歴史ある祭りの後に轢死あり

    作者:るう

    ●浜松市、馬込川沿い
    「ギョーッザッザ! 四百年以上の歴史を誇る祭りを終えた今、我ら浜松怪人は皆、ご当地パワーに溢れてるでギョーザ!」
     川沿いの路上を、一人の浜松餃子怪人が上機嫌で散策していた。三日間に渡る伝統の祭りを満喫し、彼の頭の餃子の中ではキャベツ多めの具が輝かんばかり。
    「宇都宮餃子怪人だろうと中国餃子怪人だろうと、今なら我らに勝てる者はいないでギョーザ!」
    「じゃあもしかして、六六六人衆にも勝てちゃったりするのかな♪」
     後から突如かけられた声に、当然でギョーザ……と答えようとして振り返った彼は見た。
     ごろごろごろ……。
    「ギョギョーッザ!? 変なロードローラー人間が追いかけてくるでギョーザ!?」
     ごろごろごろごろ……。
    「誰か助けてギョーザ! このままじゃ轢き潰されるでギョーザ!!」
     川沿いに、餃子怪人の悲鳴がこだまし……プチッ。

    ●武蔵坂学園、教室
    「どうやら、『???(トリプルクエスチョン)』なる謎めいた六六六人衆が動いたようですね」
     微塵切りにした野菜と挽肉を混ぜながら耳を傾ける西園寺・アベル(高校生エクスブレイン・dn0191)の様子を見るに、どうやら今、彼に未来予測が降りてきたようだ。
    「彼は、武蔵坂学園の灼滅者、外法院・ウツロギ(毒電波発信源・d01207)さんを、分裂という稀有な特性を持つ六六六人衆、序列二八八位『ロードローラー』へと闇堕ちさせたのです」
     二八八位と言えば、かつて新宿防衛戦で現れた『クリスマス爆破男』の序列である。その後、空位となっていたその序列へと、恐らく彼はその特異な能力を評価され収まったのだろう。
    「分裂したロードローラーは、各所で事件を起こしています。皆さんには、それらの事件を一つ一つ解決して欲しいのです」
     そこまで説明すると、アベルは挽肉を丸め、丸い皮の中に入れる。それはすぐに、餃子怪人の頭そっくりの形をした餃子になった。
    「理由はわかりませんが、彼は浜松市内の路上で、浜松餃子怪人を轢き殺そうとしているようです。ロードローラーは分裂個体ごとにある程度能力に差があるようですが、今回の個体は轢き潰し攻撃と跳ね飛ばし攻撃の他、どういう仕組みか自重を重くする能力を持つようですね」
     自身における武器の割合を極限まで増した、ある意味では究極の戦闘形態から使われるサイキックは、恐るべき威力を発揮する。対抗するには、怪人と共闘できれば有利になるだろう……怪人の方も願ったり叶ったりだろうし。
    「もっとも、その浜松餃子怪人もダークネス。最重要なのは今回のロードローラーを灼滅する事ですが、余力があれば怪人の方も灼滅して下さるようお願いします」
     祭りの後で気が大きくなっている怪人の事、灼滅者と出会って何もされなければ、灼滅者が自分の活動を応援してくれていると思い込み兼ねない。せめて勘違いくらいは取り除いた方がいいだろう。


    参加者
    石弓・矧(狂刃・d00299)
    晦日乃・朔夜(死点撃ち・d01821)
    洲宮・静流(蛟竜雲雨・d03096)
    神崎・摩耶(断崖の白百合・d05262)
    イルル・タワナアンナ(勇壮たる竜騎姫・d09812)
    上名木・敦真(高校生シャドウハンター・d10188)
    九賀嶺・夏々歌(罪に仕える断罪人・d23527)
    祀乃咲・緋月(夜闇を斬り咲く緋の月・d25835)

    ■リプレイ

    ●奇妙な共闘
    「ロードローラーじゃっ!」
    「ノリノリで叫んでないで、助けてギョーザ!!」
     その共闘は、イルル・タワナアンナ(勇壮たる竜騎姫・d09812)と浜松餃子怪人のそんなやり取りから始まった。
    「助太刀するぞ! 餃子を潰した新料理という境地も気にはなるが……お好み焼きではいかんのか?」
    「そういえばこの前あった祭りって、凧揚げ合戦があったんですよね。ちょっと見たかったですね……ああ、この辺りは人払いをしておきましたので、安心して戦えますよ」
     微妙にズレた参戦の名乗りを上げるのは、右手に剣、左手にお好み焼きのコテを握った神崎・摩耶(断崖の白百合・d05262)と、ぼんやりとリングスラッシャーを構える上名木・敦真(高校生シャドウハンター・d10188)。現れた灼滅者らを見て、ロードローラーはけたけたと笑うと前輪を持ち上げ、ウィリーの状態で踊り始めた。
    (「部長さん……いえ、ウツロギさん……こんな変わり果てた姿になるなんて!」)
     実に楽しそうな部長(だったもの)の姿を上から下まで眺めた後、祀乃咲・緋月(夜闇を斬り咲く緋の月・d25835)は額を抑えた。本人、満足してそうなのは結構な事だが。
     そして、同じくウツロギのクラブの部員、石弓・矧(狂刃・d00299)も、ロードローラーの実物を見て唖然としていた。
    (「流石はウツロギさん……闇堕ちした姿が予想の斜め上すぎます」)
     が、ロードローラーがいかに闇堕ちした仲間とはいえ、目の前にいるのは分裂体だ。
    (「こいつはただのダークネス……いつもどおりにいくっす」)
     九賀嶺・夏々歌(罪に仕える断罪人・d23527)が探しておいたこの戦場は、民家の並びが途切れた場所。
    「遠慮無用との事ですし、手を緩めず参ります」
     だがその前に、灼滅者たちにはやる事があった。
    「こいつ、浜松餃子好きを狙って轢いてるみたいだぞ。許せないよな」
    「分裂体くらいに怖気付いてないで、餃子怪人の底力を見せてみるの。今のあなたのご当地パワーなら、楽勝でしょ?」
     好き放題に餃子怪人を煽る洲宮・静流(蛟竜雲雨・d03096)と晦日乃・朔夜(死点撃ち・d01821)。最初は迷っていた怪人も、邪魔者もまとめて吹っ飛べとばかりに突っ込んできたロードローラーを辛うじて避けると、灼滅者たちにこう答える!
    「ああ……餃子好きのお前たちからご当地パワーが流れ込んでくるようでギョーザ! 浜松餃子怪人の矜持、見せてやるでギョーザ!」

    ●六六六建設の遊戯
    「ぎゃーっ! こっち来ないでギョーザ!」
     早速ロードローラーに追い回され、いきなり決意の挫けた怪人を、一筋の炎が救った。
    「ああ、仕方ないとはいえウツロギさんを攻撃するのは気が引けますねぇ」
     右から左に跳びながら斬りつけ、炎の剣で座席を燃やした矧の顔は、あらん限りの笑顔。普段は柔和な彼をして斯くたらしめたのは、ウツロギの人徳か、はたまた目の前のシュール時空か。
     だが、そんな事はどちらでもよい。重要なのは、目の前の敵を倒す事だけだ。夏々歌の背中を影のマントが覆い、アイマスクのような仮面が浮かぶ。目元を隠していた前髪を除けると、赤い瞳がロードローラーの未来を『視る』! 魔力の溜まりつつある指先が、ゆっくりと敵を向いた。
    「~~♪」
     が、ロードローラーは気にしない。鼻歌を歌いながら、まるで散歩でもしているかのように無造作に、灼滅者たちを跳ね飛ばす。すぐさま吹き抜ける清浄なる風。緋月の剣に刻まれた祝福の言葉が、仲間を守る力となったのだ。
    「それにしても、何故ロードローラーなんでしょうか?」
     緋月の独り言が聞こえたか、ロードローラーがせせら笑う……その顔面に、燃える銃弾の嵐が吹きつけた!
    「笑うのに忙しそうだったから、狙わせてもらったの。分身なら遠慮なく、速攻で仕留めさせてもらうの」
     物静かにガトリングガンを構える朔夜には、殺気を隠すつもりもない。殺すこと――それが今はまだ、彼女の生き様なのだから。
     驚きと興味の表情に変わったロードローラーの土手っ腹に、静流の鬼の拳が突き刺さる。巨大な重量が路上を横滑りし、アスファルトに二筋の傷を生む。が、ロードローラーとしての本能か、その傷を均しながら静流を潰さんとするロードローラー!
     どしん、という重い音が鳴り響く。それは矧の結界のため周囲には聞こえないが、ロードローラーが静流にのしかかった音だった。
     鬼の膂力が、重量を支える。優男に見えてタフガイ。だがその抵抗も、そう長くは続くまい!
    「ど……どうすればいいんでギョーザ!?」
     戸惑うばかりの怪人の肩を、摩耶が叩いた。もう片方の手は静流に向けて、治癒の力を注ぎ込み。
    「君の実力を生かしてもらうため、攻め手の中心たる正面を任せたい!」
    「わかったでギョーザ!」
     餃子怪人は敵の正面に立つと腰を落とし、左手を腰に当て、右手を突き出す。
    「喰らうでギョーザ! 浜松餃子を語るには欠かせない、もやしガトリングを受けてみるでギョーザ!」
     カカカカン。
     手から飛び出した大量のもやしは、回転するローラーに弾かれる……いや、もやしは確かに一度、鋼鉄のローラーに突き刺さった。だが、ローラーは一瞬のうちに回転力と重量を増し、それらを恐るべき遠心力で引き抜いたのだ!
    「もー駄目でギョーザ!?」
    「諦めるのかえ!?」
     イルルの叱咤に、怪人がはっとする。
    「ご当地ヒーローの妾とご当地怪人。例え立場こそ相容れずとも、その力の根源は同じ。浜松餃子の良さを聞かずして挽肉へ帰させるわけにも行かぬのが人情じゃ」
     そして防御を愛機『ティアマット』に任せると、竜型ハルバートを振り回して敢然とロードローラーに立ち向かう!
     ティアマットの機体には、敦真の放った光輪がエンブレムのように張り付いていた。その光の盾がロードローラーの突進を辛うじて食い止めているのを確認すると、敦真は同じものを他の仲間へも。
    「我もくよくよしてばかりはいられないでギョーザ! 今こそ我が力、奴に知らしめてやる時でギョーザ!」

    ●重量を極めた者
     その後の戦いが熾烈ではなかった、と言えば嘘になるだろう。餃子怪人はその後も気分が上下して、灼滅者たちはその度に彼をおだてなければならなかったし、幾度も自らの密度を増し続けるロードローラーへの攻撃は、次第にその効果を減じていったからだ。
    「困りましたね……このままでは、一度浜松餃子を食べてみたいのに前に体が持ちません」
    「必ずや浜松餃子こそが世界一である事を解らせてやるから、それまで持ち堪えるでギョーザ!」
     敵の外装を大きく裂いてから跳び退った矧の皮膚は、圧倒的な重量を受け、切り刻まれたかのようになっていた。餃子怪人が一念発起してロードローラーに向かっていった(そして跳ね飛ばされた)のを横目に見ながら、敦真は矧の肩を支える。
    「大丈夫ですか?」
    「石弓君の事は俺に任せて下さい。上名木さんは他の人の方を」
     矧の傷を護符で覆って応急手当とする静流に続きを任せると、敦真はすぐさまロードローラーの次の標的、摩耶の元へと向かう。
    「自重を増加させる力の源は、そのローラーの回転力だな」
     嬉しそうな表情を浮かべる六六六人衆のモーターへと、摩耶は大上段からの剣を振り下ろす。が、瞬時に後退するという、有り得ない機動で避けるロードローラー! 勢い余った剣が地面に大穴を空けるが、敵はその窪みを整地しながら、悪路を気にせず摩耶へと迫る!
    「何っ……!?」
     敦真のリングが割り込んだのは、ちょうどその時だった。迫る重量の半分近くを食い止められて、ロードローラーは悔しがる。彼は確かに強大な敵ではあったが、やる時にはやる餃子怪人、そして攻撃、回復、防御を弾力的に使い分ける灼滅者たちを前にして、常に優位でいられるわけではない。
     矧の手当を終えた静流が、ロードローラーの前に立ちはだかった。跳ね飛ばされるその瞬間、重量の下に自らの影を滑り込ませて動きを封じる。
     その代償たるダメージは、緋月の浄化の光によりすぐ癒された。地団駄を踏むロードローラーを眼光鋭く睨みつつ、緋月は攻撃に打って出るタイミングを探る。
    「灼滅者が、我が身を呈して助けてくれてるでギョーザ……! ダークネスと灼滅者は敵同士ではないギョーザ……?」
     感涙する餃子怪人へと、イルルは槍と斧を巧みに使い分けて戦いながら振り向いた。
    「敵同士である事に違いはあるまい……けれど、妾も餃子は大好きなのじゃ!」
    「おお……!」
     言葉に詰まった怪人の頭のすぐ脇を、夏々歌の術が掠めてゆく。
    「失礼いたしました。すぐそこまで敵が迫っておりましたので」
     彼女が、手元が狂って当たってしまっても構わないと思っていたのは事実だが、その言葉に嘘はない。際どい攻撃が奇襲となり、ロードローラーは跳び上がる。
     その一瞬の隙こそが、緋月の待っていたものだった。一振りの剣が、ロードローラーの装甲を貫く。そして、その穴へと吸い込まれるように、燃える弾丸が朔夜から放たれる!
    「あっつゥ~い! 体の中で何かが跳ね回ってるゥ~♪」
     ロードローラーは、何故か楽しそうにのたうち回った。内部から燃え上がった炎が座席を燃やしていた炎と合流し、一際大きく燃え上がる!
     再び、弾丸がばら撒かれた。敵はもう、子供のようにはしゃいだりはしない。
     それが、ロードローラーの分身の一体が、無事に灼滅された瞬間だった……その時だ。

    ●餃子怪人との決裂
    「灼滅者……餃子好きというのは嘘だったでギョーザ?」
     ロードローラーの灼滅と同時に力ある指輪を突き出した夏々歌へと、餃子怪人は腰を落として構えを取った。
    「嘘ではありませんよ? 浜松餃子の真価、確かに見せていただきました。ただ……」
     緋月の言葉を、静流が引き継ぐ。
    「冗談は餃子頭だけにしてくれるか? そもそも俺ら灼滅者だし、ダークネスは倒すべきだろ」
     摩耶は改めて、仲間たちを見回した。彼女自身を含め、全員が全員、連戦に耐え切れるかはわからない。けれど、傷の深い矧でさえ、痛む体をさすりながら摩耶へと強く頷いた。
    「さぁ。浜松餃子の魅力、妾たちに味わわせてみせよ!」
     一歩前に出るイルルへと向く、餃子怪人の不敵な笑み。
    「だが、一分だけ待つでギョーザ」
     怪人は懐から餃子の皮のパックを取り出すと、その裏に何やらしたため始めた。
    「……これは、我ら餃子怪人の秘密に繋がる情報でギョーザ。知りたければ我を倒し、奪ってみせるでギョーザ!」
    「私は宇都宮出身なんですが、やはり向こうの餃子の方が好きですね」
     敦真の言葉が、灼滅者と餃子怪人、両者の袂を分かつ。
    「ギョーザッザ! ならばこの戦い、どちらかが死ぬまで終わらないでギョーザ!」
    「逃げるつもりがないのなら、正々堂々、真っ向勝負で行かせてもらうの」
     朔夜の剣が、迷いなく餃子怪人を打つ!

    ●さらば餃子怪人よ
    「ギョーザッザ! 我を六六六人衆から助けた事、あの世で後悔するギョーザ!」
     夏々歌の呪詛を受け、脇腹から徐々に石化させられながらも、浜松餃子怪人は高笑う。だがお返しをしてやろうにも、生憎夏々歌は既に彼方。
    「ヒット・アンド・アウェイとは、ちょこまかと面倒な奴でギョーザ! 代わりにそこのお好み焼き女を挽肉にするでギョーザ!」
     摩耶の足元に餃子が現れ、弾力で空中に弾き飛ばした。その先には、一足早く跳び上がった怪人の姿!
     地面に叩きつけられた後、よろめきながらも再び立ち上がる摩耶。まだ、倒れるつもりはない。
    「あまり無理をなさいませんよう」
     緋月、次いで敦真がそれを支えた。盾役さえ健在ならば、攻撃の要を失い、総崩れになる心配はない。
     攻撃の要の一つ、朔夜の剣が、再び怪人へと閃いた。餃子の顔の分厚い皮も、その剣技の前には紙のごとし。そして第二の要、矧の炎が怪人へと迫る!
    「ギョーザッ!?」
     怪人が、燃えた。灼滅者たちの攻撃が、ここぞとばかりに集中する。その中でも怪人は、もやしガトリングの構えを取った。
    「一人くらいは道連れにするでギョーザ!」
     狙うは矧。ロードローラーとの戦いで負った傷をめがけ……。
    「実は、俺も宇都宮餃子派なんだ」
     唐突な静流のカミングアウトに、怪人の狙いがぶれた。反射的に静流を狙ったもやしの嵐は、彼に膝をつかせるに止まる。
    「キャベツ多めの浜松餃子に経緯を表し、とどめはこの技で決めるのじゃ」
     第三の要、イルルの体が緑に光る。
    「行くぞ! キャベツゥゥ……キィィック!!」
    「ば……馬鹿な! 浜松餃子に栄光あれ……でギョーザ!」
     川向こうまで吹き飛んだ怪人は、香ばしいごま油の匂いを撒き散らしながら爆発した!

    ●浜松餃子な日常
    「本当に冗談みたいな奴らだったな。その割には強かったが」
     武器を収める静流の目の前に、餃子の皮が一パックが落ちてきた。
    「ん? ……ああ、そういえば秘密がどうこうと言っていたな」
    「餃子怪人の秘密って、何だったんでしょうね。いかにも取ってつけたようでしたけど、まさかロードローラーに狙われた理由と関係があるのでしょうか?」
     首を傾げる敦真へと、パックに書かれた文字を素早く読み取った朔夜が首を振った。
    「餃子怪人お勧めの餃子店のリストなの。きっと、私たちに美味しい餃子を食べて欲しかったの」
     はぁ……と敦真が狐につままれたような顔をしていると、イルルが明後日の方角を指差して叫んだ。
    「折角じゃ、そのお勧めの餃子とやら、たらふく喰っていかんかえ?」
    「確かに、戦ったら少しお腹が空きましたね。是非ともそうしましょう」
     緋月の賛同を確認すると、イルルはリストを朔夜からひったくって歩き出す。

    「ウツロギさんは、餃子が好きでこんな事件を起こしたのでしょうか……それとも逆?」
    「それはわからないっすけど、見た目も事件も、インパクトは凄かったっすね、ロードローラー……」
     緋月のふとした疑問に、夏々歌はけらけらと笑い出した。けれど、この可笑しさを真っ先に話したい主任は、今はない。
    「いやはや、ウツロギさんの本体はどこにいるのやら……」
     矧の表情が、ふと翳った。一人の仲間も欠くことなく、特段の怪我もなく一つの戦いは終わったが、ロードローラーの本体を探し出し、人としての部長を取り戻すまで、事件そのものは終わらない。
     そんな暗鬱な思考は、摩耶の何の気ないセリフの前に、すぐに掻き消された。ウツロギが無事に帰って来た時には浜松餃子を差し入れてみましょうか、という緋月に対し、摩耶はあろう事か、こんな素っ頓狂な返事を返したのだ!
    「闇堕ちしている間にどんな料理を発明したのか、実演して貰うのか?」
     本当にノリノリで餃子を潰し始めそうだから困る。

     そんな話をしている間に、道の先には一つの店が見えてきた。
    「きっと、あそこなの」
     店から漂ってきたその匂いは、怪人を倒した時に広がったものと、よく似ていた。

    作者:るう 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年5月20日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 7
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