブレイクの一打が放たれた。ゲルマンペナント怪人は受け止めようと両腕でブロックするが、受け止め切れない。
    「ゲ、ルマ、シャー、さ、ま……ば……ざい……」
     そのまま、畑の上に大の字で倒れ二度と立ち上がる事はなかった。
    「来るよ」
     ヴン! とWOKシールドを広域に展開、ワイドガードで仲間達を包みながら利恵が警告を発する。直後、残るゲルマンペナント怪人達による黒・赤・金三色が絡み合うご当地ビームが利恵と竜姫を襲った。
    「来いよ、旦那に任された戦場だ。芋ひく訳にはいかねぇよ、ここじゃな」
    「ゲルマンシャークの事はよー知らんけど、お前らみたいのが慕うぐらいやから中々のやつやったんやろうな、死ぬ前に会われへんかったんが残念や」
     ゲルマンペナント怪人に、侑も笑って返す。憎しみの湧かない心地のいい敵だ――だからこそ、握る拳に力がこもるそんな敵もいるのだと、改めて知った想いだ。
    「――良い芽だ」
     ゲルマンじゃがいも怪人が、低く言い捨てる。ヒュオン! と七つの光輪を周囲に浮かべ、ゲルマンじゃがいも怪人は畑を強く踏みつけた。
    「だからこそ、安心して踏みつけられる!」
    「こちらもです」
     真弓が、放たれた光輪の一つを縛霊手で火花を散らして、受け流す。敵と味方が入り混じっていく――ただ、渾身で戦うだけの戦場が、そこにあった。


     畑が、踏み荒らされていく。しかし、そこに気を遣う者は、誰一人いなかった。
    「回復し切れません!」
    「わかったよ」
     セイクリッドウインドを吹かせたギンの要請に、ヴィンツェンツもすかさずリバイブメロディを奏でる。エスツェットがヴィンツェンツの伴奏に合わせて踊るようにスカートをひるがえして、霊障波を放った。
    「くっそ――!」
     それを受け止めた両腕を弾かれ、ゲルマンペナント怪人が吐き捨てる。そこへ、ライラがミストルティンを振りかぶり踏み込んだ。
    「……隙ありだ」
     ザン! と、ライラの刃に光線をまとったミストルティンの一閃に、ゲルマンペナント怪人は胴を切り裂かれる。くの字になったゲルマンペナント怪人へ、侑が影を刃と化し、走らせた。
    「いい根性やったで?」
     ドォ! と更にシェリーの突撃にペナント怪人の体が宙を舞う。それに、侑が叫んだ。
    「今や、咲良ちゃん!」
    「ああ、ボロ炭にしてやるよ」
     ズドン! と咲良が撃ち放った一条の雷光が、ゲルマンペナント怪人を撃ち抜いた。その一撃に、ゲルマンペナント怪人はなす術もなく、地面に転がる。
    「まだまだぁ!」
     そこに、最後のゲルマンペナント怪人が飛び蹴りを繰り出した。咲良に命中する寸前、庇った利恵が掲げたWOKシールドで受け止める!
    「すまないが家事は不得手でね。皮むきは無しでカットしていくよ!」
     その巨大化させたデモノイドの腕、EclairLame『雷光刃』を取り込んだDMWセイバーの一閃に、ゲルマンペナント怪人は地面に叩き付けられた。土だらけになりながら立ち上がったゲルマンペナント怪人の股の下を竜姫がスライディングで潜り抜け、背後に回った。
    「こ、れは!?」
    「レインボーダイナミック!」
     まさに明日にかける橋、竜姫のジャーマンスープレックスが炸裂、七色の大爆発を引き起こしてゲルマンペナント怪人を粉砕した。
    「残るは――」
     ゲルマンじゃがいも怪人のみ――そうギンが言おうとした、瞬間だ。真弓へと放たれた切込み式の跳び蹴りを庇ったニュイ・ミストラルが、そのまま目の前を薙ぎ払われ転がっていった。ニュイ・ミストラルは、立ち上がれない。そのじゃがいもを押し付けられたような蹴りの傷跡こそが、その威力を物語っていた。
    「残るは、俺のみだ」
     ドラグシルバーが竜のごとき咆哮でフルスロットル、真弓も縛霊手を手に挑みかかった。
    「必ず、討たせてもらいます」
    「その意気や良し」
     火花を散らしてぶつかり合う鉤爪と軍手、そこへ残る灼滅者達も死力を尽くして挑みかかっていく。
    「お、おいしそう……え? いや、な、何も言ってないですしー! かっこいいとかお友達になりたいなんて、これっぽっちも思ってないですよ……!」
     誰への言い訳か、ギンが騒ぐのを聞きながら、利恵は真っ直ぐに告げた。
    「君の芽が出るかボクらの芽が出るか、今此処で決着しようじゃないか」
    「Ja」
     ――まさに、一歩も退かない戦い……否、意地の張り合いとなっていた。
    (「敵とか味方とか、俺はあんま気にせーへん。敵にも尊敬出来る奴はおるし、逆もそうや」)
     侑は、戦いの中にあって静かにそう思う。巡り会わせというのも、あるものだ。尊敬出来る敵にならば、その想いのまま真っ向から挑み乗り越えていけばいい――それこそが、最大限の敬意の示し方だ。
    「死ぬ前に言い残すことがあったら聞いたるで?」
     挑発ではない、侑の真っ直ぐな言葉にゲルマンじゃがいも怪人は沈黙――やがて、口を開いた。
    「……じゃがいもを保存する時は、風通しのいい冷暗所に保存しろ。温度と湿度を一定に保ち、乾燥や直射日光、霜、熱などから守って二、三ヶ月もすれば休眠期間が終わり、芽を出すようになる」
     とうとうと、諳んじるようにゲルマンじゃがいも怪人は言う。そして、どこが口か分からないのに、確かに笑っていった。
    「植えてみろ、自然に実る。自分でつくったじゃがいもは、格別だ」
     ゲルマンじゃがいも怪人が、宙を跳ぶ。そして、きりもみ上に回転――そのでこぼこの靴底で豪快な蹴りを侑へと繰り出した。
    「そうか」
     侑は短く答え、動かない。何故なら、シェリーがその身を盾に受け止めてくれると信じているからだ。事実、シェリーは砕かれながらもその蹴りを浮け切ってくれた。
    「厄介で潰しときたい相手やけど、嫌いやない。そういう相手をただ殺すってのは趣味やない、まぁ、お前らには業腹かも知れんけどな」
     そして、侑のオーラの砲弾がじゃがいも怪人の胴に命中。受け止めたその瞬間、ヴィンツェンツとエスツェットが同時に跳躍した。
    「エスツェット!」
     二人で舞うように、バイオレンスギターが頭を、刃が胴を捉えた。かろうじて着地したじゃがいも怪人へ、真弓は死角から回り込み、その鉤爪で大きく切り裂いた。
    「お願い、します!」
    「……ああ」
     短く答えたライラが、その切り裂かれた傷跡へ紫色の筋繊維によって巨大化した牙が多数生えた怪腕を叩き付ける! じゃがいも怪人の体躯が吹き飛ばされるのに、ギンがご当地ビームを放った。
    「お芋さん達はお芋マスターのギンさんが育てます! だから安心して倒されちゃってくださいね!」
    「……ああ」
     その言葉に、確かな苦笑を受けべたじゃがいも怪人へ、利恵がオーラを集中させたデモノイドの両腕を豪快に振るった。
    「これだとマッシュポテトになりそうだが、ボクはジャーマンもいいがそちらも好きかな」
    「ぐ、ふ……っ」
     よろめくじゃがいも怪人――そこへドラグシルバーが機銃を掃射、竜姫がジャンプする。竜姫が空中で一回転するその間に、咲良が左手を振りかぶり疾走した。
    「悪の芽は摘ませて頂きます! レインボーキィィーック!」
    「お前の希望は、ここで幕だね――爆ぜとけ!」
     七色に輝く蹴りが胸元を、その衝撃が破裂する手がじゃがいもの顔面を掴み、ドォ! と轟音と共にゲルマンじゃがいも怪人が宙を舞った。
    「――――」
     断末魔は、ない。全ては語り終えた、と満足げに地面に落下したゲルマンじゃがいも怪人は爆発した……。


    「……敵ながらあっぱれだった。敬意を表し、このじゃがいもは有効活用させて貰おう」
    「お芋たちの未来は託されましたよー!」
     ライラが種芋の入った籠を背負い、すちゃ! と格好いいポーズを決めてギンが言った。
     荒れ果てた畑に、利恵は一つの看板をそこへ立てる。『不屈の意志、此処に永遠に眠らん』――それが、最後まで雄雄しく戦った敵への敬意を込めた、墓標代わりだった。
    「ほっといたら芽ぇ出るんちゃう? それがアイツラの望みやったかはわからんけど、そうなったら収穫にでも来るか」
     侑も、その畑の惨状を見ても必ずじゃがいもが実ると信じて疑わなかった。あの男達と戦った仲間達の誰も、疑っていない。いつか芽は出る――あの信念に、じゃがいもも必ず応えてくれる、そう思えた……。

    作者:波多野志郎 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年4月15日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 10/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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