煌々と月が輝き、闇夜を照らすその場所に、その獣は現れた。
青白い炎を纏う真っ白な毛の、額に傷を持つ、狼にも見える獣。
じゃり、と砂利を踏み鳴らし、舞い降りた獣は河原の前に立つと鼻を高々と上げ、
オオオオオオォォォォォ……!!
咆哮を上げた。
その声は空を、地を震わせ、この場所に眠る『それ』を呼び起こす。
ォォォォォォ……。
咆哮を上げた獣はしばらくすると地を蹴り、その場から飛び去った。
獣も咆哮も消え、『それ』は現れる。
――助けて。
それは水中から聞こえるかのような低く、暗い、女性の声。
――助けて……苦しい。
――……死にたくない。
女性二人の声が響き、ぬう、と水に濡れた白い生地が水面から現れる。それは徐々に持ち上がり、白無垢姿の若い女性の姿となる。
――呪ってやる。
――殺してやる。
月明かりに照らされた白無垢の娘達は不気味な笑みを浮かべ、じゃらりと鎖の重い音を鳴らすと川から歩み出た。
「スサノオにより、古の畏れが生み出される場所が判明しました……」
資料を手に園川・槙奈(高校生エクスブレイン・dn0053)は集まった灼滅者達を前に立った。
「スサノオはエクスブレインの予知を邪魔する力を持っていますが……因縁を持つ灼滅者が多くなった事で、不完全ながらも介入できるようになったようです……」
これはスサノオと接触し、倒すチャンスが訪れたという事でもある。
スサノオを倒して欲しい。彼女の言葉に集まった灼滅者達が頷くのを目にし、槙奈は説明をはじめた。
場所は人知れぬ森の奥にある河原。
遠い昔、まだ人々が暮らしていた頃、その場所では川の氾濫による被害が多かった。それを竜神様の怒りだと信じた人々は怒りを鎮める為に何人もの娘達を生贄として捧げたという。
白無垢姿で生きたまま川の奥深くへと沈められた娘達。スサノオは彼女達を呼び出そうと現れる。
「スサノオと戦う方法は……二つあります」
資料をめくり、槙奈は説明を続ける。
一つはスサノオが古の畏れを呼び出そうとした直後に襲撃する方法。
この方法を採用する場合、6分以内にスサノオを倒す事ができれば古の畏れは呼び出される事なく消滅するが、倒せなければ古の畏れは呼び出され、配下としてスサノオとの戦闘に加わってくる。
古の畏れを配下とした場合、スサノオは戦いを任せて去っていく可能性もある。
二つ目はスサノオが古の畏れを呼び出し、去ろうとする所を襲撃する方法。
この方法を採用するのなら、ある程度離れた後に襲撃すれば古の畏れが戦闘に加わる事はない。だが、スサノオを倒した後に古の畏れと戦う必要がある。
「時間制限のある短期決戦か、時間制限のない連戦か。……最善の手段を皆さんで選んで下さい」
「……あの、オレも一緒に行ってもいいですか?」
槙奈の説明が聞こえていたのか、廊下からこちらを伺っていた三国・マコト(正義のファイター・dn0160)が恐る恐る声をかけてきた。
味方は多い方がいい。快く了承するとマコトも灼滅者達と説明を聞いた。
スサノオは今まで呼び出した古の畏れと同じ能力を使い、今回呼び出す古の畏れ――白無垢姿のモミジとアオバは互いに集気法に似た回復方法を持ち、水を武器として戦う。
モミジは水を影業のように、アオバは大鎌のように用いて戦う。二人の強さは灼滅者達と同じくらいだ。
「今回は……スサノオを倒せるすチャンス、です」
開いていた資料を閉じ、槙奈は目の前に並ぶ灼滅者達を見渡す。その真摯な眼差しを向けたまま、言葉を続けた。
「厳しい戦いになるかもしれませんが……信じています。……みなさん、よろしくお願いします。
参加者 | |
---|---|
結城・創矢(アカツキの二重奏・d00630) |
二夕月・海月(くらげ娘・d01805) |
日輪・かなめ(第三代 水鏡流巫式継承者・d02441) |
渡橋・縁(かごめかごめ・d04576) |
レイン・ティエラ(氷雪の華・d10887) |
大御神・緋女(紅月鬼・d14039) |
宮守・優子(猫を被る猫・d14114) |
アガタ・トゥイノフ(中毒症状・d24054) |
●
濃紺の空に星々が輝き、月が煌々と照らす夜。
オオオオオオォォォォォ……!!
青白い炎を纏う真っ白な毛の、額に傷を持つ、狼にも見える獣は鼻を高々と上げ、咆哮を上げた。
空を、地を震わせ、この場所に眠る『それ』を呼び起こすその声を灼滅者達は物陰に潜み、耳にする。
「青白い炎を持ったスサノオか……。スサノオと一括りに言っても色々特徴を持ってるんだな」
離れていてもハッキリ見える青白い炎を目にし、レイン・ティエラ(氷雪の華・d10887)は霊犬・ギンを撫で、ぽつりと呟くと、
「連戦か。気を引き締めていかないとな」
二夕月・海月(くらげ娘・d01805)の言葉に仲間達は頷き気を引き締める。
各地で古の畏れを呼び起こすスサノオ。今回が2度目の対峙となるレインが言うように、その姿は多種多様だ。今目にするその姿もやはり、初めて対峙した時とは違う姿をしている。
今回、灼滅者達は青い炎を纏うスサノオ、生贄として生きたまま川に沈められた娘達と戦う事になる。
ビリビリと体に響くその声に、緊張の為かぎゅっと武器を握る三国・マコト(正義のファイター・dn0160)の足元でにゃん、と黒い猫耳パーカーを着た灰色の猫が鳴く。猫変身で姿を変えた宮守・優子(猫を被る猫・d14114)だ。
ォォォォォォ……
「大丈夫、狼なんか怖くない」
徐々に薄れていく声を耳にアガタ・トゥイノフ(中毒症状・d24054)は自分を鼓舞する為、口にする。
生み出した古の畏れの能力を持つスサノオは河原の砂利を踏み鳴らし、向きを変えた。移動するつもりだろう。逃す訳にはいかない。
「――神芝居を、始めます」
「それじゃあ、後はキミに任せるね……」
解除コードを口にし、渡橋・縁(かごめかごめ・d04576)と結城・創矢(アカツキの二重奏・d00630)は姿を変えると立ち去ろうとする姿を追う。
「血に宿りし力よ!」
レインもまた、解除コードと共に姿を変え、ギンと共に駆けると生み出した古の畏れが気付かぬ位置まで距離を置き、囲む。
「やっと追いつきましたよ、スサノオさん! いざ、尋常に勝負なのです!」
仁王立ちでビシっと指差す日輪・かなめ(第三代 水鏡流巫式継承者・d02441)を前に、青白い炎を纏う獣は唸り声を上げた。ぐるりと首を回し、武器を手に囲む者達を威嚇するように低く、唸る。
「幾度となく悲しき者達を蘇らせ畏れとした事、許しはせぬ。もう逃しはせぬぞ、この紅月鬼の緋女が灼き尽くしてくれよう」
グオオオオオォォォォォ!!
大御神・緋女(紅月鬼・d14039)の言葉に反応したのか青白き炎を纏う、真っ白な毛の、額に傷を持つ、狼にも見える獣――いや、スサノオは咆哮を上げた。
自分に殺意を向ける者達へ、戦いの雄叫びを。
●
オオオオオオオォォォォォ!!
青白い炎をなびかせ、スサノオは吼え、地を蹴る。その動きは刃を生み、灼滅者達へと襲い掛かった。
「ギン!」
間に合わない。レインの声に反応し、ギンは駆け創矢に向いた一撃を防ぐと横をかなめが駆けた。ぐっと拳を握りしめ、構える。
「必殺! 徹甲爆砕拳ッ……なのですッ!」
音を立て、その姿を捉えるも空を切る。素早さに驚くもレインはサウンドシャッターを展開し、ギンに回復をさせるとコートをなびかせ創矢は腕を振り上げた。
「いくっすよ、スサノオ!」
ひらりとかわす青白い炎めがけ盾を手に重い一撃を叩きつけ、ガクも弾丸をばら撒く。攻撃を受け、ぐるう、と低く唸るがそれも一瞬だ。背後に回り込み、海月が切りつけるもその表情は余裕さえ伺える。
(「大丈夫、狼なんか怖くない」)
視界の先にある青白い炎を纏う狼――スサノオに視線を向けたまま、アガタは内心で呟きメスを手に夜霧を展開させ、荒神切「暁紅」を構えた緋女が振り上げると、仲間を補助すべくマコトはシールドリングを展開させた。
「余裕だな」
灼滅者達の攻撃を受け、毛並に紅が滲むが痛みをものともしない。その姿にレインはぽつりと言うと、
「これからなのです」
「そうっすよ、これからっす」
構えたまま、にこりとかなめと優子も言葉を交わした。そう、まだ最初の一手だ。
オオオオオォォォ!!
咆哮を上げ、生み出す刃を腕で防いだ創矢はずれたサングラスを押さえ、
「この機を逃すつもりはない。スサノオ、必ず、貴様を――」
サングラスの奥から見える青白い炎を睨み、マテリアルロッドを構えた。
古の畏れを呼び起こし、力を振るうスサノオ。それは呼び起した古の畏れのそれである。
振るう一撃は忌み子として命を落とした双子のものであり、善意の結果に絶望し命を絶った若武者のものであり、悲恋に嘆き絶望と恨みを抱え身を投げた娘と彼女が描く男のものだ。
重い一撃を受け、それでもなお灼滅者達は攻撃の手を止める事はなかった。
「あーたたたたぁ! 絶招『驟雨』なのですッ!!」
隙を突き、かなめは連撃を叩き込むが表情は変わらない。だが、諦める訳にはいかない。仲間達は畳みかけるように攻撃を続けた。
「必ずここで倒してみせる」
私は負けるのが嫌いだ。そう心に海月がクルセイドソードを薙ぐと、
(「怖くない」)
口に出さず、アガタも心の中で己を鼓舞するために呟き得物を振るった。
「大丈夫か?」
「大丈夫、ありがとう」
目の前に飛び込む刃を盾で防いだレインに海月は例を言う。猫のオーラを纏う優子もまた薙ぐ一撃を防ぐが、
「手ごわいっすね」
思わず口にしてしまう。
傷付いた仲間達を緋女とマコトが癒し、サポートする中、灼滅者達は戦う。だが、スサノオは手強くどれほどダメージを与えても致命傷に至らない。
ウウゥオオオオオオォォォォォ!!!
スサノオは吼える。灼滅者達の体を震わすほどの咆哮を。
鋭い攻撃を防ぎ、武器を手に仲間達は戦う。自然とメスを握る手に力が入る中、アガタは呟く。
「殲灼者は恐れない」
アガタの言葉に仲間達は反応した。
「そうじゃ、われらは恐れぬ」
緋女は荒神切「暁紅」を構え、
「煌めけ暁紅、彼奴めを白い炎をその紅で染めるのじゃ」
ぶん、と振り下ろすと前に何人もの仲間達が割って入って来る。
「助太刀に来たぜ!」
葉と錠をはじめ、沢山の仲間達が加勢に来てくれたのだ。
「トウジロウ、優子さん!」
琉嘉が回復を指示すると初めて対峙した縁があるという治胡もフォニックスドライブを展開させ、銘子はスサノオを狙い、一撃を繰り出す。
赤く染まる髪を揺らし、縁もロッドを手にフォースブレイクを放つとタイミングを逃したのか、その一撃はスサノオに直撃し、続き静佳のジャッジメントレイを受け、唸るような悲鳴を上げる。
攻撃を受け、その様子に変化を見受けることができた。だらだらと血を流すスサノオの足取りがやや重く、傷を負ったからか引きずるようにも見えたのだ。
「もう少しだ、やっちまおうぜレイン!」
「ああ、これで最後だ!!」
矜人に呼応するように雪の華のオーラを散らしてレインは猛る狼のように地を蹴り、拳を叩きつけると創矢も渾身の一撃を振るった。
加勢も加わり、一気にダメージを受けたスサノオは回復しようにも間に合わない。体中を刻まれ、ぼたぼたと血を流す。
オオ……オ……!
体を纏う青白い炎が薄まり、消えていく。
炎が消え、スサノオの声も消え――ずうん、と自らが流した血の池に倒れた。
「さあ、次は古の畏れなのです!」
「そうだな」
スサノオの姿はざあっと崩れ、血だまりに溶けていく。闘いを終え、これから続く戦いに向けてかなめはにかっと笑うと海月も頷き消え行くスサノオを見つめると仲間たちもその姿が消えてなくなるまで見つめ続けた。
●
スサノオとの戦いを終え、七音から栄養ドリンクの差し入れをもらい、しばらくの休憩を挟んで灼滅者達は心霊手術を行った。
スサノオが消えた場所に待機するというセトラスフィーノを残し、古の畏れが呼び起こされた場所へと戻る。
月夜に照らされ、川のせせらぎを聞きながら歩くと、
「ここじゃな」
スサノオが古の畏れを呼び起こし緋女はその場所を指差した。さらさらと優しく川が流れるその場所を。
「次は古の畏れっすね」
「気を引き締めていかないとな」
優子と海月の言葉に仲間達は頷き、気を引き締めた。
まだ姿を現してはいない。悟と想希、マギと風、雷からの話を聞き、砂利を踏み鳴らし川岸まで進むと、
――死にたくない。
――呪ってやる。
ごぼごぼと水底からこぼれるような声が響くと水面から白い綿帽子がぬうっと現れ、持ち上がりると白無垢姿の娘が二人現れる。
「アオバとモミジじゃな」
水面に立つ二人を目に緋女はその名を口にした。
アオバとモミジ――望まぬ理由で命を落とし、スサノオによって呼び起された悲しき娘達。
灼滅者達の気配に気付き、じゃらりと鎖を鳴らしながらこちらへと向くと歩を進めてくる。
「死にたくない、死にたくない……何故、私なの」
鎖を鳴らし、川に沈む事なく歩く娘。水面がぐうっと持ち上がると巨大な鎌になり、
「呪ってやる、呪ってやる……選んだ者を」
もう一人の足元にまとわりついた。
纏わりつかせる娘はモミジ、大鎌を持つのはアオバだろう。綿帽子に隠れ顔を伺う事はできないが、青白い顔に紅を引いた口がにい、と歪むのをレインは見逃さなかった。
「……来る!」
「「殺してやる!!」」
鋭く、短い声に仲間達は反応した。ざぶん、と音を立て水とは到底思えない鋭さで灼滅者に向く攻撃をレインと優子、サーヴァントが防いだ。
「ありがとうなのです!」
「これくらいお茶の子さいさいっす!」
WOKシールドを手にレインとギンが動く中、にこりと返す優子の言葉に応えるようにかなめは構え、拳をモミジに叩き込む。壁のように広がる水でそれを防ごうとするが間に合わない。痛みにモミジは小さな呻きを上げると創矢、ガクと共に優子が続く。
「嫌……来ないで……」
「なに?!」
か細い声。ばしゃん、と音を立て水が広がり回り込む海月の攻撃を弾くとアガタ、縁の攻撃を立て続けに受けた。
「厄介な奴じゃの」
攻撃を受け、弾いた水はざばあっと音を立て足元に落ちるが、まるで生き物のように蠢いた。その動きを目に緋女は呟きマコトと共に仲間達が受けた傷を癒すと、
「レイン先輩、お怪我はございませんか?」
「大丈夫? すぐ回復するからね!」
イブや朔和、銀二も回復に加わった。
「寒い……底は冷たくて、暗いわ……」
「嫌、嫌よ……死にたくない」
灼滅者達の攻撃を受け、傷を癒すモミジは悲鳴に近い叫びを上げ、アオバはぶん、と音を立て水鎌を薙いだ。目前に迫る刃を腕で避け、ざくりと裂かれる一撃に海月の顔が一瞬、苦痛に歪む。何故だろう。スサノオに受けた攻撃よりも何だか痛い気がする。
その間に攻撃を受け続け、アガタの殲術執刀法を食らい、その拍子に綿帽子が飛んだ。
顔を覆う綿帽子を飛ばされ、露わになるのは灼滅者達と同じ年頃の、あどけない顔。
「痛い……助けて……!」
額から血を流し、モミジは声を絞り出す。
その姿に灼滅者達の胸にちくりと痛むものがあったとしても、鎮めなければならない。
神職の家に暮らす者として役目のように感じ、縁は花嫁たちに畏敬の念を、同時に深い悲しみを鎮めるべく黒茨の様な影を放った。
「仲間達を傷付ける事は許さぬぞ!」
深紅に染まった刀身を持つ剛剣を構え、緋女は薙ぐ。刃はざくりと胴を裂き、純白の着物が紅に染まった。
「助けて……」
悲痛な声を上げるモミジの前に采と智が飛び出し、
「ほな、さっさと片付けましょか」
「オーケー、援護するよ。しっかりしてよね!」
一撃を加えると織兎も後に続いた。
加勢に来た仲間たちの攻撃もあり、モミジの体力はあっという間に削れていく。白無垢は紅に染まり、真っ赤になった。
声を上げる事もできず、ふらつくモミジ。立つのもやっとというその姿の前に海月は飛び込んだ。
「すまないがもう一度眠ってくれ」
クルセイドソードを手に一閃。海月が薙ぐ攻撃にモミジは倒れる。血を流し、よろめく体は実体を失い水と化し、ばしゃんと川に落ちた。
「後はお前だけだな、アオバ」
オーラを纏い、創矢は一人となったアオバへ冷徹な言葉を投げる。だが、彼女は一人となっても抗い、戦う事を止めなかった。
全てを凍らせ無に帰す力を纏い、激しい連撃を叩き込むとギンも続くと、マテリアルロッドを手に創矢はフォースブレイクを叩き込んだ。
「頑張ってくださいね。どうか、ご無事で」
日和が同じクラブの海月が受けたダメージを癒し、空、咲結もまた回復を行う。
灼滅者達と加勢に来た仲間達との攻撃を受け、アオバ攻撃する事もできず回復しようとするが圧倒的不利な状況は覆る事はない。
「痛い……助けて……」
白無垢は真っ赤に染まり、袖口からはぼたぼたと血が零れ落ちる。アオバはか細い声を発し、ふらつく体で攻撃を避けようとするがそれすらままならない。
ガクの機銃掃射をまともに受け、がくりと膝をつく。
「――おやすみなさいませ」
縁の言葉は娘に届いたか。攻撃を受け、ふらつくところへメスを手にしたアガタの一撃が致命傷となる。
よろよろとアオバは後ずさるとモミジ同様に水と化し、川と一つになった。
●
戦いも終わり、静けさが戻る場所に灼滅者達は留まっていた。
「スサノオを追う集団か」
「いないっすねー」
ぽつりと口にする海月の隣で優子は耳や鼻をぴくぴくさせ、気配がないか伺っているが、今のところそれを感じる事はできない。
そう、灼滅者達はスサノオと対する者達との接触を計る為に留まっているのだ。
もし会う事が出来るのなら交わしたい言葉がある。灼滅者達はそれぞれがその思いを持ち、留まり、待っている。
月明かりの下、スサノオと古の畏れを倒した場所に分かれ、待っているが……。
「気配を全く感じられないのです」
かなめは言いながら周囲を見渡す。きょろきょろとマコトも伺うものの、それらしき人影どころか気配さえも感じられないでいる。
空を見上げると箒に乗っている銘子の姿が見える。上空から探索をしているのだが、やはりそれらしき人物は見当たらないようだ。同じく箒に乗るエレナから八雲も連絡を受けたが結果は同だ。
静かに、ただ静かに時間だけが流れ、灼滅者達も待ち続けた。
「……現れないかもしれないね」
周囲を散策しつつ待っているが、かれこれ1時間は経つ。風が優しくそよぎ、川のせせらぎを聞くだけで、それ以外の音を聞く事はなかった。
創矢の言葉通り、これ以上待っても現れる可能性は薄いだろう。
「現れないとなると、何かあったのかもしれないな」
レインが言うようにスサノオの元に辿り着けない状況にあるのかもしれない。
淼や流人、菊乃、優歌など加勢してくれた沢山の仲間達もまた、それらしき者達がいないか探していたが芳しくない結果に終わったようだ。
スサノオを追う者達に何があったのか。それを知る術はない。打ち合わせた通りの時間が経過した以上はこの場から撤退を決める。
「会えないのは残念じゃが、そのうち会えると思うのじゃ」
「私も、そう、思い、ます」
緋女と縁の言葉にアガタも無言で頷いた。
古の畏れを呼び出すスサノオとは、そのスサノオを追う者達とは一体何なのか。
いずれどこかで会う事もあるだろう。思いを胸に秘め、灼滅者達は去って行った。
作者:カンナミユ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年5月10日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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