はーい、青いので轢いちゃうぞ♪

    作者:陵かなめ

     唸るエンジンの音。安っぽいラッパ音。何か調子の良いことを叫ぶ若者達。
     夜の市街地を、はた迷惑な騒音を撒き散らす集団がバイクで走っていた。
     ――ドッドッ。
     そこに、新たな重低音が近づいてきた。
    「おいおいおい、俺ら爆走・蒼空縁辞ELL(ばくそう・すかいえんじぇる)に喧嘩売ろうってのか?!」
     リーダーらしき人物が気色ばんだ声を上げると、集団の若者達もラッパを鳴らしそれに答えた。
     ――ドッドッドッ。
     重低音はどんどん大きくなっていく。
     ――ドッドッドッドッ。
     集団の若者達は、近づいてくる車をどうにかしようと暗い笑いを浮かべ、顔を見合わせた。
     ――ドッドッドッドッドッ。
     次第に、地面が揺れ始め。
    「な……、お、おい?!」
     誰かの戸惑うような悲鳴に、一同は勇ましい声を上げることも忘れ、向かってくる何かを呆然と見つめた。
     それは、とても大きなロードローラーで、爆走する集団へ真っ直ぐ進路を取っている。
    「ひっ、見ろ、あれ、人の顔が?!」
     青い車体には、殺戮第一の文字が見える。そして、何より特徴的なのは、前方のボディに人の顔が乗っているのだっ!!
    「くふふふふッ☆ 迷惑な集団は、みぃんなぺしゃんこだよ♪」
    「しゃ、しゃべっ……」
     誰かが、かすれた声を上げた。喋った。ロードローラーに乗った顔が喋ったのだっ!!
    「うわぁ、うわぁぁぁぁぁ」
     現場は阿鼻叫喚の渦と化した。
     逃げ惑う若者集団。それを追い詰め、容赦なく下敷きにするロードローラー。突如現れた青い車体が、迷惑騒音集団をぺしゃんこにしちゃいましたよ。
     
    ●依頼
     謎に包まれた六六六人衆『???(トリプルクエスチョン)』が動いたようだ。
     彼は、特異な才能を灼滅者『外法院ウツロギ』を闇堕ちさせ、分裂という稀有な特性を持つ六六六人衆を生み出した、と言うのだ。
     教室に現れた千歳緑・太郎(中学生エクスブレイン・dn0146)が、表情を硬くして話し始めた。
    「その六六六人衆こそ、序列二八八位『ロードローラー』なんだよ」
     二八八位の序列は『クリスマス爆破男』が灼滅された後、空席となっていた。
     今回、特異な才能を持つ六六六人衆の誕生により、その空席が埋まったのだろう。
    「序列二八八位『ロードローラー』は、分裂によって日本各地に散り、次々に事件を起こそうとしているんだよ。皆には、この分裂した『ロードローラー』の起こす事件を解決して欲しいんだ」
     太郎は皆を見回し、詳細の説明を始めた。
    「今回分かったのは、市街地で騒音を撒き散らして走る集団を、ロードローラーが轢き殺す事件なんだよ。それを、阻止して欲しいんだ」
     その方法は、まず襲撃される一般人を解散させる。その後、自分達が彼らの代わりに迷惑な騒音を撒き散らして夜の市街地を走ることで、ロードローラーをおびき寄せることが出来るのだ。
    「ロードローラーの最初の攻撃は、一般人をロードローラーでぺしゃんこにすること。これって、ダークネスや灼滅者への攻撃じゃないんだ。だから、皆はダメージを受けない。一方的に反撃が出来るんだよ」
     ただし、と、太郎がくまのぬいぐるみを握り締める。
    「騒音を撒き散らして走る若者を演じきれなかった場合は、灼滅者ってばれてしまうんだ。そうすると、最初から普通の戦闘になっちゃうから、不利になるよ」
     ロードローラーは、その物量で体当たりや轢き殺すなど、強力な攻撃を仕掛けてくる。
    「迷惑な若者って言っても、やっぱりダークネスに殺されるのを見逃すことは出来ないよ。迷惑行為をするのは気が引けるけど……、戦いを有利に進めるためには、ある程度仕方が無いかな」
     太郎は、顔を伏せ言葉を捜した。
    「えっと、集団の人達はバイクだけど、皆は、騒音を撒き散らしながら走ればいいから。乗り物は自転車でかまわないよ。ある程度の速度が出せるなら、自分の足で走っても問題ないし」
     最後に、と。
     太郎は顔を上げ、皆を見た。
    「今回のロードローラーは、分裂体だから、救出も交渉も出来ないんだ。灼滅するしかないよ。だから、お願い」
     どうか、頑張ってと、話を締めた。


    参加者
    海野・歩(ちびっこ拳士・d00124)
    和泉・風香(ノーブルブラッド・d00975)
    日向・和志(ファイデス・d01496)
    黒田・柚琉(紅夜・d02224)
    アリス・ドルネーズ(バトラー・d08341)
    蘚須田・結唯(祝詞の詠い手・d10773)
    ラックス・ノウン(バイゼルカイゼル・d11624)
    駿河・一鷹(迅雷銀牙ヴァーミリオン・d17774)

    ■リプレイ

    ●爆走・蒼空縁辞ELL
     六六六人衆は、一体何がしたいと言うのだろうか。
     ロードローラー……。そんな物に闇堕ちしたウツロギさんもウツロギさんですが、とアリス・ドルネーズ(バトラー・d08341)が腕を組んだ。
    「まぁ、何にしろ、助ける為にもまず目の前の事から片付けて行きましょう」
     夜の市街地に、はた迷惑な音が響き渡る。
     ぱらりらと、耳に不快な音を散らしながら走る集団を確認し、海野・歩(ちびっこ拳士・d00124)がこくこくと頷いた。
     彼とは、闘ったりも共闘したりもしたけれど、こんな形でロードローラー姿と闘うことになろうとは。
    「本体じゃないってのが残念だけど、まずはきっちりと倒して、次を探さなきゃだねっ!」
     だんだんと、爆走の音が近づいてくる。
    「確かに、彼らのやっている事は正しいとは言えませんが……いくらなんでもやり過ぎです」
     迷惑な騒音を撒き散らす集団を見て、蘚須田・結唯(祝詞の詠い手・d10773)も頷く。
     非常にご近所迷惑な集団だけれども、だからと言って一般人をぺしゃんこにするなど、やはりやり過ぎだ。
    「絶対、ここで食い止めなくては……!」
     決意を新たにする。
     迷惑集団が目の前まで来たことを確認し、黒田・柚琉(紅夜・d02224)が、一歩前に出た。
    「ロードローラー……。世の中には面白い六六六人衆がいるんだね」
     呟き、ESPを準備する。兎も角、被害が出る前に止めなければならない。
     やがて、見た目にも派手なバイクを駆る集団が現れた。
     柚琉は集団の正面へ回り、堂々として声をかける。
    「やあ、近所迷惑はよろしくないよ」
    「はぁ? テメー、俺ら爆走・蒼空縁辞ELLにケンカ売ってんのか」
     派手なペイントを施したバイクにまたがった男が、しかめ面を柚琉に向けた。走りを邪魔された者達も、今にも殴りかからんとする勢いでバイクから降りる。
    「大人しくこの場から退場願おうか」
    (「これから僕達が迷惑行為をするとは言えないけどね……」)
     相手を威圧しながら、柚琉は内心苦笑いをするしかなかった。
    「あ……はぃ」
     さて、柚琉が一睨みしただけで、あっけなく若者達は下を向いた。ESPの力を借り、十分に相手を威圧する。
     大人しくなった爆走・蒼空縁辞ELLの面々に、畳み掛けるようにラックス・ノウン(バイゼルカイゼル・d11624)が声を上げた。
    「どけ、去れ、帰れ!! 二度とくんな!!」
    「っ……! さ、さーせんっした」
     慌てて、若者達は後ずさり。
    「か、かいさーんっ。解散ー!!」
     リーダーらしき男の掛け声と共に、散り散りに逃げていった。
     ラッパ音やエンジンの音が無くなり、一瞬だけ、静けさが戻ってくる。
     一般人を追い払うことには成功した。
     さて、これからだ。
     灼滅者達は、各々が用意した道具を出し頷き合った。

    ●爆走・蒼空縁辞ELL(偽)
    「さっそく、騒音を出して誘い出すかの」
     和泉・風香(ノーブルブラッド・d00975)が取り出したのは、音楽プレイヤーとスピーカーだ。
    「演歌でもよいかのぅ?」
    「とにかく、騒がしけりゃいいんじゃね? やったもん勝ちだし。こういうのは恥じるより堂々と行くほうがいい」
     日向・和志(ファイデス・d01496)はそう言うと、自転車の後部に設置したラジカセをぽんと撫でた。
    「ふむ。借りてきた白い特攻服もあるのじゃが……必要かのぅ?」
    「着とけ、着とけ、他にもすごい人いるし!」
     ちらり、ラックスの自転車を見た。
    「ふむふむ。では、特攻服も着るのじゃ」
     流す音楽を選び、風香が特攻服に袖を通した。
     ラックスの自転車には、ラジカセがセットされている。
     ラックスもまた和志を見た。
     ばっちりと視線を交わし、親指を上げる。
    「つーことで行くぞ!」
    「おっけー、いくでー!!」
     2人、同時に自転車のペダルに足をかける。ラジカセのスイッチをオンにすると、大音量の音楽が流れ始めた。
     さて、駿河・一鷹(迅雷銀牙ヴァーミリオン・d17774)は、自前のバイクに取り付けたホーンを確認していた。一般人も追い払ったことだし、囮作戦を開始すればいいだけ。自分は、騒音行為に明け暮れる一人の不良学生を演じよう。
     と言うようなことをつらつらと考えながら、それでも叫ばずには居られない。
    (「……俺の私物勝手に改造したの誰だよ!」)
     あくまで真顔を保ち冷静を装って、心の中で叫ぶ。
     一鷹の自前のバイクには、自社のロゴが所狭しと装飾されていた。
     スポンサー宣伝が如しだが、真夜中にあらぶる六六六人衆に向かっては、宣伝のしどころも違うというものだ。
     一通り皆の準備を確認し、歩、結唯、柚琉も自転車に飛び乗る。
    「皆さんに合わせます」
     アリスも、せいぜい騒ぎ立てるよう、頷いた。
     激しいホーンの音を撒き散らす一鷹を先頭に、一同は爆走を開始した。
     夜の市街地を、騒音を撒き散らす集団が爆走する。
    「おらおらー! 俺らが爆走・蒼空縁辞ELLだー!!」
     拡声器を手に、柚琉が叫びまくる。
    (「半分本人たちに申し訳ないけど……まぁ……うん」)
     ね?
     勢いのある大声とは裏腹に、柚琉はどこか遠い目をしている。
    「本当に、こんな事で来るのでしょうか……」
     やや俯きながら、結唯は自転車に取り付けたラッパを鳴らした。騒音を撒き散らすような迷惑な行為には慣れておらず、やはり、気恥ずかしい。
     一方。
    「ふんふふ~ん、バイクでぇ~」
     走り始めるとか何とか。和志は上機嫌で歌い続けている。一心不乱に自転車をこぎ、夢中で歌う。その姿は……、本当に爆走するフリなのだろうか……? むしろ、どう見てもただの……、いや、これ以上は言うまい。
    「おりゃチャリの底力舐めんな!! 遅いなんて言わせねえよ!!」
     ラックスがメガホンで自己主張を繰り返す。
    「あははっ。わん! わん!」
     騒音を撒き散らすの~と、歩も頑張っている。
     しゃこしゃこと自転車をこぐ姿だけ除けば、立派な騒音集団だ。
    (「ああ……安眠妨害すみません!」)
     意気揚々とエンジン音を響かせながら、一鷹は心の中で近隣住民の皆さんに謝罪した。
     そうしてしばらく走り続けていると、腹に響く重低音に気がつく。
     ――ドッドッドッ。
     仲間が、顔を見合わせた。
    「どうやら、きてくれたようです。それでは、速やかに殺しましょう」
     アリスが言うと、風香が遠くに見え始めたソレに視線を向けた。
    「うむ、どうみてもロードローラーじゃのぅ……」
     ――ドッドッドッドッ。
     次第に地面が揺れ始める。
    「一度轢かれてからの戦闘じゃな。ダメージにはならんとはいっても、痛いものは痛いのじゃが……」
     まあ、仕方が無い。
     風香の言葉に頷き、仲間達は爆走を続けた。
     ――ドッドッドッドッドッ。
     青い車体が遠目に見える。
    「あのロードローラー運転できへんやろか。乗りたいなあ」
    「えぇ?! でも、ウツロギお兄ちゃんのお顔が目の前に来ちゃうよぉ?」
     ラックスがポツリ呟くと、隣で走っていた歩がびっくりしたように声を上げた。

    ●ロードローラーだっ
    「くふふふふッ☆ 迷惑な集団は、みぃんなぺしゃんこだよ♪」
     ついに、ソレが背後から迫ってきた。青い車体に殺戮第一の大きな文字。誰が見間違うことがあろうか。ロードローラーが現れたのだ。
    「うわああっ、化け物!?」
     その姿を見て、一鷹が大げさに悲鳴を上げる。
    「つぶれちゃえばいいんじゃないかな? ロードローラー♪」
     ロードローラーは軽い雰囲気でとんでもないことをさらりと言いながら、次々に爆走集団をぺしゃんこにしていった。
     ひしゃげる一鷹、吹き飛ぶラックス、目を回す結唯、壊れる和志のラジカセなどなど。仲間たちが次々に轢かれていく。
    「はーははは。みんな、ぺしゃんこだねー。やったね、ローラー☆」
     ロードローラーが上機嫌で勝鬨を上げた。
     だがしかし。
    「――ライズ・アップ!!」
     赤と黒の戦闘スーツを身に纏い、一鷹が立ち上がる。相手の反応を待たず、ロードローラーを空中に投げた。
    「皆、今だ!」
     皆に声をかけ、一鷹はシールドを広げる。
     その掛け声に反応するように、仲間達は走った。
    「行くよ紅雫……楽しい戦いの始まりだ」
     カードを開放した柚琉が、素早く魔力の霧を展開させた。
    「私は正々堂々などと言うのとは無縁ですので。殺せる時に殺します」
     アリスの鋼糸・レクイエムがしなやかに伸び、敵の車体に絡みつく。
    「あー!! もしや皆さん、灼滅者? 卑怯かもー! 騙されたかもー!」
     きっちりと締め付けられながら、ロードローラーの車体の上の顔がぶーぶーと異議を申し立てた。
     その通り、轢かれたフリをしただけで、誰もダメージを負ってはいない。
    「卑怯? なんとでも。むしろ褒め言葉です」
     何を言われても、アリスは揺るがなかった。ただ冷静に切り返す。
     動きが止まったロードローラーめがけてラックスが走り込む。
    「ロードローラーダァァァ!!」
     気合を込めて死の中心点を貫いた。
     ロードローラーの車体からおかしな機械音が響く。どうやら、車体にダメージを与えたらしい。
    「さ~て、ぽち。全力で行っくぞ~っ♪」
    「わうっ!」
     灼滅者の攻撃はまだ続いた。
     歩とぽちが並んで走る。その姿は、まるで2匹のわんこが走っているよう。
    「うりゃりゃ~、騒音おんおんなんだよ~っ♪」
     歩は激しくギターをかき鳴らし、ソニックビートを放った。
    「ちょ、ちょ、ちょ。ロードローラー、まだ攻撃できないし」
     ダメージを受けながら唇を尖らせる顔をまじまじと見て、歩が思わず声を上げた。
    「わふっ!? ウツロギお兄ちゃんのお顔と体、マジマジ見ると笑えちゃう……」
     そうだよね。だって、ロードローラーなんだもんね。
    「よくわからん姿になりよってからに……しかも、分裂するとはの」
     バスターライフル・Lanzeを構え、風香が目を細めた。赤きオーラの逆十字を出現させ、敵の車体を引き裂く。
     とにかく、目の前のロードローラーを何とかしなければ、本体に辿り着けないのだから。
     和志もまた、霊犬の加是を伴い、ロードローラーに走っていく。
    「さっきはよくも轢いてくれたな、コノヤロー。ラジカセ弁償しやがれ!」
     槍から冷気のつららを撃ち出し、加是も援護するように六文銭射撃を繰り出した。
    「いたっ、たたた。そんなこと、ロードローラーしーらーない☆」
    「あー。何となくそんな気がしてたぜー」
     さようなら、ラジカセ。大音量で流した音楽、忘れないよ!!
     それはさておき、皆の初撃は概ね成功した様子だ。
    「咎人に、永久の安らぎを……」
     呟くような言葉と共に、結唯もまた戦う姿を顕にする。
     まだ、傷を負った者は居ない。ならば、と、結唯はクルセイドソードを構えた。
     神霊剣を放つと、敵が重低音を響かせながら、車体を後退させた。

    ●バイバイ、ローラー☆
     畳み掛けるような仲間の攻撃と、敵の破壊音が交差する。初撃の成果もあり、だんだんと灼滅者がロードローラーを押し始めた。
    「くっ。ちょっぴりピンチなロードローラー。こうなったら、全力☆ミンチだよ!!」
     だが、全ての攻撃を受け止め、ロードローラーは今だ駆動している。
     狙いを定め、前列の灼滅者めがけてローラーを転がしてきた。冗談のような容姿だが、やはり一撃は重い。
    「すぐに、回復します」
     結唯のセイクリッドウインドが仲間を癒す。
     その間にと、風香が神秘的な歌声をあげた。
    「所詮分身体じゃ、本人ではないのじゃから容赦なく攻撃するのじゃ」
     畳み掛けるように和志が炎を叩きつける。
    「さっすがウツロギお兄ちゃん。こんな姿でも強~いのっ♪」
     でも負けないぞと、歩が影を伸ばした。
    「わんわん影さん、ぱっくんだよっ☆」
     わんこ型の影が、口をあけて敵に群がる。
    「なにこれ、なにこれ」
     斬り裂かれ悲鳴を上げるロードローラーに、ぽちの斬魔刀が一閃する。
     回復を受けて立ち上がったラックスも、仲間に続いた。
    「オラオラオラオラオラ。これ一回やってみたかったんや」
     オーラを拳に集中させ、激しい連打を浴びせかける。
     畳み掛けるように、一鷹もDMWセイバーを放った。
    「な……ぁ」
     だんだんと、ロードローラーの勢いが失われていく。
    「そろそろ終止符を打とうか……」
     柚琉が素早く車体近くに滑り込み、例の顔めがけて武器を振るった。
    「あ、ちょっと、顔は、ちょっと……!」
     剥き出しの顔を攻撃され、敵が困惑の声を上げる。
    「お前に祈る神などいないのだろう」
     しかし、容赦なく。反対の側から、アリスがティアーズリッパーを繰り出した。
     流れるように、とても自然に、
    「命乞いをする間もなく、殺してやる」
     敵を斬り裂く。
    「……あっ……」
     結局、これが決め手となり、青いロードローラーは崩れて消えた。

     辺りにようやく夜の静寂が戻る。
     さて、???の狙いとは一体何なのだろう。一鷹は思案を巡らせる。
    「トリプルクエスチョン、中々に厄介ですね。何時の間に闇堕ちさせたんでしょうか」
     アリスの疑問に、答えは返ってこなかった。
    「本体の情報があればよいのじゃが……」
     風香は周辺を見回したが、特に何も目立ったものは無かった。
    「さ、帰ろう。よい子は帰って寝る時間だ!」
     一鷹の声掛けに、皆が頷いた。
    「そうだよね~♪ おねむの時間だよ~っ」
    「そうですね。撤収しましょう」
     歩と結唯が笑顔を見せる。戦いは終わったのだ。
    「へーい。撤収、撤収~」
     ラジカセの残骸を抱え和志が言うと、皆が歩き出した。
    「うー。あのロードローラー、やっぱし乗ってみたかったなー」
    「そうなんだ。まあ、面白い六六六人衆だったよね」
     ちょっぴり残念そうなラックスと、小首を傾げる柚琉。
     無事青のロードローラーを消し去り、灼滅者達は帰路についた。

    作者:陵かなめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年5月15日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ