魔人生徒会~身体測定のお知らせ

    作者:ねこあじ

     武蔵坂学園のとあるキャンパス、とある教室でいくつかの提案があげられていく。
     その中のひとつ。
     廊下の掲示板で毎年ひっそり告知されている『身体測定のお知らせ』の用紙が、集まった面々の手元にあった。
     提案の順番が回ってきたことにより、黒いローブ姿の生徒が教壇へとあがる。目深に被ったフードで顔は隠され、大きなローブの裾は歩くと引きずるほどで。
     袖で包み込むように持っていた箒を背後の黒板に立て掛け、その生徒はローブの中からホワイトボードを取り出した。あらかじめ書かれている文章。
    「新学期にあるもの……そう、身体測定。……ある者にとっては歓喜の場、ある者にとっては絶望の場」
     ――確かに。一部の者がごくりと喉を鳴らした。身長を測るたびに誓うのだ、今日から毎日牛乳飲もう、と。
    「別に、魔人生徒会が介入する必要はないんですが……こう、楽しいかと思いまして」
     ――何が?
     出された疑問に、提案者はキュキュッとホワイトボードに書き込んだ。
    「もちろん、皆さんが一喜一憂する様が、です」
     まだ成長期でもある灼滅者。身長が伸びた伸びていない、とわいわい出来る場でもある。
     ――提案者も、一喜一憂することはあるのですか?
     落ち着いた様子の提案者に、また一人疑問を投げかければゆっくりと頷かれた。
    「ふふ……1ミリ伸びれば、私も喜びますよ……」


    「進学、進級、そして次の行事は身体測定かー」
     教師に頼まれ、コピー機で学園人数分のプリントを量産していた日向・草太(小学生神薙使い・dn0158)はあることに気付いた。
     身体測定のお知らせのプリントには、日時と簡単に記された測定内容、そして魔人生徒会という文字が。
    「魔人生徒会さんも関わっているんだ。うーん、牛乳ほしいなって言ったら、用意してくれたりするかなぁ?」
     あ、でも誰が魔人生徒会さんか分からないや、と草太は呟いた。
     たかが1センチ。されど1センチ。
     たかが1キロ。されど1キロ。
     色々と大事な部分だ。この日、口に入れた物で勝敗が決まるかもしれない。

     さあ、勇気を出して身体測定に挑もう!


    ■リプレイ


    「まーたー身体測て? 来る前はかったのーにー……」
     購買部から教師に手を引かれてきた聖園は測定器に乗せられ記録をとられた。
     捕まりはすれどサッと放流。数値を目にした聖園はふわふわとした足取りで購買部に向かう。
     おっきくなるにはアンパンだ。
    「何時から靴だと錯覚していた……?」
     あくまでも靴も体の一部だと言う瑠璃に教師はある方向を指し示した。
     そこには数人の生徒、教師の手でシークレットブーツ狩りにあう蔵人の姿が。壮絶だ。
    「天倉」
    「……はい」
     諦めてブーツを脱ぐ瑠璃の耳にクーガーの悪魔の囁きが届く。
    「10cm、あげてやろうか?」
    「ヴォイテク。先生は君を信用しているぞ」
    「……ハイ」
     こうして無残にも正確に記録は残されていくのである。

     祝・身長150を越えた祥太は、漣香に頭を撫でられていた。
    「よしよし。オレより伸びんなよ……これ、おまじないな」
    「おい、あれどう思う?」
    「明らかに呪いかと」
     呪(まじな)いか呪(のろ)いか。玲と葵は「のろい」だと判断した。
    「なんだひょろ長! 葵お前身長よこせよー!」
    「くっ……でしたら体重下さい漣香君!」
     べしべしと葵を叩く漣香に、まあまあと玲がフォローに入っ、
    「部長、呪うなら制服の袖丈にすら舐められている部長の身長を呪えばいいんじゃないか?」
     入っ――入った煽りに測定用紙を床に叩きつける漣香。
    「そんなメルヘンいらねえ!」
    「祥太君の成長期はこれからですよね。どんどん伸びていくといいですね」
    「そっか、僕もこれから伸びるんだ」
     それはさておきな葵の言葉に、にこっと祥太は微笑む。150の壁は遠かった気がしたけれど、近付いてみればそこはもう後ろにあった。

    「四季さんの胸囲がっ」
     彩華の胸囲を測っていた京香に、いや彼女が持つメジャーに周囲の男子達の視線が集まった。
     男の娘、まさかの進化……!?
    「――無かったわ」
     ほーっと安堵の息を吐いて目を逸らす作業を続行する男子達。視覚的に異性だけど、大丈夫まだ同性。
    「それでは天原さん、衝立の向こうに行きましょう」
     琴が残念そうな京香に声をかける。
    「胸囲は別にいいんだけど、身長が平均より低いのが……」
    「わたくしも、ほとんど伸びていませんでしたわ」
     どんよりと溜息を吐きながら言う彩華、そして同じく落ち込む夜弥亜。何故か手にパフェを持っている。
    「俺は、少ししか伸びていないな」
     久遠が呟けば、四季彩測定組だけではなく館内の男子達から視線を向けられ、彼は戸惑った。
     皆の心の声を要約すれば『180もあれば充分じゃないか。もう止まってその分寄越せ』である。
    「少しでも伸びてるなら良いんじゃないかな? 私はすっかり身長の成長は止まったよ」
     言葉は苦笑しながら久遠に言う――のだが、朝ご飯を抜いてきた彼女は夜弥亜の持つパフェに視線を送っていたり。
    「お食べになります?」
    「いただこう」
     パフェの甘い香りが漂う体育館測定場。テロでしかない。
     衝立の向こうで胸囲を測ってきた琴と京香が戻ってくる。悩むべきところは胸だろうか。
    「正直、胸はこれ以上大きくならなくても……と思いました」
     着物とかはスレンダーの方が似合いますし、と呟いた琴は続いて測定結果を咢に伝える。いつも彼の猫姿を見ているせいか、体重を教えてもあまり気にならないような気がした。

    「そろそろ伸び悩む時期かしら」
     呟く眠子は廊下を歩きながら視線を巡らせた。
    「芸能プロダクションとか設立出来るわよね、この学園」
     スタイルも服のセンスも良い女子が多い。眠子は買い物の参考にするため、胸囲を測る教室へと向かう。
     そう、成長と共に服のサイズは変化する。
    「ありがとうございました」
     丁寧に礼をした優歌は、服のサイズ直しのため測定データを書き留めてから教室を後にした。
     逆パターンもある。
    「3ミリ……3ミリも伸びましたよ」
     幽は指をおりおり月々の成長具合を計算してみた。夢の150台までは。
    「やく、にねん」
     呟く幽に、丁度隣にいた友衛は頷いてしまう。分かる、凄く気持ちが分かる。
    「望みは捨ててはいけないな」
    「あなたも、少しだけ?」
    「……いや、変化なしだった」
     沈黙が落ちた。
     毎日の積み重ねが大事だ、と言う友衛に幽がついていく。目指すは牛乳を持つ者。
    「次の目標は145cmね」
     140を超えた紅葉は驚いた後、嬉しそうに微笑んだ。反応が素直な紅葉に測定係の教師も思わず声をかける。
    「よく食べて飲んで、眠らなきゃね」
    「あっでも牛乳は遠慮なの……」

     順調に身長を伸ばしている文具は上機嫌で廊下へと出た。
    「毎日牛乳! きっと結果につながるって、僕は信じてます」
     喜ぶ文具。天と地。落ち込んでいた万は「牛乳か」と呟き、草太の所へふらふら近寄って行く。
    「そこのお兄さんや、あんた良い物を持っているじゃないか……」
     ちなみにこの二人、同じ歳だと互いに気付けないのは身長差がげほんごほん。合同授業などで「あっ」となるパターンだろう。
     丁度、話をしていた来留も先輩にあげる牛乳を幾つか抱えていて。
    「牛乳好きな人、多いね。あはは♪」
     その横で落葉がぷるぷると震えながら牛乳を飲もうとしていた。
    「こ、これが一口飲めばたちどころに背が伸び、勉強がはかどり、ぼっち脱出ができ、ばいんばいんになれる牛乳なのじゃな!?」
    「な、何ィ!?」
    「あはは♪ 凄い牛乳だよう」
     衝撃を受けている落葉と万、分かっていて楽しそうな来留に慌てて草太は声をかける。ツッコミが不在だ。
    「ちょっ、待っ、ただの牛乳だよ!?」
     小学生達の傍を通り過ぎる純也は冷静に、現状を分析していた。学園の学年ごとによる平均身長と一般男子学生の平均身長は大きく違う。
    「摂取で伸び幅が変わるのであれば、一憂する先達各位が出る筈もない」
     全身運動で身長が伸びやすいという説を次に考える。
     集められた結果をデータ入力していくのはファルケ。
    (「日夜ハードな戦いを繰り広げているだろーし、やっぱ健康を一番に考えないとな」)
     ハードといえば合宿が目前だ。終わる頃には色々と研摩されている事だろう。
    「ファルケさん、追加のデータ持ってきました」
    「お、さんきゅー」
     男子測定の手伝いに入った彩夏は忙しそうに走り回っている。
    「江島君!」
    「わ、はい! 今行きます」
     学園側にとってこういった手伝いは非常に助かっていた。

     150を越えると見える世界が違う。
    「今年の俺は一味も二味も違う! もう甘いのが辛くなったくらいに違う!」
     もうちっちゃいボーイは卒業なのさ、とハードボイルド的に言う爽太の視線は、股旅館の男子をシャットアウト中。
    「せっかくなら180台行きたいもんだけど……けど、ズルは駄目だよなぁ……」
     ミリ単位の壁にグロードが計測器とにらめっこ。
    「あとちょっと、あと3cmで170の壁が突破できるのんがー!」
     股旅男子の170以下はミニマム枠。ぐぎぎ、と式夜はグロードと虎次郎を睨みあげた。
    「い、いや、俺も問題点を見つけているっすよ。ほぼ同じ身長だった龍治との身長差が開き始め」
    「粛清!」
     言葉を遮られる虎次郎。その光景をニヤニヤと眺める龍冶。
    「ええい縮め縮め! もしくはちょっと位私によこせ!!」
     140を突破できないくるりに、舞姫がそっと寄り添った。
    「舞姫の背も胸も、ほとんど成長をしておらなんだ……心の支えは、くるり、お主の結果だけじゃの……」
    「くーさん、くーさん。私大きくなりましたよ!」
     舞姫とぴょこりと跳ねて報告する華月の間に挟まれたくるりは、更にそっと華月に寄り添った。心の支え制度が分かりやすい。
     そんな二人を不思議そうに見つめる華月、首を傾げつつ微笑んだ。
    「牛乳、小魚、お豆腐沢山食べないといけませんね」
    「そうだね。美味しいものを一杯食べて、ストレス溜めないように日々を過ごせばいいんじゃないかな?」
     苦手だった牛乳が飲めるようになってから、それなりに伸びてきた過去のある安寿がキラッと笑顔で言う。高校生になってからも少しずつ。やっぱり牛乳かな?
    「そうそうっ、だいじょーぶ、私みたいにいっぱい食べて元気にしてればぐんぐん大きくなれますよっ!」
     明るい笑顔でひらりが励ます。内心、横への成長が気になっているけれどっ。
    「ありのままの自分が好き! みんなが好き! それでいいじゃないですか」
     甘党の天使や。現在進行形で身体測定がストレス蓄積状態のミニマム枠は、少しクールダウン。
    「そうそう、でかきゃでかいで色々弊害はあるんだよ。俺も、そろそろ止まりたいわ。この前も頭ぶつけたしな」
     龍冶の言葉に、イラリとするヒナ。
     測定結果の用紙を何重にも折りたたんでいく莉都にも、心の支え(?)はあった。
    「まぁそれでも爽太よりは高いしね。ヒナを追い越すのも秒読み段階だね」
     覚えてろよーっと捨て台詞を残してダッシュで去る爽太に、「爽太ぁぁぁ」とグロードが叫ぶ感動的なシーンが教室で展開されている。
    「……。追いつかれるならまだしも、リツを見上げる羽目になるのは避けたいな」
     運動にも栄養にも恵まれたこの二年間を振り返り、ヒナがぽつりと呟いた。

     アスールは測定結果の用紙をひらひらとさせている。さっさと提出するなり何なりと早足で歩いていると、ぽむっと背中を叩かれた。
     ぎくりと身を震わせる。
    「待てよ」
     どす黒いオーラを纏った舜の声が、いつもよりやや低め。悲しきかな、肩に手を伸ばすときは意識しないと空振るそんな身長差。
    「で、アスール先生はどれだけ伸びたって?」
    「し……舜、人種差だから! 俺地元では平均的だから!!」

     雪雨は恐る恐ると体重計に乗った。
    「うう……あの倶楽部のせいだ……」
     よろよろと降りて歩いて、壁にたどり着いてずるずると床に座り込む。
    「雪雨おねーちゃーん、ボク、去年より7cm伸びてたよっ♪ ――雪雨おねーちゃんっ!?」
     あせあせと紗雪が一緒に座り込んでくれる。壁側でちょっと休憩する二人。
    「ぇと、その分うんどーとかすればっ! きっと!」
    「さゆきさん」
     潤んだ瞳で紗雪を見つめる雪雨。
    「――の体重はどうでしたか?」
     紗雪はサッと目を逸らした。

    「のびたぁ! ゆきにいみてみて! 少しだけ伸びてる!」
     ぴょんぴょん跳ねて雪音が恭哉に用紙を見せた。
    「大きくなったな。昔はあんなにチビだったのに。今もチビだけど」
     少し意地悪な笑みを浮かべながら恭哉がからかう。そして彼の測定結果は。
    「ひゃくはち……っ」
     がーんとなってぽかぽかと叩く雪音を恭哉は抱き上げた。突如変化する視野に雪音はくらりとする。
     そんな彼女の手に恭哉は飴玉を手渡す。次に見せてくれるのは、きっと笑顔だろう。

     普段食べているお菓子が原因だろうか。紗羅は体重の増加に落ち込んでいた。
    「僕らは成長期ですからね、気にしちゃだめですよ。それにほら」
     落ち込む彼女の頭を撫でる京介に、紗羅は思わず微笑む。
    「身長も伸びていますからね」
     そう言ってもう一人、胸囲に動揺しているフィゼルの方へ視線を向けた。
    「フィゼルは……胸だけじゃなくてちょっと他にも付いてる感じ」
     部室でゲームばかりという指摘に、ぎくりとするフィゼル。
    「そ、そんな事は無いっ。ちゃんと寮の方で運動してるっ」
    「だいじょうぶだよ。他のところが増えてもフィゼルの胸囲はすごいもん」
     にこにこと笑顔で言う紗羅に、フィゼルは自身の手でぱっと胸元を隠す。

     まぐろの測定結果は、体重以外変化なし。これでは溜息も出てしまう――。
     その時「あっ」と思わず出てしまった仲次郎の声が。
    「あ、あーる!? いつからいたのよ!? ……み、見たわね」
    「わわ、誤解ですよまぐろさん」
     用紙を丸めてぺしぺし叩いてくるまぐろの顔は赤い。可愛すぎるじゃないですかーと内心悶える仲次郎。
    「見たいならちゃんと見たいと言いなさいよね!」
    「えっ、じゃあ見」
    「や、やっぱりダメっ」

     鷹弥としては少し薄く思える椋弥の肩や背中に触れると、気付くことがある。
    「……少し痩せたんじゃないですか?」
    「以前よりかは、少し」
    「やっぱり。それにしても身長を気にするなんてもしかして好きな女性でも出来ましたか?」
     鷹弥の言葉に椋弥は少し困ったような笑みを浮かべた。170は欲しかった、という呟きが聞こえてしまったようだ。
    「椋はちっちゃくても僕がだっことか肩車とかすれば何一つ不自由はねーから安心して僕に頼っていーぜー?」
     そう言って頭を撫でる鵲弥。何だか視線に突き刺されているが気にしていない。
    「……ところで鵲弥くんは結果どうだったんです?」
    「軒並み増加☆傾向」
    「でも視力は落ちてるでしょう?」
     視力検査が無いのに、兄は全てお見通しであった。


     高校生だから育ち盛り――そう信じていたのに、現実は残酷だった。
     少女が溜息をつくと二つほど多く、不思議に思って顔をあげると見知らぬ少女達が。互いに視線が自然と胸元に落とされ、やっぱり三人で同じように頷いた。
    「こんにちは、わたしスヴィータっていうんです」
    「……霧島夕霧。高1」
     スヴェトラーナの自己紹介と微笑みに、夕霧もまた自己紹介。声は少し緊張の色が見えていたけれど。
    「わたしは蘭。儀冶府、蘭。よろしくね」
     同じ悩みを持つ者同士、打ち解けるのも早かった。少しずつ会話を広げながら、他の人の邪魔にならないようにとちょっとずつ教室内を移動する三人。
    「時間、あれば。場所、変えてもうちょっと。お話してたい、かも」
     夕霧の言葉に、スヴェトラーナは人懐っこそうな笑顔を向け、蘭もまた頷く。

    「ルーシーちゃんはスリムでいいね私はまた太っちゃったよ怠けすぎたかなぁ」
     測定結果とにらめっこをしていたルーシーは、のどかの言葉に顔をあげた。そして彼女の手を両手でぎゅっと握る。
    「あたしは、胸の大きなのどかちゃんが羨ましいわ」
    「かわいいルーシーちゃんなら大丈夫よ成長期だものきっとこれから大きくなるわ」
    「二人でかわいく成長するのっ」
     ルーシーの笑顔の励ましに目をぱちくりとさせたのどかは、やがてこくりと頷いた。ダイエット、決意。

     背が伸びた事を実感していた紗里亜だったが別の問題も浮上していた。
    「どうしましょう。これ以上大きくなると彼の前に出るのも恥ずかしいです」
     服や下着の買い替え問題もなのだが、何より恋人が……なのだ。
    「あ、大丈夫、きっと喜んでくれますよ♪」
    「えりなさん~!」
    「今度、また一緒にお買い物行きましょう♪ 彼が喜びそうなものとかも一緒に探しましょうか」
     嬉しそうにえりなが提案した。

    「こらっ、なつみ!」
    「あら、ばれましたかー?」
     後ろから抱き着いてきた人物を智は振り返り様、そして防御を行う。
    「いつも言うけど後ろから抱きつかないー! そして胸に手を伸ばさないー!」
     けれど密着した状態で防御など無意味だ。なつみは智の小さな胸をふにふにーっとしていた。
    「測る前にふにっとしたら、ちょっとは変わるかもしれませんよ?」
    「変わるかー! あ、いや、でも少しは……ううっ」
     身長は良い感じだけど、胸囲は……。
    「真夜はどのメーカー買ってるの?」
    「下着ですか? 私は専門店で買っていますねー。きちんと測って体に合ったのを着けた方がいいって母が言って……あ」
     首を傾けて答える真夜は何か思いついたようだ。
    「祢々ちゃん、今度一緒に買いにいきませんかー?」
     真夜のお誘いに、こくこくと頷く祢々。どんよりとした気分が少し浮上した。
    「動いても邪魔にならない下着、あるといいな」

     体重計にのったら、昨日より増えてました。
    「ええ!?」
     驚いた向日葵にたまきが慌てて声をかける。
    「向日葵せんぱい」
    「あ、文太が肩に乗ってたのねーそれのせいかー」
     リスの文太をたまきに預けて向日葵は再度、体重計に挑む。
    「えーと、身長は……がーん、伸びてないや」
     もうすぐ18歳。止まってもおかしくないよねと、ぱうは自身に言い聞かせる。次、次だ。次に希望を持って体重の欄に視線を落とす。
    「ふ、増えてる」
    「はうっ、増えてる」
     体重計に乗ったたまきが呻いた。お仲間が、と視線をあげたぱうは、たまきが文太を抱えたままなのに気付く。
    「はー、影薙さんとぱうさん、大人の女性って感じしますねー」
     椎菜は胸囲を確認し、二人のスタイルを眺めてみた。
    「私はどうにもちょっとアンバランスな気がするのですよ」
    「そうかしら。本当はもう少し小さい方がいいのよね。動く時に邪魔だから」
     身体を目一杯動かして戦う影薙としては立ち回り難い。
    「そうなの? 無いままの方が良いのかしらー」
     言いながら、シャツを引っぱるアリス。これで事足りるアリスはとても動きやすそう。
    「身長ももっとばーんと伸びないかしらー」
     でも伸びた! とスキップしたアリスは教室の扉を開けた。
     がらり。
     がらぴしゃり。
     反射的に閉めた椎菜が震え声で、廊下にいる人物の名を呼んだ。
    「う、右九兵衛さん」
    『部員の成長具合を知るんも部長の務めや。心配なんや。せやから皆、可及的速やかに記録を提しゅつべあ!?』
     右九兵衛の言葉が途切れた。
     逆側から出た影薙が「所定の位置」についたのだろう。
     覗いてないよ。聞いてただけだよ。

    「……それにしてもひよりん」
     雛はじろーっと緋頼に視線を送る。
    「体格の割に随分とほーまんでなくって?」
    「いえ、じん……天然という設定でお願いします」
     何かを言いかけた緋頼だったが、目を閉じて訂正の言葉を楚々と述べる。
    「むー、雛ちゃんは大きのです……ひよりんも着痩せするタイプだったのですね、むーむー」
     ちょっぴり涙目で二人を見るエステルに、雛は心乱されてしまう。
    「え、エステルだって育つわよ! きっとこれからよ!」
    「そういえば、大きくするためにマッサージが良いと聞きました」
    「ふぇ?」
     たゆまぬ努力ですわね、と言う雛に緋頼は頷いた。双方、疼く手をエステルへと向けていく。

    「ふう、今年もあまり伸びていませんわ」
     吐息を漏らす九十九。もう少し身長が欲しいというのは贅沢な願いなのだろうか?
    「こちらは、あまり成長しないで欲しいですわ」
     そう言って胸囲測定の教室へ。
     教室を覗き込むのは、敢えて友人と別行動の晴香だ。
    「普段あれだけ鍛えてんのに、なんで脂肪もしっかりつくワケ!?」
     さらしを巻いて測定に挑む晴香だったが、うん、まあ当然外される未来しか見えない。
     碧は測定結果を眺めて悩ましげな表情。
    「胸囲が……いいえ、筋肉の方が脂肪より重いから、そのせいよね」
     身長は四捨五入したら160、いえ、170よね、きっと。と碧は見ないフリをした。
     体重は日々の運動も大事。
     玉緒は不思議そうにお腹のお肉をむにゅっと。
    「もしかして、豊満……ではなく、肥満、なの……でしょうか?」
    「胸、かしらね。重くない?」
     メジャーは30cm内外あたりかしら、と測定係の教師はアンダーとトップの差を測る。
     同じくトップが100の大台に乗るのは清香だ。
    「せめて10cmは身長に回ってくれないだろうか」
     はふ、と溜息と憂いの声を出す清香。
    「下着は買い替えか」

    「やっぱり牛乳は武蔵坂牛乳だよね」
     凪は今日もいつものように牛乳を飲んで身体測定に挑む。
     身長もさることながら、スタイルもバランスよく。凪は堂々としている。
     マモリも前日から牛乳やらチーズやらを大量に摂取して身体測定に挑む……のだが、恐らくコレはいらない所に栄養が回っている。
    「そんなとこに栄養行かんでええねん!」
     まず体重。のちに、胸?
     逆に我慢の子な朱音。
    「おやつも我慢したし、大丈夫、だよね?」
    「あ。貴女胸囲も測りましょうか。この年齢はね、色々と大事なのよ」
    「えっ……な、なんでぇー!?」
     測定係の先生と生徒に朱音は捕まった。ほんと大事なのです。

    「1ヶ月に1.135センチ伸びとんじゃな」
     去年の測定記録と見比べるガザ美が計算する。
    「ガザ美ちゃんの夢は100メートルになる事じゃけぇあと86年、つまり94歳まで生きたら叶うでぇ♪」
     ぐっと拳を天に掲げて言うガザ美に「いいなぁ」と花が呟いた。
    「……また胸ばかり、です」
     そんな二人の胸をじーっと眺めるのは駆。続けてぁんへと視線を移す。
    「ぁ、あの……その」
     ぁんは顔を赤らめて駆の視線を避け――ない。むしろ視線に体当たりするかの如く寄っていく。
    「どうぞ……っ」
    「むふふ~。測るのお手伝いしちゃうよ~」
     駆はメジャーをジャッと引き伸ばす。

     男子の体操着姿の友梨がさらしを外す。女性的な姿が更に顕著になった。
     姿勢も真っ直ぐでその性質は所作にも表れていて、ルイーザは感嘆の声を漏らす。
    「やはり友梨さんは弓道をしてらっしゃるせいか、姿勢もよいですし……これは見習わなければいけませんね」
     測定の結果用紙を手に、気合を入れ直すルイーザ。
    「姿勢はよく言われます。母に社交ダンスを習いましたから、それもあるかと」
     はきはきと答える友梨だった。

    「……もうちょっと小さいはず……ですよね」
     もう一度、と胸囲測定に挑む翡翠に千尋が気づく。
    「お、再検査?」
     はい、と恥ずかしそうに頷く翡翠をジト目でライラは見た。周囲にはライラを凌駕する者ばかりが勢揃いだ。そんなライラに千尋が微笑む。
    「パパ大好きっ子のくせに、しっかり成長しているよね」
     引き締まったライラの肉体、そして柔らかな胸をふにっと千尋がつつく。
    「体重が増えていたけれど、胸が原因みたい」
     翡翠のように隠すこともなく、堂々としている巫女。
    「……もはや生物として何か違うのかしら?」
     やっぱりジト目なライラ。
    「で、皆……特に翡翠ちゃんはどんな感じだったのかしらねー? 皆気になってるんだし教えなさいよー」
    「えっ、わ、私ですか?」
     用紙を背に隠して後退する翡翠に迫る三人。じりじりと壁際に追い詰めていく。

     璃依とフランは測定結果の用紙を互いに覗き込んでいる。ほっぺがくっつきそうな勢い。
    「璃依は恋人が出来たみたいじゃないか。乙女パワーで胸の方も成長してるのかな?」
    「……なるほどっ。恋で胸が成長をしたんだな……体重増えすぎだと思っていた」
     ほっとして頷く璃依だが、フランの数値は体重あまり増えていない感じ、胸は成長。
    「な、なぜだーっ」
    「ボクも彼氏が出来ないかなぁ」
     唸る璃依と溜息を吐くフランであった。

     乙女心は複雑だ。
     茉莉は身長、百花は胸囲に複雑な思いを抱いている。というか数値としてハッキリ示されるとちょっぴり落ち込む。
    「ぐぬぬ……よ、ぐぬぬ! もう、茉莉ったら成長が早いわ!」
    「だ、大丈夫です、百花さん……成長が止まってなければ、育つときは一気に」
     はっと茉莉は言葉を止めた。百花、大学一年の春である。
    「……えっと、ず、ずっと永遠にスレンダーな百花さんも、素敵ですからっ」

    「むがが、伸びてないぃぃ!?」
     全身運動という名のダンスもしているのに、杏子はちんまいまま。成長した! と胸をはれるのは……胸だ。
     隣を見ればひかりがお腹をふにふにとしているところだった。
    「ん、あんこちゃん、どったにぃ?」
    「ひかりん」
     杏子はひかりを上目遣いに、ついでに瞳を潤ませる。
    「身長分けてー!」
    「ほいじゃ抱っこでも肩車でもいつでもしてあげるんだにぃ☆」
     同じ高さの視点を、分けっこで。

    「うぅ……どうしたら……育つのでしょう」
     桜の嘆きと、陽毬の呟き。
    「せめて150は行きたいのです……牛乳飲まなければ」
     見ている場所は胸囲と身長と、お互いに違うのだが思うものは一緒だった。
     牛乳。
    「陽毬さん……同い年さんなのに、スタイルが良いです……」
     秘訣とかありますかっ? と意気込んで尋ねる桜に、陽毬は微笑を向けた。

    「……って、りんごが測定係って、悪い予感しかしないんだけど」
     震え声な桜花が、胸元をおさえつつじりじりと後退していく。
    「ささ、正確に測りたいのでブラも外してくださいね?」
     にっこりとりんごが言う。冗談半分ではあったが、本気も含まれていてかつそれを言う気はさらさらないりんご。
    「じゃあお願いしちゃおうかしら……」
     タシュラフェルが一番乗りでりんごの前に。測定係についていた先生(女)、教室の窓を閉めてカーテンをした。廊下に続く扉を閉める時、ちょうど「可愛い女の子はいないかなー」と歩いていた葵にちょいちょいと手招き。
    「……はい? わ、この方達はレベル高いですね。おとと、第一印象は大事ですよね」
     お手伝いして欲しいの、って頼む先生に向かって葵は頷いた。
    「うふふ……♪ 私達の本領は、こちらですわ……♪」
     スミレは腕に巻きつける鞭を――あ、違った、もといメジャーを仲間の胸にあてて測定補助だ。微妙に戸惑っている部員には真面目に測定を行うつもり。
    「りんごちゃんのスキル凄いねー。んぁっ、えっ、大きくなってる?」
     とりあえず二回ー、と奏が、教室内の明かりを点けた先生の所へと向かう。
    「あっ本当だ! さすが花園部長ねー」
    「りんごちゃん、本当にすごいね。先生に測ってもらったらピッタリだったよ♪」
     ほわっとした笑みを浮かべる桃子。トップ115・アンダー85の数字。
     それを確認する先生。いいわよ大丈夫よ、先生、確認係として貴女たちを見守るわの眼差しだ。
     顔を赤らめながら由希奈が、ぷるぷると震える指を背中のホックに伸ばす――のだが、りんごの表情に彼女は気付いた。
    「もうっ、りんごちゃんってば! 冗談でもひどいよぉ……」
    「えっ、違うんですか!? だからりんごさんの目が輝いていたんですね……!」
     でも気にしない悠花。ちなみに霊犬のコセイは封鎖された教室の周囲を巡回中である。
    「でっ、ですよね! いくら正確にとはいえ触診はちょっと……」
     わたわたしていたシャルリーナは、ほっと安堵の吐息を漏らした。
    「驚きましたぁ」
     でもりんごの測定だ。身包み剥がされ――あ、違った、もといセカイの言う胸潰しを外されたセカイは既に測定済みだった。
    「もっと、早く気付いて欲しかったです……ッ!」
     涙目である。
    「美少女達の艶姿って、いいねぇ……♪」
     さっさと脱いでいた蔓は、今回もプロポーションも維持されたままで測定結果に満足そう。
     測りながら下着のアドバイスを受けていた静香はにっこりと笑った。測定補助をしているスミレが色々と教えてくれる。フルート奏者として舞台に出るスミレは衣装のことにも詳しそう。
    「スミレさん、ありがとうございますっ」
    「あーっ!! 何するんだよもー!!」
     揉むに揉まれたせりあが、りんごにぐーぱんを繰り出す。
    「この間といい今回といい、みんなやることがむちゃくちゃだよっ」
     説教モードに入るせりあなのだが、花園の面々は説教? 何それおいしいの? 状態で、彼女は早々に燃え尽きるのであった。

    作者:ねこあじ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年4月26日
    難度:簡単
    参加:116人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 26
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