鬼を呼ぶ白き炎狼

    作者:六堂ぱるな

     
     とある街、とある路地。

     オオカミによく似た大きな獣が、物思いにふけるように頭を垂れる。
     両耳の先と尾の先だけが墨に染まったような、それ以外は純白の姿。

     獣が去らんとする背後、街灯の灯りに照らされ、それは浮かびあがる。
     薄衣を羽織った姿は少しばかり大柄な人のよう。しかし顔は虎縞の毛に覆われ、犬とも猫ともつかない。
     路地に取り残された人のものらしき一本の腕を振り返り、それはもの憂げに漂った。
     
    ●妖を黄泉返らせる妖
     スサノオ捕捉の報を受けた灼滅者が教室へ行くと、既に埜楼・玄乃(中学生エクスブレイン・dn0167)が待機していた。
    「ようやくスサノオと直接戦える機を掴んだ。方法は二つある」
     一つは、スサノオが古の畏れを呼び出そうとした直後。
     6分以内にスサノオを撃破できれば、古の畏れは呼び出される前に消滅する。6分以内に撃破出来なかった場合、古の畏れがスサノオに加勢するのが問題だ。短期決戦型と言える。
     二つ目はスサノオが古の畏れを呼び出して立ち去るところ。
     スサノオが古の畏れから離れてから襲撃すれば、古の畏れの加勢はないが、スサノオ・古の畏れと二連戦となり、それなりの実力や持続力が要る。
    「短期決戦、長期戦。どちらを選ぶかの判断は任せる」
     
     スサノオは狼の姿をしたダークネスであり、攻撃方法は3つ。
     自身の影から、影でできた狼の群れを呼び出して敵を攻撃させる『千疋狼』。
     遠吠えで聞く者を惑わす『月下唱』。
     忌火をまとって体当たりをしてくる『黄泉送り』。
     これまで現れた古の畏れの攻撃方法を使ってくるようだが、威力は別物であろう。
     そこまで語ってから、玄乃はファイルへ目を落とした。
    「戦い方によっては現れないかもしれないが、古の畏れは『妙多羅天』という妖だ」
     ある日山で狼の群れにでくわした男が、木に登って難を逃れようとした。狼に呼ばれて現れた鬼の腕を斬り落として事なきをえたが、帰宅して鬼の腕を母親に見せると、「これは俺の腕だ!」と叫んで逃げ去った。母親は鬼に食われていた、という昔話なのだが、この鬼が現れてしまう。
     切り落とされた己の腕から離れないが、羅刹に似た攻撃をしてくるだろう。
     伝承が姿かたちを得ただけにもかかわらず、人を害するには充分な力がある。人里離れた場所でもなし、野放しになれば人的被害は免れまい。
    「夜ではあるが町中の、街灯のある路地だからな。さほどの光源は必要ないだろう。人払いのほうが重要だと思われる」
     ファイルを机の上に置いて、玄乃は眼鏡のブリッジを押し上げた。
    「やっと得たスサノオを倒すチャンスだ。打倒して、全員怪我なく戻ってもらいたい」


    参加者
    七篠・誰歌(名無しの誰か・d00063)
    片月・糸瀬(神話崩落・d03500)
    ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)
    鬼塚・良介(不定の道化・d10077)
    園観・遥香(夜明けのネコ・d14061)
    日凪・真弓(戦巫女・d16325)
    菊水・靜(ディエスイレ・d19339)
    鳥辺野・祝(架空線・d23681)

    ■リプレイ

    ●汝、妖なりや
     街の片隅に現れ出でる、異形の妖。
     鬼の端くれではあるらしいが、角を持たぬ妖の身体で目立つのは、左手の湾曲した鉤爪。
     己が喚び出したものへは目もくれず、オオカミより少し大きな獣が踵を返す。
    「鬼を呼ぶ、ねぇ。ここに俺がいるのも呼ばれたからかな」
     鬼塚・良介(不定の道化・d10077)の呟きは嬉しげだった。身の裡の衝動を人に向けたくない彼にとって、人型の敵と戦えるとはおあつらえ向きだ。
     怒りも恨みもなく、存在そのものが未だ深い謎をまとうがゆえ、鳥辺野・祝(架空線・d23681)はスサノオに好奇心に満ちた目を向けた。塀の陰からまろび出て行きかねない乗り出しっぷりの祝の隣で、七篠・誰歌(名無しの誰か・d00063)が嘆息する。
     二連戦、しかも片方はスサノオだ。なかなか厳しい戦いになりそうな予感しかしない。
    「此処でスサノオを逃すわけにも行かないしな……頑張っていこう」
     誰歌の言葉に、黙って腕を組んだまま菊水・靜(ディエスイレ・d19339)が重々しく頷く。その後ろから、片月・糸瀬(神話崩落・d03500)がふらりと姿を現した。一般人が古の畏れに近づかないよう、路地の入口に「立ち入り禁止」の看板を立てて来たのである。
    「どうだ、行ったか?」
    「予知どおり、路地の奥へ。予定の距離に達したら襲撃しましょう」
     応じたのは辺りの地理情報を把握している、日凪・真弓(戦巫女・d16325)。スサノオがあまり離れすぎては、古の畏れと同じ殺界形成の範囲内に留め置けない。既に一般人が危険に晒されないよう、真弓に糸瀬、良介で殺気が放たれ人避けは始まっていた。
     灼滅者たちが見守る前で、ふらりと古の畏れ――妙多羅天が動き出す。
     しばらく路地を進んだが、猫とも犬ともつかない獣の頭部に薄衣をかぶった妖は、ふと振り返る。街灯の灯りのなかにぽつりと浮かびあがる、路上に落ちた人間の右腕。
     恨めしげに見えなくもない様子でしばらく眺めると、妖は腕の傍へと戻っていった。
     その行動半径、およそ50m。
     まだ路地の彼方には、真っ直ぐ進むスサノオの白い体がかすかに見える。
     園観・遥香(夜明けのネコ・d14061)は服につけるタイプのLEDライトに手をかけた。平静そのものの様子だが、相手は三度にわたり危険な古の畏れを喚びだしたダークネス。
    「……油断はしません」
     ぽつりと呟く遥香に頷いて、誰歌が立ち上がった。スサノオが昼間に測っておいた300mの領域の外へ向かっている。襲撃の頃合いだ。
    「鬼ごっこもこれで終わりにしようぜ。スサノオも俺の歌でカンドーの涙を流させてやらぁ」
     ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)の笑顔の宣言に一同は頷いた。彼が劇的に音痴であることは学内で有名だが、この時一同のうちどれだけが知っていたかは、今となっては謎である。
     灼滅者たちは音をたてず、スサノオの追撃を始めた。

    ●白い炎をまとうもの
     周囲を囲まれた白い獣は、不審気に灼滅者たちを見回した。威嚇の唸りをもらしている。
     戦いに備えて遥香が戦場の音を遮断。良介が陽気な声をあげた。
    「殺人衝動満たしてくれそうな、いいもん出してくれたじゃねーか」
     妙多羅天のことだが、むろん応えはない。
     真弓の抜き放った刀身を街灯の灯りが滑りおち、次いで白い獣が映りこむ。
    「皆が地道に畏れを叩いて回り繋いだこの機会、逃すわけには参りません。今、この場でできる最善を尽くしましょう」
    「ここで仕留めなきゃならねーわけだ、きっちりと幕引いてやるよ」
     糸瀬が唇の端を吊り上げる。その彼が癒し手の位置につくより早く、スサノオの足元の影が膨れ上がった。影の中にきらめく無数の光――狼の目。
     次の瞬間、影の狼が濁流のごとく灼滅者たちを呑み込んだ。紙一重でかわした誰歌が食い付かれんとした靜の前に立ちはだかり、祝と良介も無数の影に引き裂かれる。影でありながら生物のように、それは地響きさえ伴って襲いかかり、手に足に食らいつき動きを封じようとする。
    「さー、俺の歌を聴きやがれぇっ!」
     高らかなファルケの宣言と同時に、彼の歌声が響きわたった。仲間の傷を癒し身を清めるその歌はしかし、致命的なほどに音を外している。あまりの外しっぷりに仲間がびくっとしたほどだった。
     気を取り直した遥香が妖の槍を繰ると、妖気を氷と変じて撃ち放つ。氷の塊を受けたスサノオが路上を滑る背後へと回りこみ、真弓が死角から襲いかかる。
    「日凪真弓……参ります!」
     その隙に後列へと退く糸瀬と入れ替わるように、前に出た誰歌が雷の尾を引いた拳をスサノオへと叩きつけた。
    「それでは、こちらの番だ」
     破壊の威力を上げる螺旋の軌跡を描いた靜の槍が捩じこまれる。踏みとどまるその足へと死角から斬撃を加え、良介が移動力を削いだ。
     血を撒いて跳び退くスサノオを、守るための力と共に癒しを仲間へ送りながら、祝はしげしげと眺めた。
    「なあ、お前はなんで縁を辿っているんだ? 縁を喰って力に換えているんだろうか。だとしたら、業が深いなあ」
     応えの代わりに、その身体を紅蓮の炎が包む。その先を読み、靜を撥ね飛ばそうと駆けた前に祝が滑り込み、攻撃を受け止める。先ほどの「千疋狼」の威力をみても、絶対に攻撃手に喰らわせるわけにはいかない、と祝は覚悟を固めていた。
     響き渡るファルケの歌声が祝を癒し、にやりと笑った糸瀬が後に続いた。
    「細工は流々、とくと仕上げを御覧じろってな」
     湧きだす闇のような霧が味方の傷を塞ぎながら、その気配を消していく。
     スサノオに状態異常を重ねることは仲間に任せ、靜は純然たるダメージを積み上げる役目を負っていた。がらあきの脇腹に風をきって繰り出す杖の打撃、そして流し込む魔力の爆発。ほとんど間をおかず遥香が巨大な杭打ち機を掲げて杭を叩きこむ。氷がびきりと音をたて、スサノオの体を更に蝕んだ。
     吹き飛んだスサノオがそれでもアスファルトに爪をたて、再び灼滅者へ向き直った。
    「魂まで凍り付けッ!」
     叫ぶ良介の槍から放たれる氷は更なる氷の呪いをスサノオへと刻みつけ、素早く距離を詰めながら、誰歌が唸る。
    「やられた分、喰らわせて貰う!」
     赤いオーラの尾を引いて妖の槍が鋭く奔る。白い体に食い込んだその刃が魔力を吸い上げ、誰歌をいささか癒した。
     距離をとらんとするスサノオの死角から、祝がその脚を深々と抉る。

     防御を固めた位置取りのスサノオとの戦いは熾烈だった。自らを癒す手段をもたない白い獣は、獣らしからぬ判断力で一度ならず癒し手である糸瀬やファルケを狙った。
    「なかなか厄介だなぁ……」
     募る癒せない傷に、思わずファルケを庇った誰歌が呟いたほどだ。影の狼が残す捕縛を解消するため、ファルケはギターを掻き鳴らして味方に浄化と立ち上がる力をもたらす。あるいは彼の激しく音程を外れる歌が、仲間の意識を支えていたかもしれない。
    「……凍る」
     遥香の呟きは、その小ささとは正反対に激しい氷の打撃をスサノオに与えた。すかさず真弓も刀を閃かせ、上段から斬り下ろす。避けきれないスサノオがしぶく血の中で飛び退いた先に、靜がいた。
    「喰ろうて見よ!」
     裂帛の気合と共に繰り出される槍は螺旋を描き、深々とスサノオの体を貫いた。積み重ねられた氷の呪いはちょっとした衝撃で花開く。誰歌の逆十字のオーラがスサノオの精神を引き裂き、氷の欠片を散らせながらよろけたところへ祝の縛霊手が襲いかかる。
    「逃がさぬよ!」
     カウンター気味の一撃がスサノオの体を路面へと打ちつけ、弾んだ体へ良介が迫る。
    「もっと俺に血を分けてくれよ!」
     死角から白い体を切り裂き、その血を浴びて良介が笑った。
     ギャンと悲鳴を上げ、受け身を取り損なったスサノオがなんとか立ち上がる。
     後方の癒し手を狙った「千疋狼」はしかし、やはり目標を全て捉えることはなかった。
    「鬼さんこちらっ!こっちの鬼を追っかけな!」
     糸瀬を庇った良介が楽しげに声をあげるが、蓄積したダメージは深刻だ。ファルケの豪快に音を外したエンジェリックボイスが癒したが、もういくらも治る余地はない。
    「さ、出番ですよ、バベブレくん?」
     戦いの最中にあっても穏やかな遥香の言葉に、バベルブレイカーがウィーーンと応えるように高らかに駆動音をたてた。激しいジェット噴射と共に強烈な打撃を食らわされ、よろけた妙多羅天へと真弓が肉薄する。
    「その隙、逃しはしません……!」
     人間ならば致命的な斬撃を受け、咆哮が響き渡る。その声がやむより早く靜の連撃が続けざまに捻じ込まれた。糸瀬の放つ光の輪が、やはり傷の重い祝に灯って傷を塞いだ。
     誰歌の更なる氷の弾が着弾すると同時、祝の斬撃が良介と同時に放たれる。
    「こいつで終わりだ!」
     死角から良介の放った斬撃が深々と胴を薙ぎ払い、遂にスサノオがどうと倒れた。それきり動きを止める。
     6分強を費やした、激しい戦いが終わった瞬間だった。

    ●獣の顔をした鬼
     守り手たちの被害は甚大だった。心霊治療の為に潰しても構わないよう用意したサイキックが追いつかないほどだ。特に良介の傷は深く、治療を施しながら糸瀬が唸った。
    「良介先輩、大事をとって後ろに下がったほうがいいぜ」
    「園観ちゃんが前に出ますよ、大丈夫」
     遥香もこくんと頷いた。ありえることだから対策は立ててある。遥香がディフェンダーとして前へ出、ファルケも攻撃手とする陣容に変更する。
    「わりい、頼んだぜ」
     良介の治せる限りの傷を癒して、一同は残る敵へと向き直った。

     妙多羅天。その名を冠し祀られている神もいるが別ものらしい。
     猫とも犬ともつかない、爛々と光る目と虎縞の毛に覆われた顔は獣そのものだ。しかしその首は頭に垂直についていて、伸びた肩、その先の腕や身体は人間に近しい。殺人衝動を抱える良介としては、遠慮なくぶつけられるという点で非常にありがたいところだ。
    「よお、おんなじ鬼同士仲良くしようぜ? まあ俺は殺人鬼だけどな?」
     あがる威嚇の吠え声は、犬よりは大型の猫科に近い。
    「いくぜっ!」
     ファルケの足元から滑るように影が襲いかかるのと同時、妙多羅天から彼へと風の刃が迸る。咄嗟に誰歌が割りこんだ時には、古の畏れに遥香から放たれた氷の塊が、真弓の死角からの斬撃が、靜の槍が妙多羅天を襲っていた。獣の苦悶の唸りがあがる。
    「今この場所に、お前の縁はないよ」
     味方を癒しながらの祝の言葉が終わるより早く、誰歌の裁きの光が古の畏れに突き刺さる。衝撃で見るまに氷の花が浸食していく。
    「それじゃあ俺の殺人衝動の糧になってもらうぜッ!」
     死角へ回り込んだ良介が妙多羅天の脇腹を派手に引き裂くと同時、糸瀬の片腕が異形と化してしたたかに打ちのめした。
     血の糸を引いて退いた妙多羅天が自らを癒す風を吹かせる。ダメージはもちろん、まとわりつく影や手足を襲う痺れを打ち払う為だろう。
     しかしそれは、重要な手番をひとつ失うということ。
     ファルケのギターを振りかぶっての一撃を、左腕一本で受け止める。しかし生じた隙に遥香の放った影がからみつき、良介の撃ちこんだ氷が大きな体を蝕む。
     糸瀬の手首を手品のようにナイフが一回りして、怜悧な笑みを浮かべたまま妙多羅天をジグザグに切り裂く。
    「さっきのお返しだ!」
     誰歌が妖の槍を構えて更なる氷の追撃を与えると、真弓の斬撃が加えられた。間をおかず、チーム最大のダメージソースである靜の杖が唸りをあげて妙多羅天への腹部へ突き込まれた。流れた魔力が内側から古の畏れを打ちのめす。
    「だいぶ足にきているようだな!」
     よろけた巨大な体の死角へ回りこんだ祝の斬撃は深く、衝撃で開いた氷の花は激しく妙多羅天の生命を貪った。お返しとばかり風を裂いて襲いかかる鬼神変の一撃を、遥香が完璧に受け切る。
    「……そのぐらい、予想済みです」
    「歌エネルギーチャージ完了。歌って聞かせても響かないなら直接叩き込んで伝えるまでっ」
     もはや妙多羅天に後がないとみたファルケはにやりと笑った。
    「刻み込め、魂のビート。これがサウンドフォースブレイクだっ!」
     ファルケの魔力を込めた魔杖が遥香の「バベブレくん」と共に妙多羅天の左右から襲いかかる。避けようもないその間には、前後からも攻撃が加えられんとしていた。
    「これで、仕留める……!」
     破壊力を高めた靜の槍の一撃と糸瀬の異形の腕の一撃が、遂に妙多羅天をアスファルトへと叩きつけた。闇が渦をまき、幻が消えていくように、妙多羅天は姿形を失っていく。
    「……おやすみ」
     囁くような祝の言葉が終わるころ、跡形もなく闇は消え去っていた。

    ●汝、幻なりや
     糸瀬が路地の前後に立ててきた「立ち入り禁止」の看板を回収してきた靜は、治療を終えて黙然と立っていた。他の仲間の治療を終えた糸瀬が殺気を収める。
    「強敵ではありましたが……」
     スサノオが消えたアスファルトの上を一瞬眺めて、真弓はふと、言葉を区切った。
     杞憂であれば良いのだが、という思いが胸をよぎる。
     学園で一部の灼滅者が見たという予兆――吉と出るか凶と出るか、まだ定かではない。
    「いえ、何でもありません」
     気遣わしげな真弓の傍らで祝が微笑んだ。全ては縁、いずれ謎はその姿を現すだろう。
    「学園に新しい情報が入っているかもしれんな!」
    「俺の歌の感想が聞けなかったのが残念だぜ」
     ファルケの言葉に、一瞬一同の疲労が濃くなったのはやむを得まい。とはいえ彼の歌やギターは、確かに味方を奮い立たせる力になった。
    「いろんな意味で効いたぜ」
     はは、と乾いた笑いを浮かべた良介だが、ファルケには通じていないようだ。ちなみにファルケは妙多羅天との戦い開始からも歌い続けていた。戦場の音を周りから遮断しておいてよかったと思ったのは遥香ばかりではあるまい。遥香はそっと口を開いた。
    「遅くなりますし、戻りましょう」
    「賛成だ。まだ夜は冷え込む」
     誰歌も頷いた。怪我はもう跡形もないが、振り返るのは学園へ戻ってからでもできる。
     灼滅者たちは踵を返し、路地を駅の方へと歩き出した。

     スサノオという謎が明らかになるのも、もうじきなのかもしれない。
     いつか意思をかわすことがあるのか、あるいはスサノオの災いを防ぐ手を得るのか、今は祈るばかりだった。

    作者:六堂ぱるな 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年5月8日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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