暴走するアヒルちゃん!

     赤威・緋世子(赤の拳・d03316)は、こんな噂を耳にした。
     『超高速で動き回るアヒルの玩具(なぜか喋る)が温泉地で確認された』と……。
     この玩具は都市伝説で、誰も温泉に浸かる事が出来ないほど、超高速で移動しているようである。
     どうやら、都市伝説はこの場所が自分の縄張りであると訴えており、自らの居場所を守るため、誰も温泉に浸かる事が出来ないようにしているようだ。
     そのため、近づく者に対して、体当たり。
     哀れ一般人は宙を舞い、岩場に尻を打って、再起不能になる事もしばしば。
     中には、一生温泉に浸かる事が出来ない体になってしまった者もおり、事態は深刻。
     それでも、果敢に挑む一般人がいるらしく、返り討ちにあってばたんきゅー。
     このまま放っておけば、犠牲者は増えていくばかり。
     しかも、都市伝説は小さなアヒルの玩具を巧みに操って、侵入者に攻撃を仕掛けてくるため、色々な意味で注意が必要である。


    参加者
    峰・清香(高校生ファイアブラッド・d01705)
    赤威・緋世子(赤の拳・d03316)
    十束・御魂(天下七剣・d07693)
    桜塚・貴明(櫻ノ森ノ満開ノ下・d10681)
    比良坂・逢真(スピニングホイール・d12994)
    妃水・和平(ミザリーちゃん・d23678)
    縹・三義(残夜・d24952)
    石田・凛華(高校生サウンドソルジャー・d26207)

    ■リプレイ

    ●アヒル温泉
    「あ、あれは……予想以上にアレですね」
     桜塚・貴明(櫻ノ森ノ満開ノ下・d10681)は黒ベースにトライバル調の柄入り水着で、仲間達と共に都市伝説が確認された温泉地に向かっていた。
     温泉には巨大なアヒルの玩具(以下、都市伝説)が浮かんでおり、葉っぱが落ちただけでも、高速で向ってくるほど殺気立っていた。
    「昔からお馴染みで、お風呂には付き物のアヒルの玩具ですか。何やら懐かしい気もしますが、流石に超高速で動いているとなるとちょっと怖いですね……」
     十束・御魂(天下七剣・d07693)が、乾いた笑いを響かせる。
     都市伝説は死んだ魚のような目をしていたが、『退かんか、ボケェ!』とドスの利いた声を響かせ、近づく鳥を追っ払っていた。
    「うわ、ほんとに喋ってるよ、アヒル。変な都市伝説にはいい加減慣れたが、これはまたシュールな光景だな」
     比良坂・逢真(スピニングホイール・d12994)が、気まずい様子で汗を流す。
     都市伝説は見た目と声がまったく合っていないため、違和感バリバリ。
     もう少し何とかならなかったのかと、心の底から思ってしまうほどだった。
    「それに……、湯船の独占は感心しないな」
     峰・清香(高校生ファイアブラッド・d01705)がビキニ姿で、険しい表情を浮かべる。
     都市伝説にとつて、温泉は縄張り。
     そのため、まわりに迷惑を掛けているという自覚がなく、罪悪感もないようである。
    「温泉で遊ぶのもマナー違反だけど、独り占めはもっとダメなんだぜー!」
     赤威・緋世子(赤の拳・d03316)が、都市伝説をジロリと睨む。
     それに気づいた都市伝説が、警戒態勢。
     死んだ魚のような目が、黒く淀んだように見えた。
     それはまるで深い闇。ずっと見ていると吸い込まれそうになるほどの深い……闇だった。
    「……と言うか、アヒルって縄張り意識とかあったんだね。しかも、温泉を縄張りと認識するとは、なかなか出来るアヒルだね」
     縹・三義(残夜・d24952)が、無表情で淡々と語る。
     厳密に言えば、都市伝説とアヒルは別物。
     その上、都市伝説は噂から生まれた存在であるが故、そのような事になってしまったのかも知れない。
    「温泉で楽しもうと思ってるのに、邪魔をするなんて意地悪っ子だよね。しゃべる機能があるらしいけど、もしかして盗撮機能もあるのかな?」
     石田・凛華(高校生サウンドソルジャー・d26207)が、不思議そうに首を傾げた。
     何となく、あるような気がする。
     そう思った途端、『パシャッ!』と音がして、都市伝説の両目が光った。
     おそらく、あれは撮影機能。
     『ここはわしの縄張り。盗撮なんて姑息な真似をする必要はねえ。撮るんだったら、堂々と撮ってやらあ!』と言わんばかりの雰囲気を漂わせていた。
    「せっかくだから、アヒルのおもちゃであそぼーっ」
     妃水・和平(ミザリーちゃん・d23678)がのほほんとした表情を浮かべて、水着姿でアヒルの玩具を抱えて温泉に飛び込んだ。
    「な、何をしやがるんだあああああああああああああああああああ!」
     都市伝説にとって、アヒルの玩具は我が子同然。
     そのため、囚われの身となった我が子を救うべく、水飛沫を上げて襲い掛かってきた。
    「さて、ゆっくり温泉に浸かりたいですし、さっさと片付けさせてもらいますよ!」
     十束・御魂(天下七剣・d07693)がアヒルにはアヒルを、と言わんばかりに、アヒルの玩具をポンポンと放り投げた。
     その途端、都市伝説が驚いた様子で、動きを止めるのだった。

    ●縄張りテリトリー
    「おら、テメェ! こんな真似をして、わしが怯むとでも思っているのか!」
     都市伝説が不機嫌そうに叫び声を響かせた。
     だが、明らかに動揺しており、アヒルの玩具を刺激しないようにして、大人しくしているようだった。
    「いっそ、カルガモ親子の玩具とかの方があってたんじゃないか?」
     逢真が皮肉混じりに呟いた。
    「うるさい、ボケェ! お前達のせいで、アヒルちゃん達が怯えているだろうが!」
     都市伝説が殺気立った様子で、逢真に対して反論をする。
     その途端、アヒルの玩具が、ユラユラ揺れた。
    「どうでもいいけど、アヒルが大きくなったら、白鳥になると最近まで思ってたよ」
     三義が何気なくボソリと呟いた。
    「つーか、わしらの心はいつでも白鳥じゃい!」
     都市伝説がイライラとした様子で答えを返す。
     心は白鳥、見た目はアヒル。
     おそらく、そこに深い意味は……ない。
     何となく勢い。もしくは、ノリ。
    「ねえねえ、そんな事より、あそぼーっ!」
     和平がアヒルの玩具を持ってニコリと笑う。
    「おい、こら、テメェ! 気安く触るんじゃねえ! アヒルちゃん達はデリケートなんじゃ、ボケェ!」
     都市伝説が喧嘩腰で、和平に迫る。
     だが、先程と比べて勢いがなく、控え気味。
     やはり、まわりにアヒルの玩具があるせいで、動きづらいのだろう。
     その焦りがプレッシャーとなって、都市伝説の体を包んでいるようだった。
    「さて、ゆっくり温泉に浸かりたいですし、さっさと片付けさせてもらいますよ!」
     御魂が深い溜息を漏らして、スレイヤーカードを構える。
    「やるんか、ボケェ!」
     それを見た都市伝説が、さらに殺気立つ。
     いつの間にか、都市伝説のまわりにはアヒルの玩具達が集まっており、まるで親子のようだった。
    「それじゃ、狩ったり狩られたりしようか」
     そう言って清香が都市伝説から目を逸らす事なく、サウンドシャッターを発動させる。
    「温泉を楽しみたいから、さっさと片付けちゃお」
     凛華が攻撃を仕掛けるタイミングを窺った。
     だが、都市伝説は動けない。
     まわりにアヒルの玩具があるせいで!
    「俺も温泉に浸かりたいから、独り占めする玩具にはパーンと弾けて貰うぜー!」
     緋世子が一気に間合いを詰めていく。
    「おい、こら、待ちやがれ! こっちが動けねえと分かっていながら、そんな事をして……わかっているだろうなァ!」
     都市伝説が動揺を隠す事が出来ぬまま強がった。
     ここで反撃を仕掛ければ、アヒルの玩具達が、大ピンチ!
     最悪の場合は温泉の外に放り出されて、一巻の終わりである。
    「何だか分かりませんが、チャンスのようですね」
     そう言って貴明が都市伝説を睨みつけ、スレイヤーカードを解除した。

    ●アヒルちゃん危機一髪!
    「おい、こら、テメエ! そこから一歩でも動いてみろ。容赦はしねえからなっ!」
     都市伝説は焦っていた。
     このままでは、動けない。
     だからと言って、何もしなければ、確実に殺られる。フルボッコ確定である。
     しかし、この状況で動く訳にはいかない。
     それはアヒルの玩具達に不安を与える行為であり、都市伝説が最も忌むべき事なのだから……。
    「だったら、見せてもらいましょうか。一歩でも動いたら、どうなるか、を……」
     貴明が九字を切りつつ、九眼天呪法を使う。
    「ち、畜生っ! コイツらさえいなければ……!」
     都市伝説が思わず本音を漏らした。
     だが、都市伝説にとって、それは考えてはいけない事。
     気のせいか、アヒルの玩具達が円らな瞳をウルウルさせる。
    「クッ……、すまねえ。お前達はわしが守るっ! 例え、どんな事があろうとも!」
     都市伝説がキッパリと断言をした。
    「……邪魔だ」
     その途端、清香が嫌悪感をあらわにして、都市伝説にブレイドサイクロンを仕掛ける。
     それと同時に都市伝説の体が激しくよろめき、アヒルの玩具達が天高く舞い上がっていく。
    「うぎゃあああああああああ、何をするんじゃ、ボケェ! ……アリサ、サマンサ、サルサ……。みんな、ボロボロになっちまったじゃねえか。テメェ、こんな事をして……分かっているんだろうなァ!」
     都市伝説が完全にブチ切れた。
     もう後先考えている暇などない。
     視界に入るもの、すべてをデストロイ!
     まるでブレーキの壊れた車のように、勢いをつけて突っ込んできた。
    「それなら、大人しくしてもらおうかなっ!」
     和平がニコリと笑って、コールドファイアを使う。
     それに合わせて、凛華が制約の弾丸を撃ち込み、都市伝説の動きを完全に封じ込めた。
    「もっと早く行動しておくべきだったね。そうすれば、ここまで呆気なく終わる事もなかったのに……」
     次の瞬間、逢真が都市伝説めがけて飛びあがり、神霊剣を放って一刀両断した。
     都市伝説は自分の身に何が起こったのかわからぬまま、『ウゴラボゲェ!』と叫び声をあげて消滅した。
    「それにしても、いい景色ですねえ、癒されます」
     御魂がホッとした様子で、ゆっくりと辺りを見回した。
     戦っている最中は気づかなかったが、見晴らし最高。
     温泉の効能は打ち身、捻挫、リウマチ、五月病などに効果があるらしく、知る人ぞ知る人気のスポットだったようである。
    「いやー……、運動の後の温泉は格別なんだぜー……」
     それを知ってか知らずか、緋世子が水着姿で温泉に浸かる。
     温泉には、まだアヒルの玩具が残っており、楽しげにユラユラと揺れていた。
    「せっかくだし、ひとつの玩具にしてもいい?」
     そう言って三義がアヒルの玩具を拾い上げた。
     その途端、ひとつが千切れんばかりに尻尾を振った。
    「ええ、構いませんよ」
     御魂もそれを見て嫌とは言えず、苦笑いを浮かべて、ひとつの頭をヨシヨシと撫でた。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年5月14日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ