出遅れたTI・MA・KI

    作者:聖山葵

    「きゃあぁっ」
    「ふははははっ」
     上がる悲鳴の中で人々を大きな笹の葉で巻き、哄笑するのはおそらく一人の少女だった。
    「まだ五月は終わらない、よってまだチマキのシーズンちまっ」
     忍者のずきんと黒装束宜しく目元以外の全てを笹で覆い隠し両手には人々を捕らえた笹の葉に繋がる茎を握ってそのご当地怪人は吠える。
    「勘違いした者には思い知らせなければいけないちまっ」
     たぶん他の誰からも賛同を得られないであろう行動理念を持って、少女は人々の捕縛を続けるのだった。
     
    「と言う感じで一般人が闇堕ちしダークネスになる事件が起ころうとしてるらしいよ」
     集まった灼滅者達の前でエリ・セブンスター(霧を護りし金色の盾・d10366)が口を開けば、これを継いだのは、座本・はるひ(高校生エクスブレイン・dn0088)だった。
    「そして、闇堕ちした一人の少女は動き出す。だが、まだ人間の心を残した状態でだ」
     いわばダークネスの力をもっちぃながらもダークネスになりきっていない状況で。
    「いや、チマキなのだから『もっちぃ』はおかしいか」
    「そういう問題じゃ気がするけどわざわざ言及することなの? はるひちゃん」
    「いや。必ずしもというわけではないな、謝罪しよう。すまない」
     すかさずエリがツッコめばはるひは肩をすくめ頭を下げると切り出した。
    「私からの依頼は、少女が灼滅者の素質を持つのであれば闇堕ちから救い出して欲しい、と言うものだ」
     また完全なダークネスになってしまうようであれば、その前に灼滅を。
    「バベルの鎖に影響されないタイミングで動くなら、君達が現場に赴いた時には既に少女はご当地怪人チマキラーへと変貌し、人々を巨大な笹で捕まえている」
     捕まえる以上のことをしていない辺りは人間の意識が残っているからなのかもしれないが、捕まえられている人からすればこの時点で充分迷惑だ。
    「故に、人々を解放するという意味でも少女を救うという意味でも戦いは避けられない」
     闇堕ちした一般人を救うには戦ってKOする必要があるのだから。
    「一般人への捕縛をやめるように言えばチマキラーの意識はこちらに向くだろう」
     あとはそのままわざと逃げ出せば笹にくるまれた人々を放置してご当地怪人と化した少女は灼滅者達を追ってくる。
    「現場の側に人気のない空き地があるのでそこへ誘導することを推奨しよう」
     付近の一般人は既に逃げ去っているか笹にくるまれているので、誘導し終えてしまえばあとは戦うだけだ。
    「手強いようなら人の意識に呼びかけて戦闘力を低下させるのも手かもしれないな」
     説得するならば捕縛以上のことをしなかった点をつくといいともはるひは助言する。
    「戦闘になればチマキラーはご当地ヒーローと影業のサイキックに似た攻撃手段で応戦してくる」
     ただし、操るのは影ではなく大きな笹。
    「効果こそ変わらないが、油断は禁物だ」
     いかにイロモノっぽく闇堕ちしかけであろうともダークネスの力は侮れない。
    「もっとも、君達ならやり遂げてくれると信じているがね。健闘を祈るよ」
     釘を刺すはるひに見送られ、君達は教室を後にするのだった。
     


    参加者
    因幡・雪之丞(青春ニトロ・d00328)
    笹銀・鐐(赫月ノ銀嶺・d04707)
    桜庭・翔琉(徒桜・d07758)
    聖・咲耶(中学生神薙使い・d16119)
    上土棚・美玖(高校生デモノイドヒューマン・d17317)
    東屋・桜花(もっちもち桜少女・d17925)
    客人・塞(荒覇吐・d20320)
    月叢・諒二(月魎・d20397)

    ■リプレイ

    ●ちまき漁は許されない
    「そこまでだ、チマキラー」
    「ちまっ?!」
     何だかもうスゴイ=カッコで人々を捕まえていた少女らしきモノは桜庭・翔琉(徒桜・d07758)の声に驚きつつ振り返った。
    (「……何だか遅れてやってくるヒーローみたいな気分だな?」)
     まだ状況に理解が追いついていない態の元少女を眺め、翔琉は胸中で苦笑する。
    「新しい餅……非常にトラウマを刺激する格好だけど……だからこそ助けなきゃ」
    (「笹製メンポとボディスーツに身を包み人々を捕縛し続けるご当地怪人少女は実際スゴイ=メイワク。ダークネス滅すべし、慈悲はない……なんてね」)
     ブツブツと呟いていた東屋・桜花(もっちもち桜少女・d17925)の事はブシノナサケでイットキスルーし、ご当地怪人と化している少女をまじまじと観察しだしたのは、胸中で戯けて見せた月叢・諒二(月魎・d20397)。
    「何をしているそこ。笹はそうして使うものか?」
    「それ以上やっちゃダメ」
     その間も笹銀・鐐(赫月ノ銀嶺・d04707)がジト目を向け、復活した桜花も声で制止する。
    「むぅ、みんな捕まえたと思ったのにまだ居たちま?」
     灼滅者達からすれば、言われたとおりに動いている訳だがご当地怪人チマキラーの反応も情報の通り。
    「そこまでにしてください。その人達を解放してください」
    「チマキラーさん。一般の人に迷惑かけたらダメよ。すぐに離してあげて」
    「っ、次から次へと……飛んで火にいる夏の虫ちま、お前達も捕まえてやるちまっ」
     更に聖・咲耶(中学生神薙使い・d16119)と上土棚・美玖(高校生デモノイドヒューマン・d17317)から注意されたチマキラーは一般人を捕まえていた笹の茎を手放すと新たな葉を取り出して叫んだのだ。
    「それはご遠慮願いたいな」
     無論、客人・塞(荒覇吐・d20320)達も大人しく捕獲される気はない。
    「なっ、こら! 待つちまっ」
     逃げ出した一同にご当地怪人は驚きの声を上げるも、我に返って灼滅者達を追い、走り出す。
     元少女は知らなかったのだ、それが予定通りの行動であることなど。
    「はぁ、はぁ……追いつめたちまっ」
     灼滅者達を追って足を踏み入れた空き地に自分が誘い込まれたことも。
    「走ったら栄養補給がいるからな。ほら、ちまきくれるんじゃなかったのか?」
    「なっ、何の話ちまっ?!」
     いきなり話しかけられた上に鐐からチマキを要求されチマキラーは面を食らう。それは隙だった、他の灼滅者のことも一瞬忘れてしまうほどの。
    「ちまちゃん、勘違いした者には思い知らせなければいけない、っていったよな」
    「えっ」
     だから、因幡・雪之丞(青春ニトロ・d00328)の言葉はまさに不意打ち。
    「だったら笹の葉でくるむよりも、すげー美味いちまきを食わせてその良さを知らしめたほうがいいんじゃないか?」
    「食べさせて……知らしめる?」
     心で身構えるよりも早く投げかけられた問いに元少女は即座に応じることも出来ず呆然と立ちつくす。
    「それにしても。なるほど、モッチア。ふむ……なるほど」
    (「それにしてもなんでこんな格好になってしまうのかな?」)
     諒二がご当地怪人と桜花を交互に見て納得したように頷き、咲耶が笹の葉に身を包む姿を見て疑問を抱くには充分な時間を。
    「いきなり捕まえて縛り上げてもお前の言いたいことは伝わらないぞ?」
    「うぐっ……そっ、そんなことないちまっ」
     この間も説得は続いていた。塞の意見に呻いたチマキラーが反論するのに要した少しの間は、塞の言うことも一理あると思ってしまったからだろう。
    (「ご当地の皆さんて、どこか憎めないのよね。やりすぎるとけが人も出ちゃうから早めに止めてあげないと」)
     目に見えて動揺する様、ツッコミどころに事欠かない格好へ何処か生ぬるい視線を向けてしまった美玖は、発想がかけ算に発展しない内に説得に加わるのだった。

    ●それは誤解ちまっ
    「それともあれか。そんなちまきの作法も解さぬ輩に食わせるちまきはねぇ! ってことか?」
    「ち、ちがうちまっ。ほら、これを食べてチマキの素晴らしさを実感するっちま」
     疑惑の視線へブンブン首を横に振ったチマキラーは己の胸元に手を突っ込み、中から引きだしたモノを雪之丞へと差し出す。
    「ぶっ、ちょ」
    「ちまっ?」
     むろん、他の何でもなくチマキだった。だから、問題があるなら取り出し方であろう。
    「チマキを見て鼻血だすとか、よっぽどのチマキ好きちまね?」
    「違うよ! ……ていうか何よりもまず自分の格好に疑問を持って?!」
     何だか誤解している様子のチマキラーを見て、桜花は思わず叫ぶ。
    「……なかなかいけてると思うちまっけど?」
    「ああ、やっぱりぃ」
     返ってきた感想に桜花が頭を抱えたが、ご当地怪人になっていた時は桜花も自分の格好に疑問を抱いてなかったのだ。反応としては当たって欲しくない予想の範疇であった。
    「しかし、これはチャンスちま。この男をチマキで悩殺してその隙に――」
     むしろチマキラーは味を占めて再び胸元に手を突っ込み。
    「ぶべばっ」
     美玖の炎を纏ったエアシューズで蹴り倒された。
    「な、何するちまっ」
    「言いたいことはわかるとも」
     結構痛かったのか涙目で元少女が起きあがった時には、次の一撃、巨大化した諒二の腕が迫っていた。
    「季節のものだからというだけで食べなくなってしまう、そんなのは勿体ないし悲しいことだと」
    「ち、違うとは一概に言い切れないけれどそうじゃなア゛ーッ」
     きっと不意打ちに対する抗議だったんじゃないだろうか、とは誰も言わない。戦ってKOし少女を救うのが灼滅者達の目的だったから。
    「くうっ」
    「ちまきって美味しいよね。でも強制したら好きな人もちまきが嫌いになっちゃうよ」
     咲耶は諒二の腕を押しのけて立ち上がろうとするチマキラー目掛けて説得しつつ指輪から魔法弾を放つ。
    「ちょっ」
     そう、ご当地怪人が避けられそうにないタイミングで。
    「巨大な笹で捕まえる手腕は見事なもんだ。だがそれ以上のことを人々にしなかったのは何故だ? 思い知らせたかったんだろ?」
    「はっ、言われてみれば……って、現在進行形で僕がそれ以上の酷いことされてるちべあっ」
     呼びかけつつ盾を広げる翔琉にノリツッコミよろしく叫んだ元少女の後頭部へ魔法弾は命中した。
    「うぐぐ、何故ちまっ……話しかけられただけでどうしてこうも……」
     説得は効いているようだった。だからこそ、チマキラーは灼滅者達を脅威と見る。
    「ええい、大人しく縛られるちまっ!」
     身体を包む笹葉の合間から触手のようにシュルシュルと伸び出したご当地怪人の笹は鎌首を持ち上げ一斉に襲いかかったのだった。

    ●マスター、いつもの
    「包んだ笹の葉より器が狭いぜ、ちまちゃん! 俺たちはもっと、自由にちまきを食べていいはずだ! そうだろ!?」
    「うるさいっ、これ以上僕をまどわせるなちまっ」
     まるで、最初の反撃を繰り返し再生するかのように。雪之丞に叫び返しつつ元少女が笹の葉を嗾けた。
    「んっ、……みんなに、大好きな……餅を食べて欲しいんでしょ? 気持ちはよくわかるよ」
     本来なら雪之丞を狙いたかったのだろう。だが、笹の葉に四肢を拘束されていたのは仲間を庇うかのように立っていた桜花で、腕や足に絡み付く笹に顔をしかめながらご当地怪人へ言葉をかけ。
    「でも無理やりはダ、ぅあ……ダメ、ちょっとどい」
    「は? うぉぁっ」
     拘束されたまま動こうとした桜花は、バランスを崩してを押し倒す。
    「うにゃあああ?! どこさわってるのぉぉぉ?!」
    「んなこと言ったってだな、ちょっ、動くな余計に絡ま」
     おそらくはいつものアクシデントであった。
    「ど、どんなものちまっ! 一度で二人を無力化したちまっ、ふふっ次はだばぶばっ」
     降って湧いた幸運で調子に乗ったチマキラーが鐐から拳の乱打を貰ったのは、インガオホー。
    「やれやれ…… ちまきとは何かも忘れたのか? ちまきは美味いよな。人を笑顔に出来る。お前、人を笑顔にしていたか?」
    「そ、それは……」
     現在進行形でやってることがコントめいているがそれは元少女の意図せぬ所。
    「まぁ、ツッコミどころだらけではあるけどな」
     ばっさり斬り捨てながら翔琉は地面を蹴るとほぼ一瞬でチマキラーの背後へ回り込む、身を守るものごと日本刀で斬り裂く為に。
    「ちまーっ、うぐぐ、この程……ど?」
     そう、身を守るものごと。
    「だめーっ」
     支えを失ってぺろんとめくれた笹の中身、大きく露出した肌色を慌てて桜花が覆い隠し、頬に手形をつけた雪之丞は動揺する。
    「これは……下手にあてるとヤバい!」
     どうヤバイかは言うまでもないだろう。ついでに言うなら絡まった状態から復活した雪之丞も翔琉と同じことをしようとしていたところなのだから。
    「確かに厄介かもな」
     と、平静を装いつつも少し恥ずかしそうにしつつ容疑者は供述しており。
    「なんてことするちまっ、こうなったらお前達も剥いてやるちまーっ!」
     混沌は加速する。
    「『包んで隠しちゃうより開いて見せてアピールしなきゃ』なんて言いづらい空気だよね」
     考えていた説得の文句が拙いことに諒二はヘラヘラ笑いを苦笑に変え。
    「一般人を捕縛しおしおきするのは良くないわ。ちまきが嫌いになっちゃったら本末転倒じゃない」
     かわりに口を開いた美玖が指先に集めた力を味方に撃ち出しながら元少女を見つめた。
    「明後日の方向にやりすぎてしまうのはダークネスのせいなの。でも、貴女次第でその力をコントロール出来る様になるわ」
    「今なら引き返せるぞ。迷惑はかけただろうが、無関係な人間を傷つけるようなことはしてないわけだしな」
    「がっ、僕を惑わすのをやめるちまーっ!」
     呼びかけの合間も攻防は続く。塞がマテリアルロッドで殴りかかれば、お返しとばかりに笹の葉を刃と化して斬りつけ、味方を庇ったライドキャリバーが地面にパーツの破片をまき散らして横倒しになる。
    「サクラサイクロン!」
    「大丈夫、この程度の損傷なら修復可能よ」
     すかさず咲耶が指先からサクラサイクロン向けて光を撃ち出し。
    「笹も災難だ。ちまきを包むいい香りの衣装になるはずだったのに、人をくるんで怖がらせて……それが本当にやりたいことか?」
    「うっ」
     言葉に詰まったチマキラーを視界に入れて鐐が出現させるのは、赤きオーラの逆十字。
    「とっとと自分を取り戻せ、この阿呆!」
    「きゃぁぁぁっ」
    「悪い、ちょっと痛いの我慢してくれよ!」
     斬り裂かれ悲鳴をあげるご当地怪人へ資格に回り込んだ雪之丞が死角から斬りかかり。
    「桜餅とチマキで季節は違うけど、餅を愛する仲間としてそれはさせない」
     一人のご当地ヒーローが地面を蹴って宙に舞う。
    「桜餅キーーック!」
    「なっ、しま、ちまぁぁぁぁっ」
     二方向からの攻撃に疲弊したチマキラーは対処出来ず、両方まともに食らって蹌踉めき。
    「くっ僕はまだ……」
    「さてと、それじゃあさくっと笹をひっぺがして真っ当な方法でちまきPRをしてもらうとしよう」
    「あ……」
     非物質化した諒二によるクルセイドソードの一撃を受け、ズタボロの服を着た少女の姿に戻って崩れ落ちたのだった。

    ●あるいみできょうい
    「んぅ……ここは?」
    「戻れてよかった。おかえり」
     目を覚ました少女を待っていたのは、桜花の抱擁だった。
    「はーい、男性陣はこちらを見てはいけませんよ」
     かけられたタオルを持ち上げる少女の胸が押しつけられる形になった桜花のもっちあ(名詞)と一緒に変形し、少々刺激的な光景を作り出していたが、咲耶がバスタオルで隠していたこともあって目撃者は女性のみ、何の問題もない。
    「じゃあ着替えないとね。塞から上着も預かっ……あ」
     そう、例えば切り裂かれ、ぷらんと垂れ下がった服の一部に桜花が足を引っかけても。
    「わっ、とっ」
    「ちょっ、待」
     ビリビリと布の引き裂かれた音がし、直後に二人分の悲鳴が響いた。
    「痛たた……あ、御免ね、怪我はない?」
    「そ、それより手、僕の……に、引っかかって」
     何だか大変なことになっているようであったが、バスタオルの向こう側に居る男性陣にはサウンドオンリー。
    「見たいか見たくないかで言えば見たいけど相手は嫁入り前の女の子! 女の子!」
    「おい、普通悩むなら助けに入るかどうかだろ」
    「……えっと、大丈夫よ男性陣は通さな」
     葛藤する雪之丞へ翔琉が冷静にツッコミ、バスタオル越しでも当然聞こえたやりとりに振り返っていた咲耶は、視線を戻して固まる。桜花の腕が紐に絡まった事で少女の下着が外れ、服の裂け目から大きな何かがほぼ全貌を露わにしていたのだから。
    「大きめのものを持ってきたけど……大丈夫かな?」
     格差は自分と比べてしまった目撃者にダメージを与え、口にした疑問が胸部分だけ大丈夫じゃなかったと言う結果で追加ダメージになったのは、この数分後。
    「どんなものでも続けば飽きる。美味しい時期にピンポイントだからこそ、忘れられないんじゃないかな?」
     番茶の湯気をなびかせながら鐐はハプニングから生還した少女を横目で見る。
    「学園で仲間を見つけてみたらどう? そういう人も結構いるしね」
    「よければ一緒に来て、チマキもうちの餅屋に並べない?」
     咲耶が提案する側から「そういう人」が少女をさっそく勧誘していた。
    「そっか、お店に並んでればオールシーズンチマキ食べ放題だよね」
     一般の感覚では鐐の言うことも間違っていないのだろう、だが大好きな人間にはいつでも食べられるという状態もありがたいのだ。
    「チマキってのは意外といろんな種類があるらしい。ちまき専門店なんてのもあるくらいだから、何も端午の節句にしか食べられないわけじゃないさ」
    「つまり、どっちにも一理あるってことね。私だってちまきもお餅も大好きだし!」
     塞を含む三人を見た美玖はそう結論づけ、少女へ乞うた。
    「それより、美味しいちまきを売ってるお店、知ってたら紹介して欲しいの」
     ちまき愛故に怪人にまでなった少女だ、ならばその手の知識も豊富と踏んだのかも知れない。
    「うん、もちろんOKさ」
     実際、少女は頷いて見せた。
    「ちまき持ってきたけど食べる? 桜餅もあるよ」
     と咲耶が薦め、ちまきや桜餅が振る舞われた後ではあるが、だからこそ食べ比べてみたいと思ったのか。
    「良ければ皆さん、彼女のお勧めのお店で食べて帰らない?」
    「まぁ、おすすめのちまきがあるなら食べないことには納まりがつかないね。是非とも食べに行かなきゃ……ん?」
     美玖の提案に諒二は同意し、ふと思い出して問いかける。
    「そう言えば君の名前、聞いてなかったね。自己紹介して貰えるかい?」
    「あ、確かに。僕は笹茅・ちまき(ささがや・ちまき)、以後よろしくっ」
     ポンと手を打った少女はビッと指を立てて名乗ると、灼滅者達に背を向けて歩き出す。
    「じゃ、ついてきて」
     晴れ渡る空の下、寄り道の確定した瞬間だった。
     

    作者:聖山葵 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年5月24日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 9
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