信楽焼きだって、弾けたい!

     アルファリア・ラングリス(蒼光の槍・d02715)は、こんな噂を耳にした。
     『信楽焼きの置物が立っている事に疲れて、あちこちを歩き回っている』と……。
     この信楽焼きは都市伝説で、立っている事に疲れて、日が暮れるまで辺りをウロつきまわっているらしい。
     しかも、都市伝説の催眠によって、ちょっとぽっちゃりとしたオバちゃんとして認識されていたようだ。
     そのため、都市伝説はやりたい放題。
     エステに温泉、マッサージ。
     最近ではエアロビ、ダンス、ママさんバレー。
     そのおかげで体もスマート、モデル体型になっている。
     しかし、それが原因で違和感、大爆発。
     夜な夜な都市伝説を前に横切る酔っ払いが、思わず吹き出してしまうほど。
     都市伝説は夜になると、必ずとある居酒屋に帰ってくるため、そこで待ち伏せするのが、一番楽。
     ただし、都市伝説は無駄に軽やかで、信楽焼きらしからぬ動きをするため、色々な意味で注意が必要である。


    参加者
    護宮・マッキ(輝速・d00180)
    アルファリア・ラングリス(蒼光の槍・d02715)
    神凪・陽和(天照・d02848)
    エルファシア・ラヴィンス(奇襲攻撃と肉が好き・d03746)
    天代・鳴海(夜葬・d05982)
    篠歌・誘魚(南天雪うさぎ・d13559)
    ナタリア・コルサコヴァ(スネグーラチカ・d13941)
    ヒュートゥル・マーベリック(ピースオブクラップ・d25797)

    ■リプレイ

    ●踊る信楽焼
    「無駄に軽やかで、信楽焼きらしからぬ動き、ってなんだそれ? 信楽焼きらしい動きって、動かないだろう、ふつうは! それって、もう信楽焼き要素ないなって思ったら、モデル体型の信楽焼きなの?」
     護宮・マッキ(輝速・d00180)は呆れた様子で頭を抱え、仲間達と共に都市伝説が確認された居酒屋に向かっていた。
     相手が都市伝説という時点で、マトモに考える意味などないのだが、さすがにこれは突っ込まずにはいられない。
     それだけ、おかしな存在になってしまったのもすべて都市伝説の元になった噂が原因であるが、それを広めた当人ですらこんな事になるとは予想もしていなかった事だろう。
    「モデル体型の狸の信楽焼きですか。……想像もつきませんね」
     篠歌・誘魚(南天雪うさぎ・d13559)が、気まずい様子で汗を流す。
     都市伝説として生を受けた時の姿は、メタボ気味のオバさん。
     それがモデル体型になる事を考えると、違和感バリバリ。
     おそらく、都市伝説に遭遇した途端、思わず吹き出してしまうか、ドン引きしてしまうかのどちらである。
    「信楽焼がバレーやエステをしたからって体型が、変わるものなのかな? まあ、焼き物も遊びたい気持ちがあるって事か。信楽焼きを見た時に思い出すかも知れないね」
     天代・鳴海(夜葬・d05982)が、しみじみとした表情を浮かべる。
     もしかすると、都市伝説なりに悩んでいたのかも知れない。
     『実際のタヌキはあんなにでっぷりしていない。このままでは信楽焼きを通じて、タヌキのイメージが失墜する』と……。
    「何だか青くて丸い猫型ロボットがスラッとしているようなイメージが浮かびますね」
     ナタリア・コルサコヴァ(スネグーラチカ・d13941)が、目張りの入った国民的に有名なタヌキ型……もとい、ネコ型ロボットを思い浮かべた。
     だが、どう贔屓目に想像しても、気持ち悪さが圧勝である。
    「……とは言え、信楽焼の置物といえば、狸、そしてあの大きな……ですよね。でも、おばちゃん認識という事は女性なのでしょうか? そのあたりも興味がありますね。まさかふた……いえ、会えばわかりますね」
     ヒュートゥル・マーベリック(ピースオブクラップ・d25797)の脳裏に危険な映像がたぷんと浮かぶ。
     そもそも、元になった信楽焼の置物と大きなアレは切っても切れないもの。
     いや、一番邪魔だったので、文字通り切ってしまったのかも知れない。
     それは理想のモデル体型を手に入れるためには、必要な代償。
     噂が元になった都市伝説であるが故、十分にあり得る事だった。
    「ひょっとして、アレでしょうか。出来れば、違うといいんですが……」
     神凪・陽和(天照・d02848)が、青ざめた表情を浮かべる。
     その視線の先にいたのは、都市伝説。
     モデル体型で体のラインがクッキリと浮かんだ服を着込んだミニスカート姿の都市伝説が、ハイヒールをカツンカツンと鳴らしつつ、まるでビーチボールの如くふたつの玉を肩に担いだ姿を現した。
     何もかもが完璧。すべて工事済みといった雰囲気だが、タヌキ顔のせいで違和感大爆発。しかも、肩に担いだ玉袋にどうしても目が行ってしまうため、色々な意味でげんなりとした。
    「なんたる、なぁぁんたる不出来! たぬ族の矜持を忘れ、享楽に溺れるとはたぬきの風上にも置けないタヌ! ここはこのタヌが、たぬ王国騎士たるタヌが、たぬきの何たるか、たぬ道の何たるかを思い出させなければ。信楽焼きの誉れを守るため、たぬ王国領の権威を知らしめるため、たぬ王国騎士タヌファリアがはぐれたぬきにお仕置きタヌ!」
     アルファリア・ラングリス(蒼光の槍・d02715)が、居酒屋の屋根に立って背後からライトを浴びた。
    「うわ、またやばいスイッチはいっちゃった?!」
     マッキが驚いた様子で声を上げる。
    「……と言うか、たぬ王国騎士って何?! ふだんと違いすぎない?! 語尾もおかしいし!」
     そのため、突っ込まずにはいられない。
     それが無駄な事だと分かっていても、思わず口に出してしまうほどだった。
    「だ、誰よ、あなたは!」
     それに気づいた都市伝説が大声を上げた。
    「天知る地知るたぬが知る。闇に堕ちたたぬきの同胞、その存在をたぬ王国は嘆いてるタヌよ!たぬ王国領第一突撃隊所属タヌファリアが、王に代わってお仕置きタヌ!」
     そう言ってアルファリアがタヌキの着ぐるみ姿のままエビゾリ三回転捻りでジャンプをすると、バァァァァァァァァァァァァァンとポーズを決めた。
    「さ、さては……、この玉袋を狙っているのね!」
     都市伝説が思いっきり勘違いをした。
     一体、都市伝説の玉袋にどれほどの価値があるのか分からないが、正直いらない、欲しくない。
     そんなものを狙ったところで、何の使い道がない上、妙に生々しい形をしているため、直視している事すらある意味で拷問だった。
    「果てしなく無害な気がするけど、倒さないとね!」
     エルファシア・ラヴィンス(奇襲攻撃と肉が好き・d03746)が視線のやり場に困りながら、無駄に胸を揺らす。
     出来る事なら関わりたくない相手だが、このまま放っておく事が出来ないのも、また事実であった。

    ●スマートポン助
    「楽しんでるとこ悪いけど。その陶器の体、砕かせてもらうよ」
     鳴海が思わず吹き出しそうになりつつ、都市伝説に対して言い放つ。
    「……って、楽しんでいるのはアナタじやない。ほら、今ぷぷって笑って。見たわよ、アタシ。見ちゃったわよ」
     都市伝説が顔をマジマジと近づける。
     そのたび、鳴海が爆笑するのを堪えて口元を押さえた。
     だが、一度ツボに入ってしまうと、都市伝説を見ただけで吹き出してしまいそうにな。
     それこそ、油断すれば大爆笑。
     腹がよじれるまで、笑い続けてしまいそうである。
    「何だか害はなさそうですが……仕方ありませんね」
     誘魚が深い溜息を漏らす。
    「だったら、このまま放っておいてよ。アタシは誰にも迷惑をかけていないんだから。それとも、アレ。このふたつのプレシャスが気になっちゃう? 今すぐゲットしたい感じ?」
     都市伝説が思わせぶりに、ふたつの玉を見せつけた。
    「……いりません。それがどんなに貴重で高価なモノであったとしても、絶対に……いりません!」
     陽和がキッパリと拒絶した。
    「あら、残念。これって、レアなのよ。これを狙って、闇の組織が命を狙ってくるほどに……って、嘘だけど。まあ、何ていうの。捨てるのは勿体ないし、だからと言って売れないし、捨てるにしてもこれって燃えるゴミ? それとも、燃えないゴミ? ……って感じだから、持っているだけなんだけど!」
     そう言って都市伝説があっけらかんと笑う。
     アメリカンクラッカーの如く、バッキュンバッキュン鳴らしているところを見ると、処分に困っているというのは本当かも知れない。
     だからと言って、このまま放っておく訳にはいかなかった。
    「ここは危険です、離れて下さい!」
     ナタリアが一般人に対して警告をする。
     いつの間にか、野次馬達が集まっており、やんややんやの大騒ぎ。
     都市伝説もそれに気を良くしたのか、セクシーポーズを決めて、野次馬達に大胆アピール。思わせぶりに揺れたふたつの玉がアクセントになって、都市伝説のセクシーさが倍増しているようだった。
    「逃げろ! 狸に殺されないうちにな」
     マッキが一般人に対して凄みつつ、パニックテレパスを使う。
     その途端、一般人がダッシュで逃げた。
     都市伝説の玉的な塊を見たせいかも知れない。
     ほんのりエロス、過激で卑猥、何か見てはいけないものを見てしまったような気持ちになってしまったのかも知れない。
     もしくはマッキが、ただ単に怖かったためか。
     どちらにしても、全速力だった。そこに迷いは微塵もない。
    「さあ、これで遠慮なく戦う事が出来るタヌ!」
     アルファリアがポンポコポコリンと身構えた。
    「だから、アタシは戦う気なんて、まったくないの! 平和が一番。ラブ&ピースよ」
     都市伝説が化粧をパタパタとしつつ、体をクネクネさせる。
    「申し訳ありませんが、ここで壊させていただきます I start a manoeuvre」
     ヒュートゥルがスレイヤーカードを構えた。
    「……って、ちょっと本気!? 私は戦いたくないのにっ! だったら、こっちも遠慮しないわよっ!」
     都市伝説が殺気立った様子で、玉袋をブンブンと振り回す。
     殺られる前に、殺れ。
     今はただ、それだけ。
     何も考えずにデストロイである。
    「それじゃ、いぐにっしょん!」
     そう言ってエルファシアが、ハイテンションで胸を揺らした。

    ●たんたんたぬきのー♪
    「未来を革命する力を!」
     それと同時にナタリアがクルセイドソードを抜刀し、ビハインドのジェドと連携を取りつつ、都市伝説にクルセイドスラッシュを放つ。
    「ひゃん、あ、危ないじゃないっ!」
     都市伝説が慌てた様子で飛び退いた。
    「軽快ですね。もしやダンスにも素養があるのでしょうか? 社交ダンスなら私も少し心得があります。でしたら、タンゴはいかがでしょうか? 信楽焼きとダンスはきっと驚きに満ちた体験に違いありません」
     ナタリアが含みのある笑みを浮かべる。
    「ええ、いいわよ。さあ、踊りましょう。死のダンスってヤツを、ね」
     都市伝説が高笑いを響かせながら、頭上に掲げた玉袋をブンブンと振り回す。
    「何というか、シュールですね」
     ヒュートゥルが複雑な気持ちになりつつ、都市伝説の玉袋を狙い、バスタービームを撃ち込んだ。
     その一撃を食らって都市伝説のふたつの玉が砕け散り、都市伝説が悲鳴を上げた。
    「きゃああああ! もしも手術前だったら、危ないところだったわ」
     だが、都市伝説にとっては、冷や汗モノ。
     元々、処分に困っていたので、むしろ好都合だったようである。
    「……そこまでよっ! くっくっく……この小さな信楽焼きちゃんがどうなってもいいのかしら? からのスタイリッシュフォースブレイク!」
     エルファシアが返事を待たずに、フォースブレイクを仕掛けた。
    「……って、信楽焼きは関係ないじゃない!」
     都市伝説が思わずツッコミを入れる。
     反射的に返事をしようとしたのが、運の尽き。
     それが原因で受け身を取る事が出来ず、エルファシアの攻撃をモロに受けてしまったようである。
    「油断していると脆い体が、あっという間にボロボロだよ」
     鳴海が都市伝説の死角に回り込み、デッドブラスターを撃ち込んだ。
     それに合わせてマッキが霊犬のブラックポメと連携を取りつつ、都市伝説に攻撃を仕掛けていく。
    「あらん、アタシの事を心配してくれるの? これって恋の始まり。つまり、ラブ!?」
     都市伝説が有頂天気味にウットリとした。
    「こ、これは……、この場で倒しておかないと、取り返しのつかない事になりそうですね」
     陽和の脳裏に浮かぶには、鳴海と都市伝説の未来。
     沢山の子狸達に囲まれ、幸せな日々を送るふたり。
     これはこれでアリのような気もする、何となく……。
    「たぬきの想いを力に変えて、たぬ☆えくすぷろーじょん!」
     次の瞬間、アルファリアが一気に間合いを詰め、都市伝説めがけてトドメをさした。
    「ちょっ、ちょっとおー! アタシは何も悪くないのに! 酷いっ! 酷過ぎるっ!」
     都市伝説が納得のいかない様子で悲鳴を上げつつ、キラリと涙を光らせて跡形もなく消滅した。
    「事件解決ですね。皆さん、お疲れ様でした。それにしても……、自らの場所に飽きるという感覚、想像もつきませんね……」
     ナタリアが苦笑いを浮かべる。
     元々は居酒屋のマスコットキャラクターだったのかも知れない。
     だが、都市伝説が倒されてしまった事で、この辺りも少し寂しくなってしまうかも知れない。
    「なあ、アルファリア、後悔していないか? とりあえず、みんなには黙っておくから、な?」
     マッキが小さくコホンと咳をする。
    「ふっふっふ、たぬきの妄想力は世界一ぃぃタヌ!」
     しかし、アルファリアはまったく気にしていない。
    「そうたぬー」
     誘魚もアルファリアに合わせて、陽気に笑うのだった。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年5月11日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ