竜童院・一真(四代目竜童院・d22621)は、こんな噂を耳にした。
『冬休みが終わっても寝正月を続けさせる都市伝説がいる』と……。
都市伝説が確認されたのは、都内某所にあるオフィス街。
この場所は寝る間も惜しんで仕事をするほど、忙しい地域。
そのため、『GW、何それ? 美味しい? と言うか、週一で休めれば幸せっしょ?』的な考えが常識になっており、サービス残業は当たり前。
それだけ忙しいため、正月も休みがほとんどなかったほど。
だが、都市伝説が現れた事によって、長期休暇中状態。
それが原因で廃業に追い込まれた会社もあるらしく、ごく一部で深刻な状況に陥っているようである。
しかし、都市伝説はそんな事など、おかまいなし。
みんなで眠れば怖くない、とばかりに、強力な催眠によって、一般人をだらけさせているらしい。
しかも、都市伝説の催眠に掛かると、やる気がなくなってしまうため、色々な意味で注意が必要である。
参加者 | |
---|---|
アルマ・クラウヴェル(青金の歌姫・d10831) |
野和泉・不律(パーフェクトワールド・d12235) |
東堂・昶(カフェの番狗・d17770) |
英田・鴇臣(拳で語らず・d19327) |
竜童院・一真(四代目竜童院・d22621) |
高坂・透(だいたい寝てる・d24957) |
シェス・ゴールド(マジックヴェロシティ・d26096) |
陽横・雛丸(すぐおいしい・d26498) |
●いっそ、このまま年末まで
「寝正月、ねぇ……」
野和泉・不律(パーフェクトワールド・d12235)は、事前に配られた資料を見つつ、仲間達と共に都市伝説が確認されたオフィス街に向かっていた。
都市伝説は強力な催眠によって周囲にいる人間をのんべんだらりな気持ちにさせて、深い眠りの世界へと誘ってしまうようである。
そうなってしまうと自分ではどうにも出来ず、『とりあえず、明日から頑張ろう』、『自分が頑張らなくても、他の人が何とかしてくれる』、『まあ、俺の代わりなんて、いくらでもいるしな』的な考えに至ってしまうらしい。
「年末お姉ちゃんに会った時、『寝正月しちゃだめだからね』って言われました。だから、寝正月はめっです」
アルマ・クラウヴェル(青金の歌姫・d10831)が、キッパリと断言をする。
だが、事態は予想以上に深刻で、被害者達を説得に行った者達まで同様の被害を受けており、正月から今日に至るまで負の連鎖が続いているようだ。
しかも、この事を心配した身内が食料を持ち込んで被害者達と接触を図っているため、干物同然になりながら何となく生きている者もいるらしい。
「寝正月、言うても寝すぎやろ!? もうGWすら終わってもうたで。企業も潰しとるし、こらこのまま放置しとったらあかんな」
竜童院・一真(四代目竜童院・d22621)が、険しい表情を浮かべる。
都市伝説が確認されたオフィス街が近づいているせいか、妙にダルイ……と言うよりも眠い。
いっそ、このまま眠ってしまう事が出来たら、どれほど幸せな事か。
そこに待っているのは、間違いなくパラダイス。
……眠りたい。このまま、アスファルトの地面で眠りたい。
だが、そんな事をすれば、都市伝説の思うツボ。
それだけは何としても、避けねばならなかった。
「確かに、よく考えたらコレって寝GWっていうのかァ? つか、釣られて眠くなりそ……」
東堂・昶(カフェの番狗・d17770)が、ウトウトとする。
まるで夢の世界に吸い込まれるような感覚。
一瞬でも気を抜けば、そのまま夢の世界にレッツゴー!
そうなれば、おそらく自力では帰ってこれない。
恐怖の片道切符的な何かである。
「つまり、五月病って事か。あー……、そんなんもあったな。学生の本分は遊び……と勉強だからな。だらけてる場合じゃねぇんだよ」
英田・鴇臣(拳で語らず・d19327)が、眠気を振り払うようにして気合を入れた。
それでも、眠い。眠過ぎる。
都市伝説が確認されたオフィス街が近づくにつれ、徐々に眠気が強くなっていき、そのまま夢の世界に引きずり込まれそうな錯覚を受けた。
「とりあえず、サービス残業しなくては運営できない会社なんて潰れてしまっても仕方が無いんではなくて? まあ、私は使う側なので働かずともお金は空から降って参りますの」
シェス・ゴールド(マジックヴェロシティ・d26096)が、高笑いを響かせた。
もしかすると、被害者達が見ている夢は、働かなくても暮らしていけるパラダイス。
そこは飢えも貧困もない夢のような世界……というよりも、実際には夢だが、本人達ですらその事実に気づいていない可能性が高かった。
「うーん、個人的にはものすごく応援したいけど、そういうわけにもいかないから、なんとかしなきゃねぇ……ZZZ……」
そう言いつつ、高坂・透(だいたい寝てる・d24957)が眠りにつく。
都市伝説の催眠が効いているおかげか、アスファルトの地面であっても、まるで高級羽毛布団の上で寝ているような心地良さ。
「つーか、自営業に休日なんかねーんだよ! 休み? 祝日? にわとりがこっここっこ鳴いてる毎日だから眠れもしねーよ!」
途端に陽横・雛丸(すぐおいしい・d26498)が、ムッとした表情を浮かべる。
そんな状況で休めば、次の日の仕事量は2倍。さらに倍!
誰かが代わりにやってくれるようなものではないため、例え休んだとしてもその先に待っているのは地獄である。
その事が分かっているため、休みたいという気持ちにはならなかった。
●眠れ、眠れ、安らかに
「これは随分と面白い事になっているようね」
都市伝説が確認されたオフィス街に辿り着いた不律は、その場に倒れた沢山の一般人を目の当たりにした。
一般人達はすっかり痩せ細っていたが、薄らと笑いを浮かべており、何処か幸せそうだった。
「ほら、あなた達が必死に稼いでいたお金よ。目を覚ましてかき集めなさい、今起きて何処かへ立ち去るならタダであげるわよ」
シェスがマネーギャザを使い、高笑いを上げて金をばら撒いた。
しかし、一般人は無反応。
それどころか、『夢の世界だったら、金は使い放題だ』と笑い声を響かせた。
この様子では、夢の中では働く必要も、勉強する必要もなく、朝から晩まで面白おかしく暮らす事が出来るのだろう。
夢と現実の狭間にいる一般人ですら、そのような答えが出るのだから、深い眠りについた者達は、尚更である。
「なんで、とうもろこしじゃねーんだよ! てめぇ金あるなら、うちのにわとり牧場の卵買ってけよ!」
途端に雛丸がキレた。ブチ切れた。
こんなもの、鶏の餌にもならない。
ならば、いくらあっても意味がないのである。
「ここは楽園、パラダイス。みんな、ネムネム。おやすみのぉーん」
そこに現れたのは、都市伝説であった。
一言で言えば、ピンク色の塊。
スライムのようにも見えたが、ベトベトというよりも、ふわふわ。
それと同時に激しい睡魔が雛丸達を襲い、激しい眠りの世界へと誘っていく。
「さすがにこのまま放っておくわけにはいかねぇか。どうにか起こさねぇとな」
鴇臣が困った様子で溜息をもらす。
最悪の場合、都市伝説を倒すまで、眠りについてしまうため、戦いどころではなくなってしまう。
「……たくっ! 寝たい奴は寝かせておけよっ! 起こす時間が勿体ねえだろ!」
雛丸がイライラした様子で叫び声を響かせる。
正直、眠い。シャレにならないほどに。
だが、目を閉じれば聞こえる、鶏達の鳴き声……。
眠れない。眠れる訳がない。
しかし、他の仲間達はスヤスヤ。
それを見た一真がイライラ。
「いつまで寝とんのじゃボケェ! さっさとおきんとハバネロ食わせて鼻に練りワサビぶち込むで!!」
一真がムッとした表情を浮かべて、ハバネロを振り回す。
「ちょっ、ちょっと、早まらないで! これは作戦……作戦だよっ! だから本当に寝ていたわけじゃないんだよ? う、嘘じゃないからね」
透が青ざめた表情を浮かべて首を振る。
その間に一真が都市伝説の口に生のハバネロをぶち込み、きっちり目が覚めるように鼻に練りワサビを挿入した。
だが、都市伝説はネムネム状態。
ぼんやりと目を開け、『ねむねむのぉーん』と呟いた。
それと同時に、さらに激しい睡魔が一真達に襲い掛かってきた。
「練りワサビの刑だけは何としても避けないと……」
アルマが激しい睡魔と戦いつつ、眠気覚ましのガムを噛み始める。
しかし、ガムを噛むリズムが睡魔と共鳴し、余計に眠くなってきた。
おそらく、それは極限にまで眠いため。
例えるなら、徹夜明けの徹夜。
体が回復していない状態で、無理をした反動。
「つか、疑問なンだケドよ。……正月なんざ、とっくに終わってンのに寝正月って出来るモンなのかァ?」
昶が都市伝説に視線を送る。
「まだ正月は来ていないのおーん。正月が来るまで、ネムネムのおーん」
都市伝説が眠そうにアクビをした。
「ちったァ気が合うかもしれねェケド、流石に灼滅させてもらうとすっかー」
昶が覚悟を決めた様子で、スレイヤーカードを構える。
「わっ、わっ、暴力はいけないのぉーん!」
都市伝説が慌てた様子で催眠効果を倍増させた。
それに合わせて一真が殺界形成を発動させたが、睡魔の力が勝っているせいか、ほとんど効果がないようだった。
●眠りの世界
「おーほっほっ! さあ、どこからでも掛かってらっしゃい!」
すぐさま、シェスが預言者の瞳を使い、ライドキャリバーに身を守らせた。
だが、都市伝説は動かない。
スヤスヤと寝息を立てて、完全に無防備だった。
「ひょっとして、罠かしら?」
不律が不思議そうに首を傾げる。
しかし、そんな事を考える余裕がないほど、激しい睡魔が襲ってきた。
「戦いなんて止めて、みんなで一緒にネムネムのぉーん」
都市伝説がほんわかした様子で答えを返す。
最初から戦う気などないのかも知れない。
その証拠に都市伝説は不律達を眠らせる事しか頭にない。
「眠れる訳がねーだろうが!」
それでも、雛丸は眠らなかった。
いや、眠れなかった。
脳裏に過ぎるのは、鳴り止む事の無い鶏の大合唱。
この鳴き声が聞こえている限り……、眠る訳にはいかなかった。
「……と言うか、もう正月は終わっているんだよ。キミは寝正月なんかじゃない、五月病なんだよ。……って言っても無理かー。来年の正月まで眠り続けるとか言っているわけだし……」
透がラジカセを大音量にして、季節感ありまくりの曲を流す。
だが、それすらも子守唄。
いつの間にか、ナノナノは寝ていた。釣られて、透もスヤスヤ。
「あー……ワリィ、オレも限界。寝るわ、おやすみー」
昶も鏖殺領域を使った後、ぼんやりと眠りについた。
正直、この状況で起きているのが、酷というもの。
その時、都市伝説がふわーと大きく口を開けた。
「そんなに眠りたいのなら、一生眠っていろ!」
鴇臣が最後の力を振り絞るようにして、オーラキャノンを撃ち込んだ。
その一撃を食らった都市伝説が悲鳴すら上げる余裕もなく、顔を歪ませ跡形もなく消滅した。
「都市伝説やないけど、こないに暖かいと眠たくなるわ。さっさと帰って昼寝でもしよか」
一真が眠そうに眼をこする。
今まで我慢していた分、眠気も倍増。
いま眠らないのが、奇跡だと思えるほどだった。
「ふわァ……帰ったら、昼寝でもするかーッと」
昶が気怠く身体を伸ばし、大きな欠伸をした。
戦闘中、ずっと眠気を堪えていたためか、一気に睡魔が襲ってきた。
「さて……、これでこの周辺で働いている人達も目を覚ましますね。今まで寝ていた分を取り返すために、しばらくは忙しいのでしょうケド」
そう言ってアルマがゆっくりと辺りを見回した。
目を覚ました一般人の大半は、状況を飲み込む事が出来ず、パニックに陥っていたが、本当にシャレにならないのは、これからだろう。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
|
種類:
公開:2014年5月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
|
||
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
|
||
あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
|
||
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|