「なるほど、刺青羅刹にはああいう手合もいるのか。正直、俺の勝ち目は薄そうだな」
「鞍馬天狗の軍が来ます! 外道丸さん、どうしますか……!?」
「あいつの狙いはお前じゃなく、明確に俺の『刺青』だ。そして俺よりも強く、こちらの陣容も筒抜けっぽいな。力量と情報で敵わないなら、俺達にあるのは地の利だけだ」
「地の利……あっ、昨日教わった『大勢と喧嘩する時は狭い場所で』、ですね!」
「その通り。それに、奴等の狙いが俺なら、俺が移動すれば街にダメージは無ぇ。
新宿迷宮で籠城戦だ。全員俺についてこい!」
●抗争の行方
「集まってくれてありがとう。今回は、少し長い話になるわ」
夏月・柊子(高校生エクスブレイン・dn0090)はそう前置きして話を続けた。
「鞍馬天狗って覚えてる?」
先のロシア村の戦いに現れ、アメリカンコンドル達と戦っていた刺青羅刹。
そのリーダーが名乗ったのが、鞍馬天狗という名だったのは記憶に新しい所だろう。
「その鞍馬天狗がね、歌舞伎町の外道丸を襲撃するの。朱雀門のロード・パラジウムと一緒にね」
鞍馬天狗が率いるは、アメリカンコンドルを撤退に追い込んだ精鋭。
そこに、外道丸の拾い物を狙うロード・パラジウムまで加わった襲撃は、外道丸の敗北に終わる。
「外道丸は、生き残った仲間を引き連れて、新宿迷宮に撤退。篭城の構えを取るわ」
残った外道丸配下は少数だが、こちらもまた精鋭。
鞍馬天狗側も苦戦を強いられる事になると思われるが――それまでだ。
数の差を覆すには至らず、外道丸が敗北し、刺青が奪われるのは間違いない。
「でも、鞍馬天狗に刺青を渡さない手段が1つあるの。灼滅者の手で、外道丸を灼滅するって方法がね」
それはつまり、ダークネス同士の抗争に介入する事を意味する。
リスクを伴う策だが、鞍馬天狗に刺青を渡さない為には、他に手はない。
「それじゃ判ってる状況を整理するわね」
そこにメモしておいたのだろう。
柊子は手元の端末を操作し、まず外道丸の情報を読み上げる。
「さっきも言った通り、新宿迷宮の奥に篭城中よ。あと、ロード・パラジウムが狙っている何かは、外道丸が保護しているわ」
その『何か』は智の犬士カンナビスが捜索していたものである事までは判っている。
続いて鞍馬天狗側。
「新宿迷宮の浅い階層は、鞍馬天狗配下に制圧されてるわ。更に精鋭が深部を探索中よ」
だが、大規模な襲撃があれば、鞍馬天狗は撤退を始める。
そして鞍馬天狗が灼滅か撤退される状況になれば、ロード・パラジウムも撤退すると予知されている。
つまり、鞍馬天狗とロード・パラジウムを灼滅か撤退させる事で、外道丸側に攻撃可能となる状況だ。
「上手く抗争の隙を突ければ、鞍馬天狗かロード・パラジウムを灼滅出来る可能性もあるわ」
何を優先とするか考え、戦いに備える必要があるだろう。
「いつもより伝えられる情報が少なくて申し訳ないけど、皆で考えれば何とかなる筈よ」
端末をしまい、柊子は灼滅者達を見回す。
「全て倒すのは不可能でも、良い結果を出せると信じてるわ。気をつけて、行ってきてね」
参加者 | |
---|---|
鈴鹿・夜魅(紅闇鬼・d02847) |
海保・眞白(真白色の猟犬・d03845) |
射干玉・闇夜(高校生ファイアブラッド・d06208) |
朧月・咲楽(神殺しのボンクラーズ・d09216) |
ワルゼー・マシュヴァンテ(教導のツァオベリン・d11167) |
ホテルス・アムレティア(斬神騎士・d20988) |
ユーリー・マニャーキン(天籟のミーシャ・d21055) |
アルバート・ソーヤー(解体屋・d24158) |
●
カツン、カツン。
新宿迷宮の一角に響く、刺青羅刹の足音。
「見つけたぜ。単独だ」
遠ざかる刺青の背中を角から伺っていた射干玉・闇夜(高校生ファイアブラッド・d06208)は、他の刺青羅刹の姿が続かない事まで確認し、後ろで新宿迷宮の地図を確認している仲間達に短く告げる。
「俺達の現在地は此処です、教祖殿」
「そして敵が行ったのが、向こうであるな?」
ユーリー・マニャーキン(天籟のミーシャ・d21055)の能力で自分達の位置を現す光点が表示された地図を、ワルゼー・マシュヴァンテ(教導のツァオベリン・d11167)が持参した小さなペンライトで照らす。
その小さな明かりすら漏らさぬように、全員の体が壁を作るように地図を覗き込む。
「地図が確かなら、あの先は行き止まりになっているようですね」
「へぇ。丁度良いじゃねぇか。このまま待ち伏せ不意打ちと行こうぜ」
ホテルス・アムレティア(斬神騎士・d20988)の言葉に、海保・眞白(真白色の猟犬・d03845)が笑みを浮かべる。
確実に戻ってくるのが判っている敵ほど、待ち伏せしやすい相手もいない。
「敵発見。待ち伏せ開始、交戦予定」
鈴鹿・夜魅(紅闇鬼・d02847)がトランシーバーに向けてそう短く告げる。
手の動きで音量を下げるように示す闇夜に頷いて、夜魅は応答を待たずにトランシーバーのスイッチを一旦落とした。
(「籠城戦って外道丸の奴、援軍の当てでもあったのか? ……まさかオレ達の事待ってたとか言わねぇだろうな」)
夜魅が胸中で呟いたそこに、足音が近づいてきた。
そして――。
カツン、カツン、カツッ。
すぐ近くで止まった。
「む……さっき曲がった角は……ここか?」
足音の主がそう呟いた次の瞬間、新宿迷宮の一角を炎が照らした。
「燃えてろ!」
いち早く反応した闇夜が、炎を纏った縛霊手の拳を刺青羅刹の顔を強かに打ち付ける。
「派手に行こうぜ!」
続いて飛び出した朧月・咲楽(神殺しのボンクラーズ・d09216)の身体から放たれたどす黒い殺気が、羅刹を飲み込んだ。
「悪いが、これより先には進ませないぜ」
その顔に驚愕を浮かべて飛び退いた羅刹に、アルバート・ソーヤー(解体屋・d24158)の縛霊手から放たれた霊力の網が絡みつき、ライドキャリバーのスケアクロウから放たれた弾丸がその足を射抜く。
「ぐ……灼滅者だと。何故、灼滅者が此処に――」
「答える必要はねぇよ」
羅刹の上げた誰何の声を遮って、眞白が炎を纏わせた剣状の得物を叩き付ける。
「さぁて新宿迷宮の鬼退治とまいろうか!」
「スェーミ、後ろは任せる」
ワルゼーとユーリーの刃が共に破邪の輝きを纏い、同時に羅刹に振り下ろされる。
「遅い!」
此処に至ってようやく羅刹も腰の刀を掴むが、それを抜くより早くホテルスの持つ家伝の宝剣が閃いた。
生み出された風の刃が、羅刹の身体に更なる傷を刻み込む。
「灼滅者風情が、舐めるなァッ!」
血と炎に染まった左腕をだらりと下げながら、それでも羅刹が右手で抜き放った刀を高く掲げる。
「させねぇぜ!」
その前に、アルバートが割り込んだ。
羅刹の振り下ろした鋭い刃は、しかしアルバートの手の甲に輝く盾に阻まれ浅く肩を切り裂いた程度。
「――おい、何か聞こえなかったか?」
そのタイミングで、後方でいた夜魅の耳が、どこかから響いて来た聞き覚えのない声を捕らえた。
「急いだ方が良い。まだ遠いが、戦いの音を気付かれたようだ」
縛霊手の指先に集めた霊力を放ちながら、早期の決着を促す。
音を遮断せずに戦っている為、当然と言えば当然の結果だが、思いの外、早い。
「だって。どうする? 下っ端っぽいし、捕らえてみるのは別の奴にしとくか?」
「ああ、捕らえても大した情報は得られそうにないな。仕留めるぞ、サク」
咲楽の問いに答えながら、ユーリーが影を伸ばして羅刹に絡みつかせる。
敵を弱らせ捕縛した上で、尋問にかけ鞍馬天狗の勢力の情報を引き出そうと考えていた2人だが、状況がそれを許してくれそうにはなかった。
地図の優位があるとは言え、複数の敵がうろついている迷宮内は尋問に適しているとは言えない。
「情けは無いぜ? さぁ、お休みさん!」
薄い緋色の刃に炎を纏わせ、咲楽が斬りつける。燃え移った炎の勢いは、他の誰よりも強い。
そこに、ホテルスが鬼の様に巨大に変異させた拳を振り下ろす。
「ぐ……おぉぉ!」
身体を焼かれながらも、羅刹も右の拳を変異させて振り上げた。
ガンッ。
響いたのは硬い音。
羅刹の拳はライドキャリバーに阻まれ、ホテルスの拳は羅刹を迷宮の床へと叩き伏せる。
「1人の時に我らと会ったのが、貴殿の運の尽きだ」
起き上がった所にワルゼーがオーラを纏わせた拳を連続で叩き込み、更に闇夜の雷を纏った拳が羅刹を打ち上げる。
「紫明の光芒に虚無と消えよッ! バスタービーム……発射ェーッ!!」
羅刹の体が浮いた所に、眞白が一気に間合いを詰めた。鋭い銃口を刺青に突き立てて引鉄を引く。
「何だ、今の音と光は?」
「向こうだ!」
零距離で放たれた紅蓮の光が羅刹を撃ち抜いた直後、今度は全員にはっきり聞こえる声が響いた。
「この場は一旦離れましょう。音に釣られて来たのなら、敵の数が多い可能性もあります」
ホテルスの言葉に頷いて、一行はその場から急ぎ走り去るのだった。
●
「他の所も同じだ。敵は2人か3人組みで動き出した。こちらの奇襲に大分慌ててくれたようだな」
トランシーバーをしまいながら、ユーリーが仲間に告げる。
最初の奇襲に成功した後、彼らは状況を整理していた。
「他も各個撃破してたみたいだからな。結構な数を倒せたんじゃないか?」
「そりゃ警戒もされるね」
別のチームと連絡を取った夜魅が伝えた情報に、思わず咲楽も頷く。
そう長くない時間に十数人も失えば、敵が奇襲に気付いて対応を取ってくるのも、当然と言うものだ。
「とは言え、まだ敵が撤退に動いていない以上、もう一押し必要でしょう」
冷静に告げるホテルスだが、僅かに眉間が寄っていた。
その脳裏に浮かぶのは、以前に彫士拠点の襲撃に加わった時の持久戦。
「余り無理はせずに確実に倒したい所ですが――」
あのような事態は避けたいと思うが故に、その先を言い淀む。
とは言え、その先は敢えて言わずとも、全員が判っていた。
敵が警戒を強めた、もう最初の様な奇襲は難しい。
地図がある事で不意の遭遇戦は避けられているが、次からは、正面切っての戦いになるだろう。先手を取れれば良い程度か。
「ま、奇襲に拘ることもないだろ。圧力をかけて、動揺を誘うのが俺達の狙いだ」
アルバートの言葉に、異論は上がらなかった。
襲撃の目的は、鞍馬天狗の勢力を撤退に追い込む事。ばれずに優位に立ち続ける必要はない。
「うむ。我は我のやるべきことを行うとしようか」
ワルゼーも迷いなく頷いた。
重要な所――迷宮の奥の本命は他に任せる。その為の戦いであると、既に決めている。
「来るぜ。足音からして、3人組み。さっきやり過ごした連中が巡回してるのかもな」
角から様子を伺っていた闇夜が、敵の接近に気付いて小声で告げる。
「ほんじゃ、もう一仕事、始めまるとするかねェ」
小さく笑みを浮かべた眞白が覗かせる、狩人の気質。
8人は頷き合い、角の向こうから現れた3体の刺青羅刹の姿を確認すると、一斉に踊りかかった。
●
羅刹の振り下ろした刃が、立ちはだかるユーリーの肩に深く食い込んだ。
「やらせるかよ」
その攻撃を読んでいた夜魅がすぐさま浄化の霊力を放つが、傷を塞ぎきるには至らない。
「ちっ。思ったよりしぶといな」
「騎士が、そう簡単に……倒れてなどいられるか」
紅く染まった肩を押さえながら、羅刹を見据えて言い放つ。
ユーリーの信条は、護る事。傷の痛みなど大した問題ではない。
とは言え、羅刹の集中攻撃を受け、その体には既に幾つもの傷が刻まれていた。意志の力で崩れそうな膝を支えている状態だ。
自身で回復する術を用意しなかった事が少なからず響いていた。
体を張って仲間への攻撃を阻みながらも自身で回復を行わない――その意味する所に気付かない程、敵も甘くはない。
「大丈夫か?」
「この程度……と言いたい所ですがね。後一度、隙を作りましょう。後は任せます、教祖殿」
後ろでワルゼーが黙って頷いたのを気配で感じ、ユーリーは地を蹴ると同時に手にした剣を振るった。
伸縮する刃が、先頭に立つ羅刹に蛇の如く巻きついて、手足に傷を刻み込む。
その後ろから別の羅刹が飛び出した。
巨大な拳を叩き付けられて、ユーリーの体が支える力を失い崩れ落ちる。
「ぐあっ!?」
直後、殴った側の羅刹が苦悶の声を上げた。
その正面には、見える形での刃を持たない剣を振るった直後のワルゼーの姿。
「ちっ、駄目だ。あの隊列じゃ纏めて削れねぇな」
眞白が小さく舌打ちをして、羅刹に向けていた銃口を下ろす。
縦に長い隊列を取られては、横に広がる光線を放っても巻き込めない。代わりに、高らかに歌声を響かせて羅刹の精神を揺さぶる。
「そろそろお休みしていいぜ」
倒れたユーリーを後ろに運んだ咲楽は、全ての敵を巻き込めないのを気にせずに魔導書を掲げる。
そこに記された禁呪の力が開放され、激しい爆発が広がった。
「くっ」
「遅い!」
爆発に呑まれて飛び出した羅刹に、炎を纏わせた縛霊手を構えて闇夜が迫る。
羅刹も間合いを離そうとするが、手足に残る傷がその動きを鈍らせた。炎を纏った縛霊手の爪が、羅刹の体に突き立てられる。
「倒れる最後まで体を張り、仲間が攻撃する機とするか……見事」
「感心している暇などないぞ!」
感嘆の声を漏らした羅刹に、ホテルスが破邪の光を纏わせた家伝の宝剣で斬りつける。
仲間を倒された怒りを露わにした一撃で胸板を深く斬り裂かれ、今度は羅刹が崩れ落ちた。その体が迷宮の陰に消えていく。
個々の実力で言えば、最初に倒した1体とこの3体の羅刹の間に、大きな差は恐らくない。
それでも先に倒れたのが、僅かな差とは言え灼滅者の側となった。
役割を分担した上での、各個撃破。
灼滅者達がやろうとしていた事を同時にやられて、僅かに押し切られた形だ。
「まだ行けるな。少し無茶をして貰うぞ、スケアクロウ!」
残る2体の羅刹を見据えて障壁を広く展開させるアルバートの言葉に返ってきたのは、スロットルを上げたエンジン音。
互いに1人を欠いて、しかし戦いはまだ終わらない。
●
小さく風を切る音が響く。
「ぐっ……!」
飛来した風の刃が眞白の肩を裂いて鮮血を上げさせた。
「しまった」
「大丈夫だ。深い傷じゃない」
後ろを狙われた事に気付いて射線を塞ごうとしたアルバートを、指先に癒しの力を集めながら夜魅が制する。
「ああ、射撃戦がお望みなら付き合ってやる。皆はもう1人を!」
浄化の光を受け、眞白も頷き答える。
既にスケアクロウも大破し、残るアルバートも満身創痍。もう庇える程の体力の余裕はない。
その代わりに後方にいた2人の体力はまだ充分に残っていた。
「緋織も他のトコで頑張ってんだ。なら、俺が燃えねぇ訳にゃいかねぇだろうがッ!」
眞白の声と同時に、燃えるような紅蓮の光条が奔った。
「そら、燃えちまえ!」
もう1人の羅刹へは、本当に炎が襲い掛かる。
薄紅の刃に纏わせた炎と魔導書の禁呪を交互に放ち、咲楽は炎で羅刹を攻め立てる。
「これ以上、誰もやらせん!」
右腕を変異させて、ホテルスが地を蹴った。
鬼の拳を全力で振り抜く。鈍い音が響いて確かな手応えが伝わる。
「っ!?」
直後にホテルスを襲う痛み。
羅刹の刀が三日月の軌跡を描き、彼とアルバートを纏めて切り裂いた。
「てめぇ……図に乗るなよ」
膝を付いたアルバートの陰から、ワルゼーが飛び出した。
たっぷりと魔力を込めた杖を、がら空きの胴に突き込む。双子の暴君。杖の持つ名を表すかの様に膨大な魔力が羅刹の中で暴れ狂ってその身を内から破壊する。
「喰らえ!」
ぐらりと揺らいだ羅刹の視界に真下から飛び込んでくる雷。
地を這う程に低い位置から闇夜が振り上げた縛霊手の拳は、羅刹を天井に叩き付ける程に打ち上げた。
落ちてきた羅刹の体が、ゆっくりと消えていく。
「後はお前だ」
とどめを決めた闇夜が、縛霊手の指先を向ける。
とは言え、灼滅者達も余裕はあまりない。
このまま戦っても、残りの羅刹は灼滅する事が出来るだろう。
だが、恐らくは灼滅者達も更に誰かが倒される――決めた撤退条件はまだ満たしてはいないが、そこに近づくのは明白だった。
撤退中に万が一、別の敵と遭遇する可能性を考慮すれば、そろそろ潮時と言える。
一方の羅刹も、1人になった事で迷いが生じたか動きを止めていた。
膠着を破ったのは、小さな電子音。
「どうした? こっちは戦闘ちゅ――確かなんだな? 判った」
トランシーバーから届いた報告に、夜魅の表情が動く。続けて
「撤退するぜ。オレ達の作戦目標は達した!」
夜魅の声に、全員が一斉に反応した。ホテルスがアルバートを、咲楽とワルゼーがユーリーを抱えて後ろに跳ぶ。
「ぬ? 待て、逃がすか!」
「おっと。撃ち合いはこれで終わりだ!」
刀を抜いて追撃の素振りを見せた羅刹へ、眞白が円盤状の光を放つ。
「先に行け」
闇夜の縛霊手が、内蔵した祭壇を展開した。霊的因子を止める結界が僅かな間、羅刹の足を阻む。
その一瞬で次々と踵を返し、灼滅者達はその場から走り去って行く。
「少し遠回りになるが、まずは離脱を優先するぞ。良いな?」
地図を広げて先行するワルゼーの言葉に、全員が頷く。
一度距離を離してしまえば、地図のある彼らが羅刹を撒くのは難しくない。
今日だけで散々使ったマッピング済みの地図だ。現在位置を示す光がなくとも、迷う心配はない。
「咲楽も他のチームに伝えてくれ。鞍馬天狗が撤退してきた模様ってな」
「了解」
「私も予備で持っているので、手伝いましょう」
先を急ぎながら、咲楽達3人は連絡を回し始める。
鞍馬天狗撤退。それ以上の詳細はまだ伝わって来ていないが、為すべき事は為した。
後は、迷宮の奥へ向かった仲間達を信じて待てば良い。
出口へ向かう灼滅者達の足音が、新宿迷宮の戦いの一角に、幕を降ろした。
作者:泰月 |
重傷:ユーリー・マニャーキン(天籟のミーシャ・d21055) 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年4月22日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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