絶対に勉強なんかに屈しないマン

    作者:柿茸

    ●どこかの集合団地
     ネームプレートに『新山』と書かれた団地の一室。
    「勉強したくないでござる! 絶対に勉強なんかしたくないでござる!!」
    「いい加減にしなさい! いいから出てきて勉強しなさい!!」
    「いやでござる!! 拙者を出そうとするなら母上を殺すでござる!!」
    「冗談でも殺すとか言わないで!」
     その中で、一人の中年女性が押入れの襖に向かって言い合いをしていた。襖の中から、いやでござる! 絶対に出ないでござる!! とか聞こえてくる。
    「拙者の趣味を理解しようとしない母上などいらないでござる!!」
    「理解できないわよ!」
     だってそんな。
     息子が勉強を放ってこんなもの書いてるだなんて!!
     ヒステリック気味に言い放った母親の目線の先。
     美形な男同士が付き合ってるような描写の、描きかけの原稿が、数日前に息子が押入れに立てこもった時から机の上に放置されていた。
     内容が健全だったのが救いだろうか。
     
    ●教室
    「腐男子をどうにかしてきて欲しい」
    「は?」
     タイマーを押した田中・翔(普通のエクスブレイン・dn0109)の言葉に、竜蜜・柑太(蜜柑と龍のご当地ヒーロー・dn0114)が頭上に疑問符を浮かべた。
    「腐男子?」
    「腐男子」
     質問にオウム返しで答えられても理解ができるわけもなく、柑太は周りに集まった灼滅者達に教えて欲しいと視線を投げかける。君は教えても良いし、教えなくても良い。
    「とある集合団地で、ノーライフキングに堕ちかけている男子がいるんだ。名前は『新山・賀来人(にいやま・かきと)』」
    「ああ、腐男子ってそういうことけ?」
     間違いなく勘違いした柑太。そもそもノーライフキングは腐っているわけでもないのに。
    「趣味で漫画を、中身は置いといて、描いてるんだけど。母親が勉強にうるさい人で」
     その漫画を見て、描いている暇があるなら勉強しろって強く言ったことが切欠。
    「キレて、闇堕ちして、押入れに引き籠った」
    「押入れに引き籠った」
    「うん、押入れに」
     俺の知ってるノーライフキングと違う、とか言う声が聞こえてきそうだ。
    「ということで、完全にダークネスにするのもまずいし説得してきて」
     このエクスブレイン、いつにも増して投げやりである。
    「えーと、接触方法だけど」
     押入れに引き籠っているということは、どうにかして部屋の中に入る方法を考える必要はある。
    「まぁ、母親は一般人だから色々とやりようはあるんじゃないかな? 賀来人の交友関係は全く知らないみたいだから、友達って嘘ついても多分大丈夫」
     出来れば、一般人だしあまり傷つけるとかはしないで欲しいけど。
    「賀来人は押入れを開けられたら、即座に攻撃しにかかってくるから注意してね。完全に条件反射的に開けられたら殺すって思考になってる。そして逃げる」
    「逃げる?」
    「こんな家にいられるか! 俺は家出させて新拠点を築かせてもらうぞ! みたいな感じで窓からダイブする」
     窓から飛び出した先は広場だし、戦うなら狭いだろう室内よりもそっちの方がいいかもね。
     またもや俺の知ってるノーライフキングと違う、と聞こえてきた気がしなくもない。
    「説得については、まぁ……勉強と将来の関係性だとか、彼個人の趣味について自分なりの意見を言うだとか、その辺りがポイントなのかなぁ?」
    「でも殴り合いでもええんやろ?」
    「ただ殴るだけだと流石に駄目だとは思う」
     そうけ。と腕を組む柑太。そして賀来人の主な攻撃手段を話し始める翔。
     1つ目、結界を作って人を寄せ付けない技。除霊結界のそれと同じような物だ。
     2つ目、ちょっと書き表せられないような呪文めいた何かをぶつけ、洗脳してくる技。囁くように言うので近距離の相手1人にしか使えないが、催眠の効果がある。
     3つ目、単純な呪文めいた何かを声高に叫び、軽い洗脳をしてくる技。こちらは一度にたくさんの人数相手に効果があるが、捕縛されたかのように動けなくなってしまうとか。
    「何かようわからんがのー。呪言を使うってことけ?」
    「そんな感じ。強烈な催眠で一気に引きずり込むか、広く浅くで徐々に引きずり込もうとするかの違いというか」
     あくまでも無表情の翔。
    「まぁ、そんな相手の変な言葉に惑わされずに、説得とか頑張ってきて欲しい」
     と、タイマーがけたたましく鳴る。音を止め、カップ麺を開け始める翔。
    「おう、任しとき! ワシは説得なんて無理じゃが、他のもんが何とかしてくれるけんの!」
     そして柑太は使い物にならなさそうだった。


    参加者
    東雲・由宇(終油の秘蹟・d01218)
    鷹森・珠音(黒髪縛りの首塚守・d01531)
    室本・香乃果(ネモフィラの憧憬・d03135)
    リヒト・シュテルンヒンメル(星空のミンストレル・d07590)
    廣羽・杏理(トリッククレリック・d16834)
    久瀬・隼人(反英雄・d19457)
    牛野・ショボリ(歌牛・d19503)
    ノーラ・モーラ(ボーパルバニー・d22767)

    ■リプレイ

    ●わかる
     『新山』と書かれた表札。その下のインターホンのボタンを押す指が1つ。
    「賀来人ちゃ……くんの友達です。今日、先生からプリントを渡してくれと頼まれたのですが」
     はい、とインターホンから声がかかればそう返す鷹森・珠音(黒髪縛りの首塚守・d01531)。エイティーンで姿だけでなく声までしっかりと高校生のそれに変わっていれば怪しまれるはずもなく。しばらくして玄関が開けられた。
     お邪魔します、と頭を下げる珠音、そして東雲・由宇(終油の秘蹟・d01218)とリヒト・シュテルンヒンメル(星空のミンストレル・d07590)。顔を上げれば、隠しきれない疲労を滲ませた賀来人の母親の顔が目に入る。
    「ごめんなさいね、賀来人なんだけど……既に聞いてるかしら? 引きこもっちゃっていて」
    「あ……はい、話は聞いてます」
     話を合わせれば、母親は息子の趣味のことを伏せつつ、事情を説明してくれた。
    「それなら、私達からも説得してみるわ」
    「流石に引きこもったままというのは……まずいでしょうし」
     そして手助けを申し出てみれば、母親の顔が明るくなった。
    「賀来人。お友達が来たわよ」
     家の中に向かってそう声をかけ、上がって頂戴と3人に告げて中に入っていく母親。
    「知らないでござる! そんな友人なんて知らないでござる!!」
    「何を言ってるの! 折角来てくれたのに!」
     そして押入れの前でそんな押し問答をする親子だが、こればかりは息子の言葉が真実な偶然。
     と、再び玄関のチャイムが鳴る。ため息をつき、ごめんなさいと言い置いて部屋から出ていく母親。
     顔を見合わせて頷き、リヒトがそっと部屋の扉を閉めたその向こうで、人が倒れかけるような気配がした。
    「さーてと……」
     由宇が悪そうな笑みを浮かべて呟き、部屋の中の物色を開始した。苦笑いをしながらもその様子を横目に、リヒトと珠音は押入れの前に膝をつく。
    「腐男子同士、お友達になりませんか?」
    「直球でござるな!?」
    「あの……確か漫画を描いているんですよね? 見せてくれませんか?」
    「お主も直球でござるな!!?」
     そんなやり取りをしている押入れ組を横目に、部屋を漁る由宇。
     そして漁ること数分。目的の紙束がでてきた。
    「あったわ……!」
     逸る気持ちに身を任せ、早速中身をチェック。
    「やだこの子、将来超有望でござゲフンゲフン」
     涎出かけてますよ。
    「見つけたわよー。いやぁこれは濃厚な腐トークしてみたいかも」
    「ござっ!?」
    「見せてください」
    「私も見たいです」
     何やら押入れの中で激しく何かが動くような音がするが、出てくる気配は一向にない。じっくりと中身を見ていく3人は、そして三者三様の感想を持ちながら激しく音を立てている押入れへと再び向き直る。
    「素敵ですね。二人の微妙な距離感。もっと近づきたいのに躊躇ってしまう心の描写。引き込まれます」
     ……この作品、完成させられなくていいのですか?
     大和撫子然とした声と態度の珠音の言葉に、暴れていた音が収まった。
    「……ほ、本当でござるか?」
    「僕も、とてもいいと思います。親に反対されて、このまま引きこもってしまっているのは勿体ないですよ」
     ややあって返ってきた言葉に、リヒトが言葉を重ねる。
    「自分の趣味が理解されないのはつらいですよね……。腐男子は肩身狭いですし……。でも、自分の親に『いらない』と言うのは良くないです」
    「し、しかし! 拙者の趣味を理解しようとしない母上など!」
    「貴方も作者なら、殺すなんて言わずに作品で納得させてみましょう?」
     大丈夫。きっとできますよ。
    「う、ぐぐぐぐぅぅ……。た、確かにそうかもしれぬでござるが……!」
    「うむ。その憤り、よくわかるでござるよ……拙者も先日、歳下且つ同性の保護者に薄い本を発見された故」
     由宇さんインしたお。
    「だが新山殿よ! ここで闇に堕ちてどうするでござるかっ!?」
    「ござっ!?」
    「お主と巡り逢うべき腐な本や、腐った掛け算を望む同好の士達はどうなるでござるっ!?」
    「お、おおお……!」
     感動に震えているような声。何か自分から開けて出てきそうな気配。
    「今一度考え直されよ、そして共に腐の夜明けを迎えようぞッ!! この作品! このまま健全に留めておくのは勿体ないッ!!」
     ガラリ。
     熱い説得をしながら容赦なく押入れオープンの刑とかマジ容赦ねえっす。
    「ぐわああ陽の光! 溶けるでござるうううう!」
     同時に、結界を纏った賀来人が顔を腕で庇いながら中から飛び出して来た。結界に突き飛ばされる由宇とリヒトを置いてけぼりに、勢いよく窓から飛び出していく腐男子が1人。
    「溶けませんから」
     冷静にツッコミつつ窓から顔を出す珠音。前衛2人も少し間をおいて顔を覗かせれば、眼下では大人しそうな少年を集団でタコ殴りにしているいじめ図が展開されていた。

    ●わからない
     タコ殴りが発生する少し前。広場にて。
    「しかしどういう意味なんじゃろなぁ……」
     教室で聞いたことを思い出し、首を傾げる竜蜜・柑太(蜜柑と龍のご当地ヒーロー・dn0114)。室本・香乃果(ネモフィラの憧憬・d03135)も困ったようにその言葉に頷いた。
    「柑太さん、私も状況がよく分かりません……」
    「そうけ」
    「でも色々大変なのは分かりました」
    「じゃろうなぁ」
     ところで他の奴らは分かるけ? と辺りを見渡せば、その場にいた残りの3人は各々に頷いた。
    「簡単に言えば―――」
    「棒is愛ねー! ショボリしってるねー!」
     廣羽・杏理(トリッククレリック・d16834)が説明しようとした矢先、牛野・ショボリ(歌牛・d19503)が横から割り込んできた。
    「ぼういずあい?」
    「棒は愛?」
    「自由恋愛と萌えのいちけーたいねー!」
    「萌え?」
    「景気の余波を受けやすい出版業界の安定したドル箱ねー」
    「ドル箱?」
    「でも棒is愛のおにーちゃん達よりおねーちゃんのがぜっぺ」
    「それ以上いけないのです」
     ノーラ・モーラ(ボーパルバニー・d22767)が口を塞いだ。柑太と香乃果の頭には大量の疑問符が浮かんでいる。
    「ようは、男の人同士の恋愛を描いた作品が好きってことです」
     苦笑を浮かべた杏理が簡単に説明した。と同時に、2人の頭の中にホモという単語が思い浮かぶ。
    「ワシ帰ってええか」
     柑太は逃げようとした。
    「駄目なのです」
     しかしノーラに回り込まれてしまった!
    「男の人が、そう言う作品が好き……ということですか?」
    「はい」
    「……まだまだ知らないこともたくさんですね」
     何とも言えない顔をして、どういうことかは察した様子の香乃果。
     と、柑太をディフェンスしていたノーラが、建物の影からやってくる人影に気が付いて顔を向けた。
    「何やってんだおめェら」
    「おお、隼人どうじゃった?」
    「特に問題ねェな」
     作戦通りに、3人が新山家に入っていった後に遅れて家を訪ね母親を魂鎮めの風で眠らせた久瀬・隼人(反英雄・d19457)が戻ってきた。
    「さて……出てくるとしたら、あの窓だな」
     そして新山家の位置を再確認し、その傍で立ち止まった。
     開いた窓から何やら五月蝿く話す声とドタバタと音が聞こえるが、と広場で待機しながら思っていたその時。
    「こんな家にいられるでござるかあああ!!」
     喧しく叫びながら、なんというか色んな意味でゾンビ的なオーラを発している普段なら大人しいであろう少年が飛び出して来た。
    「はっ!? 誰でござるカニバルァッッ!?」
     そして着地して顔を上げ、周りを囲む灼滅者を見た直後に顔面を殴り飛ばされた。賀来人を殴り飛ばした異形腕を元に戻し、ズカズカと歩み寄っていく隼人。
    「まぁ、とりあえずは説得しながらでもやっちゃいましょう」
    「そうですね」
    「おー!」
    「ござぁああぁあぁぁあ!?」
     誰が言ったかは分からないけど、どう考えてもいじめの現場開始であった。

    ●わかれよ
    「ぬりィ生き方してそうだから知らねェだろうがそう人生甘くねェよ」
     隼人がボコボコにされてる賀来人の胸倉を掴んで引きずり起こした。
    「足きりっつって知識も学歴もねェやつは、将来やりてェことが出来てもまず入門することすらできなくなんだからな」
    「ハグァッ!?」
     血を吐いたのは言葉が心に突き刺さったのか、それとも胸倉から手を離されてからの急所という急所に叩き込まれた拳の威力からか。
    「今のうちに気づいとかねェとお前みたいな無能はマジで人生詰むぞ」
    「せ、拙者にはこのペンの腕と滾る萌えが!」
    「でもおにーちゃんもそーさくするなら、独りよがりで勢いだけの萌えと小手先で濁した知識だけじゃ今の読者の目は厳しいねー」
    「ゴフゥ!!」
     更に血を吐いたのはトドメと言わんばかりに殴り飛ばされたからなのか、違う気がする。
    「おーべんきょーショボリもめんどくさいねー。でもねーショボリのお家貧乏だからお勉強して色んな事覚えて牛野牧場再興の為に役に立てたいねー」
     つまりは貧乏だと趣味もできないと言うことでしょうか。
    「お勉強、いつかおにーちゃんの腐男子ロードに役に立つねー」
    「そういうのはよく分かりませんけど、でも創作活動をするには『自分の引き出し』を増やす為に、勉強も必要ではないですか?」
     香乃果がショボリの言葉に頷きながら続ける。
    「多くの事を吸収しておかないと薄っぺらいお話になってしまいます」
     それは学校の勉強に限らないけれど、学校で学べる事はとても多いですよ。
    「ネタは何がきっかけかわっかんないねー。数学や化学なんか擬人化萌えの宝庫なんだよー」
    「どういうことですか……?」
     説得を中断して、頭の上に特大の疑問符を浮かべた香乃果。理解できないまま純粋でいてください。
    「ショボリも頑張るからおにーちゃんもがんばろ。未来の野望と欲望のために!!!」
     そう熱弁したショボリの手は、銭の形になっていた。8歳にして完全に金の亡者である。
    「ゼニに繋がるならショボリけんきゅーを欠かさないんだよー。巨乳男子って流行る?」
     金の亡者である。
    「せ、拙者が金のために描いてると思ってるでござるかあああああ!!」
     そしてその言葉に、がばりと勢いよく元気に復活した賀来人。
    「良かった、それだけ元気ならまだ説得できる! できずに勢い余って倒しちゃうってことはない!」
    「おい誰だ今の!」
    「拙者は! ただ! (ピー)や(バキューン)とか(アハーン)で(フワァーオ)なことをたくさんの人に共感してもらいたいんでござるよ!!」
     ちょっと公衆の面前で言っちゃいけないような単語を、声高に呪詛のように吐き出してくる賀来人。灼滅者達に精神的ダメージ!
    「でもそのためには元手が必要ですよね? 悪いですが、このままですと隼人さんも言ってましたように人生詰みますよ?」
    「ゲフゥ!」
     だがセイクリッドウィンドを吹かせる杏理の痛恨の追撃(言葉)が反撃に突き刺さった。

    ●わかりたくない
    「血を吐いた! 賀来人殿に謝れ!!」
     そこにやってきた新山家潜入組。由宇がノリノリである。
    「あ、すいません」
    「律儀に謝らずとも……」
    「それはそうとして、親って人たちは、子どものことを思えばこそ、口うるさく言いますよね」
     でも大体は、良い成績を取っちゃえば何も言わなくなると思いますよ?
    「ぐ、ぐぬぬ……勉強……頭が全て……!」
     杏理の言葉に頭を抱えている。
    「……でも、内容については、ちょっと吃驚したのかもしれませんけど。別に構わないんじゃないですか、あなたの好きなものなんですし」
     人は人、自分は自分で好きな趣味に走ればいいじゃないですか。
    「そ、そうでござるか!」
    「まぁ、僕は、なんというか所謂本物の方なので、感覚が違うかもしれませんが」
    「なん……」
    「だと……」
     ざわっ。
    「ちょっとそこのところ詳しく」
    「聞くな」
    「好みは年上の落ち着いた人で、日本人の黒髪短髪はセクシーで好きです」
    「答えるな、あと柑太はケツ押さえるな」
    「仕方ねえじゃろ!」
    「あ、柑太さんは好みじゃないので」
    「お、おう!?」
     隼人の冷え切ったツッコミが四方八方に飛ぶ。ついでに物理的なツッコミも、容赦なくどてっぱらに針のような杖身を刺して魔力を送り込む。賀来人に。
    「何でそれは拙者にゃばばば」
    「闇堕ちしかけてるからなのです」
    「闇堕ち! 甘美な響きでござるな!」
    「絶対違う意味でとってるねー、でも良いネタねー」
    「そっちの闇堕ちは美味しいわね!」
    「乗るな、ばら撒くな」
     由宇は自前の本をばら撒いた!
     賀来人は本に釣られた!
    「好きなモノを否定されるのはつらいのです」
     勉強もまぁまぁ大事なのでしょうが、気晴らしに好きなことに集中するのも大事なのです。
     本を凄まじい速度で捲っていく賀来人の前に座り込み、淡々と告げるノーラ。
    「勉強はがんばれ、でも好きなことも頑張るのです。BLを自分が受け入れられないからって全否定する人は酷いと思うのです」
    「お、おお、そうでござるよな! そうでござるよな!」
    「でもそれとこれは別なのです、ごめんなさいなのです」
     容赦なく、殺人注射を本から顔を上げた腐男子の頸動脈にブスリ。さらに香乃果の尖烈のドグマスパイクが悶える賀来人を穿ち飛ばした。
    「腐男子と腐女子の好みは若干違いますよね。美化しすぎない、ふつうにいる人でいいと思うんです。飾らないからこそ、相手を純粋に大切にする、という状況がむしろ良いというか……」
     原作作って賀来人さんに漫画化してもらいましょうか? などと思ったリヒトの傍を、吹き飛ぶ賀来人が通って行ったその一瞬。耳に何事か告げ口される。
    「いいですね漫画化してもらいましょう」
    「何を言われたの!?」
     ソーサルガーダーを賀来人に飛ばしつつ真顔で言い放ったリヒト。リヒトの霊犬であるエアが慌てて浄霊眼を向け、未だに吹き飛び続ける賀来人の身体を、珠音が髪に編み込んだ鋼糸を瞬時に張り巡らせて絡みとった。
    「あの作品、素敵と思ったのは本当です。でも今のままでは誰も認めてくれません」
     勉学で成果を見せれば、これもひとつの才能とみなされます。
    「ですからもう一度、読ませください。……あなたの母親も、説得しますから」
    「ほ、本当でござるか……?」
     宙ぶらりん状態の賀来人の目が揺れ動く。
    「う、うーん、私にはやっぱりよく分からない世界ですが……。他人に迷惑をかけなければ大丈夫だと思います」
     珠音の後ろでは、香乃果がやっぱり複雑な表情をしながらも、自分なりの結論を出していた。
    「だから、頑張ってください?」
     そうして何となく頭を下げたその上を、腐ったカトリック女性が跳び越えた。
    「新山殿! 武蔵坂に来ないでござるか!」
    「武蔵坂?」
    「拙者らのような腐った者共もたくさんいる学校でござる!」
    「行くでござる!」
    「ならば浄化されよ! 浄化の掛け算、喰らえッ!」
     腐ってるのに浄化という、矛盾した由宇のクルセイドスラッシュの一撃が叩き込まれ。
     そして賀来人の闇は浄化された。

    作者:柿茸 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年4月21日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 2/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 15
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