「なるほど、刺青羅刹にはああいう手合もいるのか。正直、俺の勝ち目は薄そうだな」
「鞍馬天狗の軍が来ます! 外道丸さん、どうしますか……!?」
「あいつの狙いはお前じゃなく、明確に俺の『刺青』だ。そして俺よりも強く、こちらの陣容も筒抜けっぽいな。力量と情報で敵わないなら、俺達にあるのは地の利だけだ」
「地の利……あっ、昨日教わった『大勢と喧嘩する時は狭い場所で』、ですね!」
「その通り。それに、奴等の狙いが俺なら、俺が移動すれば街にダメージは無ぇ。
新宿迷宮で籠城戦だ。全員俺についてこい!」
●三相背反
「集まったか……よし、早速だが、説明を初めさせて貰うぜ?」
神崎・ヤマトは、集まった灼滅者達を眺めると、すぐさま説明を始める。
「皆も既に知っているかもしれないが、朱雀門から外道丸の情報を得た鞍馬天狗は、アメリカンコンドルを撤退に追い込んだ精鋭と、外道丸の拾い物を回収しに同行したロード・パラジウムと共に、歌舞伎町の外道丸の勢力を襲撃し、圧倒的な勝利を得た。結果、敗北した外道丸は残滓の仲間を引き連れ、新宿迷宮に撤退……今は籠城の構えを見せているんだ」
「しかし生き残った外道丸の配下は少数精鋭……鞍馬天狗側も、数の有利を活用する事は出来ず、圧倒する事は出来ずに苦戦することが予測出来る。しかし、数が多いのは優位であるのは変わらないので、時間を掛ければ外道丸側が敗北し、刺青を奪われるのは間違い無いだろう」
「鞍馬天狗による刺青の強奪を阻止するには、灼滅者達の手で、外道丸を灼滅しなければならないだろう。又、ダークネス同士の抗争の隙を突くことが出来れば、鞍馬天狗やロード・パラジウムの灼滅も可能かもしれない。全ての目標を達成する事は不可能だとは想うが、より多くの戦果を得られるよう、力を貸して欲しいんだ」
そしてヤマトは、皆の目をもう一度見渡してから。
「今回は状況が複雑だから、一つ一つを改めて説明しておくな」
「まず……外道丸は、今新宿迷宮に籠城している」
「そして智の犬士カンナビスが捜索し、ロード・パラジウムが狙う何かは、外道丸が保護している模様だ」
「又、鞍馬天狗の精鋭達は、新宿迷宮の深部を探索中……既に浅い階層については、鞍馬天狗の配下によって制圧されてしまっている状況だ」
「大規模な襲撃があれば、鞍馬天狗達は撤退を始める。そして鞍馬天狗が灼滅、或いは撤退させる状況になれば、ロード・パラジウムも撤退する事になるだろう」
「鞍馬天狗とロード・パラジウムをどちらも灼滅、或いは撤退させる事が出来れば、外道丸勢力を攻撃する事が可能となる」
「……全てを達成する事は難しいかもしれないが、優先するべき目標をちゃんと相談し、戦いに備えて欲しい所だ」
そして、最後にヤマトは皆をもう一度、少し心配するような視線を向けながら。
「今回は、かなり難しい依頼になるだろう……しかし、皆の力を結集すれば、きっと良い結果が得られる事と想う。皆の力……どうか貸して欲しい。宜しく頼むな」
と、深く頭を下げた。
参加者 | |
---|---|
東方・亮太郎(天下御免の武威刃地野郎・d03229) |
叢雲・秋沙(ブレイブハート・d03580) |
阿剛・桜花(目指すは可愛い系マッスル女子・d07132) |
紅羽・流希(挑戦者・d10975) |
羅睺・なゆた(闇を引き裂く禍つ星・d18283) |
神打・イカリ(光を信じる英雄・d21543) |
上池・乙葉(両手に銃の花束を・d21658) |
琶咲・輝乃(過去と知識を想いし者・d24803) |
●迷いし者
ヤマトより話を聞いた灼滅者達。
鞍馬天狗やロード・パラジウム、外道丸……様々な者達が、新宿迷宮へとやってきていた。
「いやはや、こんな所に潜っているとは……よほど追い詰められているのか、それとも守っている物が大切なのだろうか……」
「そうですわね……まぁ、守っているというものも、正体不明と聞いておりますし、ね」
紅羽・流希(挑戦者・d10975)に、阿剛・桜花(目指すは可愛い系マッスル女子・d07132)。
籠城し、戦闘……そして強力な敵が、新宿迷宮を半ば支配している状況。
……今迄に無い、難しい状況ではある。
そしてそんな状況を打破する為に集められた灼滅者達は、幾つかの作戦に別れ、戦わなければいけないのだ。
「しかしよ、鞍馬天狗? 日本のヒーロー、義経を育てたって言われる奴らが敵なんてな!」
「ああ。愉しみでもあり、不安でもある所だ。とはいえこの事態を解決しない限り、俺達には不味い事になるのは間違い無いけどな」
「うん……だから、頑張らないと、いけないね……」
神打・イカリ(光を信じる英雄・d21543)に、東方・亮太郎(天下御免の武威刃地野郎・d03229)と琶咲・輝乃(過去と知識を想いし者・d24803)の言葉。
そして叢雲・秋沙(ブレイブハート・d03580)と上池・乙葉(両手に銃の花束を・d21658)、羅睺・なゆた(闇を引き裂く禍つ星・d18283)が。
「いい感じに気を取られている所を横合いから殴りつければいいんだね」
「そうですね。つけいる隙があるのなら、行ってダークネスの思惑を砕かないと……」
「刺青を手に入れにノコノコとやってきた訳だろうが、その意地汚い根性が命取りになった事を教えてやる。この新宿迷宮に居る羅刹共を全て倒して、鞍馬天狗に撤退を決意させてやる……個人的には全滅させたい所だがな」
「うん、そうだね。まぁ相手の戦力を削れるときに削っておかないと、また厄介な事をしそうだし、ね」
「うんうん。さぁオレンジさん、今回も頑張るよ?」
「ナノ!!」
乙森の言葉に、彼女のナノナノ、オレンジさんが胸をぽーんと叩き、皆を鼓舞する。
そして、新宿迷宮の入口へと到着する灼滅者達。
「ここだね……さて、と……皆に地図、転送しておいたよ」
と、イカリがメールで、皆に過去新宿迷宮を探索した時の地図を送付。
そしてハンズフリーのインカムを桜花が装着し、他班との連絡疎通を一応確認。
「うん……大丈夫みたいですわね。準備はOKですわ」
「ん……あと、これ……渡すね?」
と、輝乃が暗視ゴーグルを皆に配布。
そして乙葉も、己のバスターライフルに遠距離索敵用のスコープを装着し、それぞれ準備を整える。
……全員、準備を整えた後。
「準備はいいですか? ……それでは、行くとしましょうかねぇ……」
流希の言葉に皆も頷き、そして灼滅者達は息を潜め、闇の中……新宿迷宮へと足を踏み入れるのであった。
●闇は続く
そして灼滅者達は、闇の中に潜み、新宿迷宮の浅層へと向かう。
当然、新宿迷宮の中は真っ暗闇……そんな中を、歩く。
「本当……凄い状況だね。敵陣も、かなり手練れの人達が多い様だし」
秋沙の言う通り、ここは鞍馬天狗の精鋭の配下達が制圧しており、かなり動き辛い状態である。
下手に歩いて音を出してしまえば、彼ら羅刹達に早々に包囲され……末路は自明だろう。
ただ、流希がサウンドシャッターを使用し、音を遮断。勿論、足音も出来る限り立てないように注意深く歩むと共に。
「いいか? 相手はダークネス。一瞬の油断が大惨事に繋がるぞ? 一瞬の気の緩みも許されないからな」
「ん……」
と、仲間達へ警戒を促していた結果、羅刹にも中々気づかれる事は無く、迷宮を進んでいた。
そして、迷宮を進みながらも、敵の動きを観察し……その動きの特徴を調べる。
すると……解るのは一つ。
基本的に彼らはは集団行動をしている。
が、その中には数体……群れることを拒否している様な、単独行動の者達も居た。
当然一人となれば、背面からの攻撃には注意が散漫となる訳で……灼滅者達側の作戦、奇襲には都合が良いだろう。
「……先ずは狙うなら、単独行動をしている奴らだな。よし、あいつらに奇襲を仕掛ける事にしようか」
「そうですね……狭い場所なら、狙いやすいですし」
と亮太郎の提案に乙葉も頷くと共に、先日の新宿迷宮の地図を元に、イカリがスーパーGPSを使用。
現在位置を把握した上で……狙いやすい、狭い場所に近付く、単独行動の羅刹を追跡していく。
……そして、狭い場所に羅刹が足を踏み入れた、その瞬間。
「今だ……行くぞ!」
と、流希の号令一下、一気に灼滅者達が仕掛ける。
「……そこをどけぇぇぇ!!」
背後から、音も無く忍び寄ってきていたイカリの、衝撃のグランドシェイカーが羅刹に決まる。
『っ!』
クリーンヒットの一撃を受ける羅刹……そして振り返る間にも。
「撃ち抜く……!」
乙葉のリップルバスターが、真っ直ぐに羅刹の肩を射抜くと、残る仲間達が半円陣での包囲網を構える。
『……灼滅者か。くそ……!』
舌打ちし、相手も構える。
リップルバスターの一撃で、少し肩の上がりが低い……不意打ちの一撃は、かなりの効果を及ぼしているようである。
しかし……羅刹も、鞍馬天狗の配下である、精鋭の羅刹達……それで倒れる程、柔な者達ではない。
『うぜぇ奴らだ。さっさと殺してやるよ!』
と、威声を張り上げながら、灼滅者に鬼の刃を振りかざす。
「……させねぇ!!」
しかし、その攻撃は、亮太郎がカバーリング。反撃にクルセイドスラッシュでの一閃を叩き込む。
……が、羅刹の一撃は、かなりの大ダメージ……すぐさま輝乃がシールドリングで回復する。
「大丈夫……?」
「ああ、大丈夫……サンキュ!」
輝乃に優しい声を掛けながらも、その視線は鋭く、前の羅刹を射抜く。
そして、敵の攻撃をくぐり抜けた後。
「まったく。どれだけ集まっても、所詮は烏合の衆という所かしらね? オーッホホホホホホホ♪」
挑発するように笑う桜花に、なゆたも
「全くだ。強者になりきれないクズ共が。この場に来た事を、無間地獄で後悔すると良い」
と死の宣告。そして亮太郎が。
「来い、装甲車!」
と号令一下、赤いスポーツカーが変形した鎧を装着。
「装着合体! 爆走甲・メタファイターGT!」
と威声を張り上げ、スレイヤーカードを解放すれば、残る仲間達もスレイヤーカードを解放し、戦闘体制。
「さぁ……これでも喰らいなよ!!」
先頭切って、秋沙が鬼神変で攻撃を叩き込むと、流希も鋼鉄拳。
クラッシャーの効果と合わせ、強力な一撃を叩き込むと、続くスナイパーのなゆたがブレイドサイクロンで壊アップを付与しながらの攻撃を叩き込む。
そして次のターン。
「仲間達に手出しはさせない!」
と乙葉がガトリング連射、なゆたが神薙刃を放つと共に、秋沙、流希、イカリの三人、クラッシャー陣がそれに続けて攻撃。
「お前達は、これだけの軍勢を掛けてまで何を追っている? 外道丸は一体、何を確保したっていうんだ?」
流希が、そんな言葉を投げかけるも。
『うるせえ、お前達には関係無い話だ!』
と、軽く話は拒否されてしまう。
「そうか……なら、お前の末路は死ぬだけだ。秋沙、イカリ」
「うん!」
「ああ、解った!!」
声を掛け合いながら、連携しての大打撃。
クラッシャーの効果と共に、不意を打たれた事での、エンチャントもない状態での戦闘。
羅刹にとっては、不利な戦況であるのは間違い無いのだが……ほんの僅かの劣勢程度の戦況を、羅刹は繰り広げる。
「くっ……流石、精鋭って訳か」
唇を噛みしめる亮太郎……そして羅刹の攻撃。
「オレンジさん!!」
しかしその攻撃は、今度は乙葉のナノナノ、オレンジが身体を張ってカバー。
……流石に強力な一撃は、ナノナノを大きくはじき飛ばしてしまうが……漢は見せた。
すぐに輝乃がシールドリングで回復を施し、対処しつつも、亮太郎は己のライドキャリバーと連携し。
「お前の相手は、こっちだ!」
と、機銃掃射にご当地ビームで、怒りを引き寄せて行く。
怒りを引き寄せた後は、輝乃がメディックとして回復に張り付き、ギリギリの線で対峙。
……そして、数ターンが経過。
「これでフィナーレだ! アンカード・ノヴァッ!!」
イカリ渾身のご当地キックが、羅刹頭上から叩き込まれる。
『ぐぁっ!?』
その一撃に、羅刹の身体は地へと臥せ……動きが止まると。
「良し……一旦離れるぞ。騒ぎを聞きつけてくる羅刹が居るかもしれないしな」
流希の言う通り、この層は沢山の羅刹の配下いよって支配されている。
サウンドシャッターを使っているからといって、音には気付かないかも知れないが、偶然通りがかる可能性は充分あり得る話。
「そうですわね……一旦待避、ですわ」
桜花が頷き、イカリのスーパーGPSを元に、一旦身を隠せるところへと避難した。
そして数分、やり過ごした後に、次なる敵の索敵へと向かう。
しかし、1体単独という羅刹はちらほらといるものの、そいつが狭い場所へと向かうのは別問題。
中々、ターゲットに良い状態で奇襲を仕掛ける事は出来ず、時間は刻一刻と経過していく。
「これは中々……厳しい作戦だな」
なゆたの言う通り、敵もやはり精鋭達。
一体を倒すのにも時間は掛かるし……油断は出来ない。
しかし、確実に敵の動きを判断し、確実に誘い出してもう一人を誘い出す。
「さぁ、皆殺しの時間だ! ありがたく思え!」
なゆたが狂戦士が如く言葉で、不意の一撃を仕掛けると。
「全部まとめて蹴散らしてやるよ。おまえらの好きになんて、絶対にさせないッ! 変身ッ!」
イカリもスレイヤーカードを解放し、戦艦を模した鎧を装着し、戦闘開始。
フォースブレイク、抗雷撃、バスタービーム……と、高火力の連続攻撃で、奇襲1ターンで大幅に体力を削り、残るターンは敵のターゲットをコントロールするように、亮太郎、ホライゾン、オレンジさんが攻撃を代わる代わる引き受ける。
勿論、その回復には輝乃の清めの風とシールドリングこそが鍵。
……回復量としては、敵の攻撃の方が、遥かに上回っている。
が、1対8という数の差を活かして、ほぼ互角という戦況を作り出し、戦い続け……。
「ほらほらほら、本当にその程度ですの? 期待外れですわよ?」
桜花がまたも、挑発の言葉を投げかけ、敵から逃げる、や仲間を呼ぶ、という冷静な判断力を奪った結果……二匹目を倒す。
そして……一旦息をつこうとした、その瞬間。
「ねぇ、あれ……何ですの?」
桜花が指差した先……そこには、今迄とは比べものにならない程の、羅刹の集団。
いや……その真ん中にいるのは、鞍馬天狗。
「っ……流石に、これは不味いね」
多勢に無勢……更に、鞍馬天狗という、強敵もいる。
戦っても、勝ち目は万が一にも無いのは、自明。
「仕方ないか……新宿迷宮を離脱するぞ」
流希の言葉に、皆も頷き……灼滅者達は、新宿迷宮を離れた。
●鞍馬
「……ふぅ、どうにか撒けたようだな……」
息を整えつつ、汗を拭う流希。
「ええ、その様ですね……しかし、鞍馬天狗は撃破出来なかった……ですね」
「うん……」
乙葉に輝乃が肩を落す……が、そんな仲間達に向けてなゆたと桜花が。
「まぁ……でも、鞍馬天狗は撃破出来なかったけど、何だか苛ついていた様子だしな」
「そうですわね。まぁ……彼らの目的は、果たせなかったのでしょうね。まぁ彼らの野望は阻止出来たのだから、今回の所は良しと致しましょう」
と頷き合い……そして灼滅者達は新宿迷宮を脱出。
そして。
「さて……まぁ無事に作戦は成功した様ですし、お茶、どうですか?」
「あ、うん。頂くよ♪」
ニコリと流希が笑みを浮かべながらお茶を勧めると、秋沙を初め、ごくりと一杯。
急ぎ脱出したから喉が渇いていたようで……お茶がとても上手く感じる。
「……まぁ、後は仲間達の結果を信じようぜ? きっと……成功していると、な」
「そうだな。結果は自ずと出て来るはずだ……その結果が良い結果になると信じて、一旦武蔵坂学園に帰るとしよう」
イカリと亮太郎が言うと、周りの仲間達も頷いて……そして灼滅者達は、新宿を後にするのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
|
種類:
公開:2014年4月22日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
|
||
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
|
||
あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
|
||
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|