ロードローラーと淫魔メモるん

    作者:相原あきと

    「あのぅ~、メモるんに何か御用でしょうかぁ?」
     朝方の繁華街の一角で、背後から迫っていたロードローラーにのほほんと聞くのはショートカットの眼鏡淫魔だった。
     夜の間中、路上で歌でも歌っていたのか服装がアイドル衣装っぽい。
    「マァイ……」
     対するロードローラーは緑のカラーリングで、その正面には顔がついており、じりじり距離を詰めてくる。
     淫魔は目の前のロードローラーが明らかに自身より強いダークネスである事を感じていたが、そこはどんな相手でも籠絡する旨の淫魔である、交渉に持ち込めばこっちのもの……。
     眼鏡の淫魔はしなを作って笑顔で微笑み。
    「メモるんの事が気になりますぅ? まだ朝ですけど……いいですよぅ? あ、でもお兄さんのこと教えて欲しいなぁ」
     自分のことをメモるんと呼ぶ淫魔が、ポケットからメモを取りだす。それがこの淫魔の癖なのだろう。
     だが――、
    「マイ、プレシャァス♪」
     叫ぶや否や、ロードローラーが勢いよく淫魔を轢き殺そうと急にスピードをあげて迫って来たのだった。

    「みんな、六六六人衆の『???(トリプルクエスチョン)』って知ってる?」
     教室の集まった皆を見回してエクスブレインの鈴懸・珠希(中学生エクスブレイン・dn0064)が言う。
     六六六人衆の中でも上位の存在の『???』だが、どうやら彼が動きだしたらしい。
    「ターゲットとなったのは特異な才能をもつ灼滅者、学園の仲間よ」
     珠希が言うにはターゲットとなった者の名は『外法院ウツロギ』、彼を闇堕ちさせ分裂という稀有な特性を持つ六六六人衆を生みだしたと言うのだ。
     その六六六人衆こそ序列二八八位『ロードローラー』だ。
     元々二八八位は同じ分裂の特性を持つクリスマス爆発男の序列だったが、クリスマス爆発男が灼滅され空席になっていた所をロードローラーが埋めたという事だろう。
     ロードローラーは分裂により日本各地に散り、次々に事件を起こしているという。
    「それでみなには、とある繁華街の一角に向かってもらいたいの」
     珠希が地図に丸をつけて教えてくれる。
    「そこではメモるんっていう淫魔がロードローラーに追われているわ」
     珠希の説明によれば、ロードローラーは淫魔メモるんを倒してそのサイキックエナジーを奪おうと考えているらしい。もちろん奪われればそのエナジーはさらなる分裂体を生むために使われるだろう。それは阻止しなければならない。
    「だから、みなには追い立てられた淫魔を待ち伏せて、ロードローラーより先に撃破しちゃって! それが今回の作戦よ!」
     指を立てて珠希がうなずく。
     条件としてはロードローラーがやってくる前、具体的には10分以内に淫魔を灼滅する必要があるという。
     10分以内に灼滅ができないと思ったら、ロードローラーがやってくる前に撤退するべきだろう。乱入して来たロードローラーとも戦う事は可能だが……連戦して勝てる見込みは、まず無い。
    「追われている淫魔は、メモるんっていう眼鏡ショートカットの少女よ」
     珠希が言うには、強さは今の皆の6人分に達するか達しないかぐらいであり、充分灼滅は可能だとの事だ。
     戦いになると淫魔はサウンドソルジャーと魔導書に似たサイキックを使うらしい。しかも、その全てが列全てに影響が出るという。
    「それと、今はロードローラーから逃げる事に必死だから、みなに襲われても逃げれそうなら逃走をはかるわ。淫魔だし、最初は交渉しようとしてくるかもしれない……でも、それに乗ってたら10分立っちゃうし……」
     少しの間考えていた珠希だが、兎に角、と。
    「せっかくのチャンスよ。ロードローラーにエナジーを渡さず、淫魔も倒す、きっとみななら両方できると思うわ。よろしくね!」


    参加者
    雪待・連理(中学生殺人鬼・d00179)
    結城・創矢(アカツキの二重奏・d00630)
    宮廻・絢矢(はりぼてのヒロイズム・d01017)
    森本・煉夜(斜光の運び手・d02292)
    黒咬・昴(叢雲・d02294)
    汐崎・和泉(花緑青・d09685)
    天堂・リン(町はずれの神父さん・d21382)
    陽横・雛美(すごくおいしい・d26499)

    ■リプレイ


     淀んだ夜の空気が朝の光で少しずつ入れ替わって行く。
     そんな繁華街の裏路地を8人の学生が駆け抜ける。
    「サイキックエナジーを奪うとかさえなければ、勝手にダークネス同士やりあってくれるのは歓迎なんだけどね……」
     呟くのは陽横・雛美(すごくおいしい・d26499)だ。隠れているターゲットを探しつつ「これ以上あんなのが増えないよう頑張りましょうか♪」と愛らしく気合いを入れる。
     対して。
    「正直よくわからない……」
     疑問を口にするのは結城・創矢(アカツキの二重奏・d00630)だ。ロードローラーと淫魔の組み合わせに首を捻る。
     と、そうこうするうちに路地の柱の影に隠れている淫魔を発見、ショートカットの眼鏡少女、明らかにターゲットの『メモるん』だろう。
     創矢は「仕事はきっちりこなすだけ、か」と心の中で呟くと。
    「それじゃあ、後はキミに任せるね……」
     胸元からカードを取り出し殲術道具と『彼』を解放したのだった。
     そして。
    「はぁい! そこの可愛いダークネスちゃん! ちょっと私たちに灼滅されて頂戴な!」
     明るく声をかけたのは黒咬・昴(叢雲・d02294)。
     何事かとメモるんが振り向くが、そこには完全武装の灼滅者たち。
    「え?」
     と思う間に聖職服の天堂・リン(町はずれの神父さん・d21382)を筆頭にA班が左に展開、念の為に人払いの殺界を張りつつ森本・煉夜(斜光の運び手・d02292)たちB班が右に展開する。
     淫魔メモるんがどこか穴はないかと一歩生み出すも、チョコ色の霊犬ラブラドールのハルがグルルと牽制、汐崎・和泉(花緑青・d09685)も油断無く淫間の挙動に警戒する。
     完全な包囲……。
    「ああ、灼滅者さん達ですかぁ? ちょうど良かったですぅ~実は困ってて助けて欲しいんですよぅ」
     焦った様子も無くマイペースに話しかけてくる淫魔。
     それに答えたのは宮廻・絢矢(はりぼてのヒロイズム・d01017)だ。
    「そう言われてもね。……そうだ、ソレ、ずいぶんあざとい服だけどアイドルのつもり?」
    「もちろんですぅ。大先輩みたいな歌って踊ってエッチもできるスーパーアイドルを目指しているんですよ~」
     しなを作ってクルリと一回転するメモるんだが。
    「ざぁ~んねん、せめてもう少し髪が長くておさげなら……ごほんっ。ともかく、そんなショートじゃタイプじゃないや」
     絢矢はそう言うと悪癖という名のナイフを構え。
    「運が悪かったね、さようならだよダークネス」
     完全な敵対意志を見せる。
     それを見たメモるんも眼鏡の奥で笑みを浮かべ。
    「そうですかぁ~、ならぁ、私がいないと生きていけないカラダにしてあげますぅ♪」
     先輩の歌を唄い出すメモるん、蠱惑的な声が灼滅者の半数以上を一気に魅了していく。
     だが、雪待・連理(中学生殺人鬼・d00179)が腕を振り、同時に清らかな風が仲間達の頬をなで、一瞬で我へと返す。
     その手際に。
    「やりますねぇ~、でも、こっちは急いでるんでぇ~」
    「追われて逃げてるのだろう? 大変そうだな、高飛びを手伝ってやろうか?」
     連理の言葉に驚くメモるん。
    「本当ですかぁ?」
     両手を胸で組み微笑むメモるん、しかし連理は口角を引き上げ。
    「ああ、手伝ってやる。行き先は……あの世一択だがな」
     メモるんの笑顔が凍り付いた。


     2つの武器をそれぞれの手にメモるんへと迫る昴は、途中でふと思い出したかのようなそぶりで話し出す。
    「ところで今思い出したんだけど、最近のトレンドはアイドル服じゃなくてメイド服らしいわよ?」
    「そうなんですかぁ?」
    「九州の方じゃメイド服でアイドル活動する人達がいるとかって聞かない?」
    「はっ!? それは聞きました~! メ、メイドメイド……」
     去年、そんな話が出て勝負する為、南へ向かった同期達を思い出しつつメモを取り出すメモるん。
     キュピーン!
     昴の目が光り。
     ドゴッ!
    「い、痛いですぅ~!?」
     脳天をロッドで殴り付けてきた昴に、メモるんが非難の目を向ける。
    「はっ、戦闘中に敵から目を離す方が悪いのよ!」
    「た、確かに……メモメモ」
     ドゴンッ!
     追撃が入り涙目の淫魔。昴、容赦無し。
    「だまし討ちとかぁ、酷く無いですかぁ~!?」
     手をぶんぶん振り全身でアピールするメモるん。
    「悪いが、ターゲットと会話をする趣味はなくてな」
     そこに問答無用で飛び込んでくるのは創矢。言うや否や、無数の光の拳が淫魔を襲う。
    「交渉しようとしているのにぅ~……はぅぅ、どうすれば……」
     オロオロしつつも拳をさばくメモるんだが、そのうち数発は確実にダメージを与えている。
    「どうすれば……か、簡単なことだ」
     創矢の反応に思わず眼鏡を光らせるメモるん。
     だが。
    「ここであのロードローラーに惨たらしく殺されるのがいいか、俺たちに綺麗に灼滅されるか、好きな方を選べ」
    「そ、それは……!」
     反論しようとする淫魔だが、真横から近づいてくる轟音に思わず身を捻る。
     ギュルル!
     メモるんのスカートの端を削り煉夜のドグマスパイクが通りすぎた。
     回転するように致命傷を避けたメモるんは、そのまま再び魅了の歌を奏でる。
     だが、その視線はただ1人へ注がれる。
     それは……。
    「くっ」
     連理が腕を押さえてうずくまる。
     淫魔の歌は心を支配する。だが効果はそれだけでない、肉体的な苦痛をも伴うのだ。
     ――痛みは嫌いではない、戦いの実感が湧くから。
     苦痛を無視して立ち上がる。
    「一方的なのは……戦いとは言わない。それは、只の作業、だ」
     呟き、手にした槍を――連理は仲間の足を狙って振るう。
    「なにを!?」
     仲間達が驚くが、連理の瞳には光彩が失われていた。
    「肝は彼女ですよねぇ~?」
     嬉しそうにメモるんが言い、人差し指を唇にあてて。
    「さぁどうしますかぁ? この人を支配し続ければぁ、私の勝ちじゃないでしょうかぁ?」
     機敏に動き回っていた絢矢がキュッとメモるんの目の前で止まる。
    「私とぉ、お話する気になりましたぁ?」
    「みんなー、テストの自信はいかほど? 僕はもう覚悟してる」
     淫魔を無視して皆に話を振る絢矢。
    「勉強なんてしないわよ。だって、テストなんて授業聞いてりゃできるもんでしょ?」
     絢矢の言葉に昴が乗る。
    「え、ええ?」
     いきなりの事についていけないメモるん。
     絢矢はコキコキと首をならすと。
    「あーあ、テストもこいつみたいに灼滅出来たらいいのにね!」
     言うが同時、拳にオーラを纏わせ不意打ち気味に淫魔へと殴りかかる。
     必死に回避し、あわてて距離を取ろうと絢矢から離れるメモるん。
    「あのぅ、私の話、聞いてましたぁ?」
    「武蔵坂って順位の上がり下がり激しいよなー」
     再び淫魔が戻そうとするも、和泉がさらにスルーしテスト話を続ける。
    「あれってさ、ふざけたテスト範囲のせいだと思うのよ! だいたい、教科書全部とか言われるとやる気無くすのよね」
     和泉に相づちを打つ雛美だが。
    「それも学園の方針なんだろーけどー」
     和泉のスターゲイザーが話しながらもメモるんの鳩尾へHIT。
     身体をくの字に曲げる淫魔に、さらに雛美のオーラキャノンがぶち当たる。
     だが、メモるんはフフフと笑うと身体を反らして再び唄を歌う。
     それは灼滅者の前衛の意識をかき回す。
    「あの子が魅了されてる間に、全員私のファンにしちゃいますぅ♪」
    「あ、すいません今ちょっとマジメな話してるんであとにして下さい」
     魅了から回復したリンが、ジェット噴射で急接近しそのままの勢いでバベルブレイカーを叩き込む。
    「なん、で……?」
     メモるんが驚くが、その視線の先には何とか今だけ催眠に耐えた連理の姿があった。このターンは催眠が発動せず、皆のキュアに回れたという事か……。
    「そ、それでもぉ、このまま魅了し続ければ皆さんにぃ、勝利はぁ――」
    「僕は物理がどうにも苦手で……なんか良い憶え方とかありません?」
     メモるんの言葉を完全にスルーし、先ほど攻撃したリンが仲間に語りかける。
    「あ、あのあの」
     思わず割り込むメモるん。ふとリンと目が合い……今度は聞いてくれる? そう思った瞬間、ぷいと目をそらし再びテストトークのリン。
     さすがにここまでされて理解しないバカはいない。
     淫魔はがっくりと肩を落とすと……。
    「わかりましたよぅ~それなら、話し合いたくなるよう、追い込んであげますぅ」
     ずっと握っていたメモをポケットにしまい。本気になるのだった。


    「意志をしっかり!」
     ピンクの羽をふりふりして、雛美が祝福の言葉を風に乗せる。
     だが、祝福の風も何重にもかかった連理の催眠を打ち消すには届かない。
     次にメモるんの唄が来る前にと、創矢が冷徹に急所を狙って魔法の矢を放つも、淫魔は踊るように身を捻り急所をはずしてダメージを受ける。
     もっとも、被弾した隙を見逃す灼滅者はおらず、即座にリンがジェット噴射の勢いでバベルブレイカーを突き放ち、メモるんはこれを自ら前に出ることで被害を最小に押さえる。
     だが、トトッと前のめりに止まった先に見える足。
     ハッとして顔を上げればそこには拳にオーラを蓄えた煉夜がいた。
    「漁夫の利……いや、棚ぼた、か。まあいい、チャンスは逃さず、だ」
     いくつものオーラの軌跡がメモるんの身体を直撃し、軽い淫魔が壁に叩きつけられる。
    「い、痛いですぅ……」
    「ふん、恨むならロードローラーに狙われた不幸を恨むんだな。どのみちお前に、未来は無い」
     どんっと拳を壁の淫魔に突きつけ断言する煉夜。
    「ふ、ふふふ……それでもぅ、私の勝ちですよぅ」
     メモるんがタッと壁から降り埃を払う。その視線の先には連理。
    「理数系は得意だが……世界史は苦手……」
     ぶつぶつと呟きつつ、必死に淫魔から目を反らす連理。
    「無視ですよぉ? 私の声はどうしても心に届いているはずですからぁ♪」
    「ね、年号の暗記は……理解、できない。小説なら……いくらでも……」
    「ふふふ、いつまで耐えれまるでしょうかぁ♪」

     メモるんへの波状攻撃は続く、だが連理を集中して魅了され、キュア仕切れない状態となった今――。
    「それじゃあ聞いて下さぃ~♪」
     メモるんの魅了の唄が灼滅者の前衛達へ炸裂する。
     被害が甚大だったのは仲間を庇った和泉とその霊犬ハル、そして雛美だった。累積した淫魔の催眠の力に逆らえず、今さっき庇った仲間へと今度は自らの拳を振り下ろす。
     雛美のオーラキャノンを食らい吹き飛ぶ絢矢。
     だが、その反動で路地の壁を蹴り仲間達の頭上を越えてメモるんへ迫り、すれ違い様に淫魔をジグザグに切り裂く。
     苦しそうな表情を見せるメモるん、被ダメージでは灼滅者が押しているのだ。
     しかし、仲間すら敵に回りだしたこの状況、果たして……。
    「これだけ味方になってくれればぁ、あの変なのが来ても大丈夫ですね」
    「変なの? ああ、ロードローラーのこと」
     メモるんの言葉に昴が反応する。
    「そうなんですぅ、私を追って来てぇ……なんででしょうかぁ?」
    「知らないわよ。どっちにしろダークネスは叩き潰すにこしたことがないしね!」
    「そんな怖い顔しちゃいやですぅ♪」
    「くっ」
     昴の拳が味方へと向かい、それを止める手段は無い。
     その時、奇跡的に我に返ったのは和泉だった。
     だが、次の行動で再び自意識を保てるか保証は無い。
     ならば――。
     わずかな可能性に賭け和泉が霊犬ハルをオーラで癒す。
     もちろん、それだけでハルに掛かった全ての催眠を打ち消しはできなかったが……あとは。
    「―――ハル!」
     和泉の声に反応する霊犬、その瞳は……いつものハルだ。
     即座に意図を察してか、霊犬の瞳が輝き視線の先の人物を浄化する。
     今回、他者をキュアできるサイキックを持ってきた者は多い。だが、そのほとんどが自分と同じ列しか回復できない類のものだ。
     連理を除いたメンバーで他の列もキュアできるサイキックを持っている者、それは雛美とハルのみだ。
     列キュアの雛美と、単体だがサーヴァントのハル、和泉は無駄なく最短ルートを選び……そして――。
    「そ、そっちですかぁ!?」
    「簡単にやらせるわけには行かねーんでね!」
     メモるんが驚く、和泉が指示した対象……それは。
    「楽し過ぎるだろう? もっともっと、もっと楽しもうか!」
     和泉の目論見通り連理が正気を取り戻し、さらに自分へと清めの風を使う。
     完全に催眠から回復する連理。
     メモるんが眼鏡の下で苦虫を噛み潰す。
     一方、復活した連理はテンション高く叫ぶのだ。
    「さぁ、喚こうが泣こうが気にはしない。鈴虫ほどに綺麗な声で、泣き続けさせてやる」


     メモるんが前衛全てを炎に包むが、即座に連理の風によって消滅し、さらに残っていた催眠効果すら吹き飛ばす。
    「いくらでも来るがいい。どんな炎も催眠も、すべて私が剥がさせてもらう」
     連理の言葉に唇を噛むメモるん。
     解き放たれた灼滅者達の連携攻撃が繰り出され、再び淫魔を追いつめる。
    「ならぁ~、もう一度ぉ~」
     メモるんの目が連理に向けられ、蠱惑的な歌声が――。
    「させないよ」
     ピンク色の羽が舞い、雛美が連理を庇う。
     ピピピピピ。
     鳴り出す雛美とリンの時計。
     同時に鳴るのはこれで3回目……つまり、9分。
     ハルが六紋銭を飛ばし、メモるんが回避した所を炎を纏った和泉の蹴りが襲う。 
     蹴り飛ばされ起きあがろうとした所を、ガチャリと音がして振り向けば、そこにはナイフを口に加え両手でガトリングガンを構える絢矢の姿。
     ダララララララッ!
     一斉に掃射されるガトリング。
     無数の弾丸で打たれ踊るように跳ねる淫魔。
     フラフラになりながらも、うつろな目で逃げ道は無いかと探し……しかし――。
    「逃げようとしても無駄無駄!」
     声と共に何かが迫る。
     腹に走る重たく熱い痛み。
     見れば昴のバベルブレイカーの杭が突き刺さっていた。
    「い、いやああああああ」
    「風穴開けてあげるわ!」
     そのまま強引に淫魔ごと杭を撃ち放つ昴。
     淫魔メモるんは錐揉みしつつ路地の壁へと縫いつけられ……灼滅されたのだった。

     再び朝の空気を取り戻す繁華街の路地。
    「これで終わりですか……噂のロードローラーを見物できると思ってたんですけどねぇ」
     リンが消滅していく淫魔を見つめつつ呟く。
     ロードローラーが淫魔に追いつくまであと1分、このまま待っていれば彼の者を見物できる可能性もあるが。
    「帰ろう。今回は奴と相対する暇も余力も無い」
     冷静な創矢の言葉に誰もがコクリと首を縦に。
    「しかし……」
     帰路へつきつつ創矢は呟く。
    「ダークネスを倒してサイキックエナジーを集める……その目的とは、一体……」
    「ああ、さらに分裂を繰り返してなにをするつもりなのか……放置しておいたら――」
     創矢の言葉を引き継いだ煉夜が何かを想像し身震いする。
     ウツロギの闇落ちから数週間、それなりのロードローラーは灼滅された……物語の結末は――まだ、わからない。

    作者:相原あきと 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年6月6日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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