ジャック・アルバートン(ロードランナー・d00663)は、こんな噂を耳にした。
『冷凍マグロを担いだ褌一丁のガチムチマッチョが現れた』と……。
このガチムキマッチョは都市伝説で、日本人のたるんだ精神を鍛えなおすため、気合注入とばかりに冷凍マグロを突っ込んでいるようである。
どこに突っ込んでくるのかは、被害者達が頑なに口を噤んでいるため、謎のヴェールに包まれているが、都市伝説はこれによって多少の事ではへこたれない強靭な精神をもった人間に生まれ変わらせようとしているらしく、悪意のカケラもないようである。
だが、突っ込まれた方は絶望のどん底に突き落とされ、ほとんどの場合が立ち直る事が出来ない。
それどころか、後ろに立たれる事を異常に嫌い、俺の背後に立つんじゃねえ状態。
しかし、都市伝説はまったく気にしておらず、隙あらば冷凍マグロを相手に突っ込み、世直し活動をしているつもりになっているようである。
……とは言え、このまま放っておけば、冷凍マグロの尻尾を生やした男達が巷に現れる事は確実。
そんな最悪な事態を避けるため、都市伝説を倒す事が今回の目的である。
参加者 | |
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陰条路・朔之助(雲海・d00390) |
ジャック・アルバートン(ロードランナー・d00663) |
若菱・弾(キープオンムービン・d02792) |
ライラ・ドットハック(蒼の閃光・d04068) |
月夜・玲(過去は投げ捨てるもの・d12030) |
野和泉・不律(パーフェクトワールド・d12235) |
鴇硲・しで(夕昏少女・d22557) |
天城・ヒビキ(歓鬼・d23580) |
●マグロの花
「さーいたー、さーいたー、マグロの花がー。なーらんだー、なーらんだー、1本、2本、3本! さて、問題です。この依頼が終わる頃のジャックさんの足(含マグロ)は何本でしょう!」
月夜・玲(過去は投げ捨てるもの・d12030)が楽しそうに鼻歌を歌いながら、仲間達と共に都市伝説が確認された場所に向かっていた。
都市伝説はガチムキマッチョで冷凍マグロを肩に担ぎ、獲物を見つけると情け容赦なくそれを突き立て、近隣住民を恐怖のどん底に叩き落としているようである。
「それ以前に、この都市伝説……どう考えても、ジャック本人がモデルなんじゃねえのか……?」
若菱・弾(キープオンムービン・d02792)が、事前に受け取った資料を眺めつつ、思わずツッコミを入れた。
若干の違いはあるものの、特徴がほとんど同じなので、兄弟もしくは血縁者であると言われても納得してしまうほどだった。
もちろん、ジャックと都市伝説に面識はなく、そういった意味で無関係。
ただし、都市伝説のモデルになった人物が、ジャックであった可能性を否定する事は出来ない。
「……なんだろう。モザイクが必須なような予感がすんのは、僕の気のせいだろうか? とりあえず、ジャックと弾の健闘を祈るっ!」
陰条路・朔之助(雲海・d00390)が、色々と察した様子で敬礼をした。
まるで武蔵坊弁慶の如く、二人の背中に沢山のフラグが突き刺さっている。
おそらく、一緒にいれば巻き添えを食らい、確実にトラウマもの。
故に出来るだけ距離を取っておいた方がいいだろう。
自らの身を守るために。作戦『お尻、大事に』である。
「しかし、マグロを突っ込んで気合を入れるとは、日本の奥深さを思い知る」
ジャック・アルバートン(ロードランナー・d00663)が、穴あき褌姿で険しい表情を浮かべた。
冷凍マグロは愛の注入棒とはよく言ったもので、沢山の血を吸って禍々しさを増しているらしく、危険なシロモノへと進化しているようである。
「一体、どこにマグロを突っ込む気なのかしら、ね」
ライラ・ドットハック(蒼の閃光・d04068)が、あまりに下品な都市伝説に呆れを通り越して、激しい怒りを感じていた。
そのため、どこに突っ込むのか、答えはいらない。聞く気もない。
そんな事を知ったところで、何のメリットもない。
むしろ、デメリットばかりで、聞いた事すら後悔してしまうレベルである。
「でも、穴あきパンツを穿くだけで、マグロが貰えるんですよ。しかも、タダで! この都市伝説は間違いなく、良い都市伝説です!」
天城・ヒビキ(歓鬼・d23580)が、キッパリと断言した。
その冷凍マグロがどのように使われ、被害者達がどんな目に遭っているのか、さらりとスルー。
事前に配られた資料の中にも、その辺りがぼやかされているため、仕方がない事なのかも知れない。
「ところで、眩毘古のおしりって、どこだろう? ひょっとして、マフラー? ねじ込まれるの? だったら、壊れちゃうね」
鴇硲・しで(夕昏少女・d22557)が、ライドキャリバーに視線を送る。
だが、都市伝説が狙うのは、人間オンリー。
今のところ、バイクや車を襲ったという報告はない。
しかし、『たまにもオイル臭ぇケツもイイモノだろ!』的な考えに至り、ライドキャリバーを襲うかも知れない。実際にオイル臭いか、別として。
「ちょっと気が付いたコトがあるのだけれどー、都市伝説ってお尻が好きなのかしらー? この前、行った依頼もお尻を狙った都市伝説だったのよねぇ。この辺りに何か重要なヒントが隠されている気がするわー」
そう言って野和泉・不律(パーフェクトワールド・d12235)が、険しい表情を浮かべる。
おそらく、すべての謎を解くカギは、都市伝説が持っている冷凍マグロにある……かも。
●心に空いた穴
「マジであいつら勇者だわ……」
朔之助は囮役であるジャックと弾を生暖かく見守っていた。
ふたりがいれば、その間は安泰。
間違っても先に掘られる事はない。
それでも、ブロック塀に背中を押し付けて移動しなければ、不安な気持ちが消えなかった。
「あらやだ、穴あきパンツってプリティなお尻が丸見えじゃないー!」
不律がジャック達の尻をガン見した。
完全に無防備状態。故に、いつ掘られても、文句は言えない、おかしくない。
「とりあえず、一般人がいないようですね」
ヒビキが警戒した様子で辺りを見回した。
おそらく、みんな恐れているのだろう。
都市伝説の存在に……。
「しむらー、うしろ、うしろー……ん? しむらって誰だ」
しでが不思議そうに首を傾げた。
その間に都市伝説が冷凍マグロを構え、ジャックの尻に突っ込んだ。
それは一瞬の出来事。瞬きをする程度の時間。
「ははははっ! あまりにも痛過ぎて声も出まい。さあ、次は誰だ? 気合を入れて欲しい奴は前に出ろ」
都市伝説が別の冷凍マグロを取り出し、高笑いを響かせる。
まるで手品の如く、冷凍マグロが現れた。
そんな大きなものをどこに隠していたのかわからないが、もしかすると都市伝説が作り出したものなのかも知れない。
「そんなものを突っ込まれて、何か大切なものを失う訳にはいかないから、断固として拒否するわ!」
朔之助が激しく首を横に振る。
絶対に無理、ありえない。
「……悪いけど、都市伝説だろうと女性に突っ込むなんて、わたしが許さない」
ライラが警戒した様子で身構えた。
「ふっ……、甘いな。女だからと言って容赦はしない! 人類、皆平等。みんなで生やせば怖くない、だ!」
都市伝説がキッパリと言い放つ。
何やら上手い事を言ったつもりのようだが、まったく意味が分からない。
例えるなら、会社の上司が『最近の若いモンには、こういうネタが受けるんだろ』と言って、数年前に流行ったギャグをするようなもの。
『いや、いまさらそんなネタをやられても、こっちも対応に困るから』という気持ちを抑え、愛想笑いを浮かべる微妙な状態。
それでも、上司は『遠慮なく笑っていいんだぞ』とばかりに、全身全霊を込めて寒いギャグを連発している時によく似ていた。
「お前は間違っている」
ジャックがゆっくりと立ち上がる。
尻に冷凍マグロを突き刺されても、なお折れぬ精神力。
都市伝説はその姿を見て、ジャックが真の侍……益荒男であると確信した!
それに合わせて、マグロがピチピチと跳ねた。
まるで奇跡、生命の神秘!
凍ったマグロの心を溶かす、愛のパトス!
もしくは、見えざる尻力が働いているのかも知れない。
「マグロ……まぐろ……。マグロの尻尾をはやした灼滅者……アクセサリーって感じかな」
玲がボソリと呟いた。
ある意味、ファッションアイテム。
もしくは、そういうイキモノ。
「所で日本では人の振り見て我が振り直せと言うそうだな? 他人に精神力を求めるならば自分が何をされても平気な所を見せて貰えるか? 勿論マグロを刺しても、それ以外をやっても大丈夫だろう。よもや引き下がる事も無いな。自信満々ならば尚の事だ」
ジャックが含みのある笑みを浮かべる。
「い、一体、何を言っている」
都市伝説があからさまに動揺した。
その間もジャックの尻でマグロが跳ねている。
都市伝説には、その姿が何よりも恐ろしく見えた。
「いいか、本物のふんどし男は無理やりマグロで気合注入などしない。それを身をもって教えてやるぜ」
弾が都市伝説の背後を塞いで、指の関節を鳴らし始める。
「マ、マグロ以外のもので……だと! ま、まさか」
都市伝説が恐怖に震えた、唖然とした。
どうやら、マズイ相手に喧嘩を売ってしまったらしい。
それだけは間違いなさそうだった。
●最後の足掻き
「とりあえず、冷凍マグロを解答しておかないとね」
玲が含みのある笑みを浮かべて、都市伝説にレーヴァテインを放つ。
それに気づいた都市伝説が冷凍マグロで受け身を取り、その反動に耐えるようにしてグッと唇を噛み締めた。
「きみにはあたしがねじ込んであげるね。気持ち、ちゃんと理解しなきゃ」
しでが都市伝説の背後に回り込み、バベルインパクトを炸裂させる。
「ぎゃああああああああああああああああ!」
都市伝説が両目をカッと見開き、喉の奥から悲鳴を上げた。
あまりの痛さに体の震えが止まらない。
それは都市伝説が今まで感じた事のない痛み。
そこでようやく気づいた。
今まで自分がいかに愚かな事をしていたのかを……。
だが、いまさら後悔したところで、何もかもが手遅れだった。
「……恨むなら、マグロを突っ込む都市伝説として世に現れた自分を恨みなさい」
次の瞬間、ライラがフォースブレイクを仕掛け、都市伝説にトドメをさした。
「お、恐ろしい敵だったぜ。……主にマグロに純潔を奪われる的な意味でな。しかし、コイツはどう考えても、ジャックだろ」
弾が険しい表情を浮かべる。
ほとんど色違いの2Pキャラにしか見えなかった。
性格などが異なっているのは、おそらく噂が元になっていたせい。
基本が同じであっても、噂によって左右されてしまう、ある意味で都市伝説らしい存在であった。
「なぁ……、ジャック。お前、本当に大丈夫か?」
朔之助が心配そうに声をかけた。
「たった一本では、蚊に刺された程度だ。最低でも5本……いや、それ以上刺さったのであれば、話は別だが……」
ジャックがどこか遠くを見つめて、マグロを引き抜いた。
マグロはほんのりと頬を赤らめているかのように赤く染まっていたが、ジャックは何事もなかったように堂々としていた。
「今夜はマグロ祭り、ですよー」
ヒビキがひゃっほいと飛び上がる。
しかし、そのマグロはジャックの尻に突き刺さっていたもの。
いわば、漢を知ったマグロである。
そんなマグロを食べるのは、色々な意味で抵抗があった。
「あ、使用済はいらない」
しでが激しく首を横に振る。
もう一本の冷凍マグロは都市伝説が作り出したものらしく、いつの間にか消えていた。
「あー、なんかお寿司が食べたくなっちゃったわぁ。ねぇ、ジャックー。お寿司、食べに行きましょうよー」
そう言って不律がジャックを連れて歩き出す。
そんなジャックの背中を見守るようにして、マグロの瞳がキラキラと輝いていた。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年4月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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