●全てを潰す、ロードローラー
『ウゥゥゥン……!! ウィィィン……!』
不法改造された車やバイクで、街角を走り回る若者達。
ちょっと若気の至りで暴走行為をしている彼らは、街に住む人達の事などお構いなし……自分の我儘を通す為に、騒音と共に暴れ廻る。
何度も繰り返される自体に、街の人達からすれば迷惑に思っている事だろう。
……そして、既に閉店したガソリンスタンドに屯って、どうでも良いことを喋っていると……。
『URYYYY!!』
と、聞こえてきた叫び声。
その叫び声と共に、やってきたのは……青いロードローラー。
『え……?』『うわああああ!!』
呆気にとられている間に……仲間の一人が、それに轢き潰される。
叫び声と、悲鳴が鳴り響くが、それに怯んだりする事もなく、一人一人、車諸共潰して行く……。
それに若者達の悲鳴、怒号が深夜の街に響き渡るのであった。
「皆、集まってくれた様だな。それじゃ早速だが、説明をはじめさせて貰うな」
神崎・ヤマトは、集まった灼滅者達を見渡してから、早速説明を始める。
「今回の事件は、謎に包まれた六六六人衆、『???』(トリプルクエスチョン)が原因の様だ。彼は……闇墜ちしてしまった灼滅者、外法院・ウツロギを闇堕ちさせ、分裂という稀有な特性を持つ六六六人衆を産み出した様なんだ」
「そして、その六六六人衆こそ……序列二八八位『ロードローラー』だ。この二八八位は昔『クリスマス爆破男』だったのだが、彼が灼滅された後、空席となっていたんだが……この得意な才能を持つ六六六人衆の発生により、空席が埋まった様だ」
「そしてこのロードローラーは、分裂により日本各地に散り、次々に事件を起こそうとしている様なんだ。皆にはこの分裂したロードローラーの起こす事件を解決して欲しいのです」
「そしてこのロードローラーが起こしている事件だが……一般人を殺す事件だ。この事件……原因となっているのは、騒がしい一般人達を轢き殺す、という事件だ」
「つまり、同じような状況を皆が代わりに起こすことによって、彼をおびき寄せる事が出来る。つまり皆が彼らの代わりに、迷惑な騒音を撒き散らし、夜の市街地を走る事で、ロードローラーを誘きよせる事が出来るだろう」
「つまりロードローラーの最初の攻撃は、この一般人をロードローラーでぺしゃんこにする攻撃だ。とは言えこれは灼滅者に向いた攻撃では無いので、一方的に反撃が可能になるだろう。逆に……騒音を撒き散らす若者を演じきれなかった場合、ウツロギに灼滅者とバレてしまい、普通の戦闘をする事となり、不利になるだろうから注意してくれ」
「又、彼の攻撃手段だが、やっぱりそのロードローラーで上からのし掛かってきたり、殺気を放出した攻撃を主軸にしてくる。一つ一つの攻撃力も結構高いので、これにも注意だぞ」
そして、最後にヤマトは。
「例え迷惑行為をする若者達と言っても、ダークネスに殺されてしまうのは見逃せないだろう。闇墜ちしたとはいえ、元々は俺達の仲間だったが……こいつは分裂した個体故、救出、交渉も難しいだろう。灼滅するしかないのだから、覚悟を決めて行ってきてくれ」
と、告げるのであった。
参加者 | |
---|---|
泉二・虚(月待燈・d00052) |
天方・矜人(疾走する魂・d01499) |
ガイスト・インビジビリティ(亡霊・d02915) |
刀狩・刃兵衛(剣客少女・d04445) |
灰神楽・硝子(零時から始まる物語・d19818) |
風間・小次郎(鋼の忍・d25192) |
榎並・柚亜(人の形の魔術師・d25422) |
徳長・箱(遠く冷たい静かな所・d25781) |
●暴走重車
ヤマトに話を聞いた灼滅者達。
六六六人衆、トリプルクエスチョンにより闇墜ちしてしまった灼滅者、外法院・ウツロギ、そして彼が分裂した結果、現れた今回の闇堕ちロードローラー。
「……ロードローラーか……」
「……。色々、流石、及び、混沌」
風間・小次郎(鋼の忍・d25192)に、ガイスト・インビジビリティ(亡霊・d02915)が瞑目。
確かに今迄、皆も色々とダークネスと戦ってきただろうが、こういう形……ロードローラーと戦うのは先ず無い事だろう。
「なんていうか、敵の見た目のインパクトが半端ねぇんだよな……」
「全く以てその通り。そもそもロードローラーと融合するとは、どういう理屈だろうな。まぁ……色んな意味で常識外れな相手には違いないしな。元は仲間とはいえ、今は六六六人衆で、姿形がどうであれ、容赦は出来ないな」
「……一般人、手がけ、阻止、遂行」
天方・矜人(疾走する魂・d01499)と刀狩・刃兵衛(剣客少女・d04445)に、再度ガイストが静かに頷く。
ガイストにとっても、ウツロギは所属する部の部長……ある意味ウツロギを流石とも思いつつも、放ってはおけない所。
「しかし……だ。このウツロギさんは、騒音を立てる若者の所に現れるんだったな……ある意味、私達も同じ事をしなければならない、という事か?」
という、泉二・虚(月待燈・d00052)が首を傾げると、頷く徳長・箱(遠く冷たい静かな所・d25781)や榎並・柚亜(人の形の魔術師・d25422)、灰神楽・硝子(零時から始まる物語・d19818)が頷きながら。
「ヤマトが若気の至りとか、とも言っていたしな。これは……走るしかないな……」
「そうだね……無駄な危険走行に無駄な騒音……任務達成のためとは言え、気の乗らない芝居だね」
「ええ……でも、自転車で暴走行為かぁ……カーボが使えれば一発なのになぁ……」
「まぁ……確かにそうだな。でも、ライドキャリバーを使うとなれば、こっちが灼滅者である事を知らしめているようなものになっちまうし……中々難しい所だろうな」
「ええ……あ、いけない。これじゃあ私がいつもカーボで暴走しているみたいに聞こえますね。そんな事は無いんです。ええ、これは人助け! 灼滅者とばれたらいけないんですから……でも、ああ……」
虚の言葉に、更にウズウズしている様子の硝子。
それにまぁまぁ、と言いながら。小次郎、矜人が。
「ともかく最近は騒がしい。油断せずに逝くとしよう」
「ああ。相手のペースに飲み込まれないようにいくぜ」
と決意を込めて、そして灼滅者達はロードローラーを誘導する為に、行動を開始するのであった。
●全てを潰す
そして灼滅者達は……誘導作戦開始の為に動きはじめる。
まずはガイストが、その場に殺界形成を使用……更に。
「おらぁあああ、私の歌を聴けぇええええ!!」
大きな声と、マイク越しに大きな声を乗せて叫ぶ硝子。
二つが合わさり、覚悟の無い若者達は一人、また一人……とその場から離脱。
だが、それでも残るような奴らには……。
「仕方ない……騒々しくするのは余り好きではないのだが、任務とあれば仕方が無いか。どんな連中でも見殺しにする訳にはいかないからな。やるからには、全力を尽くすとしよう」
と刃兵衛は呟きながら、王者の風を使用して、強力に威圧してその場から離脱させる。
……そして、皆居なくなった後で、とりあえず近場の道路を簡易的ながらに封鎖……全ての準備を整える。
「これで良し、と……それじゃ早速だけど始めるか」
「そうだね。運転頼んだよ、ヒーロー。行き先は殺人車両、キツい一撃のデリバリーだ」
「ああ。ここまでやれば完璧だろう。どっからでも来やがれロードローラー!!」
柚亜、矜人が……自転車で爆走開始。
その自転車の後ろには、結婚式で使われる車よろしく、空き缶を紐でくくりつけてカランカランと鳴り響くようにする。
……それに続けて、他の仲間達も自転車などに別れて乗車し、更にカゴにラジカセを乗せて大音量で再生したり、ブブセラ等の騒がしい楽器を大きく鳴らしながら、ガソリンスタンドに向けて走る。
「およし、ビートだ! ビートを刻めええええ!!」
「皆様ー! 私達は若気の至りで、自らの衝動を抑えられなくなっただけの一般人の集団でーす! 騒がしい夜を安心してオヤスミ下さいー!!」
箱はそう叫ぶ。
周りの家々の明かりがチラ、チラリと点灯していくと、満足気に箱は。
「よし、こんなところかな」
ぐっ、と拳を握りしめる箱……とまぁ、それはさておき、廃ガソリンスタンドへと到着すると、更に音を鳴らしていく。
虚が三線を音量全開で爪弾いたり、硝子がハードロック調ののメロディを奏でたりして……騒音を街に響かせていく。
……そうしていると。
『……URYYYY!!』
遠くの方から聞こえてきた、声。
「……来訪」
ガイストの言葉、そして……道路からやって来たのは、青いロードローラー。
一直線にこちらの方へとやって来るロードローラーは、真っ正面から……。
「……!」
咄嗟に、灼滅者達は左右へ別れ、一直線な攻撃を回避する……が、矜人だけは、その攻撃を躱さない。
自転車共々、ロードローラーに轢かれる……。
『ヒヒヒヒ』
どこか満足気な言葉を紡ぐロードローラー……が、轢きツブした下から、ぐ、グググ……と押し上げる動き。
「……オオオオオッ、ラアアァァァッ!!」
力を出し切り、ロードローラーを下から閃光百裂拳を叩き込む矜人。
ゴロンゴロン、とその身体が横倒しになる。
「さぁ……ヒーロータイムだ、皆行くぜ!」
「ええ、まったく……こんな道化のような格好をした甲斐が少しはあったかな……『I'm your enemy』」
「そうですね。さぁ、カーボ!! 行きますよ!!」
「一番暴走車、現在、ロードローラー。ウツロギ自身故、覚悟」
「機甲着装! 風間小次郎、推して参る!」
矜人に続けて、柚亜、硝子、小次郎らも次々とスレイヤーカードを解放……そして、すぐさま攻撃開始。
「握撃、捕縛」
ガイストが縛霊撃を叩き込めば、刃兵衛の黒死斬、虚の雲櫂剣、小次郎も黒死斬。
更に硝子、柚亜、箱も。
「正直、ウツロギが本懐を遂げても別に困ることはないんだけれど……任務だ。ここで灼滅させて貰おう」
「ああ、そやな。と、まずは音を遮断するとするな」
「ええ、お願いします。私のカーボを甘く観ないで! ぶちかませ、カーボ!! 恐れはしません! ガラスの靴、オーバーフロー! いっけえええ!!」
柚亜の閃光百裂拳に、箱はサウンドシャッター後、レーヴァテインの攻撃を叩き込む……そしてガラスはオーラキャノン、連携してカーポがキャリバー突撃で突っ込んで行く。
……不意を突いた灼滅者達の攻撃は、確実にロードローラーの体力をガッツリ削っていくが……身体がロードローラーと合体している彼の体力は、かなり多い様である。
そして、ロードローラーは曲がるようにロードローラーを動かして再び復帰する。
そとはいえその攻撃手段は真っ直ぐ、ロードローラーで灼滅者達をぶっ潰す攻撃……。
結構素早いが、その動きをそれぞれ声を掛け合いつつ、左右に分かれて攻撃を躱そうとする事により、大きなダメージを受けなくてはすむ。
「討ち払って、カーボ!」
「ここで貴方を討ち払う! 導け、Cinderella!!」
と硝子とカーポの連携に続けて、クラッシャーの虚の黒死斬、矜人のフォースブレイク、刃兵衛の雲櫂剣。
ガイストは、ビハインドと共に。
「車輪、切断」
と、黒死斬と霊撃の連続攻撃。箱もオーラキャノン、柚亜もスパイラルジェイド……と連携していく。
……また、ロードローラーの攻撃を、可能な限りガイストと箱のビハインドが仲間を庇うように動き、仲間に対する回復を一極集中。
その一撃一撃自体がかなりの大ダメージではあるが、ロードローラーも、灼滅者達の連続攻撃により一気に体力を削らされていく。
……そして、十数ターンが経過。
ロードローラーの青い身体が、所々にヒビワレが生じてきている……ロードローラーの石車の動きも、鈍り始めていて……。
「……全く目障りな姿だ……早々に消え失せろ!!」
刃兵衛の渾身の居合斬りが、ロードローラーの天頂部分から叩き落とすと、その一撃にロードローラーは……断末魔の叫びを上げるのであった。
●心も共に
「……終わった、か?」
「ああ……その様だな」
虚に頷く矜人。
青きロードローラーは、もう既に影も形も無くなっている……ウツロギの分身であるロードローラがこれでまた一つ、潰えた事になる。
ただ……戦いを終えた後の疲労感は半端ない。ふぅぅ、と息を吐き、そして自転車にもたれ掛かる刃兵衛。
「……疲れた。しかし、この様な事件が増え続けては迷惑この上無い……その為にもウツロギは、必ず連れ戻さないといけないな」
「そうだな……しかし、ウツロギも厄介な特性をもっていたものだ。分裂というのは……」
肩を竦める小次郎……と、その時、不意に聞こえてきたのはしっとりしたメロディ。
見てみると、いつの間にか虚が奏でていた三線の曲……果たしてそれは鎮魂歌か、ウツロギの帰りを待望する曲か……それは解らないけれど。
今迄の騒音に対して、静謐なる曲が流れる……そんな中、柚亜の提案で、後片付けを始める。
その片付け中、柚亜はぽつり。
「でも、いつか自分が非行に走る事があっても、暴走族入りだけは選択肢に上がらないだろうな……はぁあ……」
深い溜息と共に呟く柚亜。
勿論、非行に走ろうと思っている訳では無いけれど……このような経験をしたら、余り暴走したくはないと思ってしまうのも仕方ないだろう。
「ま、何にせよ……や。ウツロギが帰ってくるまでは、しっかり対処せんとな」
「そうですね。今度はカーボ君が活躍出来る様なのが出て来ると良いですね」
箱に微笑む硝子。
そして、灼滅者達は後片付けをして……その場を後にするのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年5月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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