人類マグロ好き好き化計画っ!

     土御門・璃理(真剣狩る☆土星♪・d01097)は、こんな噂を耳にした。
     『魚の王道マグロ怪人が現れた』と……。
     マグロ怪人はカジキ戦闘員を引き連れ、手当たり次第に襲って、上質なマグロを食わせて虜にしているようである。
     そのため、マグロ怪人に襲われた一般人の大半が、マグロなしでは生きられない体になっており、まるで中毒患者の如く『マ、マグロが喰いたい』と呟き、街を彷徨っているようだ。
     こうなるとマグロ以外のものは受け付けなくなり、『とにかく、マグロが喰いたい。それ以外は何も食べたくない』という気持ちになってしまうらしく、最悪の場合は餓死してしまうようである。
     そう思ってしまうくらいマグロ怪人が振舞うマグロは美味しく、頬っぺたが落ちそうなほど美味いという言葉が相応しいほどの代物。
     それを食べさせるためなら手段を選ばず、カジキ戦闘員達を使って両手足を押さえ、例え相手がどんなに嫌がっても、マグロを食べさせてしまうようである。
     マグロ怪人自体はそれほど強くはないが、『コイツを倒してしまったら、あのマグロが食べられなくなってしまうかも』という気持ちが脳裏を過るため、色々な意味で注意が必要だろう。


    参加者
    八嶋・源一郎(颶風扇・d03269)
    黒木・摩那(昏黒の悪夢・d04566)
    赤星・緋色(朱に交わる赤・d05996)
    保戸島・まぐろ(無敵艦隊・d06091)
    宮守・優子(猫を被る猫・d14114)
    富山・良太(ほんのーじのへん・d18057)
    朝霧・瑠理香(黄昏の殲滅鍛冶師・d24668)
    若松・拓哉(英雄を目指した骸・d25455)

    ■リプレイ

    ●マグロ天国
    「鴨ネギならぬ……、まな板に自分からくるマグロか。一度で二度おいしいとはこの事かね」
     朝霧・瑠理香(黄昏の殲滅鍛冶師・d24668)は仲間達と共に、マグロ怪人が確認された地域に向かっていた。
     マグロ怪人は日本国民をマグロ好きにさせるべく、あの手この手を使って虜にしているようである。
    「美味しいマグロを振舞うマグロ怪人……いいんじゃない? 頬っぺたが落ちるくらいに美味しいとかいう話だし。別に無理矢理食べさせなくても、進んで食べに行きますとも!」
     黒木・摩那(昏黒の悪夢・d04566)が、楽しそうに鼻歌を歌う。
     マグロ怪人はマグロを美味しく食べさせる事に命を懸けており、それを食べた一般人がマグロの虜になっており、中毒状態になっている者までいるようだ。
    「今回の見所は何と言っても、保戸島先輩と怪人さんの料理対決っすね!」
     宮守・優子(猫を被る猫・d14114)が、瞳をランランと輝かせる。
     しかも、マグロを食べ放題!
     これは他の予定をキャンセルしても、食べに行かなければ嘘だろう。
    「マグロと言えば、マグロ丼よね。ご飯との組み合わせが最高です。でも、マグロだけしか食べられなくなるというのは、困るわね。食費がバカにならないじゃないの。やっぱり、退治しなきゃいけないのかな……」
     摩那が残念そうにした。
     確かに、食費は掛かるが、マグロが食べ放題なのは、魅力的である。
    「ふ、ふふふ、マグロ料理を振る舞って迷惑をかけてるなんて! 私に対する挑戦ね!! 私はマグロの町、津久見市保戸島出身。マグロ怪人をぎゃふんと言わせるには、マグロ料理で対抗するしかないわね! マグロも日本近海モノのクロマグロを用意したわ! 拓哉、解体を手伝ってね」
     保戸島・まぐろ(無敵艦隊・d06091)ガ、気合を入れた。
     目には目を。歯には歯を。マグロにはマグロである。
    「マグロ怪人VSマグロヒーローの戦い……! 何という好カード。このような戦いを間近で見る事が出来ようとは思わなんだ。何より絶品のマグロ料理をタダで味わう事が出来る。……うむ。来れて良かった。一体、どのような料理が登場するのか、今から楽しみだのう」
     八嶋・源一郎(颶風扇・d03269)が、期待に胸を膨らませた。
     ふたりがどんなマグロ料理を作るのか分からないが、そのぶん色々な意味で楽しみである。
    「マグロのご当地ヒーローさんと怪人の料理対決かぁ。何だか楽しみ。きっとどっちも美味しいと思うし!」
     赤星・緋色(朱に交わる赤・d05996)が、ニコリと笑う。
     こんなチャンス、めったにない。
     おそらく、もう二度と……。
     そういった意味でも、これは期待大である!
    「ん~、オッサンはマグロの解体ショーとでも洒落込むとするかねぇ?」
     若松・拓哉(英雄を目指した骸・d25455)が、頬を掻く。
     このまま、まぐろに任せておくのもアリだが、せっかく一緒にいるのだから、何かやっておきたい。出来るだけの事を……。
    「ご当地怪人という事ですが、何処のご当地か分からないのが不安ですね。もしかして、加工マグロというオチなのでは……」
     富山・良太(ほんのーじのへん・d18057)が、気まずい様子で汗を流す。
     この時点では嫌な予感しかしない。
     だが、マグロ怪人が振舞っているのは、自ら仕入れたマグロのみ。
     それをどういったルートで入手しているのか分からないが、儲け度外視で一般人に提供している事は間違いなかった。
     そして、良太達はとある公園で一般人相手にマグロを振る舞うマグロ怪人に遭遇した。

    ●とある公園
    「俺と勝負……だと?」
     マグロ怪人に遭遇したまぐろは、さっそく料理勝負を申し込んだ。
     まわりではカジキ戦闘員達が、休む間もなくマグロの刺身を運んでいる。
     だが、一般人達はすっかりマグロの虜になっているためか、いくら食べても席を立たず、近くの駅まで行列が続いていた。
    「……断るッ!」
     しばらく思案した後、マグロ怪人はキッパリと断った。
    「そもそも、マグロを戦いの道具にするのはイカン。今までの怪人ならば、食べ物を粗末に扱っていたかもしれない。しかし、俺は違う。みんなにマグロを食べて欲しいだけなんだ。それにマグロを愛するのであれば、いわば同志! 共にマグロを普及させるため、全力を尽くそうではないか!」
     それがマグロ怪人の答えであった。
     もしも、まぐろがマグロを貶めるために行動していたのであれば、迷う事無く勝負を挑んでいただろう。
     だが、そうでないのであれば、戦う理由などひとつもない。
     マグロ怪人にとって、マグロの普及が最優先すべき事なのだから……。
    「それじゃ、ここにいるみんなに美味しいマグロを提供するって事でいいかな?」
     摩那の言葉に、マグロ怪人が力強く頷いた。
    「ああ、それで構わん。ただし、勝負をしないからと言って、間違っても手を抜くなよ。ここにいる者達の舌を欺く事など、誰にも出来ん。不味いと思われれば、そこで終わり。それだけは覚悟しておくんだな」
     そう言ってマグロ怪人が、目の前のマグロを捌き始める。
     とても高価な本マグロを……!
     マグロに人生のすべてを捧げ、金に糸目をつけないマグロ怪人であるからこそ、提供できるシロモノであった。
    「せっかくだから、一緒に捌いてみないか。マグロの奴も、腕にいいヤツに捌かれた方が、喜ぶだろう」
     そんな事を言いつつ、マグロ怪人がまぐろに視線を送る。
     まぐろに迷いはなかった。
     すぐにそれを受け取ると、躊躇う事無く捌き始めた。
    「さあ、始まりました! 皆さん、並んでください。割り込みはダメですよ」
     良太がマイク片手に、大声をあげる。
     途端に野次馬達がワラワラと集まり、行列がさらに長くなった。
    「それじゃ、こっちも気合を入れていくわよ。せっかく良いマグロが手に入った事だしね」
     まぐろが捌いたマグロを使って、テキパキと料理を作り始める。
     まずは『保戸島名物頭料理』、続いて『マグロステーキ』、『源平丼』に『ひゅうが丼』……。
     それを見たマグロ怪人が満足した様子で、マグロを刺身にして皿の上に乗せていく。
    「こりゃ、急がないと捌き切れないね」
     拓哉がまぐろの補佐をしつつ、マグロを切り分ける。
     しかし、ここで気は抜けない。
     自分達が捌いているマグロの値段を考えると、雑に扱う事は出来なかった。
    「おおっと! ここでペースアップ! だが、手は抜かない。味はそのまま、スピードアップ!」
     緋色が興奮気味に大声を上げる。
     あちこちから『美味い!』、『美味しいっ!』と声が上がり、みんなマグロの虜状態。
    「この口の中にするりと入ってくるマグロの切り身。それを引き立てる醤油とのハーモニー。すばらしいわ! ほんと最高!」
     摩那はすっかりマグロの虜になっていた。
     それ以外の事は考える事が出来ないほどに!
    「せっかくだから、わしも一口……。こ、これは……!?」
     マグロの刺身を食べた源一郎の顔色が変わる。
    「何という美味さじゃ! まるで蕩けるような心地良さ。まさか、ここまで美味いマグロが存在していたとは、信じられんのじゃ」
     源一郎があまりの上手さに、マグロの味を絶賛した。
     脳裏に浮かぶのは、大海で泳ぐマグロ達。
     いや、踊っている。
     マグロ達が舌の上で踊っている。
     まるで舌の上がダンスホール。タイやヒラメはいないが、竜宮城テイストの空間が広がっている。
    「これは……、病みつきになるのもわかる気がするな」
     瑠理香が納得した様子で、マグロの刺身を口に運ぶ。
     だが、一度食べたら止まらない、病みつきになる美味さ。
    「そこまで美味しいのなら、食べるしかないっすね!」
     優子がマイライス持参で、ここぞとばかりにマグロを食べ、みるみるうちに腹を膨らませていく。
     それだけでは飽き足らず、タッパーに詰めて持ち帰ろうとしたが、何処からともなく猫達(団体様御一行)が現れ、予想外の攻防戦!
     猫達も久しぶりの御馳走に目の色を変え、優子に猫パンチを繰り出している。
     そうしているうちに、マグロはあっという間に無くなっていき、まわりに集まっていた一般人も、満足した様子で帰って行った。

    ●夕暮れの公園
    「さて……、マグロもすべて振舞い終えた。そろそろ、始めようじゃねえか」
     マグロ怪人が戦闘用に研ぎ澄まされた包丁を構える。
     それを合図にカジキ戦闘員達が『キィキィ』言いながら、お約束とばかりにまわりを囲んだ。
    「満足して自滅するつもりはなさそうですね」
     良太がビハインドの中君と一緒に身構えた。
    「勘違いしないでもらおうか。マグロが血で汚れれば、味が落ちる。客も引く。だったら、みんな帰った後で始末する。その方がいいだろ。マグロのためにはな」
     マグロ怪人が不気味に笑う。持っていた包丁をペロリと舐めて。
    「だったら、もっと頂戴! あれだけじゃ、足らないわ!」
     摩那が不満そうに、マグロ怪人を睨む。
     すっかり、マグロの虜になっているためか、いくら食べても物足りないようだった。
    「安心しろ。お前もカジキ戦闘員になれば、いくらでもマグロが食える! さあ、俺と共に日本を……いや、世界をマグロ色に変えるのだ!」
     マグロ怪人が高笑いを響かせる。
    「やれやれ、ようやく本性を現したか。所詮は怪人というわけか」
     源一郎が残念そうに溜息をつく。
     ほんの一瞬、怪人にしてはマシな部類に思えたが、単なる勘違いだったようである。
    「さてと~、解体ショーの始まり……とね!」
     瑠理香が振り上げた刀に渾身の力を込めて、マグロ怪人に振り下ろす。
     マグロ怪人はその攻撃を受け止めると、カジキ戦闘員達を嗾けた。
    「雑魚がいくら束になったって、私を止める事は出来ないわよっ! 遠慮なく、食らいなさいっ! ギガ・マグロ・ブレイカー!!」
     まぐろが一気に間合いを詰めて、マグロ怪人に必殺の一撃を叩き込む。
     その一撃を食らったマグロ怪人が、『み、見事だ……』と呟き、カジキ戦闘員達を巻き込んで爆散した。
    「……悪いねぇ、これもオッサンの仕事なんだよ」
     拓哉が巨剣を地面に突き立てて笑う。
     戦いは終わった。実に呆気なく。
     元々、マグロ怪人が戦闘向きの身体をしていなかったせいかも知れない。
    「マグロ怪人さん、生まれ変わったら、まっとうな手段で美味しいマグロをみんなに振舞ってね!」
     緋色がなむなむと両手を合わす。
     一応、マグロ怪人なりにまっとうな手段を取っていたのかも知れないが、黒いものが見え隠れしていたのは間違いなかった。
    「それにしても、長く苦しい戦いだったっす……」
     そう言って優子がタッパーを小脇に抱える。
     何とか、にゃんこ御一行様を退ける事は出来たが、おそらくあれば第一陣。
     家に帰るまで、第二、第三のにゃんこ部隊が行く手を阻むかも知れないが、必ずマグロは死守してみせる。
     そんな固い決意を胸に秘め、優子が力強い足取りで歩き出すのであった。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年4月23日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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