白炎狼譚~天を呪う剣の狼~

    作者:叶エイジャ

     空は黒。新月の夜は天の加護無く、闇に沈むは人の里。
     険しき森の中、朽ちて久しい堂の跡。燃えて腐って破れて砕け、打ち捨てられし様、過ぎ去りし月日のみぞ語る。まるで過去の墓標――
     その前に立つは白き炎の狼。真赤な眼。刃の如き尻尾。
     オオォォォォン……
     天届く咆哮残し、狼去る。残るは堂と、この世在らざるモノ。小柄な体躯に、ヒヒの被り物。手には刀。赤く煌めく瞳は、古の畏れ。
    『ウゥゥウゥ、ガァアアア!』
     天届く咆哮、ヒトにして獣。世界を呪う、すべてを呪う、原始の怨嗟。
     その身繋ぐ鎖が、ジャラリと鳴った。

    ●食堂
     古の畏れが出現する場所が分かったと、西園寺・アベル(高校生エクスブレイン・dn0191)は話し始めた。
    「低学年の方用に作っていたオムライスが、私に語りかけてきたのです」
     それだけではない。今回は更に、スサノオに介入できる余地もあるらしい。
    「スサノオは予知を邪魔する力を持っていたようですね。ですが因縁を持つ灼滅者が増加したことで、不完全ながら介入が可能となったようです」
     赤眼剣尾のスサノオ。古の畏れの源流たる白狼幻獣に、辿り着いたようだ。
    「このスサノオと戦う方法は二つです。まず、スサノオが古の畏れを呼び出そうとした直後に襲撃をする場合」
     もう一つは、とアベルは続ける。
    「スサノオが古の畏れを呼び出し、去っていこうとするところで襲撃する場合です」
     前者のメリットは、古の畏れが現れる前にスサノオを倒せば、古の畏れは顕現しないことだ。但しタイムリミットは六分。それを過ぎれば古の畏れが配下として加わり、スサノオが戦いを任せて撤退する可能性がある。だが短期決戦に自信があるならこれがベストだ。
     後者は、古の畏れと離れた場所でスサノオと戦えることがメリットとなる。時間制限もない。その代わり連戦となるので、それに相応しい実力と継戦能力が必要となる。
    「どちらも一長一短です。どの方針を選ぶかは、皆さん次第となります」
     続いて戦闘能力。スサノオの見た目は、狼型のダークネスだ。
    「今まで呼び出してきた古の畏れが使った技に似た攻撃手段を用います……そうですね、今までの記録から考えますと」
     突風により身体の自由を奪った『縛の一太刀』。
     雷を招来し扇上に放射した『扇雷波』。
     突き立つ箇所を氷結させる『雪羽剣雨』。
     風、雷、氷。いずれも灼滅者たちを苦しめた剣技だ。全く同じ効能ではないが、スサノオ自体が強敵であることを思えば、威力は推して測るべし。
    「そして出現しない可能性もありますが、古の畏れについてです。見た目は子どもですね。頭からヒヒの毛皮を被り、日本刀を携えています」
     かつてこの地方には鬼の子が現れたという伝承が残っている。凶暴で残忍、悪虐の限りを尽くしたその鬼の子はヒヒの毛皮を被り、森で獣のように暮らしたという。
    「異国から流れ着いた少年だった、という説があるようですね。もしそうであったなら、言葉も通じず、飢えと孤独に苛まれたのでしょうか」
     本当の所は分かりませんが、とオムライスを見るアベル。真実は過去の衣の内。いずれにせよ古の畏れは伝承の映し身で、凶悪な鬼子以上の事実はない。
     戦闘となれば、日本刀のサイキックに鬼神変相当の技、シャウトを使ってくるだろう。
    「場所は近くの集落から少し離れた山の中です。戦闘は開けた場所で行えると思いますが、この日は新月なので、光源が必要となります」
     できれば、各自が持つ方が好ましいだろう。
    「どの選択をしても、厳しい戦いになるでしょう。スサノオを倒すチャンスなので、どうかよろしくお願いします」


    参加者
    柳谷・凪(お気楽極楽アーパー娘・d00857)
    守安・結衣奈(叡智を求導せし紅巫・d01289)
    橘名・九里(喪失の太刀花・d02006)
    鈴木・総一郎(鈴木さん家の・d03568)
    穂照・海(火照火威・d03981)
    雪柳・嘉夜(月守の巫女・d12977)
    猫乃目・ブレイブ(灼熱ブレイブ・d19380)
    白石・作楽(櫻帰葬・d21566)

    ■リプレイ


     なるほどそのオオカミは、剣と炎でできていた。
     白き炎のような毛並みを逆立てて、長く響く咆哮を轟かせる。朽ちた堂の前に古の畏れを生み出すと、オオカミ――スサノオは踵を返した。しばらく歩み、これまでそうしてきたように森の奥深くへと消えていく。
     そう思われた、刹那。
    「スサノオ……いつまでこんなことを続ける?」
     穂照・海(火照火威・d03981)の声が、獣の足を止めた。新月の夜に灯るのは人工の光。照らし出されたのは、スサノオとの決着をつけるために集いし灼滅者たちだ。
    「凄まじい気配、剣気でござるな」
     猫乃目・ブレイブ(灼熱ブレイブ・d19380)は一瞬で高まったスサノオの存在感をそう評した。踏み込もうとした足が急に重くなっている。ここから先は死線――本能がそう告げていた。
    「包囲したかったけど、あとは戦いながらだね」
     守安・結衣奈(叡智を求導せし紅巫・d01289)もまた、風もないのに吹きつけた質量に停滞を余儀なくされている。
    「これを倒して更に連戦……気合を入れて挑まないとね」
     ゴーグル越しにダークネスを見つめ、鈴木・総一郎(鈴木さん家の・d03568)は仲間と共に力を解放した。
    「神薙の力を纏い、謡い、清めます」
     その言葉を放った雪柳・嘉夜(月守の巫女・d12977)の身体を、巫女装束が纏っている。
    「いろいろなところで悪さをするスサノオを、倒すチャンスです」
     被害拡大を防ぐため、この機会を逃すわけにはいかない――その意志を感じたのか、スサノオは目を細め、低い唸りを発した。対峙するだけで感じていた圧力が、それだけで鋭さを増す。喉元に真剣を突きつけられるような感覚に、白石・作楽(櫻帰葬・d21566)は愛刀を構え、その柄を握り締めた。
    「三貴子の一柱と同じ名を持つスサノオと対峙、か……」
     荒神、または英雄と呼ばれし存在。それと同じではなかろうが、強敵と呼んで間違いはないだろう。
     スサノオが、静かに跳んだ。
     続いてスサノオのいた場所で生じた空を切る音は、橘名・九里(喪失の太刀花・d02006)の鋼糸による太刀筋。九里は攻撃がかわされたことよりも、スサノオが『殺意の間合い』を見切るようにして動いたことに気付き――その口元を徐々に吊り上げていった。背中を粟立つ感覚が駆け抜けていく。攻撃に先んじて放った殺気。それを読んで動いたこの存在は、より洗練された強者で……それがこの上なく憎く、羨ましい。
    「今宵の剣客、腕に覚えあり――素敵な闇夜になりそうですねぇ」
    「皆、がんばろうね」
     柳谷・凪(お気楽極楽アーパー娘・d00857)の言葉に彼女の霊犬マトラが、そして全員が頷く。
    「これ以上古の畏れを復活させないためにも、絶対に灼滅するんだよ!」
     刃のような意志に対するのは、負けられないという意志と、全員の絆の力だ。スサノオが咆哮を上げた。その尻尾が硬く逆立ち、三つに別れて剣のように天へと掲げられる。
     戦いは始まった。
     あとは折るか、折られるかだ。


    「これ以上、畏れを目覚めさせる前に……ここで、おまえを始末する」
     海が宣言と共に進み、死線を踏み越える。それを合図に、狼が動いた。
     力強く大地を蹴ると鋭利な爪を広げ、突進と共に次々と撃ち込んでくる。海はマントをひるがえし、前進した。手の甲のコインから障壁を展開し、鋭い形状へと変えて叩きこむ。だが、貫いたのは闇だ。障壁の射程外まで下がったスサノオは、爪を横薙いだ。たわめた後ろ脚から爆発的な力を発し、名刀もかくやという爪の斬撃が海を襲った。シールドで防ぐが、受け止めた時に伝わるエネルギーは凄まじい。地面を踏みしめた海は全力で抗おうとし――身体の自由を奪われている事に気付く。風だ。巻き起こる風が海の力を削ぎ、その身を投げ飛ばした。
     傷ついた海が地面に叩きつけられる寸前、結衣奈の障壁が受け止めた。障壁はそのまま大きく広がり、スサノオから前衛を守る盾となる。
    「嘉夜ちゃん、お願い」
    「任せて下さい」
     嘉夜が霊力を縛霊手の指先に集め、撃ち出した。癒しの力を受け取った海が立ち上がるが、表情は厳しい。それほどの力をスサノオは秘めている。
    「クーちゃん、みんなを守ってね」
     傍らに立つ白いローブの少女に語りかけ、嘉夜が視線を戻した。スサノオが結衣奈の障壁に爪を突き立て、無理やり引き裂こうとしている。何度も叩きつけられる人外の暴力に、支えていた結衣奈が苦しい表情で膝をつく。ここぞと闇の魔狼は大きく口を開いた。鋭い爪に劣らず鋭い牙が光り輝いた――瞬間、閉ざした口腔から苦鳴を響かせるスサノオ。その真紅の目は胸元に刺さった注射器を、それを為した作楽を見据え、嚇怒に彩られる。
    「その百年を刹那にしてやろう――来るが良い」
     作楽の手にした注射器の液体が虹色に揺らめいた。
    「童話の世界に、招こうか?」
     振り下ろされた爪が、作楽の立っていた地面を抉る。跳んで逃れた彼女を追って、スサノオが加速した。宙空で回避もままならぬ作楽の身体を貫こうとする爪はしかし、キセルを手にした着物姿――ビハインドの琥界が庇い、傷つきながらも弾き、逸らしていく。
     その攻防に、僅かながらスサノオの体勢が崩れた。
    「強いのは承知――なれど拙者は負けぬ!」
     ブレイブの手にした杖が、膨大な魔力を宿した。スサノオの爪が閃くより早く、斬撃のような軌跡で叩きつけられた杖が前脚を直撃。魔力が爆発した。手応えを感じながらも、ブレイブの首筋を駆けるのは悪寒だった。反射的に低くした頭のすぐ上を、爪が空を裂いて過ぎていった。間近に迫ったスサノオにブレイブは注射器を放ち、くぐもった声を発しながらスサノオは後方へと飛び退く。
     その口が開き、牙が眩い光を放った。突如闇に紫電が生じ、徐々にその輝きと規模を増していく。
    「報告書にあった、雷の招来か」
     総一郎がライドキャリバーに乗り、スサノオへと加速する。モノバイクを走らせながらその両手に闘気を濃縮させていく。
     雷鳴が轟いたのは、まさにその時。
     スサノオの口腔が光に満ち、空気をはじけさせるあの耳障りな音が満ちた。扇状に放たれた幾条もの雷が太く脈打ち、獣――雷獣と称される姿となって灼滅者たちへ襲いかかった。厳しい顔でオーラキャノンを中断した総一郎がライドキャリバーの背を蹴る。
    「羨ましいくらい個性的な攻撃だけど――止めて見せるよ」
     宙を舞った時には影から作った刃を手にしている。総一郎は降り立ちざま、襲いかかってきた雷獣を斬り捨てた。雷は構成エナジーを失くして霧散し、しかし消滅した以上の雷が背後から襲いかかる。
    「敵ながら、悪くない技なのだ。マトラ、壁役は任せたんだよ」
     その雷獣の群れを無敵斬艦刀で薙ぎ払い、凪が駆けた。追いかけるマトラが主を襲う雷条を斬りつけていく。放散する雷を抜けた凪に、スサノオは容赦なく爪を下ろした。硬質の響きと火花を散らせて、スサノオは力任せに凪を押し潰す――直前、総一郎の闘気が狼の胴へと突き刺さった。機会を逃した剣狼に、凪の斬撃が解き放たれる。
    「ここで、灼滅させてもらうんだよ!」
     凄絶な一刀が、スサノオへと叩きこまれた。


     戦闘開始から、数刻。
     スサノオは自己を癒すサイキックを持つだけに、油断ができない。紡ぎ出された雷条によって結衣奈の盾による加護が破壊されていく。風を纏う爪は単体を狙う攻撃ながら、その威力は凄まじい。
     連戦の前半に被害が大きくなりそうだが、今回集ったメンバーの特性、四体のサーヴァントをすべて護り手として扱うことで、多大な被害を抑えている。加えて連戦においても休憩により復活するため、例え消滅しても戦力は減る事はない。
     その考えの通り、ディフェンダーを中心に負傷を重ねながらも、徐々に攻撃力で勝るスサノオを押していく。
     ブレイブの注射による攻撃を爪ではじいたスサノオが、今一度雷獣を呼び出す。放散する雷撃に、マトラが消滅し、白ローブの少女が消えていく。
    「むぅ、仇はとるのだ!」
    「これ以上はさせません」
     パートナーを失った凪が閃光の拳を放つ。嘉夜は疲弊の溜まってきた作楽と総一郎のサーヴァントに祭霊の光を放ち、戦線を維持していく。遅々として減らぬ敵の数に、スサノオは強引に脱出口を探し首をめぐらす。
    「ここで逃がすわけにはいかないよ! 呼び起こす古の畏れや、貴方自身がもたらす被害を無くす為にも!」
     スサノオを見据え、眼前の空間に魔法陣を描いていく結衣奈。ダークネスの瞳は彼女と同じ真紅――しかし、闇を湛えている。ただの気まぐれが、行為が、どろほどの被害をもたらすのか。自らの身で知る結衣奈だからこそ、闇を隠さぬあの瞳を野放しにしてはいけないと強く思う。最後に自らの探究で編み出したアレンジを加え、魔法陣が完成。撃ち出された魔術弾はその軌跡に強烈な烈風を生み出し、スサノオが爪によって巻き起こした風を相殺する。魔術はそのまま爪をも砕き散らし、傷ついたスサノオ嚇怒の赤を瞳に灯しながら咆哮を上げる。
    「――!」
     逆立った尾剣が静かに、灼滅者たちへと向けられた。尾を形成するのはスサノオの毛。その一本一本が撃ち出され、突き立った箇所を凍結させていく。鋭利な針が雨のように降り注ぎ、苦痛の声が上がった。
    「くッ、氷に足をとられたか……!?」
     総一郎は己が動かぬ足を見つめた。針剣は足こそ貫通しなかったが、突き立った地面から浸食する氷が生まれ、足を絡め取っている。咄嗟に武器を掲げた総一郎目がけ、スサノオが次なる凶器の雨を放とうとする。
     放たれる死の弾幕――それらの前に、突如として炎が生まれた。
    「かつてこの技を使った畏れは語った――『弱い者、優しい者から死ぬ』と」
     総一郎の前に立った海の傷、そこから流れる血が炎と宿り広がっていく。
    「だが俺達は、そういう者たちのために戦う――この火照、鎮むること能わず!」
    「一度見た技、ならば対処法はいくらでも御座いますよ」
     炎を纏い障壁を展開する海に、隣に立つ九里が両手の指を躍らせた。炎の色を受けて見えるのは漆黒の鋼糸。
     髪と血を、呪力で紡ぎし濡烏――指揮者のように激しく振るった両腕の先で、氷雪の主を宿した針は寸断されていく。唸り声を上げる魔狼に、九里は眼鏡をずり上げ、嗤った。
    「その地に眠る怨念を蘇らせる獣……さて、貴方自身の望みは何なのでしょうねぇ?」
    「一つ言えるのは、その望みはここで潰えることだ」
     一瞬の隙をついてスサノオの間合いに収めた作楽が、腰に手を伸ばす。
     手にするは愛刀、『橋姫』。その鯉口が鈴鳴りをもって切られた。蒼薔薇の装飾に続く白銀の刃が姿を現し、その激情を露わにする。
    「散らであれかしは櫻花……散れかしは、おまえだ」
     一期は夢よ、ただ狂え――そう締めくくった時には、刃は元の鞘へと収まっている。
     それが、終わりを告げる音。
     斬撃をその身に深く刻まれたスサノオが力を失い――大地に倒れるより早く黒い煙となって霧散していった。


    「次は、畏れか……」
     総一郎は額の汗をぬぐう。思惑どおりに進んだが、休憩を入れて初めて、どれほどの緊張を強いられていたかが分かる。事前に決めていたサイキックを破壊し心霊手術に充て、蓄積したダメージを減らしていく。それが終われば次の戦いだ。
    「万全に近い状態で臨めそうですね」
     復活したクーちゃんを見て、嘉夜が微笑む。ダメージの減衰と連戦を見据えたサーヴァントへの指示、そして心霊手術。いずれも悪くない結果になっている。
     朽ちた堂へと赴いた灼滅者たち。現れたヒヒの毛皮を被った少年――古の畏れは、問答無用で手にした日本刀で襲いかかってくる。小柄ながらも鬼子という伝承の化身は強く、受け止めた九里の身体を大きく吹き飛ばし、地面へと叩きつけた。
    『ウゥゥ、ガァアアアアア!』
    「孤独が鬼を呼んだというところですか」
     虐げられ、復讐の心を糧に育つ――自らの過去と重ね合わせた九里は、姿の見えにくい新月の日で幸いと、鋼糸を振るう。
    「同情するけど……人に仇なす存在と化したなら、ここで灼滅するよ!」
     スサノオ戦と同じく障壁を広げ、結衣奈は魔術を紡ぎあげていく。作楽が刀を受け止め、突き抜けたダメージを嘉夜が祭霊光を放ち、危険な状況を回避した。
     そして数分が経過した。
    「拙者の攻撃、その身に受けて見るでござる!」
     ブレイブのフォースブレイクが、勝敗を決めた。魔力の爆発に森の木々をなぎ倒した古の畏れは立ち上がろうとして、その身から存在感が消失していく。
    「今となっては素性は伝承からも失われた。君を知るすべはない――古は有るべき所へ還りな」
    『ア、アァ、ガ……』
     総一郎の言葉に不明瞭な言葉を発しながら、古の畏れは消えていく。
     しばらく、全員が無言だった。やがて、さすがに疲れてきてたのか誰ともなしに安堵の息をついた。凪がマトラを抱きしめつつ笑顔になる。
    「皆お疲れ様だよ~。どちらも無事灼滅できて勝利のVなのだ~」
    「濃密な時間だったでござる……敵でなければもふっていたというのに!」
     上手く事が運んだため、順当に敵を倒す事が出来た。が、それを加えても強敵だった。伝承から生まれた古の畏れと、それを生み出していたスサノオ。
    「どんな理由であれ、過去なんかに今を生きる事を、止める権利なんてないさ」
     海が呟く。強敵を破ったのは、ひとえに今を生きる灼滅者たちの意志が強かったからだろう。未来に生きる者たちへ、過去の出来事を伝え、過ちを繰り返さぬよう伝える。それが伝承の一側面でもあるのだから。
    「帰りましょうか」
     嘉夜の言葉に全員が頷く。
     今宵は新月。空は闇に包まれようとも、光は常に心と、還るべき場所に輝いていた。

    作者:叶エイジャ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年4月23日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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