自由を謳歌せし牙

    作者:波多野志郎

     夕暮れ、足早に行き交う人々をその男は興味深げに眺めていた。
     奇妙な男だった。年の頃なら二十台も後半か。すらりとした長身、彫りの深い金髪碧眼。何気なく着こなしたそのスーツも、仕立てのよいブランドもののオーダーメイド品だ。よく言えば、一枚の絵のように決まった、想像に描くような紳士だ。しかし、全てを台無しにするものがその首にはあった――奇妙な意匠の施された首輪だ。
    「……さて、久方ぶりの自由だ」
     男は、首輪を撫でながら言い捨てる。そこに滲む苦いものは、しかし、すぐに歓喜えと消えた。
    「まずは、するべきものの前に英気を養うとしよう。それからでも、遅くはあるまい」
     男は、軽い足取りで歩き出す。観察していた人混みへと、自然に紛れ込む――あまりにも、自然に。
     だが、それは今まさに羊の群れへと忍び込んだ飢えた狼に等しかった。
    「ああ、楽しませてもらおうか……」
     男――ヴァンパイアは、剣呑な牙を剥き、笑った。

    「新潟ロシア村の戦いのあと、行方不明になったロシアンタイガーを捜索しようとヴァンパイア達が動きだしたらしいっす」
     湾野・翠織(小学生エクスブレイン・dn0039)は、そう神妙な顔で語り始めた。
    「ロシアンタイガーを狙ってた業大老配下のアンブレイカブルは、有力な指揮官であった柴崎明が灼滅さてロシアンタイガーの捜索まで手が回ってないみたいだったんすけど……また、厄介な事っす」
     強大な力を持つヴァンパイアは、その多くが活動を制限されている。しかし、今回捜索に出てくるのは『爵位級ヴァンパイアの奴隷として力を奪われたヴァンパイア達』なのだという。
    「連中は奴隷から開放される事と引き換えに、単独での捜索を請け負ったらしいんすけど……今は、長い事たまった鬱憤から、自分達の楽しみを優先させてるらしいんすよ」
     ようするに、一般人を標的にしようとしているのだ。ある程度満足すれば、ロシアンタイガーの捜索を開始するために事件を起こさなくなるだろう、しかし、それを待っていればどれだけの被害が拡大するか、予想も出来ない。
    「なんで、未来予知に引っかかったヴァンパイアに対処して欲しいんすよ」
     夕暮れから、夜にかけてヴァンパイアは繁華街を徘徊する。人混みを楽しんだ後は、人気のない場所で人を襲うのだ。
    「繁華街から外れた公園、そこに姿を現わすっす。そこで、戦いを挑んで欲しいっす」
     ヴァンパイアの名は、ドウェイン。本来ならばかなりの実力の持ち主だが、奴隷化されているヴァンパイアは、能力を抑制されている。それでもなお、強敵だ。現在は、配下はおらず単独で行動している。
    「ドウェインは、プライドの高い奴っす。ましてや、鬱憤がたまってるっすからね。好戦的っすよ」
     挑発すれば、なおの事逃走など考えなくなるだろう。そういう手も、必要かもしれない。
    「ただ、不意打ちとかはなしっす。そういう真似は相手に気取られるっすから……真正面から、やり合って欲しいっす」
     翠織は、そこで一度言葉を切る。そして、真剣な表情で言い切った。
    「強敵っす、全員で力を合わせてようやく届く相手っすから――十分に作戦を練って、戦いを挑んでくださいっす」


    参加者
    海堂・詠一郎(破壊の軌跡・d00518)
    玖珂峰・煉夜(顧みぬ守願の駒刃・d00555)
    御剣・裕也(黒曜石の輝き・d01461)
    伊織・順花(追憶の吸血姫・d14310)
    春夏秋冬・那由多(中学生ダンピール・d18807)
    一色・紅染(穢れ無き災い・d21025)
    鷹嶺・征(炎の盾・d22564)

    ■リプレイ


     ジジジジジ……、と安い電灯から、音が届く。それほどの静寂に包まれた、夜の公園。それほどの緊張が、その場を支配していた。
    (「爵位持ちが動き出したってだけでも厄介なのに、その奴隷ヴァンパイアが解放されるとは、な」)
     言葉にはせず、伊織・順花(追憶の吸血姫・d14310)は押し殺したため息をこぼす。しかし、意識は乱れない。公園に踏み込んでくる者を見逃さない、そのために集中し研ぎ澄まされていた。
     その静寂を破ったのは、海堂・詠一郎(破壊の軌跡・d00518)だ。
    「来ましたね」
     詠一郎の言葉に、仲間達はその視線を追う。そこには、公園へとやって来た一人の影があった。
     年の頃なら二十台も後半か。すらりとした長身、彫りの深い金髪碧眼。仕立てのよいブランドもののオーダーメイド品のスーツを、着られる事無く着こなした男だ。
    (「見つけたぞ、クソヴァンパイアが……必ず、灼滅してやる」)
     男の貴族然とした空気に、玖珂峰・煉夜(顧みぬ守願の駒刃・d00555)の視線が刺し貫くように鋭くなる。その視線に気付いてだろう、不意に男が足を止めた。
    「こんばんは、月が綺麗だよね。束の間の自由を楽しんでいるかい?」
     男が口を開くよりも早く、エリアル・リッグデルム(ニル・d11655)が親しげに言い放つ。その言葉の内容に、男は――ドウェインは、表情を変えた。牙を剥く、鮫のような笑みに。
    「雁首揃えて、そちらも遊びに来たのか?」
     ゾワリ、と周囲の空気が変わる。全身が総毛立つほどの殺意を、隠そうともしないドウェインに、春夏秋冬・那由多(中学生ダンピール・d18807)は目を細めた。
    (「力が抑制されてるって言っても相手は格上か」)
     例えるのなら、暴風や猛火だ。触れるだけでこちらを引き裂き、灰にする――そう連想させるのに十分な圧力が、目の前の男にはある。
    「自由が、嬉しいのは、とっても、よく、分かります。でも、酷い、こと、したら、駄目、です……駄目……です」
     一色・紅染(穢れ無き災い・d21025)の言葉に、不意にドウェインの気配が揺らぐ。紅染自身も、幽閉されていた過去を盛っていた。加えて、積もった鬱憤を酷い形で撒き散らそうとする気持ちも、過去の自分の経験からわかっている……わかってしまう。
     乏しい表情からでもその声色に込められた実感を察したのだろう、ドウェインは苦笑し、己の首輪を指先で撫でた。
    「何故かは知らぬが、こちらの事情には通じているようだな。が、あえて問おう――酷い事とは、何だ?」
     ドウェインの表情と声色にあるのは、純粋な興味だ。それに答えたのは、鷹嶺・征(炎の盾・d22564)だ。
    「これ以上被害を出すわけにはいきません、そういう事です」
     真っ直ぐな征に、ドウェインは気付く。明確な――決して相容れないすれ違いに、だ。
    「なるほど、理解した。ニンゲンを傷つけるな、それがお前達の前提か。すまない、それは気付かなかった」
    「――――」
     御剣・裕也(黒曜石の輝き・d01461)の、黒曜石のような瞳の輝きが揺らいだ。ドウェインの次に語る言葉が、想像出来たからだ。胸の奥で押し殺した感情が、ざわめく言葉を。
    「確かに、ニンゲンは必要な存在だ。だが、我等の同胞として覚醒出来る者など、ほんの一握り――それ以外は、まがい物にしかなれぬ出来損ないだ。安心しろ、そんなモノは被害に数える必要はないのだ」
    「クソ、ヴァンパイアが……!!」
     視界が赤く染まりそうなほどの怒りに、煉夜は飛び掛りそうになる。それをかろうじて止めたのは、肩に置かれた詠一郎の手だ。
     傲慢、そう呼ぶのも馬鹿らしい思考回路だった。それは、まさに煉夜が忌み嫌う貴族的思考だ。ヴァンパイアであるか、そうでないか――目の前の男にとって必要な『区別』はそれだけで、他の価値観など意味をなさないのだ。
    「見たところ、我等の同胞になれる者も多そうだ。ヴァンパイアの未来に誉れあれ、喜ばしい事だ」
    「……なるほど、これが吸血鬼か」
     銀製の懐中時計を弄ぶ手袋に包まれた手に、力がこもっている事を那由多は自覚した。
    「でも、良かったです。あなたのような方で」
     裕也が、縛霊手を構え微笑と共に続ける。
    「――安心して、殺す事が出来ます」
    「そうか」
     直後、ドウェインが踏み込んだ。それだけで、圧力が増大する。間合いにはいった、その瞬間――ドウェインはその右腕を横一閃に振り抜き、月光のごとき衝撃で灼滅者達を薙ぎ払った。


     ゴォ! と夜の公園に、鈍い衝撃音が鳴り響く。振り抜いた腕から放った月光衝の手応えに、ドウェインは舌打ちした。
    「この程度か。むしろ、振るえる分、ストレスが溜まる――が」
     立ち込める砂煙、それを見通すように目を細め、ドウェインは口の端を歪めた。
    「むしろ、今がちょうど良いか」
     ドウェインが、振り返る。そこには、砂煙を突っ切った順花の姿があった。順花は悟られた事に気付いてもなお加速、白狼を下段から振り上げる。それをドウェインは、無造作に踏みつけた靴底で受け止めた。
    「やってくれるぜ」
    「ヴァンパイアの系譜にあって、劣った闇の技を使うか」
     同時、順花とドウェインが後方へ跳ぶ。そこへ、入れ替わるように煉夜が回り込んだ。振りかぶった右腕を巨大な鬼のそれへと変えて、血を這う軌道で振り上げる!
     ドウェインは、煉夜の鬼神変を左手一本で受け止める――しかし、煉夜は構わなかった。
    「――ォオッ!!」
     強引に振り抜いた煉夜の一撃に、ドウェインの足が宙に浮く。そこへ那由多とうり二つの少女が、ゴシックなドレスをひるがえして踏み出した――ビハインドの刹那だ。横一閃に放たれた霊撃を、ドウェインは右肘ではたき落とした。
     ジャ、と靴底を鳴らして着地するドウェインに、征が踏み込む。
    「逃しません」
    「そうか」
     振りかぶった破邪の白光を宿した剣を薙ぎ払う征に、ドウェインは強引に踏み出した。脇腹に刃が触れた瞬間、征の手首を掴むと強引に受け止め投げ飛ばす!
     征は空中で体勢を制御、駄目押しとばかりに繰り出されたドウェインの左の回し蹴りを受け止め、着地に成功した。
    「流石、一筋縄では行かないみたいだ」
     エリアルがかざした契約の指輪から、魔法の弾丸が放たれる。エリアルの制約の弾丸を、ドウェインは緋色の輝く右手で握り潰した。
    「まだです!」
     そこへ、詠一郎が奏でるソニックビートが鳴り響く。その音波に、ドウェインは逆らわずに地を蹴って後退した。
    「ここ、です」
     そこへ、死角から回り込んだ紅染の一尾が、ドウェインの足を切り裂く。ドウェインはそれを受けてバク転、音もなく着地した。
    「やっかいな相手ですね」
     そして、追いすがった裕也が縛霊手を叩き込む! それを、ドウェインは掲げた左手で迎え撃った。拳が、掌が、火花を散らして激突する。
    「体勢を整えようか?」
     小光輪を投擲し、味方に防御の力を与えながら那由多が言った。自分を囲むように展開する灼滅者達に、ドウェインは小さな笑みをこぼす。
    「前言撤回だ」
    「何だって?」
     問い返すエリアルに、ドウェインはしっかりとしていたネクタイを緩めて言い捨てた。
    「ストレスが溜まる、と言ったが、存外悪くない。これほどひりつく戦いは、久しくなかったからな」
     ドウェインの指先が、逆十字を描く――直後、紅染をギルティクロスのオーラが切り裂いた。
    「さぁ、楽しもう――夜の貴族にのみ赦された、至福の時間を」


     夜の公園に、激しい戦闘音が反響する。サウンドシャッターにより、戦場にのみ響き渡るそれは、時を追うごとに加速していった。
    「――ッ!!」
     順花が、地面を蹴る。加速する白狼の斬撃。それに合わせて、征は足元から音もさせずに刃のついた無数の影の鎖を放った。
     その挟撃を、ドウェインは動かずに迎え撃つ。右手で白狼の刃の腹を叩き落とし、左手で縦横無尽に走る影の鎖をタイミングよく掴み取った。
    「ははっ!!」
     笑い、ドウェインが振り返る。そこには、異形の怪腕を振りかぶった紅染の姿があった。
    「……ッ!?」
     紅染の一撃を、ドウェインはかわす事無くまともに食らう。だが、ドウェインは殴り飛ばされるままに浮いた足にオーラを集中させ、吹き飛ばされた。その吹き飛ばされた位置にいたのは、裕也だ。
     ドウェインは吹き飛ばされた勢いのまま、右の胴回し回転蹴りの踵を裕也へと落とす。斬撃にまで消化された鋭い蹴り、紅蓮斬だ。
    「させ、るか!」
     そこへ、征が強引に体を割り込ませる。鋭い一撃を受けた征が公園のベンチへと吹き飛ばされた。しかし、ドウェインは止まっていない。
     オーラを集中させた左の回し蹴り、その軌道が描いた逆十字が――発動しない。それよりも半瞬早く、裕也の足元から伸びた影が、ドウェインの胴を切り裂いたのだ。
    「ヴァンパイアっていうのは、この程度なんですか? 無様で――」
     裕也の挑発の言葉が、止まる。止めたのは他でもない、手をかざしたドウェインだ。
    「いらん、見え透いた挑発はもう十分だ」
    「まだ、挑発らしい挑発をした覚えもないが?」
     応じながら、那由多はシールドリングを征へと飛ばし回復させる。逃げ出す仕種もドウェインは見せていない――だからこそ、灼滅者達が用意してきた挑発は、使われず仕舞いだった。
    「挑発なら、しているだろう? 初めからの、その態度が気に入らん。この私を前にして、灼滅する気がある――それだけで、許されざる傲慢だ」
    「言ってくれるな、クソヴァンパイア」
    「そう、それだ」
     言い捨てる煉夜に、ドウェインは視線を向ける。その眼光は鋭い――しかし、哀れみがこもったものだった。
    「我が同胞になる素質を持ちながら、灼滅者たらんとするその態度――他のヴァンパイアが許したとしても、このドウェインには看過出来ん。あぁ、許せようものか」
     そして、ドウェインは首筋を撫でる。その首輪を、忌々しげに。
    「これさえなければ、見せてやれたであろうにな。本物の、闇の貴族というものの姿を――」
     ふと、ドウェインの言葉が止まる。闇の貴族は、苦笑と共に告げた。
    「だから、コレはお前のソレとはまったく別物だ。愚か者めが」
     詠一郎は言葉を向けられ、自分がチョーカーに触れていたのだと気付く。大事な人からもらったもの――それとは違う、とドウェインは言ってのけたのだ。
    「来い、我が勝とうがお前達が勝とうが、しかと刻んでやる――闇の貴族の、あり方の片鱗を」
     その瞬間、煉夜が爆炎の銃弾を叩き込む。ドウェインは、それを横に疾走しながら受け流した。
    「まだまだ!」
     その軌道上に、エリアルはロケット噴射で加速するトゲ付き鉄球を繰り出す。ドウェインがそれを両腕をクロスさせてガードすると、刹那は黒レースの扇を振るい衝撃波を放った。
    (「弱体化して、これですか」)
     リバイブメロディを爪弾き、詠一郎は苦笑する。卑怯な真似は絶対しない、そう決めて挑んだ戦いだった。正々堂々と戦いたい、詠一郎にとってヴァンパイアは宿敵であり憎むべき相手だが、その強さは敬意は値した。
     首輪に囚われ、奴隷として扱われてなおその誇りを貫く――ドウェインというヴァンパイアは、悲しいまでに典型的なヴァンパイアだ。だからこそ、望む望まざるとも、その戦いは正々堂々と真正面からとなった。
     ――それは、ある意味で皮肉な戦いと言えただろう。
    「罪を刻め!」
     ドウェインが、赤きオーラの逆十字を刻む――その中心を内側から弾いたのは、紅染の一尾による斬撃だった。
    「行き、ます」
     赤い輝きが舞い散る中を、紅染が駆ける。ドウェインのギルティクロスを相殺した直後、紅染の足元から伸びた影の尾が吸血鬼の肩口を貫いた。
    「ハ、ハハ!!」
    「なお、笑いますか」
     すかさず駆け込んだ征が、その胴を非実体化させた剣で切り裂く。肉ではなく魂を断つ手応えを漢字ながら、征は忌まわしい意匠の首輪の文様を目に焼き付けた。
    「刹那」
     那由多の呼びかけに、刹那はヴェールの下でうなずく。那由多の彗星のごとき一矢と霊障波に、ドウェインが宙を舞った。ドウェインが街灯を足場に、横へ跳ぶ。その動きに合わせて、エリアルの影がドウェインを絡め取った。
    「暴れ、させるか!」
     ギュ! と握り拳を作ったエリアルに、ドウェウンは強引に駆ける。しかし、その鈍った動きでは、裕也の加速に間に合わなかった。
     振りかざされる縛霊撃、その一撃を腹部に受けたドウェインは裕也の手首を掴み、笑って言った。
    「ハ……楽しそうで、何よりだ」
    「――――」
     その言葉の意味は、裕也にのみ伝わる。二人が弾け合うように地を蹴ったそこへ、詠一郎が駆け込んだ。
    「正々堂々と、行かせてもらいます」
    「ああ、来るがいい」
     正面から交差する拳と拳、右のストレートの交差はわずかに顔をそらした詠一郎の拳打のみが届いた。
    「まだまだだ!」
     そこへ、順花が放った影がドウェインを飲み込む。それでも踏みとどまるドウェインに、煉夜が踏み込んだ。
    「そのクソみてぇな貴族思想と、それを良しとする精神……諸共に朽ち果てろ」
     影に飲まれたままのドウェインの心の臓を、煉夜の尖烈のドグマスパイクが刺し貫いた。それが、止めとなった。ドウェインは口からこぼれそうな血を飲み込むと、拳を繰り出した体勢の詠一郎に笑って言った。
    「……せいぜい、その『楔』を、楽しむがよい、灼滅者……。解き、放たれた……その時こそ、お前達は、知るであろう……ヴァンパイアが、なんた、るか、を……」
     内側から、灰となってドウェインは崩れ去っていく。それでも、最期の最期まで闇の貴族であり続けた男は、その結果を受け入れて消えていった。
    「……目覚めの時を、待っている、ぞ? 同胞、よ……」


     ――再び、公園に静寂が満ちた。
     しかし、それは戦いの前とは違う。戦い抜いた、その自覚によって思い出した疲労に蝕まれた、そんな静寂だ。
    「お怪我がなくて、良かったです」
     全員の無事を確認した征の言葉に、仲間達からもようやく笑みがこぼれる。傷を負っていない者など、誰一人としてその場にいなかった。弱体化してなお、あの強さを誇っていたのだ――改めてダークネスの、ヴァンパイアの恐ろしさを灼滅者達は、その胸に刻んだのだ。
     それは、まさにドウェインの宣言通りに。ヴァンパイアという存在の、片鱗を知った夜だった……。

    作者:波多野志郎 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年5月8日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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