廻夜・時史(羽紡・d15141)は、こんな噂を耳にした。
『餅をねちねちする、ねちっこい青年の都市伝説が存在する』と……。
都市伝説は常に餅をねちねちとしており、隙あらばそれを投げつけてくるようである。
この餅は妙にネチネチしており、一度体に纏わりつくと、トリモチ状態。
暴れれば暴れるほど、体に絡みつき、纏わりつき、カチコチになっていく。
こうなると餅で出来たオブジェのようになってしまい、身動きひとつ取れなくなってしまう。
そのため、都市伝説が確認された地域には、オブジェの如く被害者達が奇妙なポーズを取っており、助けを求めてネチョネチョグッチョリと迫ってくるようだ。
だが、彼らに悪意は全くない。
ただ、助けてもらうため、苦しみから解放されるため、助けを求めてくるだけで……。
しかし、それがわかっていても、ある意味で恐怖。
抱き付かれれば、ヌルヌルベットリ。
そこに追い打ちをかけるようにして、都市伝説がネチネチと嫌みを言いつつ、餅を投げつけてくるので、色々な意味で注意が必要である。
参加者 | |
---|---|
艶川・寵子(慾・d00025) |
玖渚・鷲介(炎空拳士・d02558) |
エルファシア・ラヴィンス(奇襲攻撃と肉が好き・d03746) |
黒木・摩那(昏黒の悪夢・d04566) |
阿久沢・木菟(灰色八門・d12081) |
廻夜・時史(羽紡・d15141) |
天城・ヒビキ(歓鬼・d23580) |
周防・天嶺(狂飆・d24702) |
●餅んこネチネチ
「お餅をくれる、なんて……良い都市伝説も居たモノ、です。……この都市伝説も倒さなきゃダメ、なのですよね。正直、しょんぼり、です」
天城・ヒビキ(歓鬼・d23580)は落ち込んだ様子で、仲間達と共に都市伝説が確認された場所に向かっていた。
だが、都市伝説が扱う餅はネチョネチョグチョグチョ系で、食用には向かないスライムタイプ。
如何わしい漫画などの表現に用いられるエロス系の餅であった。
そのため、例え食べたとしても、美味しくない。
味よりも粘度が優先されたものだった。
「でも、女の子とねちねちできるんでしょ? だったら、都市伝説を倒す事くらい、どうって事はないわ」
エルファシア・ラヴィンス(奇襲攻撃と肉が好き・d03746)が、キッパリと言い放つ。
都市伝説が狙っているのは、美少女ばかり。
ネチネチ系タイプの青年風であるためか、ストーカー紛いの事をして、女の子を追い掛け回しているようである。
「ネチネチなんて、ネチッとして素敵な響きね! ネッチリ絡まり合うアレやソレやソンナものもときめかない訳じゃないけれど、一般人のみんなにご迷惑がかかってるなら、ネッチリ、ミッチリ、シッポリ倒さなくっちゃね!」
艶川・寵子(慾・d00025)も、何となく気合を入れた。
おそらく、都市伝説が確認された地域は、男女入り乱れて、くんずほぐれつ。
そこで油断すれば、そのまま巻き込まれて、あんな事やこんな事までされてしまうかも知れない。
そんな事になれば、一大事!
色々な意味で注意しておかなければ、戦いどころではなくなってしまう!
「それに、そんなものを髪につけられたら最悪だし、眼鏡のレンズにお餅がつくとかありえないわ」
黒木・摩那(昏黒の悪夢・d04566)が、嫌悪感をあらわにした。
だが、都市伝説はそんな事などおかましなし。
むしろ、その方が燃える。気持ちスッキリ。心、晴れ晴れなのである。
「まあ、美少女ならば構わぬでござるが、男に抱き付かれるのは、遠慮したいでござるな。万が一、そのような事になれば、手加減攻撃をして夢の世界に送り届けるだけでござるが……」
阿久沢・木菟(灰色八門・d12081)が、険しい表情を浮かべた。
どちらにしても、手加減攻撃であれば、ウッカリ一般人を殺してしまう事もない。
なるべく、気を付けておくつもりだが、相手によってはデストロイ。
渾身の一撃を放って、あの世に直行させてしまう可能性も捨てきれない。
そういった意味でも、手加減攻撃は必要であった。
「……まったく、餅を押し付けて楽しいのかね。兎にも角にも早く潰そう。気持ち悪いだろ。食い物は粗末にするなと昔の人は言った。そして何より俺が嫌だ」
周防・天嶺(狂飆・d24702)が、都市伝説に対して、激しい怒りを覚えた。
都市伝説が操る餅は、噂によって作り出されたもので、厳密に言えば食べ物ではないが、だからと言って野放しには出来ない。
「まあ、餅は好きなんだがな。きな粉でも、大根おろしでも、何味でも好きだが、都市伝説が扱っている餅は、どうにも美味しそうではないな……」
廻夜・時史(羽紡・d15141)が資料に目を通しつつ、素直な感想を口にした。
いくら餅だからと言ってネチネチしていればいいものではない。
しかも、資料を見る限りスライムタイプの餅なのだから、どう考えても美味しくなさそうである。
「何ていうか餅が勿体無いな。でも、ずっと両手でねちねちしているわけだし、汚そうだな……」
玖渚・鷲介(炎空拳士・d02558)が、青ざめた表情を浮かべる。
相手が都市伝説である以上、途中で食事をしたり、トイレに行ったりする事はなさそうだが、それでもあまり奇麗なものではない。
そういった意味で、食べない方が身のためである。
●餅々通り
「う、うわあ……想像してたよりも、きっつい光景だなあ、これ」
餅まみれになった一般人達を見つけた鷲介は、その光景を目の当たりにしてしばらく言葉を失った。
一般人達の意識はまだあるようだが、動くたびに餅が絡まって余計に動けなくなっているようだった。
中には既に餅が固まっている者もおり、生きているのかさえ怪しいような状況であった。
「これならまだ餅より蜘蛛の巣の方が良かったかも……」
天嶺がドン引きした様子で、一般人達と距離を置く。
一般人の意識がある以上、迂闊に近づけば助けを求められ、巻き添えを食らってしまうのがオチ。
最悪の場合はむさいオッサンさんと、くんずほぐれつあんな事状態である。
「まあ、出来る限りの事はするつもりだが……。雨劉は……すまん、諦めてくれ」
時史が霊犬の雨劉からサッと視線をそらす。
「……!?」
その途端、雨劉が『な、なんですと!』と言わんばかりに驚いた。
状態的に言えば、『お前に背中は任せたぜ!』と言ったのと同時に、背後から狙い撃ちされたようなものである。
「うわー、つまずいたー」
エルファシアが棒読みで叫びつつ、連続後方宙返り四回捻りしつつ、ねちねちにダイブ!
その先にいたのは、超絶美少女!
美少女の方も『きゃわううん!』と悲鳴をあげて尻餅をついた。
無駄にハイテンションで、無駄に乳揺れ、ねちねちである。
「す、凄い……。ネッチリネトネト」
寵子も、その光景にキュンと胸をトキメかせた。
「……たくっ! また現れやがったか。いい加減にしやがれ。ここは俺のテリトリー。俺だけの聖地。美少女だけならまだしも、なんで男までいるんだか。正直、目に毒だ。餅に埋もれて、大人しくしやがれ!」
それは都市伝説であった。
どんよりとした雰囲気漂う陰湿な青年。
それが都市伝説であった。
都市伝説は両手で餅をネチネチさせ、狂ったように投げてきた。
「くそっ、このままオブジェになるくらいでござったら……、火を点けて餅焼いて剥がすしか! 一秒でも早くでござる!!」
その直撃を食らった木菟が、自分の体に火をつけた。
なんで、こんな目に。
本来ならば、可愛い女の子と、くんずほぐれつ。
そのはず。いや、それが確定した未来のはず……だった。
それが何故……!?
熱い、体が焼ける……!
「……って、熱いでござる! シャレにならないでござる!」
木菟が涙目になった。
しかも、バランスを崩した拍子に、段々腹をしたオッサンの胸元に倒れこんでしまった。
まさに最悪、死の予兆。
途端に包む、加齢臭。黄色いオーラが薄っすら見える。
「ふっ……、ふははははははっ! 見たか、これが俺のパワー。もがけばもがくほど、ネッチリネトネト。そのまま炎に包まれて死んでしまえ!」
都市伝説が不敵に笑う。
ネチネチ、ネチネチと嫌みを吐きながら。
「昔、偉い人が言いました。……『汚物は消毒だ』と」
摩那が都市伝説をジロリと睨む。
「せめて今日だけでも久々のお餅、頂きましょう」
そう言ってヒビキがカレイヤーカードを構えた。
ヒビキは恐れを知らなかった。
例えるなら、台風の日に田んぼの様子を見に行くようなもの。
吹雪の日に半袖短パンで山登りをするようなもの。
全裸で派出所の前で踊り狂うようなものである。
誰がどう見ても無謀、自殺行為。
だが、それでもヒビキは怯まなかった、何となく。
●都市伝説
「よっしゃ、行くぜセガール。餅なんて噛み切ってやれ!」
鷲介が気合爆発で、霊犬のセガールに声をかけた。
「……!?」
その言葉にセガールがビクついた。
む、無理。絶対にマズイよ、あれ! と言わんばかりの雰囲気を漂わせ。
「ふはははは……。もっと怖がれ、怯えろ! それが俺のエネルギー!」
都市伝説が餅をポンポンと投げていく。
どこに餅を隠し持っているのか分からないが、投げても投げても無くならない。
まるで永久機関の如く、餅が作り出されているようだった。
「お餅のシーズンはもう終わりよ」
摩那が傘(マテリアルロッド)を構えて、都市伝説に視線を送る。
「フッ、知った事か。俺が法だ、文句はあるか!」
都市伝説がイライラとした様子で餅を投げていく。
「ああ、体がっ! 体の自由がっ!」
エルファシアが大袈裟に動揺しながら、美少女とあんな事やこんな事をし始める。
これは事故。邪な気持ちから、こんな事をしているわけではないとアピールしつつ。
「餅だったら、きなこかなあとか思ったけど、振りかけてる場合じゃなさそうだなこれ……。それにしても、ねちねちとしつこい奴だな! 女にモテねえぞ、そういうの!!」
鷲介がムッとした表情を浮かべる。
「う、うるさい、黙れ!」
都市伝説はその一言に、酷く動揺した。
「どうやら、図星だったようね」
寵子がクスクスと笑う。
どうやら、暗く陰湿でねちっこい性格が、災いして彼女が出来なかったという設定らしく、顔を真っ赤にしながら餅を投げてきた。
「体中ねちねちにされて動けなくなるのも困るんでな」
鷲介が素早い身のこなしで、ハエ叩きを振り下ろす。
だが、そのたびハエ叩きがネチネチしていき、最後には使い物にならなくなった。
「せっかくだから、あんこをつけていただきましょうか」
その横でヒビキがキャッチした餅の中にこしあんをつけて、口の中に放り込んだ。
途端に広がる甘じょっぱさ。
例えるなら、オッサンの汗を砂糖漬けにしたような異質感。
マズイというよりも、とんでもないものを口にしてしまったという後悔の方が先に来た。
「ふふふ……、思い知ったか。その餅は俺の血と汗と何かで出来ているからな!」
都市伝説がドヤ顔で語る。語って語って語りまくり、投げて投げて投げまくった!
「危ない時のセガールバリアーってな!」
咄嗟に鷲介がセガールを盾にした。
「!?」
セガールが目を丸くした。
どうして、こんな事に。何故、こんな状況に!
信じられない、ありえない。
だが、そんな気持ちを包み込むようにして、セガールの顔を餅が覆った。
その横を駆け抜けるようにして、木菟が走った、全速力で!
脳裏に浮かぶのは、オッサンの横顔、熱い吐息。
そのオッサンがピンク映画さながら、悶え苦しむ姿が脳裏に焼き付き、消えてくれない。クッキリ、バッチリ、ハッキリであった。
「てめーのおかげで酷い目にあったでござるわ、この野郎! この世から消し飛ばすでござるぞ!!」
木菟が怒りに身を任せて、ティアーズリッパーを放つ。
その一撃を食らって都市伝説が吹っ飛んだ。
「雨劉が怯えているんでな。ここで仕留めさせてもらうっ!」
次の瞬間、時史の放ったフォースブレイクが決まり、都市伝説が断末魔をあげて消滅した。
「……餅も消えたか」
都市伝説が消滅した事を確認した後、天嶺がホッとした様子で溜息をもらす。
餅が跡形もなくなった事で、半ばオブジェと化していた一般人達も我に返り、蜘蛛の子を散らすようにして逃げて行った。
「えっ、倒したら消えるのかよ、この餅……」
鷲介が少し残念そうにする。
そんな鷲介をセガールが、未だに消えない加齢臭を気にしつつ、『何か忘れていない?』と言いたげな視線を送るのだった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
|
種類:
公開:2014年4月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
|
||
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
|
||
あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
|
||
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|