ロードローラーと騒音バイク

    作者:相原あきと

     ブゥンブブブンッ! ブーンブウウンブロロロロロロ……。
     都内某所、交差点の赤信号で止まったバイクは十数台。
     夜の22時を越えた今も、思い思いにバイクをふかして騒音をまき散らしていた。
     このあたりの通りを、彼らは毎日騒音をまき散らして走り回っていた。
     付近の住民からしたら相当に迷惑だ。
     そしてその日、ついに我慢の限界に来た住人がバイク集団の不良たちの元へと苦情を……。
    「あ? なんだオメ?」
     信号待ちの彼らの前に、20代半ばのエプロン姿の女性が立ちふさがる。
    「わ、私は、そこの夜間保育で保育士をしている者です……あの、眠っている子供もいるんです。こういったことは、その、しないでください」
     毎日続く騒音に、どうしても言わねばと使命感から来たであろうその女性は、騒音を恐がり泣く子供たちの姿を思い浮かべつつ、言いたかったことを言いきった。
     だが、不良たちの反応は。
    「おー、わかった。じゃあ、おねえちゃんが俺たちを静かにさせてくれよ。俺らみんないろいろ溜まってて発散しないといけねーんだ」
     ブゥンブブブブンブン!
     バイクに乗った不良たちに囲まれ、保育士の女性は即座に後悔した。
     このままじゃ彼らに……――。
     だが。
    「な、なんだ!?」
     不良たちがざわめき、女性の周りにいた不良もそちらを見る。
    「ロードローラー?」
     迫りくる青いロードローラー。
     そして……十数人の不良も、そのバイクも、エプロン姿の保育士の女性も、みんなみんなぺっしゃんこに潰されたのだった。

    「みんな、六六六人衆の『???(トリプルクエスチョン)』って知ってる?」
     教室の集まった皆を見回してエクスブレインの鈴懸・珠希(中学生エクスブレイン・dn0064)が言う。
     六六六人衆の中でも上位の存在『???』だが、どうやら彼が動きだしたらしい。
    「ターゲットとなったのは特異な才能をもつ灼滅者、学園の仲間よ」
     珠希が言うにはターゲットとなった者の名は『外法院ウツロギ』、彼を闇堕ちさせ分裂という稀有な特性を持つ六六六人衆を生みだしたと言うのだ。
     その六六六人衆こそ序列二八八位『ロードローラー』だ。
     元々二八八位は同じ分裂の特性を持つクリスマス爆発男の序列だったが、クリスマス爆発男が灼滅され空席になっていた所をロードローラーが埋めたという事だろう。
     ロードローラーは分裂により日本各地に散り次々に事件を起こしているという。
    「それで、みなには都内某所……このあたりに向かって欲しいの」
     珠希が地図に大きく丸をつける。
     そこでは毎日、十数人の不良がバイクで走り回っていると言う。
    「ロードローラーは騒音に釣られてやってくるわ! だから、不良たちをさっさと解散させて、みなが騒音をまき散らしていればロードローラーが勝手にやってくるわ」
     しかもロードローラーは一般人を殺すつもりで攻撃してくるらしいので、初撃はたいしたダメージをくらわないらしい。簡単に言うとうまく騙せれば最初の1分は遠慮なくタコ殴れるということだ。
    「もっとも、うるさく騒音を出すのを手加減すれば……怪しんだロードローラーに気がつかれて最初から強烈な一撃で攻撃してくる、そうなると戦いが苦しくなるのは確実よ」
     つまり不良を解散させ、不良の振りをして騒音を巻き、釣られてきたロードローラーの不意を打て、ということだ。
     そこまで言うと、珠希は相対する青いロードローラーについて説明を始める。
     ロードローラーは防御を捨てて攻撃してくるらしく、殺人鬼と龍砕斧、それに咎人の大鎌に似たサイキックを使ってくるらしい。
     なるべく大勢をまとめて挽き潰してくる癖があるようだが……攻撃力は半端無い、注意が必要だろう。
     珠希はそこでみなの顔を見回し。
    「ただ、これはロードローラーの灼滅とは関係無いんだけど……」
     依頼の正否には関係無いことだが、と前置きして珠希は。
    「その日、みなだろうと不良たちだろうと、騒音をまいて走っていると近所の夜間保育の保育士さんが注意しにくるの。しかも、ロードローラーが現れる直前に」
     保育士がやってこない程度に騒音を抑えて不良の振りをした場合、ロードローラーに怪しまれてバレるだろうと珠希は言う。
     だから、このことは無視してもかまわない……そう珠希は言う。
     珠希は一度息を吐き首を振ると。
    「この青いのは分裂体だから説得とかしても無理なの……でも、被害者を無視するわけにはいかないわ。みな、気をつけて一般人を助けてきて、よろしくね!」


    参加者
    天上・花之介(連刃・d00664)
    鹿島・狭霧(漆黒の鋭刃・d01181)
    小鳥遊・優雨(優しい雨・d05156)
    五十嵐・匠(勿忘草・d10959)
    神乃夜・柚羽(燭紅蓮・d13017)
    ヴィルヘルム・ギュンター(グラオギフトイェーガー・d14899)
    今井・来留(小学生殺人鬼・d19529)

    ■リプレイ


     都内某所、十数台のバイクの道を塞いだのは数人の学生達であった。
    「んだオメーら?」
    「もう一度言うわ。とっととこの場から消えなさい。ご自慢の愛車と一緒にノシイカになりたいってんなら別だけど」
     降りてガンつけてくる不良にそう言い放ったのは凄みある笑顔で迎え撃つ鹿島・狭霧(漆黒の鋭刃・d01181)だ。
     それに怒った不良バイク軍団は全員がバイクから降り学生達――灼滅者達を囲みだす。そして、狭霧にバカにされた不良は拳を握り振りかぶると。
     ガシッ。
     その拳を横から簡単に掴んで止めたのは天上・花之介(連刃・d00664)だ。
    「あまりひと様に迷惑かけるなよ」
    「い、痛てててててッ」
     軽く掴んでいた手首を放してやると、不良は涙目で手をさする。
     仲間の姿を見て一瞬で頭に血がのぼった不良達が一斉に騒ぎ出し。
    『……ッ!?』
     ピタリ、途中で不良達が野次を飲み込み、一瞬で静かになる。
     一歩、神乃夜・柚羽(燭紅蓮・d13017)が不良達へと踏み出した瞬間に、だ。
     不良の誰かがゴクリと喉を鳴らす音が響いた後、柚羽の声が全員へと発せられた。
    「私に、単車のふかし方とその調節法その他を教授しなさい」
     嫌な汗をかきつつ、メンツのある不良のリーダーが。
    「ざ、ざけんな! だ、誰がてめえのような――」
     最後まで言葉を言い終わる前に、柚羽がスッと手を挙げ不良リーダーの声を遮る。
    「あん?」
    「大事な単車に花が咲いてますよ……あなた達にも咲かせちゃいますかー……」
     柚羽の指差す先では影の花が。
    「はぁ!?」
    「少し貸してもらうだけですよ」
     新しい声に不良達が振り向けばそこには小鳥遊・優雨(優しい雨・d05156)、不良達が驚くのはその手に持つ日本刀。
     さすがのリーダーも反論する心が折れ。
    「乗り方等を私たちに教えたら、単車置いてさっさと帰れ」
     柚羽の言葉に、王者に対する家臣のように不良達は唯々諾々と従ったのだった。

     もしもの時の為、交差点の見える街路樹の影に待機するのは2人。
     その片方、渋い顔なのはヴィルヘルム・ギュンター(グラオギフトイェーガー・d14899)だ。本当はエクスブレインの言うとおり大きく騒いで不意を打ちたかったのだが。
    「仕方がない、こうなれば死力を尽くして戦うだけだ……」
     エクスブレインの予知から外れている訳ではない。ただ、取れる選択肢のうち自分たちが選んだ道はリスクのある道であり……。
     もっとも。
    「わたしは強い相手でもぜんぜんかまわないけどね~。あはは♪」
     その横では、さっきまでボーっとしていた今井・来留(小学生殺人鬼・d19529)が笑い声をあげて喜んでいた。

     交差点では柚羽たち6人が不良から借りたバイクをふかしていた。
     付近の保育士がやって来ないよう騒音は控えめ。
    「……抑えていても、やはりうるさいですね。夜中にこの音は、いい迷惑です」
     抑えめの音だが十分な音量に、シャーロット・オルテンシア(深影・d01587)が無表情のまま眉をひそめる。
    「これでも抑えているんだけど…ってんホント、五月蝿いわね」
     シャーロットに狭霧も同意する。
     音量を絞りつつもバイクをふかす6人。
    「騒音は町の人の迷惑になるし、それで眠りを妨げられたのではたまったものではないだろうね」
     呟く五十嵐・匠(勿忘草・d10959)が「もっとも」と続ける。
    「本当に迷惑なのは……こっちの方、だけどね」
     匠の言葉と同時、いつの間にか背後へとロードローラーが現れていた。


    「部長さんしばらく見ないうちに大きく重くなったんだね。 最近行ってなかったから知らなかったよう。あはは♪」
     青い車体が見えると同時、即座に戦場となる交差点へ舞い戻った来留が仲間を支援するべく正体を虚ろにする霧を発生させる。
    「ロードローラーは大きくて重くて青いんだよ☆」
     ゴウッと霧を突き抜け青いロードローラーが突貫。
    「あはは♪ 冗談だよ? そんなに反応しないで――」
     余裕で回避しようとした来留だが、さらに急加速したロードローラーに回避が間に合わないと判断、息を飲む。
    「おっと、仲間には手出しさせねぇぜ」
     庇ったのは花之介だ。
     ロードローラーの一撃は激しく想像以上の一撃であり、だが花之介は。
    「厳しくなるとは思ってたが……ちょっとどころじゃない、か?」
     来留が飛び退いたのを確認し、自身も敵の力をいなしてなんとか脱出する。
    「これは慣れていないなどと、泣き言は言えませんね」
     花之介を守るようシールドリングが飛び、その傷を癒すシャーロット。
     霧も晴れ交差点の中央には青いロードローラー。
     シャーロットは口元に薄い笑みを浮かべる。
    「はじめましょうか。知り合いのよしみです、楽にしてあげます」
     楽しそうに、そう言うのだった。

     ロードローラーはその巨大で鈍重そうな車体のわりに、軽快に灼滅者の攻撃を回避もする。初撃を奇襲できた利点はその点もあったのだろう。だが今はそれを言っても始まらない。
     優雨とヴィルヘルムが真っ正面からロードローラーへ突っ込み、その直前で左右に飛び退く2人。そして2人の背後から現れた柚羽がその勢いのまま頭上へ跳躍する。
    「!?」
     ロードローラーが誰を迎撃するべきか一瞬だけ迷う。
     その一瞬で――。
     中段に構えた優雨の日本刀が軌跡を描き。
     雷を纏ったヴィルヘルムの拳がローラーを打ち付ける。
     ドスッ!
     さらに上空から大上段で柚羽が非実体の刃でロードローラーを斬りつける。
     見事な連携が決まり「ぐ、が、」とロードローラーがうめき声を上げる。
     だが。
    「ギュ~ルギュルギュルッ♪」
     変な効果音を口で言いつつ、ロードローラーが高速スピン、付近の3人をまとめて吹き飛ばす。
    「侮れないとは思ってたけど……ホント、ね」
     ロードローラーが狭霧に気が付きスピンを止め、「ぶぅんぶんぶん」と奇声を発して狭霧へと突っ込んでくる。
    「パワーも破壊力も有る……けど、その分直線的で小回りが利かない」
     冷静につぶやくと、正面に迫っていたロードローラーを紙一重で回避する狭霧。
     キ、キンッ!
     さらにすれ違い様に二刀のナイフで傷を与える。
    「流石に凄い迫力と破壊力だわ。気分は闘牛士、ってカンジ?」
     狭霧を見失い、しかしダメージだけを受けたロードローラーが疑問を浮かべつつキョロキョロし。
    「君の相手はこちらだよ」
     その声は匠。
     ロードローラーの背後から流星のごとき跳び蹴りが決まる!
    「どんな相手であれ、これ以上一般人を殺されるわけにはいかない。だから、ここで倒させてもらうね」
     匠の側で霊犬の六太も凛々しく。
    「むーりーだーよー♪」
     笑顔に顔を歪ませ、ロードローラーはさらに激しく攻勢へと転じるのだった。


     本日何度目だろう、ロードローラーの攻撃が前衛を襲う。
     今回は1人にぶつかっては跳ね返るように次、次、次へとまるでピンボールの玉のよう。
     ぶつけられた灼滅者はなぜか怒りが沸き起こる不可解さ。
    「ありがとう」
     庇ってくれた霊犬にお礼を言いつつ狭霧がロードローラーを観察する。
    「噂のロードローラー……六六六人衆の割にはムチャクチャな、いや、六六六人衆らしいと言うべきか」
    「アレはロードローラーでしょうか? とりあえず、首は付いてない車だと思いましたが」
     狭霧の言葉に、影を飛ばしつつ柚羽が同じく疑問を投げる。
    「相手はアレですけど、決めつけや思い込みは油断に繋がります」
     2人の答えたのは優雨だ。
    「初めて見る人は驚くかもしれませんけど、アレはそういうモノなのですから、いちいち気にしてたらダメですよ」
     優雨の言葉に今度はゴロゴロとロードローラーが体を向けて聞いてくる。
    「なぁ~にぃ~? まるでロードローラーのこと知ってるみたい♪ 有名人?」
    「ええ、色違いですが前に1度、今回で2度目ですね。もう慣れました」
    「でも~」
     ロードローラーがにやりと笑うと、体をたわませる。
     次の瞬間――ドンッ!
     ロードローラーが宙へと『跳躍』した。
    「こんなの見たこと無いでしょ☆」
     無茶苦茶な行動に誰もが唖然とする中、しかし優雨は冷静に槍を振るっていた。
     氷の氷柱が空中のロードローラーを串刺しにし、ピキンと固まったまま大地へ墜落する。
    「言ったでしょう? もう慣れました。飛んだり跳ねたりしても気にならなくなるくらい……慣れって怖いですね?」
     バキリと氷柱と体表の氷を砕いてロードローラーが復活するも、灼滅者たちに対する嘲笑はなくなっていた。

     飾り気の無い鈍色の日本刀がニブイ音を立ててローラーに深く傷をつける。そのまま刀を引き戻さずローラーを蹴って距離を取るヴィルヘルム。
     そこを追撃とばかりに半回転分だけ急発進したロードローラーが空を切り、その一瞬の隙に花之介が距離を詰めバベルブレイカーを振りかぶる。
     だが、ロードローラーは冷静に視線を巡らせ、今度はバックに半回転、攻撃が届かぬよう絶妙な距離を取る――のだが、カチリと花之介のバベルブレイカーの内部で音がすると同時、格納されていたブレードが展開、リーチの差で非実体の刃がローラーを切りつける。
     次の瞬間、まるで貯まった分のお返しとばかりにロードローラーから前衛達に向かって黒い殺気がばらまかれる。
    「六太、踏ん張ってくれ」
     体力の少ない自分の前で壁となってくれる六太を心配する匠だが、殺気が収まると同時に霊犬はその姿を消す。
    「すまない……」
     小さくつぶやくが、戦いが終わった訳ではない。即座に「今、癒しの力を」と切り替え仲間たちを祝福の言葉を風に乗せ回復する。
    「あはは♪ そっちは任せるよ? わたしはまとめてやったげようかな♪」
     来留のナノナノが花之介にハートを飛ばし、来留本人は夜霧を展開する。
     初期のイニシアチブが無い分、かなりガチンコでの戦いとなっていた。
     だが……。
    「あーあ、全快は無理だね~。あははははははは♪」
     おもしろそうに来留が茶化すが、それは回復が間に合わなくなって来ている現実を物語っていた。
     ロードローラーが狙ってくるのはエクスブレインの予測とおり数の多い列だった。つまり、今回は前衛だ。数が多い列が狙われるなら途中で移動しターゲットを変える作戦や、そうでなくともせめて6人並んでダメージの減算を狙うのも有効な手だったのだが……。
     結果、僅かずつだがロードローラーに押され初めていた。

     それに気が付いたのはさらに数分が経過し、前衛の数人があと数撃で意識を失ってもおかしくなくなって来た頃だ。
     きっかけは、シャーロットの一撃。
    「蝕め、黒の弾…ショット」
     漆黒の弾丸がきれいにロードローラーへ吸い込まれ、ガクリと異音をあげる。
     それなら今までの命中となにも変わらない、しかし。
    「う、うぐぅ……」
     ロードローラーが苦しげに呻き、気が付いたシャーロットが口元に笑みを浮かべる。
     そう、自分たちも苦しかったからその異変に気がつけなかったが、ロードローラーの装甲は変色し、パリパリと音を立て、破け、ところ氷が、ところ炎が吹き上がり、特に酷いのは武器たるローラーだろう。さんざん切りつけられ殺傷力をかなり封じられていた。
    「蓄積が、効いてたみたいです」
     シャーロットの言葉に、灼滅者たちがあと少しだと気合いを入れ直した。


    「相手は分身とはいえ部長さんだからあ……うん、遠慮なしで行くよ♪ あははははははは♪」
     来留が回復を捨て攻撃に回る。
     笑いながら銃を乱射、そのどれもが狙い違わずロードローラーへと着弾する。
    「まぁ~だだよ~☆」
     一方、ホーミングする弾丸の回避は無理だと悟ったロードローラーが撃たれながらも灼滅者達へと突貫を開始。もちろん狙うは――。
    「さーてと……それじゃ一撃必殺、いってみましょうか」
     ロードローラーの斜線上に立ち、ぷらぷらと手を振り脱力しながら狭霧が言う。向かってくるロードローラー。
     次の瞬間、狭霧は自らロードローラーへと駆け、虚を突かれ距離を見誤ったロードローラーの直前で前輪を踏み台にして跳躍。
    「……あ」
     悲しそうな声を出すロードローラーの頭上、腰裏の鞘から左右それぞれ2本のナイフを両手で抜き――。
     黒き刀身の軌跡が交差し、ロードローラーの顔面がバツの字に切り裂かれた。
    「ぴぎゃあっ!?」
     灼滅者への突進を止め、その場で悲鳴を上げるロードローラー。
     動きを止めたそのチャンスに走り込んだのはヴィルヘルムだった。
     腰溜めに構えた日本刀を横一文字に抜刀する。
    「ざ~んねんでした~♪」
     まるで来るのを読んでいたかのようにロードローラーが体をたわませ上空へ跳躍する。
     だが。
     シャン……。
     何かが砕ける音にロードローラーが見下ろせば、それはヴィルヘルムの日本刀だった。
     凶暴な瞳で上空のロードローラーがヴィルヘルムと目が合う。今の一撃は……フェイント!?
    「終わりだ」
     無骨な剣鉈を構え、ロードローラーを追撃するよう跳躍。
     ロードローラーに逃げ場は無い!
    「ま~だまだまだまだまだまだっ☆」
     空中で強引に前後のローラーを高速回転させ、来るもの全てを弾こうと回転を始めるロードローラー。
    「往生際が悪いんじゃねぇの?」
     その声は花之介だった。
     ロードローラーは声の主を探し『見上げた』。
     自身より上空、そこには唸りを上げてバベルブレイカーの杭を回転させる花之介の姿。
    「良い音だろ? 直接聞かせてやる!」
     ドッ!
     防御回転が中途のロードローラーに、花之介のドグマスパイクが突き刺さり回転が停止。
     さらに。
    「貫けええー!」
     そのままの勢いで大地へ吹き飛ばせば。
     すぐ下に迫るは剣鉈を構えたヴィルヘルム。

     ――断ッ!

     空中で圧し切られ前と後ろに分かたれ落下するロードローラー。
    「ナ、なん……ピッ!?」
     四散。
     塵芥とロードローラーが化し、そうして灼滅者たちは勝利したのだった。

     ロードローラーの痕跡も消え、再び静寂を取り戻す交差点。
     サウンドシャッターを解除した優雨が、ふと借りていたバイクは……と探す。
     見事にペシャンコに潰れていた。
    「その方が楽だなーと思っていましたが」
    「自業自得、かもしれないけどね」
     柚羽の言葉に匠も同意するが、優雨だけは「一応、注意はしていましたよ、私?」と小さく呟きつつ――「でも、今までの迷惑のツケ……そう思ってもらいましょう」
     そう締めるのだった。
    「でもこれで、保育士の女性が巻き込まれる理不尽な未来は回避できた」
     匠の呟きに、ほかの仲間たちもコクリと頷くのだった。

     交差点の近くの夜間保育園。
     シャーロットはふと帰り際に窓をのぞく。
     見れば子供たちがスヤスヤと気持ちよさそうに眠っていた。
     二者択一でどちらかを選ばねばならぬ選択は確かにある。
     だがそれを見極め、時にリスクを選ぶことは決して悪いことでは無い。
    「ゆっくり寝て下さい。……夜に眠れないのは、とても怖いですから」
     静寂と平穏が、町に、訪れた。

    作者:相原あきと 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年6月1日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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