強者を釣る漁師

    作者:るう

    ●業大老の呼びかけ
     ガイオウガ、そしてスサノオ大神……。
     大地を喰らう幻獣種共が「竜種」に目覚める日も、そう遠くはない……。
     サイキックエナジーの隆起がゴッドモンスターさえも呼び起こしたこの状況で、未だ十分に動けぬとはいえ、日本沿海を我が「間合い」に収めることができたのは、まさに僥倖。

     小賢しき雑魚共の縄張り争いも、王を僭称する簒奪者共の暗躍にも興味は無い。
     我が望むは、我と死合うに値する強者のみ!
     「武神大戦殲術陣」発動!
     眠れる強者よ現れよ。武神の蒼き頂こそが、これより汝の宿命となるのだ!

    ●武蔵坂学園、教室
    「強大なアンブレイカブル、業大老の呼びかけにより、『武神大戦殲術陣』なる武闘大会が始まったようだ!」
     神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)の話によると、アンブレイカブルが死闘を求め、日本各地の海沿いに現れるらしい。
    「その闘いに勝利した者は、強い力を手に入れる事になる! これにより強大なアンブレイカブルが生まれてしまう前に、彼らを各個撃破して欲しい!」
     ただし、闘いに勝利して力を得られるのは、何も彼らだけとは限らないのだ。アンブレイカブルに止めを刺した者は、灼滅者であっても力を得てしまう。
    「結果、その者は闇堕ちしてしまう事になるだろう! この先の話は、闇堕ちの覚悟、もしくは闇堕ちした仲間を何としても救い出そうという覚悟のある者だけ聞いてくれ!」

     今回灼滅者たちに向かって貰うのは、リアス海岸の一角だ。
    「そこに、まるで天然のリングに似た、平坦な天辺を断崖絶壁に囲まれた無人島がある!」
     海を渡り、崖を登れば、そこに胴付長靴に釣竿という男が待ち構えているはずだ。男は釣糸をウロボロスブレイドのように操って相手の動きを封じ、自らの拳でケリをつける戦い方に長けている。
    「島は戦闘するには十分に広く、敵も逃げるつもりはないようだが、お前たちは逃げようと思えば逃げられるはずだ!」
     だがそれは、闇堕ちした仲間を放置すれば、容易に逃げられてしまうという事でもある。
    「もっとも、危機に陥って闇堕ちする普段とは違い、今回は闇堕ち者が出た時、他の仲間がそれを止める事も不可能ではない!」
     連戦にはなるが、上手くやれば闇堕ち者をその場で救出し、共に灼滅者として帰還する事もできるのだ。
    「任務の最大の目的はアンブレイカブルの撃破だが、必ず全員で戻って来てくれ!」


    参加者
    花藤・焔(魔斬刃姫・d01510)
    藤波・純(喧嘩買取人・d02035)
    香坂・天音(煉獄皇女・d07831)
    百舟・煉火(キープロミネンス・d08468)
    エルシャ・プルート(スケッチブックと百面相・d11544)
    小鳥遊・亜樹(幼き魔女・d11768)
    田抜・紗織(田抜道場の剣術小町・d22918)
    戌日・あいん(中学生ストリートファイター・d23343)

    ■リプレイ

    ●死闘の舞台を望みて
    (「絶対に、みんなで帰ってくるからね」)
     晴れ渡った空の下、小さな拳を握り、小鳥遊・亜樹(幼き魔女・d11768)はあどけない顔つきをせいいっぱい引き締めた。
     本土の崖の上から見えたその男は、背をこちらに向けて釣糸を垂らしていた。けれど、まだ離れた場所にいながらも、亜樹にはその姿に微塵の隙もない事がわかったのだ。
    (「がんばらなくちゃ」)
     亜樹が緊張した一歩を踏み出すのと同時に、その隣の土を強く踏みしめる者がいた。
    「不謹慎かもしれないけど、剣を志す者としちゃ血が騒いで仕方ないね」
     田抜・紗織(田抜道場の剣術小町・d22918)。叶うのなら、一対一での勝負に臨みたい。ただ……それが今の彼女の強さでは到底なし得ない事も、今日の目的がただ強敵を倒すだけではない事も十分に理解していた事が、彼女の悔しさの元になっていた。

     灼滅者たちは、崖を降りる。
    「敵を倒すと力を得て闇堕ちする武闘会、ですか。アンブレイカブルも面倒なものを始めましたね」
     岩場を降りきり、磯から敵の待つ島の頂を見上げる花藤・焔(魔斬刃姫・d01510)の独り言を聞きつけて、百舟・煉火(キープロミネンス・d08468)の口元が不敵に歪んだ。
    「だが、この武神大戦殲術陣、勝利は我ら、乱入者が貰う!」
     八人全員で帰る、と煉火は強調した。強敵をがさらに力をつけぬよう倒しつつ、仲間も必ず闇堕ちから救わねばならない。ただでさえ青春が燃える煉火の中で、さらなる熱い炎が滾る!
     海面の高さから見上げると、男の姿は岩の向こうに隠れていた。けれどその気配だけは、一歩近づくごとに強まってゆく。
    (「とりあえず、一つ一つ潰していくしかありませんね」)
     その圧迫感を全身で感じながら、焔はその背に、自ら強い覚悟を背負うのだった。

    ●島に、その釣り人あり
     島の上までやってきた藤波・純(喧嘩買取人・d02035)が見たものは、いまだに同じ姿勢のままで釣糸を垂らし続ける釣り人の姿だった。
    「何か釣れたかい?」
     問う純に、最初、釣り人は答えず。代わりに返ってきたのは、風を切り飛んできた一本の釣針だった。頭ぎりぎりの場所を狙った釣針を、ひょいと首を傾げて躱す純。
    「ロクなもんは釣れてない、って反応だね」
     その口調に好戦的なものを感じ取ったか、初めて釣り人が振り返った。
    「ああ、大したものは釣れないねえ……大漁だけど、釣れたのは単なる灼滅者さ。まあ、肩慣らしついでの暇潰しには、ちょうどいいかもしれないけどね」
     揺らめくように立ち上がり、その引き締まった筋肉でほとんど予備動作もなしに釣竿を振る男。
     どうやら搦め手タイプらしいこの相手は、自分とは相性が悪そうだ、と戌日・あいん(中学生ストリートファイター・d23343)は思っていた。
    (「けど、かんけーねーッス! 私にはこの拳しか、宿敵アンブレイカブルと語らう術なんてないんスから!」)
     飛び出すタイミング、それだけを見計らって、あいんは構えて腰を落とす!
    「じゃあ、始めましょうか」
     香坂・天音(煉獄皇女・d07831)が天に掲げた両腕が、竜の腕を模った篭手に覆い隠された。
    (「今は、闇堕ちなんて気にしない。あたしが考えるのは、ただ敵を倒す事だけでいい」)
     同時に、愛機『ハンマークラヴィア』が飛び出して、空中で釣糸を結い盾とする敵へと突撃を加える。透明な糸と金属質のボディがせめぎ合い、島に不規則な輝きを生む!
    『海を渡り、崖を登ったエルたちと、その屈強な釣り人との戦いは、かくして火蓋を切って落とされたのでした』
     スケッチブックに書かれた文字を本土から見えるように向けて、エルシャ・プルート(スケッチブックと百面相・d11544)はばっちりとカメラ目線をキメたのだった……いやカメラなんてどこにもないけど。

    ●頂上の死闘
    「ひぃぃぃっっっさぁぁぁつっっ!! ファイヤーバーニングダイナマイト蹴り!!」
     纏うオーラを真っ赤に燃やし、純のキックが飛び込んでゆく!
    「喧嘩上等! 藤波・純! 夜露死苦!!」
     しかし、それを竿で受け止めると、弾き返すと同時に糸を絡めるアンブレイカブル。宙返りして着地しようとした足を取られ、純の体が背中から落ちる。
    「いやあ、若い子は元気だねえ」
     釣り人が糸を外して引き戻す動きよりも僅かに早く、今度はあいんの拳が敵の懐に飛び込んだ。それを男は、サイキック強化されたカーボン竿の柄で受ける! 衝撃は殺した。けれど闘気が生み出した電流だけは、竿を通じて釣り人を灼く!
     それでもゴムの胴長を履いた男には、それもかすり傷にしかなっていない。
    「けれど時には、じっくりと機を待つのも大切じゃないかなあ?」
     片手を竿から手放しての拳。それはあいんを突き飛ばして割り込んだハンマークラヴィアの装甲を、易々と抉り取っていた。
     が、そこから拳を引き抜く間も与えずに、天音の霊力が敵を縛める! 天音へと意識を向けた敵の背後から、焔の『ヴェイル・アーヴェント』が振るわれる!
    「その動き、止めます」
     避けるには変幻すぎ、受け止めるには危険すぎる回転刃が、易々と男の左足首を切り裂いてゆく。皮膚を裂き、強靭な筋肉すらも削り取り!
     幾つもの僅かな誤差が積み上がり、釣り人の動きを制限する。その先にあったのは、紗織の姿。
    「田抜一刀流、田抜紗織、推して参る!」
     もっともその手には、刀はない。右手は切り裂きに来る釣糸を掴み、左手は懐剣を取り出すと真っ直ぐに突く! 軽いが、正確に腱を狙った一撃を!
     その陰から、亜樹の小さな体がバベルブレイカーを繰り出した。捻りを加えた杭が飛び出し、少年の体重からは想像もできない衝撃が釣り人を襲う。
    「これは参ったね」
     釣り人が肩を竦める。
    「相手の動きを封じてからとどめを刺す。おじさんの得意な戦い方を真似された気分だ」
    「攻撃を当てる、大火力で倒す。あたし達だって、それだけが全てじゃないわ」
     天音の宣言に頷きながら朗らかに笑う釣り人の腕は、幾度もの攻撃を受けながらも止まらない。ただし、振り回される釣糸は、純が、天音が、そして煉火が順に敢えて我が身に絡め取らせる事で、一人だけに狙いを定められずにいる。
    「これがボク達の力だ」
     後へ向かって飛んでゆこうとする釣糸を腕に巻きつけ、煉火は拳を握り力を込めた。もしも糸の力に耐えきれなければ腕を切り刻まれるという恐怖を、自らに課したヒーローという仮面の下に封じ込め!
    『回復はエルに任せて!』
     エルシャのフリップがめくられると同時に、その裏から暖かな光の輪が飛び出した。それは煉火の腕と糸の間に自らを捻じ込んでゆき、鋭い力を和らげる。これ以上は無意味と判断した釣り人が、いったん糸を巻き上げた。その胸元へ、煉火の反撃のビーム!
    「切り裂きます」
     焔が、さらに踏み込んだ。釣竿を支える腕に赤筋を作る。さらにあいんの一直線の拳が、争いを失くす事こそが真の武との信条を乗せて、男の顎を打つ!
    「人は、強くなければ生きていけないッス! けど、優しくなければ生きている資格さえないッス!」

    ●力、そして覚悟とは
     気付くとあいんは、頭から岩肌に叩きつけられていた。真っ直ぐすぎる勢いを、縦の回転へと転化され。
    「その拳にその言葉。実に若者らしい、いい自己矛盾だねえ」
     楽しげに見下ろす男。攻撃が止んだ瞬間を見て、今度は亜樹が、懐に潜り込んだ。ほとばしる魔力を、拳に纏い。
     けれどそれも、男に容易に弾き返される。
    「ボクは、小さいのに感心だね」
     一見は優しく見える、男の垂れた目の奥に、炎のようなものが燃え上がった。お遊びはここまでだ……まるで、そんな台詞を浮かび上がらせるかのように。
     狙い澄ました、一撃離脱の紗織の斬撃。男にまた一つ、傷が増える。だが男は気にする様子もなく、釣竿を振って守りを固めた。
    「糸を振り回せば凌げる攻撃ばかりだと思わないで欲しいね!」
     駆け込む純。力ずくで糸の内側に入り込むと、男の体を吊り上げる!
    「日和山颪っ!!」
     投げ飛ばされた釣り人は釣竿を大地に突き立てて、それを軸に衝撃を逃がす! ……だがこうなる事も、純の想定の範囲内だ。
    「まさか、こんなアクティブな包囲方法があるとはねえ」
     灼滅者たちの中央に放り出された男は、純の投げ技の真の狙いに気付くと頭を掻いた。
    「……教えてあげる、灼滅者の戦い方ってものをね」
     天音はハンマークラヴィアをけしかける。男にその装甲を砕かせている間に、焔の剣が男を襲う!
     ゆらりとした動きでそれを避ける男。けれどもそこへと、天音の影! それは速やかに大地を這い、男の体に纏わりつく!
     胴長靴はあちこちが裂け、赤くなった肌が見えてはいるが、それでも男の動きは健在だった。とはいえ流石に、次第に多勢に無勢という言葉が見えてくる頃合だ。
    「そろそろ一人くらい、減らしたいところなんだけどねえ」
     溜め息をつき、エルシャの『回復はエルに任せて!』の文字を一瞥する釣り人の肩口に、ヴェイル・アーヴェントが深々と食い込んでいた。焔が剣を抜こうとした瞬間、盛り上がった筋肉がそれを挟んで、男の足で闘気が爆ぜる!
    (「危ない!」)
     警告をスケッチブックに書く暇もなく、思わずエルシャがぎゅっと目を瞑る。
     スパークを纏った足首が、焔の顎を見事に捉えた。天音が咄嗟にカバーに入り、エルシャが矢に渾身の癒しの力を宿してもなお立つのがやっとの、不運な一撃。
     それを受けてもなお退かぬ焔の姿に、煉火の魂が燃えた。
    (「戦いに際して、命と魂を極限まで削って厭わない。ボクは今、そんな人たちと共に戦っているんだ!」)
     我もその覚悟に応えんと、煉火の剣にサイキックエナジーが集まってゆく!
    「そこだっ!」
     閃きが、周囲の糸ごと男を切り裂いた!
     釣糸の残りはもう長くなく、男も肩で息をする。彼に引導を渡すにはあと一押しという事が、誰の目にも明らかになっていた。
     ……けれど。
    「どうしたんだいボク? 今ならボクの勝ちじゃないか。止めを刺さないっていう事は、止めを刺して欲しいって事なのかな?」
     亜樹は武器を構えたまま、動かない。
    「……それなら、おじさんの方から行かせて貰うよ!」
     釣り人が岩を蹴り、その拳を亜樹に叩きつける!
    『もうちょっとだけ。頑張って!』
     亜樹の背を支えるように、エルシャから再び癒しの矢が放たれる。その後押しを受けて歯を食いしばる亜樹の頭上に、釣り人は大きくその腕を振り上げる!
    「いけないなあ、覚悟もなしで戦いに臨もうだなん……」
     言いかけたところで、男の喉から、血と空気が漏れた。
     紗織の懐刀が、血に塗れて光っていた。

    ●流れ込む闇
     倒れる男から唾棄すべき力が流れ込むと同時に、紗織は、到底許容し難い何かが自らの中で目覚める様子を感じていた。
    「後は、ボク達に任せろ。八人で帰るという誓い、何としてでも成し遂げてみせる!」
     闇に身を委ねる仲間に煉火ができるのは、何としてもそれを救うという誓いのみ。意志の力では闇に抗いきれず、意識を埋没させてゆく紗織へと、煉火は迷わずその剣を振るう!
     紗織……いや、今やその肉体を乗っ取った淫魔は、剣が届く直前で軽やかに宙返りをしてみせた。刃が断ち切ったのは、空中を舞った長い髪のみ。
    「ラブリーキュートな化け狸、たぬたんアイドル☆さおたんです♪」
     自らを取り囲むかつての仲間たちへと、狸の耳と尻尾を生やした淫魔はあざとくウィンクした。頬についた返り血を、淫蕩な微笑を浮かべて舐めながら。
     その決めポーズを最後まで待つ事なく、亜樹は手にした杖を振り上げる!
    「ひとりでもかけちゃだめなんだ。一緒に帰ろうよ!」
     必死の呼びかけを弄ぶようにひるがえる懐刀。亜樹はそれを辛うじて避けつつ、反撃の魔力を叩き込む!
    「みんなで一緒に帰りましょう。だからダークネスに負けないで、田抜さん!」
     焔の影が、淫魔を覆う。その中で反響する、田抜、たぬき、狸……淫魔にとっては何の変哲もない単語が、眠りかけた紗織の意識を揺り動かす。
    (「狸って言うな……」)
     畳み掛けるように、天音の叱咤。
    「このまま闇に身を委ねるようなら、貴女の敗北になるわ。ダークネスの思い通りになるなんて、面白くないじゃない?」
     影を破り出た淫魔へと、今度は天音の影が被さる。そこから再び出てきた時には、目の前にエルシャのスケッチブック。
    『おうちに帰るまでが依頼です。絶対、連れて帰るもん』
    (「だから狸じゃない……!」)
     可愛らしい狸のイラストつきの文字ごとエルシャを斬り裂こうとするが、届かない! 逆に幾本もの魔法の矢を浴びて、淫魔の表情は不満と愉悦に歪む。
    「うふふ、きる斬るKILL……♪」
     振るわれる刃を拳で払い迫る純を、淫魔はひらりと躱してみせた……けれど。
    「この戦いが終わったら、一緒に旨い物を食べに行くと約束したじゃないか! そう……たぬきうどんとか!」
    (「狸って言うなって……!」)
     純の一喝を受けた時、淫魔の肩が、ぴくりと震えた。その理由は、淫魔自身にはわかるはずもなく。
    「今ッス! 我が身を捨てても闇を討たんとする田抜センパイの武士道、この私が思い出させて見せるッスから!!」
     あいんのバベルブレイカーが、再び動きに精細さを取り戻した狸女の爪と交錯する!
    「だから……」
     膝から崩れ落ちたのは、淫魔の方だった。
    「だから……狸って言うなーーー!!!」
     空の向こうまで聞こえるほどの大声で叫んだ時には、彼女にはもう、狸の耳と尻尾は残ってはいなかった。

    ●新しい光とともに
    「よりにもよって、なんで狸……」
     全身から死にたいオーラを醸し出して凹みまくる紗織の代わりに、エルシャが『そっとしておいて下さい』のフリップを掲げた。また、謎のカメラ目線である。
    (「狸がどうのって話をしたのは本人だし……まあ、仕方ないわよね」)
     今は、天音にできる事など何もない。一度、髪を掻き揚げると、彼女は黙って踵を返す。
    「こういう時は、落ち着くまで待った方がいいものですしね」
     続いて焔も、崖の縁まで足を進めた。一度足を止めて振り返れば、スケッチブックに『もう少しかかりそうかも?』の文字が見える。
     天音と焔を見て、紗織を見て、もう一度二人を見て、慌てて亜樹が追いかけた。
    「待ってよう……ほら、みんなも早くしないと置いてかれるよ!」

     野生味のある笑みを浮かべ、あんなのは事故だから旨い飯食って忘れろと紗織を促す純に続き、煉火も崖を降り始める。
    「お陰で無事、揃って帰れるんだ」
     信頼に応え、仲間を闇から救えた事は、まだ必死に戦うしかできない煉火にとって、一つの自信になっていた。
     その後姿を眩しそうに眺めてから、あいんも後を追う。
    「まあ……あれもみんなの優しさだったんじゃないスかね?」
     それだけを呟くと、あいんは軽やかな気分で浜辺の砂利の上に飛び降りた。

    作者:るう 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年5月1日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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