「たぁっ!」
「はっ!」
それまでにらみ合い、互いに呼吸を窺っていた両者だが、ほぼ同時に攻撃を仕掛ける。
カウンター気味に放たれた拳は、ヘッドギアの上から片方の選手の顔を捉えた。
「それまで!」
この日、町外れの道場では、日々の練習の成果を発表する大会が開かれていた。
――ガシャーン!
そんな息詰まる試合と試合の合間、唐突に彼らは姿を現した。
「なんだなんだ? こんなぼろっちい体育館みたいなとこで、野郎同士が社交ダンスかい?」
ガラスをたたき割り、観客席の椅子を蹴散らしながら歩むのは、竹刀やチェーンを手にしたいかにもヒール(悪役)風女子プロレスラー。2人とも覆面である。
「おい! 何なんだ、そこの覆面共! ここはお前らみたいな見世物屋の来る場所じゃないぞ!」
「アハハ! 言ってくれるじゃない。アタシを負かせたら、マスクを取っても良いけど……アタシが勝ったらここの看板は好きにさせて貰うよ?」
「何をふざけたごふぁっ!?」
――パァン!
乾いた音が道場内に響く。
レスラーの放った一発の張り手は、その門下生を吹き飛ばしてKOしてしまった。
「石田さん! て、てめぇ……」
ざわめく場内。門下生達は色めき立って一斉に立ち上がる。
「黒山先生、ここは俺達に任せて下さい」
「うむ、速やかにお引き取り願え」
ガタイの良い数人の男達が、レスラーに迫る。が――
――どかっ、ばきっ、ドスッ。
「ぐはぁっ……ま、参った」
「強……すぎ……」
彼らは瞬間的に叩きのめされ、投げ飛ばされ、絞め技を決められて蹴散らされてしまった。
「なんだいなんだい、こんなもんなのかい? この汚い看板はもう要らないね、ダンス教室って書き直しな」
レスラーはせせら笑いながら、道場の看板を真っ二つにへし折った。
「幹部級のアンブレイカブル『ケツァールマスク』と、配下のレスラーアンブレイカブルが、ある道場の大会に乱入し、会場を滅茶苦茶に荒らすと言う事件が起きようとしていますわ」
有朱・絵梨佳(小学生エクスブレイン・dn0043)の説明によると、彼女らはプロレスラーである為、ギブアップした相手を攻撃する事は無い。
その為、死者が出ることは無い様だが、プライドをボロボロにされて武の道を諦める者が多数出る事は間違いない。当然道場の先行きも暗くなるだろう。
「なるほど、命が無事だからといってただ事では済みそうに無いな」
ふむ、と頷く三笠・舞以(鬼才・dn0074)。
彼らを救うには、道場に赴き、門下生の代わりにアンブレイカブルと試合をする必要がありそうだ。
「アンブレイカブルレスラーは、プロレスラーと言いながら普通に武器やサイキックを使って攻撃してきますわ。まぁ悪役レスラーなのでそこまで違和感はないのだけれど」
ショー意識が強い為、攻撃も概して派手で見栄え重視の様だ。一方、自分が攻撃を受ける際も、基本は真っ向から相手の技を受けて耐える事を良しとするらしい。
「と、そう言う戦法を取ってくる以上、タフには違い無さそうですわね」
プロレスラーを称するだけあって、打たれ強いのは間違いなさそうだ。
「それと、ケツァールマスクは基本的に戦闘に不参加なのだけれど、以下の行為があった場合に限って、戦いに介入してくる可能性がありますわ」
観客に危害を加える様な行為。ギブアップしているのに攻撃を加える行為。地味すぎて試合が面白くなかった場合。
以上の3点だ。
「ケツァールマスクはかなり強いですわ、介入されたら勝ち目は無いから、怒らせないように気をつけて下さいまし」
「ふむ、なりふり構わず一方的に叩きのめせば良い……と言うわけにはいかないわけだな」
つまる所、相手の土俵に乗りつつ戦う必要があると言う事だろう。
「試合が盛り上がって観客を楽しませる物だった場合、勝敗に関わらずケツァールマスクも配下も、満足して去って行きますわ。なので、試合の勝敗よりも盛り上げる事を優先して頂いて良いかも知れませんわね」
先述の通り、ケツァールマスクの介入を招く事だけは避けなければならない。
「それでは、いってらっしゃいまし」
そう言うと、絵梨佳は灼滅者を送り出すのだった。
参加者 | |
---|---|
水島・ユーキ(ディザストロス・d01566) |
西院・玉緒(鬼哭ノ淵・d04753) |
閃光院・クリスティーナ(閃光淑女メイデンフラッシュ・d07122) |
クリミネル・イェーガー(迷える猟犬・d14977) |
青葉・康徳(北多摩衛士ムラヤマイジャー・d18308) |
ブランコ・ティーグル(ネームレスビースト・d20920) |
リューズ・バレスタイン(みんなのお姉ちゃん・d24192) |
林・武虎(炒飯炒める系中華男子・d25808) |
●
「第一試合はこの2人! 金色の瞳は今宵も紅に染まるか?! 美しきキラードール、リューズ・バレスタイン(みんなのお姉ちゃん・d24192)! デカァァァいッ説明不要!! 魅惑の依巫、西院・玉緒(鬼哭ノ淵・d04753)!」
芽生のアナウンスが響く中、登場したのはリューズと玉緒。2人の美しさとラブフェロモンにオーディエンスもすっかり悩殺されている。
「連中の代わりかい? 大恥かくことになっても泣くんじゃないよ?」
畳という名のリングに上がる2人を見据え、せせら笑う覆面レスラー。
「リューズ、西院ペアがどこまでやれるかに注目しよう」
と、三笠・舞以(鬼才・dn0074)。
――カァン!
「まずはリューズが出ます。両者リング中央で組み合う!」
「そんなもんか?」
「くっ」
しかし腕の太さに違わず、ジワジワとズミが押し始める。
「そらよっ!」
俊敏な動きでリューズを抱え上げると、そのまま叩きつけるズミ。
「先制のボディスラムッ! そして容赦無く蹴りつける!」
「がんばれ~!」
「リューズ! リューズ!」
客席から声を張り上げて応援する朔和。それに釣られて、他の客達も一斉に応援を始める。
「オネンネしてなっ!」
勢いをつけ、思い切り蹴り上げるズミ。
「なうっ?!」
しかしリューズは蹴りを受け止めると、捻ってズミを転倒させる。
「西院さん」
「勝てるとは……思って……いませんが……」
リューズからタッチを受けてリングインする玉緒。
ゆっくりと起き上がるズミに歩み寄る。それだけの動きで、色々とたゆんたゆん。観客達も思わずどよめく。
「見た目だけでリングに上がるとどうなるか!」
「くうっ!」
「いきなりのショルダータックル!」
「ほらほらぁ!」
パンチ、キックと立ち技を繰り出すズミ。玉緒は防戦一方だ。
「これはやや一方的な展開に――」
なるかと思いきや、ズミの拳を紙一重でかわした玉緒は、逆に拳を繰り出す。
「ぐっ!?」
「カウンターパンチがクリーンヒットォ!」
「殴るのは……結構……得意……なのですよ……」
腰の入った正拳突きを繰り出す玉緒。思わぬ反撃に、ズミも足をフラつかせる。
「一気にKOしてしまうのかぁーっ!?」
「っ?!」
「バーリトゥードじゃないんだ、本物のプロレスを見せてやるよ!」
玉緒の拳を受け止め、ニヤリと笑みを浮かべるズミ。
「ズミが背後を取った! そして――ジャーマンスープレックスーッ!!」
小柄ながら怪力のズミは、美しいブリッジを描いて大技を見舞う。
「腕挫ぎ逆十字に入るーッ!」
「さっさとギブしな」
「っ!」
だが、玉緒は首を横に振る。
根負けしたように、ロックを外すズミ。
「いいぞ巫女!」
その闘志に観客も喝采を送る。
「なら、もっと盛り上げてやるよ」
「んん……っ?!」
ズミは、立ち上がろうとする玉緒の背後に回ると、もろともに仰向けに倒れ、自らの脚で玉緒を大開脚させる。
「こ、これは……恥ずかし堅めーっ!」
屈辱的なその見た目故、女子レスラーに対してのフィニッシュホールドとして使われる事が多いこの技。色々と刺激的で観客は一気にボルテージを高める。
――カンカンカァン!
「あっとここでレフェリー(道場主)ストップです!」
最後までギブアップをしなかった玉緒だが、色々な事情でこれ以上は危険と判断され、ズミに軍配が上がった。
●
「ボクの出番かな」
美しさと色気に満ちた試合で会場の温度が高まる中、リングに上がるのは、青葉・康徳(北多摩衛士ムラヤマイジャー・d18308)。
「若き実力派、武蔵坂のコンドル! 青葉康徳ーっ!」
軽快なフットワークで間合いを窺う康徳。
「ふん! 付け焼き刃のルチャ、アタシに通用すると思うなよ!」
猛然と襲い懸かるズミ。
「なにっ?!」
「攻撃をかわして、レッグシザース!」
相手の勢いを利用しダウンを奪った康徳は、流れる様な動作でズミの脚に自らの脚を絡める。
「これは――ロメロスペシャルッ!」
「こ、こいつっ!」
何とかロックを解いたズミだが、ダメージに足を引きずる。
「次は――」
「させるかッ!」
――ブシュッ!
「毒霧攻撃だーっ!」
康徳が視界を防がれている間に、ズミは仕込んであった竹刀を手に取る。
「そして凶器攻撃っ!」
レフェリー不在のこの試合において、誰もズミを止める事は出来ない。容赦無い竹刀での打撃が康徳を襲う。
「ハハハ! ぬっ?!」
が、数回目の攻撃を回避した康徳は距離を取る。
「そんな状態で何が出来る!」
ズミが竹刀を捨てて掴みかかるのと同時、康徳は跳躍。
「跳んだぁーッ!」
「ぐはぁっ!!」
本来はリング外の相手に繰り出すトルニージョだが、康徳は常人離れした跳躍力でこれをリング内に繰り出した。
仰向けに倒れるズミ。康徳は目を拭いながらその足下へ歩み……
「それでは皆さんご唱和下さい!」
「ジャイアントスイングーっ!」
「「1! 2! 3!」」
ズミの身体が豪快に振り回される度、カウントする観衆。
鮮やかな反撃を決めた康徳は、フラつくズミを起こし……
「パワーボムーっ! 餅つき式ぃーっ!」
続けざまに数回のパワーボムを見舞い、更にズミの身体を空中へと投じる。
「捉えた!」
「……と思ったか?」
ズミは空中で身体を捻り、腕を交差させる。
「なんとぉっ!? フライングクロスチョップ……ッ! あの体勢から繰り出して来たァーッ! そのままフォールーっ!」
――ワン、ツー、スリー!
ゴングが打ち鳴らされ、この試合もズミに白星となった。
●
「続いてはこのタッグ! 功夫に研ぎ澄まされた牙はキラーの喉元を捉えるか?! 冷酷なる駄け……猟犬! クリミネル・イェーガー(迷える猟犬・d14977)!! そして、中国拳法の使い手! 燃えよタイガー! 林・武虎(炒飯炒める系中華男子・d25808)!!」
「リングやなくて道場での闘いな……たまにはエェなぁ」
「中華4000年の力、思い知るが良い……てか」
(「そっちがそう来るんやったら」)
鋭い眼差しで相手を見据えつつ、間合いを詰めるクリミネル
「なうっ?!」
「あーっと目つぶし炸裂! まさにリング上のハムラビ法典!」
先手を取ったクリミネルは、そのままズミのバックを取る。
「バックドロップッホールド!!」
そのままフォールに入るクリミネル。
――ワン! ツー! ス
「まだっ!」
フォールをはね除け、立ち上がるズミ。
クリミネルが立ち上がるが早いか、その腕を掴み……
「ブレーンバスターッ!」
覆い被さるようにフォールに入る。
――ワン! ツー! ドゴッ!
「がはっ!」
仲間の窮地を救ったのは武虎。リングに上がると、ズミの背中に蹴りを叩き込む。
「行くぞ」
起き上がったクリミネルと共に、ズミを立たせ……
「助走をつけて――ダブルドロップキック!」
そのままクリミネルはズミを羽交い締めにし、武虎は動きを封じられたズミに対し連続攻撃を繰り出す。
「まさに烈火の如き連続攻撃っ! ズミ絶体絶命ー! いや、こ、これは……ムーンサルトッ!?」
地面を蹴ったズミは、武虎の身体を駆け上がる様にして蹴りを浴びせると、そのまま回転しクリミネルの背後へ降り立つ。
「お返しとばかりにフルネルソン! そしてこれは……ドラゴンスープレックスだーっ!! そのままホールドに入る、ワン! ツー! スリー! 返せない!」
――カンカンカァン!
反則技だけではない技術の高さを見せて、ズミが勝利を収めた。
●
「プロレス、は、選手、と、観客、が、一体、と、なって、作る、モノ。だか、ら、楽しん、で、もらわ、ないと、ね」
「同じ覆面レスラー、楽しくやろうじゃないノ」
「静かなる喧嘩屋! 水島・ユーキ(ディザストロス・d01566)!! そして覆面レスラー! 名も無き白虎! ブランコ・ティーグル(ネームレスビースト・d20920)!!」
「さっさと来な!」
ズミはこれまでの戦いでかなり疲弊しているはずだが、それを隠すように挑発する。
「遠慮は要らないネ!」
ブランコはリング上に上がるや、一気に間合いを詰める。
「ぐ、はっ!」
「ナックルパート一閃ッ! これは効いているっ! そして……逆水平チョップ!」
先手必勝とばかりに、連続攻撃を仕掛けるブランコ。
「……お返しだよ!」
「ぐあぁっ!!」
ズミは後ろのポケットに潜ませていたスパナを取り出すや、ブランコの頭部を殴りつける。
派手にのたうつブランコ。会場からはブーイングの嵐がわき起こる。
カットに入るユーキは、尚も追撃を仕掛けようとするズミ目掛けて浴びせ蹴りを繰り出す。
「ぐふっ!」
「ここで水島のシャイニングウィザードッ!」
ブランコも額の血を拭いつつ立ち上がり、ユーキと目配せを交わす。
「さぁズミを起こして、何を仕掛ける……ブランコがズミを肩車して――水島跳躍! まさかのダブルインパクトーっ!!」
「がはっ」
ツープラトンの大技を見舞うと、ユーキが尚も攻撃を継続する。
「さぁ再び立ち技のラッシュ! おっと? 距離を取った水島に向けて、ブランコがズミを振って――これはパワースラムッ!! そしてそのままフォール!」
――ワン! ツー! スリ
「いや、返したっ! しかしユーキはズミを立たせて……再び得意の立ち技に持ち込むか! いや、ズミもそれはさせません。掴みかかって……ダブルアームスープレックス! 逆に抑え込む!」
――ワン! ツー! ガシッ!
「ここもブランコのカット! さぁトドメのツープラトンが炸裂するのか!? ズミを立たせて……2人とも助走を付けます!」
「サンドイッチ式延髄斬り! あぁっとかわされる!」
挟撃を仕掛けた2人だが、からくも回避するズミ。
「体勢を立て直す前に、ブランコを起こして背後を取る……バックドロップ! ホールド!!」
――ワン、ツー、スリー!
「カット間に合わない! キラー・ズミを止められる者は居ないのか!? 道場の看板は奪われてしまうのか!」
煽るアナウンスにざわめく場内。
――~♪
「いや我々にはまだこの人が残っている! 絶望のリングに希望の光は差すのか! それを可能たらしめるのは彼女しかいなぁい! 閃光ヒロイン! 閃光院・クリスティーナ(閃光淑女メイデンフラッシュ・d07122)!!」
勢いよく開かれた正面玄関から、ゆっくりとリングへ歩むのはクリスティーナ。
観客達の声援、仲間達からの眼差しに小さく頷きつつ、彼女がリングへと降り立った。
●
「アンタで最後か? それなら全力で行くよ!」
連戦で満身創痍とはいえ、ズミは猛然とクリスティーナに掴みかかる。
体格差を感じさせず、がっぷりと組み合う両者。
「っ……」
ばしっと組み合いを諦めたズミは、疲労困憊の様に俯いて肩で息をする。
「いまだ! やっちまえ!」
観客に促されるまでもなく、一気に仕掛けに行くクリスティーナ。
「くらえ!」
――ゴォッ!!
「?!」
「これは火炎殺法!? 火種を隠していたーっ!」
思わぬ反撃に、クリスティーナはリングを転がる。
「言っただろ、全力で行くって!」
ズミは、パイプ椅子を手に取ると、クリスティーナに振り下ろす。
「お前達みたいのが何人来ようと! アタシにゃ勝てないんだよ!」
「ぐっ!」
一際高く振り上げられたパイプ椅子が振り下ろされる刹那、クリスティーナはからくもこれを回避する。
「その言葉……必ず覆して見せますわ」
「あぁ?」
「皆の奮闘、無駄には致しませんわ!」
満身創痍ながら立ち上がったクリスティーナは言い放ち、不敵に笑うズミに対しアッパー掌底を繰り出す。
「ぐっ!?」
「掌底がヒットォ! 反撃開始かぁーっ!!」
倒れたズミを起こし、更なる攻撃を仕掛けようとするクリスティーナ。
「っ!」
「あぁっと!? これは意表を突く地獄突きィーっ! クリスティーナはたまらずもんどり打って倒れます! ズミは何かを仕掛けるぞ? これは……消化器であります! 消化器を手にした! 非常に危険ですっ!」
会場隅に設置されていた消火器を手に、ズミはクリスティーナへ歩み寄る。
「っ?! こいつ、まだ……」
だが、そんなズミの脚にしがみつくクリスティーナ。
「ちっ、くらえっ!」
消化器を振り下ろさんと体重を移動した刹那――
「ドラゴンスクリュー! しかしズミはすぐに起き上がるぞーっ!」
「往生際の悪いお嬢ちゃんだ……」
膝をついて立ち上がろうとするズミ。
「そこですわ!」
――バッ!
「がはぁっ!」
「決まったぁーっ! シャイニング・ヒロイーン!!」
膝蹴りをもろに喰らって、さすがのズミもマットに倒れる。
「しかしクリスティーナも体力は限界か! おっと……ズミを、なんと抱え上げたぞ!? そして、まさか……跳んだぁっ!! イナズマ・バスターだぁーっ!!」
ルチャの関節技を源流とするその技は、首、背、股間接全てにダメージを与える必殺のフィニッシュムーブである。
「そのままフォール! ワン! ツー! スリー!」
――カンカンカァン!!
ゴングが一際高らかに打ち鳴らされ、会場は熱狂的歓声に包まれた。
●
「愉しんで……頂けた……みたいで」
「うん、良かった、ね」
興奮冷めやらぬ会場を見回し、ほっと安堵の玉緒とユーキ。
ハイレベルな技の応酬と、最後までハラハラさせる試合展開に、客達も大満足だ。
「ねぇ、このような事を繰り返すのは、強者を求めているからではないかしら?」
一方、静かに会場を立ち去ろうとするケツァールマスクへ声を掛けるクリスティーナ。
「他に何があると言うのだ? ……今日の試合、悪くは無かったぞ」
ケツァールマスクは足をとめ、そう答える。
「そろそろ自分で戦ってみたくない? やる気があるなら学園に来てよ。相応しい舞台は作るから」
連絡用の携帯を差し出しつつ言う康徳。
「ちょっと、身の程知らず過ぎるでしょ! もっと強くなってから言いなさい」
と、2人の間に割り込んでその携帯を没収する女。
「誰やあんた」
「さっきまで戦ってたでしょ」
クリミネルの問いかけに答える。どうやら当初の約束通り、負けたのでマスクを取ったズミらしい。素顔はかなり地味だ。
「再戦の証としてとっておいてヨ。次はリングの下にパイプイス用意しておくネ」
ブランコは、自らが着用していたマスクのうち一つをズミへ差し出す。
「次は畳じゃなく、本当のリングでね」
受け取りつつ、フッと笑うズミ。
「いや、初めての体験だが、楽しかったよ」
武虎も爽やかに、互いの健闘をたたえ合う握手を交わす。
「……行くぞ」
「は、はい!」
2人はそのまま、どこへともなく姿を消す。
「お疲れ様、じゃあオレ達も」
「はい、騒ぎが大きくなる前に帰りましょう」
朔和と芽生が、水やタオルを手にやってくる。あれこれ尋ねられる前に、一行も引き上げる事にする。
かくして、街の道場で突如始まった変則マッチは、大盛況のうちに幕を下ろしたのであった。
作者:小茄 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年4月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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