ガイスト・インビジビリティ(亡霊・d02915)は、こんな噂を耳にした。
『レトロゲームのようにドット絵の都市伝説が存在している』と……。
都市伝説は催眠の力によって、周囲をドット絵風に錯覚させる事が出来るらしく、催眠状態に陥った一般人は決まった台詞しか言えなくなり、横歩きしか出来なくなってしまうようである。
こうなると、何も考える事が出来なくなり、最悪の場合は自分が誰なのかさえ分からなくなってしまうほど。
都市伝説はこの場所で魔王として君臨しており、町内会を混沌に陥れているようである。
そのため、国王こと町内会長がお触れを出して勇者を集めているようだが、渡されるのはひのきの棒っぽい麩菓子と、胸元にデカデカと『町内会三十周年記念Tシャツ』と書かれた布の服のみ。
町にはドラゴンっぽいもの(実は土佐犬)や、黒騎士(実はその筋の方)などもいるため、色々な意味で注意が必要。
例え、都市伝説が『町内会の半分をお前にやろう』と言っても、決して『はい』と言ってはいけない。
ただし、都市伝説は身の危険を感じると、正体を現してドラゴンっぽいものになるため、色々な意味で注意が必要である。
参加者 | |
---|---|
ガイスト・インビジビリティ(亡霊・d02915) |
マリア・リンド(ヴァルキリーフェイク・d10691) |
村井・昌利(吾拳に名は要らず・d11397) |
浦坂・義一(マッドパーソン・d11591) |
ミリー・オルグレン(妖怪顔面置いてけ・d13917) |
アイリ・フリード(紫紺の薔薇・d19204) |
八桑木・栄一(はちビットのせかい・d21582) |
ユージーン・スミス(暁の騎士・d27018) |
●ドット絵の世界
『なんだか おちつき ますね。▽』
八桑木・栄一(はちビットのせかい・d21582)は妙にカクカクした様子で仲間達と共に横歩きをしつつ、都市伝説が確認された場所に向かっていた。
都市伝説の催眠によって、見るものすべてがドット絵。
催眠の影響か、だんだん何も考えられなくなり、決まったセリフしか言えなくなってきた。
それでも、都市伝説の思い通りになるものかと気合を入れて意識を保っているものの、油断すればあっという間に心を持っていかれそうな勢いだった。
「……ゲームはあまりしないのだが、確かにどこか懐かしい気がするな」
ユージーン・スミス(暁の騎士・d27018)が、竜退治の英雄に憧れる青年風のドット絵姿で辺りを見回した。
だんだん目的が都市伝説退治から、竜退治にシフトし始めて、自分が誰なのかさえ、曖昧になってきた。
「まるで2Dゲームみたいだねぇ。僕は落ち物ゲームしかしたことないけど、横一列揃ったら消えるアレ。ま、面白そうだけど敵なら仕方ないよね。遠慮なく倒しちゃおうか」
浦坂・義一(マッドパーソン・d11591)が、どこかに潜んでいるはずの都市伝説を捜す。
既に商店街は都市伝説の催眠によって、ファンタジー世界。
一般人と思しきドット絵のキャラが、同じような台詞を何度も繰り返し、横歩きでススッと歩いていた。
「昔はこういうゲームで十分楽しめていたはずなんだよね。今のゲームは映像に凝ってばかりだったり、やたら長ったらしかったり、どうなんだろうねぇ」
マリア・リンド(ヴァルキリーフェイク・d10691)が、しみじみとした表情を浮かべる。
ほんのりと漂う、昭和の香り。
ドット絵になったせいか、一般人の外見は簡易化されており、微妙な違い以外はほとんど見分けがつかなくなっていた。
「最近は実写と見間違うようなゲームばっかりだし、ドット絵実際に拝んだ事ほとんどないかも。進行方向決められちゃうとか物凄く厄介だし、同じ事しか喋らないモブになるのも嫌かも……」
アイリ・フリード(紫紺の薔薇・d19204)が、乾いた笑いを響かせる。
催眠状態にある一般人は頼んでもいないのに、色々な情報を教えてくれた。
それはまるでアイリ達を何処かに誘導しているようであったが、他に手掛かりがない以上、何かと都合がいいように思えた。
『この せかい きらい じゃない です。▽』
『でも。▽』
『じぶん で じぶん の やくわり を きめて。▽』
『それ が たおされる やくわり なんて。▽』
『かなしい です。▽』
栄一がカメラ目線で口を開く。
先程から台詞を言うたび、ピピピッと音が聞こえており、だいぶファンタジー世界との同化が進んでいる。
「まあ、取り敢えず、自分はあれっすかね、ルーツ的に武闘家辺りっすかね?」
村井・昌利(吾拳に名は要らず・d11397)が、拳をギュッと握りしめる。
気のせいか、だんだん動きがぎこちなくなってきた。
体の力も入りづらくなっており、無理に動かそうとすれば、ボキボキと嫌な音がした。
「私は魔王を倒す勇者って柄じゃないし、どちらかと言えば勇者の敵になる気が……。いっそ、遊び人にしちゃおうかな」
ミリー・オルグレン(妖怪顔面置いてけ・d13917)が、のほほんとした表情を浮かべる。
よく見れば、転職所などもあるらしく、遊び人のみ賢者的な何かになれるらしい。
ただし、それは賢者ではなく、あくまで賢者的なもの。
それが何なのか詳しく説明されておらず、転職してのお楽しみのようである。
「……。私達、悪しき、魔王、討伐目的」
そして、ガイスト・インビジビリティ(亡霊・d02915)は、国王(町内会長)と会った。
目的は魔王(都市伝説)の情報を得るため。
しかし、得られたのは、当たり障りのない情報のみ。
それに加えて渡されたのは、ひのきの棒っぽい麩菓子と、胸元にデカデカと『町内会三十周年記念Tシャツ』と書かれた布の服だった。
●命大事に
『さあ まおう を たおしに いきましょう』
栄一がカメラ目線で口を開く。
既に都市伝説の催眠によって、ドッド化が進んでいるせいか、自分で考えて行動しているというよりも、定められたルートをなぞっているような動きになっていた。
それは都市伝説によって、何らかの役回りを押し付けられた事を意味しており、少なくともテリトリー内では拒否する事は難しそうだった。
その証拠に栄一は自分の行動に疑う事なく、見えない何かを辿るようにして進んでいた。
町で手に入れた地図を見る限り、魔王の城は目と鼻の先。
容量的な都合……もとい、催眠のテリトリー範囲を考えると、仕方のない事なのかも知れない。
「あ、あれは……黒騎士っ!」
ユージーンが大袈裟に驚いた。
見上げた先にいるのは、空飛ぶドラゴンに乗った黒騎士の姿。
しかも、ドラゴンの咆哮が天をも切り裂き、そこから幾筋もの雷が地上めがけて降り注いだ。
これは演出的なものなので、実際には飛んでいないのだが、催眠効果によって飛んでいるものだと錯覚しているようである。
「カチコミだおらぁ! てめぇの有り金全部、置いてきやがれ! あ、私C組のミリーです」
ミリーが自己紹介をしつつ、叫び声を響かせた。
「随分と威勢がいいじゃねえか。ククッ……、久しぶりに背中の竜が喜んでいやがる」
黒騎士が不気味に笑う。
ドラゴンも顔に似合わず、シシシッと笑った。
「この国の黒騎士、顔に傷があったり体に絵を描いたりするんだね……文化の違いって凄い」
アイリが皮肉混じりに呟いた。
「おっと、これは随分な挨拶じゃねえか」
黒騎士がドスの利いた声を響かせる。
その背中には竜の装飾が施されており、禍々しいオーラが漂っていた。
「……あれ? ドラゴンに誘拐されたお姫様とかいないの?」
マリアが信じられない様子で大声を上げた。
「な、何故、それをっ!」
黒騎士が驚いた様子で後ずさる。
その背後でチラつく姫っぽい……オヤジ。
確かに化粧はバッチリだが、絶望的なほどにすね毛が邪悪。
こんなオヤジが姫なのであれば、いっそ国など滅びてしまえと思えるレベル。
それ故に、げんなり。一気に戦意が喪失した。
「ヒヒッ、ひょっとして姫を人質に取っているつもり? もしくは、姫の命が惜しくば、武器を捨てろって警告するとか? まあ、どちらにしても、そんな事で怯む事はないけどね」
義一が躊躇う事なく、向かっていく。
「せっかく、楽な死に方を選ばせてやろうと思ったのに、テメエはバカだな。わざわざ、苦しみながら死ぬ事を選ぶとはなァァァァァァァァァァァァ!」
黒騎士がドスランスを構えて、竜と共に突っ込んできた。
「……。遅い」
それと同時に旅人の外套で黒騎士達の背後に回り込んでいたガイストが、次々と当て身を放っていく。
黒騎士達は見た目に反して弱く、崩れ落ちるようにして意識を失った。
その途端、沢山の金貨がチャリンチャリンと降り注ぐ。
「……って玩具かよっ!」
ミリーがイラついた様子で、金貨を地面に叩きつける。
どれも現実世界では使い物にならない胡散臭い代物。
金である事すら怪しい金貨であった。
「でも、これだけあれば、何でも買えるっす!」
そう言って昌利が仲間達と共に武器屋と防具屋に行って装備を整えた。
●ガンガン行こうぜ
「おらぁ、魔王! 覚悟しやがれ!」
なんやかんやで魔王の城に辿り着いたミリー達は、勢いよくドアを蹴破ると大声を上げた。
その視線の先には禍々しい玉座に座った都市伝説の姿。
都市伝説は長髪美形の優男風であったが、顔色が悪くて青白かった。
「よくぞ、ここまで辿り着いた。だが、貴様達もここまで。我に逆らう者には、死を!」
それと同時に都市伝説がカメラ目線で、思わせぶりに語っていく。
だが、ドット絵のせいで、迫力半減。
それなりに頑張っているようだが、ドット絵の限界を超える事は出来ないようである。
「こういうノリは嫌いではないが、必要以上に時間をかけるのは趣味じゃない」
昌利がまわりの空気も読みつつ、スレイヤーカードを構えた。
「まあ、待て。早まるな。お前に町内会の半分をやろう。何なら町内会費を不正に流用しても構わん。どうだ、悪い話ではないだろう」
都市伝説が含みのある笑みを浮かべる。
しかし、ドット絵のせいで、1ドット程度の微妙な笑み。
分かる人には分かる程度のレベルであった。
「魔王、最終決戦。覚悟」
都市伝説と対峙するようにして、ガイストが鏖殺領域を展開する。
「……愚かな。愚かなり!」
それと同時に都市伝説が立ち上がり、稲光と共にその姿を竜へと変化させた。
「町内会の半分程度で買収しようだなんて甘いよ。……まずは、此処の地価について教えてくれないと」
その間にアイリが都市伝説に狙いを定め、DCPキャノンを撃ち込んだ。
「クックックッ! ならば、教えてやろう。此処の地価は治安の悪化で急激に下がっている! 途中の所有者達が青ざめるほどにな!」
都市伝説が高笑いを響かせた。
だが、泣いていた。大泣きだった。
それは町の人間、誰もが悲しむ事なのだろう。
バブル景気に浮かれていた頃、必ず値が上がると言われて買った土地。
それがここまで下がるとは、誰も予想をしていなかった事なのだから……。
「……たくっ! 竜退治はもう飽きた。まあ、だからと言って戦車なんて持ち込めないけど……」
マリアが苦笑いを浮かべつつ、間合いを取っていく。
しかし、都市伝説の催眠が影響しているため、まったく小回りが利かない。
何故か動きがカクカクしており、少しずつしか動けなかった。
「ふははははははははは! どうした。そんなにノロマでは、我に勝つ事など出来んぞ」
都市伝説が狂ったように炎を吐く。
その炎は城の中にあった絵画や壺を破壊しつつ、マリア達に迫ってきた。
『そんな こうげき ききません!▽』
栄一が都市伝説の炎を避けつつ、デッドブラスターを撃ち込んだ。
そのたび、都市伝説の体に受けたダメージが表示され、白からオレンジ色に変化した。
「邪悪なる竜よ、お前の滅びの時が来たのだ! 在るべき場所へ戻るが良い!」
ユージーンがノリノリで都市伝説に突っ込み、クルセイドスラッシュを放つ。
「ぐ、ぐぬおおおお、まさかそれは伝説の麩菓子!」
都市伝説が思わせぶりに悲鳴を上げた。
麩菓子にどれほどの効果があったのかわからないが、都市伝説が大袈裟に苦しんでいるところをみると、破壊力が抜群だったのだろう。
「ヒヒッ! どうやら、意外とコレって役に立つようだねぇ」
義一が麩菓子を握り締め、都市伝説に竜骨斬りを叩き込む。
その一撃を食らった都市伝説が断末魔を響かせ、弾け飛ぶようにして消し飛んだ。
「……邪悪は滅びた。これで人々も心穏やかに生活できる事だろう。……ところでこのTシャツは貰って帰っても良いのだろうか?」
ユージーンがホッとした表情を浮かべる。
都市伝説が消滅した事によって催眠が解け、まわりの景色も元通りになった。
催眠状態にあった一般人達も我に返った途端に訳が分からなくなり、キョトンとした表情を浮かべていた。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年5月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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