運動会2014~学内1周RBクロスカントリー

    作者:相原あきと

     競技名:
     『学内1周RBクロスカントリー』

     内容:
      学園の敷地内を走り回るクロスカントリー。

     RB:
      リアルバウトの略。
      クロスカントリー中に相手走者を妨害する事を可とする。

     禁止事項:
      サイキックの使用は禁止。
      ライドキャリバーに乗ったり引っ張って貰ったりは禁止。
      学校の備品や校舎を破壊するような事は禁止。

     ――――――――――――――――――――――――――――――

     5月25日(日)は武蔵坂学園の運動会。学生たちは優勝を目指し盛り上がる。
     だがここに、別の意味で盛り上がる者たちがいた。

     彼らに統率者は無く、全てが同志だった。
     彼らは自然発生し、気がつくと自然へと帰って行く。
     メンバーに誰がいるかは不明、どう連絡を取り合っているかも不明。
     しかし、彼らはリア充が発生するタイミングで確実に自然発生する。
     ある者は覆面を、ある者は三角頭巾を、ある者は素顔で……。
     彼らの名は――RB団。

     運動会まで数日と迫った武蔵坂学園の屋上に、怪しい学生たちが集まっていた。
    「運動会……学園祭、修学旅行に並ぶリア充増加行事のひとつ」
    「だが、運動会中にリア充を狙えば競技妨害で魔人生徒会に何されるかわからん」
    「ああ、唯一の希望は……」
     覆面や頭巾や見バレ覚悟の素顔の団員が一心に何かを祈る。
     そして、その日、願いは聞き入られた。
    「みんな! 紛れ込ませておいた俺達の競技が通ったぞ!」
    『よっしゃー!!』

     それは『学内1周RBクロスカントリー』。
     ちなみにRBの上にはリアルバウトとルビがふってある。
    「よくやった! この隠語によって同志達は集結するだろう」
    「運動会的にはリアルバウトだが、久々にRBと銘打って活動できる!」
     彼らは常に活動していた。
     個人で、集団で、イベントや行事、果てはダークネスの依頼やクラブ活動中ですら。
    「ふふふ……だが今回は、遠慮なく流れ弾でリア充を爆発させられる!」
    『お、おお~!』
     集まっている団員達の嫉みと妬みと嫉妬とノリがヒートアップしていく。
     そして異様なオーラが頂点に達した時、吠えるように団員達が叫びをあげる。
    「久々にいつもの行くぞ!」
    『おー!』
    「目的は!」
    「リア充撲滅!」
    「合い言葉は!」
    「リア充爆発しろ!」
    「我ら!」
    『RB団!!!』


    ■リプレイ


    「諸君、俺はリア充となった!」
     審判を押しのけ男が言う。
    「だが俺は、十八番まで捨てたわけじゃない……それでは、さよならだ」
     男、フィン・アクロイドが言うと共に大量の爆薬や花火が――。

     ドーンッ!

     それがRBクロスカントリー2014幕開けの合図となった。 
     幕開けと共に催涙煙玉を破裂させ、自身はガスマスクを付けてスタートダッシュしたのは八葉・文、さらに粘度の高いゲル玉を後方へ投げ捨て駆けていく。
     斬ッ!
     催涙煙と爆発の土煙の中、ゲル玉を一刀両断したのは丸目・蔵人。周囲にゲルが飛び散る。
     そんな中、煙から飛び出したのは木島・御凛をお姫様抱っこした緋神・討真だ。
     暴れる御凛にキスをして降ろすも、その頃にはモブRB団たちに囲まれ。
    「パートナーがいる強さを教えてやるよ!」
    「い、今の見た奴ら、全員ぶっ潰す!」
     御凛の方が物騒な事を宣言しつつ、乱闘が始まる。
     やがて他のRB団たちも次々に煙を抜け。
    「RBの名のもとにリア充たちを粛正してやる!」
     竹刀で片っ端からバカップルを襲うはワルゼー・マシュヴァンテ、この日を待っていたとばかりに暴れ回る。
     だが、それは彼らも同じ。
    「爆熱のカズマ、見参!」
    「烈堂ファイト!」
    「赦されようとは思っていない……」
     立ち塞がるのは義勇軍参加の不破・和正、烈堂・満、遠夜・葉織。
     モブRB団たちが3人に向かうが葉織が木刀で斬り捨て、ワルゼーを守る数人に和正と満が接敵。
    「そんなだから、モテないんだぜ?」
     和正がヤクザ蹴りを叩き込み。
    「烈堂キック!」
     満がやっぱりヤクザ蹴りを叩き込む。……ヤクザ蹴り、流行ってるの?
     未だ大混戦大乱闘のスタートトラックを抜け、順次走り出す参加者たち。
    「こうして走ると、いつもと違う見え方がしますね」
    「いつも通っている学校のはずなんですけどね」
     ラブラブに走るは熊谷・翔也と北條・薫のリア充カップル。
    「む」
    「え?」
     と、2人の間に幌月・藺生が割って入り。
    「私、高校生になっても彼氏ができないんです……あれ? どうしましたか?」
     ゴゴゴゴゴゴッ。
    「ひっ」
     翔也の静かなオーラに、涙目になる藺生。ちなみに藺生のハチマキにはRBの文字。
     足を止めクルリと別のカップルに割り込みに行く藺生。意外と冷静である。
     やがて見えてくる校舎の入り口、そこに立つはRB団近衛騎士団長ナイト・リッター、ノーパンである!
    「逝くぜ、ぐっは――ッ!」
     先頭集団にふっ飛ばされた彼は散り際、RB神へと祈りを捧げるが……。

     さてこの日を待っていたのはナイトたちのようなRB団だけではない。
     参加者を見送った女がシーバーをONにする。
    「ネーベル・アインより各員、目標を補足次第速やかに制圧せよ」
     戦戦研部長、鹿島・狭霧の指示に『ラジャー』と返事がハモる。
    「さて、狩りの始まりね」


     ハーレム状態で階段を登る4人組、RB団の格好の標的である。
    「ふわっ!?」
     モブを殴り倒そうと前に出た綾町・鈴乃を七六名・鞠音が止めようと手を伸ばし、思わず胸を掴み……。
    「そ、そろそろはなしてもらえると……なんだかお顔が、あついのですよ……」
     顔を真っ赤に鈴乃が言うと。
    「こっちの方が揉み応えありますよ」
     と鞠音に自分の胸を揉ませる色射・緋頼。
     いつの間にかRB団も襲撃を止め思わず見とれ――。
    「いや、それ以上は止めておけ」
     唯一の男である御神・白焔がさすがに止める。
     賢明である。
     ただ、なぜ止めた! とRB団たちが逆キレしたのは言うまでも無い。
     騒動をすり抜けやっと競技の真意を悟ったのは鷹峰・京護だ。
     鞘に納めた飛炎を使い、美形も敵だと襲い来るRB団を排除し階段を登るが……数が多い。
     その時だ。
     チャララーン♪
     音と共に階段上に人影が。
    「誰だ!」
     問うRB団。
    「貴様等に名乗る名前は無い!」
     スルーして先へ進む京護。
     さらに口上を続ける人影。
    「神殺しのボンクラーズ、人、それを朧月・咲楽と言う」
    『名乗ってんじゃねーか!』
     一方、三階の踊り場ではカフェ・モカが大量のバナナの皮をまき散らす。
    「一ヶ月のバナナ生活! 奈落へ堕ちろリア充ども!」
     そしてその被害は早々に。
    「危ない!」
     黒岩・いちごが階段で滑った2人(墨沢・由希奈と緋薙・桐香)を支えようと手を伸ばし――。
     3人して転倒。
    「あんっ♪ いちごさんったら、大胆ですのね♪」
    「モゴモゴ……」
    「や、やだ、口を動かさないでっ!?」
     慌てて飛び退く主人公体質ないちご。
     上階から栗やたわしが投げつけられるが、いちご争奪の戦いは続く。
    「主人公属性、強敵ね」
     悔しがるカフェ。
    「ここはリアルバナナに任せて!」
     いつの間にか横にいた難駄波・ナナコがさらに大量のバナナの皮をまく。
    「いや、これ以上は足の踏み場が……」
    「(良い笑顔)」
     ツルッ!
    「やっぱりー!?」
    「そんなバナナァァァ!?」
     お約束でした。

    「くるみ」
    「マハルさん」
     背景を点描エフェクトにし保健室で見つめ合うのは榊・くるみとタージ・マハル。
     だが。
    「もう我慢できん!」
     ベッドから立ち上がりRB旗でタージを簀巻きにするは風真・和弥。
    「マハルさん!?」
    「大丈夫。僕は魔法使いだからね♪」
     いつの間にかくるみをお姫様抱っこし保健室を脱出するタージ。
     すぐに追おうとする和弥だが。
    「止めに、来ました」
     若生・めぐみに足止めされていた。
    「分不相応なのはわかっています。でも風真さんがほんの少しでも安らげるなら、一生懸命頑張ります……だから」
    「俺はRB団なんだ……」
    「風真さん……」
    『RB! RB! RB!』
     すぐにモブRB団が乱入しました。
    (ちなみにタージとくるみは『勝手に場面を追加するなで賞』です)。

    「モテないからって男の嫉妬は見苦しいぜ?」
     別の屋上から階段出口を狙撃するは戦戦研のスナイパー、柳瀬・高明。
    「ったく、面倒くさいことをしてくれます……」
     さらに狙撃しやすい場所を探して偶然一緒の場所に来た穂都伽・菫も同じく階段から出てくる輩をスナイプする。
    「こちらもどうぞ」
     そこに妨害の支援役で来ていた小田切・真が大量のネットランチャーを2人へ。
     次々と撃たれ、絡まり、屋上出口に転がっていく躯達(ちなみに菫は迷惑な参加者も問答無用だった)。


    「っぁわ!?」
     屋上で壁ドンされた狸森・柚羽だが、八重樫・貫の背後に現れたRB団を見てなぜかホッとする。
    「作戦成功! ユズ、どっちが多く倒すか勝負だぜ?」
     ニット帽を深くかぶり直した貫が本性を表しRB団へと殴りかかる。
     柚羽も同意するが。
     なんだこれ?
     少しだけモヤっともするのだった。
     屋上は今回のクロカンでも3本の指に入る激戦区だった。各参加者や派閥が各種妨害を仕掛けている。
    「危ない風宮!」
     飛来物から救うため、風宮・壱を空中で蹴り出したのは桜倉・南守だ。
    「サンキュ――って、南守ぃぃ!」
     無事着地した壱が屋上から落下しそうになる相棒へ腕を伸ばし、再び屋上へ引き上げる。
    「結局俺の方が助けられちまったな」
    「俺の目標はお前と一緒にゴールすることさ。気にするなって」
     そんな男の友情……には目もくれず。
    「ぐわーーー!」
     自らまいたヌルヌル液に滑って、屋上から落下していくサバト服。
    「師匠ーっ!」
     弟子の浦原・嫉美が霈町・刑一に手を伸ばすが届かない。
    「刑一君の声が聞こえたような……」
     声に嫉美が振り向くと紗守・殊亜と神代・紫のリア充カップルがいた。
    「し、師匠は次のステージに向かったわ!」
     手を伸ばした際、自分に絡みついたトリモチに四苦八苦しつつ叫ぶ嫉美。
     殊亜と紫は顔を見合わせると「刑一が女と……」「許嫁が」「クロエさんも恋人が」等と嘘を吹き込む。
     そして、トリモチ塊のまま怨念を叫ぶ嫉美と別れ、殊亜と紫は仲良くレースへと戻ったのだった。
     赤いペイント弾で目潰しを狙うは今回RB団参加の来海・柚季だ。すぐに義勇軍に見つかり放水の洗礼を受けるも、躊躇無く屋上からダイブ。
    「悔しくなんて無いんだからー!」
     それを見届け、次の標的へと放水先を変えるのは諸葛・明だ。
    「諸葛家秘伝『激流水計』」
     さらに数名が屋上から落とされていく。
     良い子は真似しないように。
     飛来物や放水などを格闘センスだけで回避し先へ進むは樋渡・龍人。
    「恋人がいる程度で妬むなどくだらん」
     途中で聞こえる声を一刀両断し、そのまま龍人は先を急ぐ。
     そんな中、手を繋ぎ歩くは鏡・瑠璃と灯屋・フォルケ、やがて多数のRB団に囲まれる2人。
     だが、お互い狙い通りだと頷き合うと瑠璃が催涙弾を発射、フォルケはスタン棒で数人を気絶させる。
    「げげー! こいつら戦戦研!?」
     逆に逃げだすモブRB団達に2人は声を揃え。
    『いらっしゃいませ~』
     狩りを開始したのだった。
    「え? リュックの中身はデザートだよ。ゴールしたら一緒に食べようと思って」
     一緒に走る花守・ましろの言葉に思わず頬を緩めるのは八重垣・倭、だがそんな平穏は長くは続かない。
    「あはははは! リア充に容赦は必要無いよねぇ?」
     立ち塞がったのは夏炉崎・六玖。
     さらにその後ろから倫道・有無が現れる、これには倭も驚きを隠せない。
    「RBなど興味は無い! だが八重垣、貴様を殴れるのならば話は別だ!」
     戦いが始まる。
     しかし。
    「裏切るか夏炉崎ィ!」
    「あはは! 疑わしくは爆破せよ! これがRB団さ倫道部長!」
     有無も巻き込み爆破を始める六玖。
    「あ、デザートが……」
    「歯ぁ喰いしばれ! ましろを、泣かせるんじゃねぇ!」
     裏切りの混乱の隙に倭のダブルアッパーが2人を同時に空中へ吹っ飛ばす。

    「ししょー?」
     吹っ飛んだ六玖を2人の影が空中キャッチし回収する。
    「刑一くんも撤退した、あははは、俺達も次へ行こうか」
     六玖の言葉に2人、若生・若と八城・佐奈が頷き、3人は逃亡したのだった。

     屋上のルートは最後にジャンプが待っている。
     そんな屋上の端で。
    「実は彼女ができたんだよぉ! ヒャッハー!」
     神楽・三成が吠え、RB団に筋肉でドライバーっぽいサムシング技で地上に落して撃破。
     三成が裏切るとは……と天が驚く。
     一方、屋上の端までやって来たのは神夜・明日等。
    「ひ、飛行船からだって飛び降りたんだから!」
     途中で見た保健室へ入っていった少女の結末が気になりつつ、明日等は屋上から跳躍したのだった。


     着地と同時、大量の癇癪玉を落して周囲をパニックに陥れたのは因幡・亜理栖だ。
    「ごめんね! 勝負だから!」
     そう言いさらに大量に落しつつ走って行く。
     体育館の屋根はRB団優勢で事が進んでいた。
    「振り出しに戻りやがれ、です」
     大量のパチンコ玉でリア充を屋根から落すは黒橋・恭乃。
     さらに白いフードで顔を隠した鏃・琥珀が石鹸水入り水風船をぶつけて確落コンボを発動。
    「くっくっく……リア充は無様に地に落ちれば良いのよ」
     だがやがて義勇軍に囲まれる2人。
    「もはやこれまで」
     恭乃は仕込んだ花火に点火、さらに癇癪玉にも有爆、派手に自爆を行なうのだった。
     爆発から飛び出し、リア充もRB団も関係無くハリセンで薙ぎ倒して走り抜けるは江田島・龍一郎。
     ――これが『競技』で済むんだから凄いよな。
     うん、まったく。
    「恋人できちゃってごめんなさい!」
     謝りつつ走るは桜井・夕月。
     もちろんRB団に狙われる夕月だが、竹尾・登、紅羽・流希、そして秋山・清美にガードされ未だ怪我一つ無い。
     もっとも、流希はバカップルもハリセンで叩き倒し「このような方々がいるから不毛な集団が増えるのです」と自論を展開して清美に睨まれていたが……。
     やがて夕月達は屋上の一角で睨みあう集団へ追いつく。
    「まさかそちら側に軍略を用いる者たちがいるとは」
     疑心メールやRB旗などの小細工を見破られた丹下・小次郎が呟く。
    「いいえ、私たちのは軍略で無く戦略であり戦術です」
     答えるは戦戦研所属狩野・翡翠。
     RB団の軍師(この半年で軍師だと皆に伝えた)を追い詰めているのは翡翠だけではない、完全武道派の義勇軍・杉崎・新羅もそうだ。
    「悪いがこの場の妨害は防がせてもらうぞ」
     隙なく木刀を構える新羅。
    「丹下先輩、裏切り者が……」
     小次郎の背後で裏切り者リストを眺めていた富山・良太がやってきた夕月達に気付いて報告する。
     だが、小次郎を見て前に出たのは清美だった。
    「皆さん、これを見て下さい!」
     清美がばらまいたのは小次郎とRB団の女子が仲良く地獄合宿をゴールする瞬間の証拠だった。
     場の空気が固まる。
    「あの……すみません。申し訳ないのですが通りますね……」
     その空気を無視して通り抜けようとするのは園観・遥香、手で顔を隠している所を見るとTG研とは遭いたくなかったらしい。
     一瞬の隙、動いたのは軍師だ。
     シーバーで指示を出しポケットから爆破スイッチを取りだす。
     即座に翡翠がボーラを投擲、転んだ小次郎の手から新羅が木刀でスイッチを破壊。
    「残念、本命は――」
     小次郎がそう言い終る前に、目の前に爆薬を腹に巻いた登が現れる。
    「先に自爆すれば爆発オチに巻き込まれない、うん、完璧な作戦だよね!」
    「なっ!?」

     ドーンッ!

     屋根の上で盛大な爆発が起こる。

     一方、屋根の端では独り参加の裏方・クロエが。
    「このロープを引けば、オイルが濃厚に流れて……あれ?」
     自画自賛しつつロープを引いていたクロエに――。
    「こ、これは孔明の罠だー!」
     そんな惨状の中、「邪魔だよ」とクロエを付き飛ばしてロープを降りるのは水無月・飛鳥だ。
     着地すると「次はプールだね」と先へと進む。


    「へ、平気なのじゃ。大丈夫なのじゃ」
     父である水貝・雁之助に手を引かれながらも、おんぶを拒否してカンナ・プティブランが強がる。
    「わかった、ならせめて少しだけ休憩しよう」
     ここは食堂だ、給水機もあるし丁度良い。
    「う……む、わかったのじゃ」
     そうして親子仲睦まじく休憩する2人にチョコが差し出される。
     見れば天城・兎だった。
     だが。
    「目指すは優勝のみ!」
     テーブルの上を駆け抜ける参加者、赤暮・心愛に頭を踏まれてチョコを落す兎。
    「おい! せっかくリア充に配ってた賞味期限切れチョコが台無しだ!?」
     兎の非難に、水貝親子はそそくさとレースへ戻るのだった。
    「よぉ、てめぇも参加してたのか」
     足を止め、ガーゼ・ハーコートに声をかける宮野・連。
    「あー、君か」
     何となく特別感(腐れ縁)漂う2人に反応したのはもちろんRB団だ。
     しかし。
    「男同士かよ……」
     別へ向かうRB団たち。
     2人は顔を見合わせ。
    「で、競技は良いの?」
     男と勘違いされたガーゼが促し、ハッとした連は再び走り出す。
     ここ、食堂でもRB活動は行なわれていた。
    「ふふふ、自らの罪を告白し、懺悔しなさい」
     赤い司教服の黒木・摩那が熱々油揚げを近づけ威圧。
     それでも認めないリア充は西原・榮太郎が爆竹を爆破させ実力行使。
     アーイッ! イーヤッ! シュテルベン!
     もちろん義勇軍が集まってくればやることは一つ。
    「リア充は爆破するのがお約束らしいですから、さぁ、素敵なパーティーにしましょう」
    「RB団は不滅!」
     2人の自爆を横目に一人黙々とゴールを目指すは久遠・翔。
     相手に振られて1人競技に参加中……大丈夫、RB団はキミを攻撃しない。頑張れ!


     プールへと到着したリア充達は謎の声を聞いていた。
    『一つ、人世の規律を乱し。
     二つ、不埒な淫行三昧。
     三つ、淫らなリア充共を、退治てくれようRB団でござる!』
     ザパッ!
    「ぎゃーーー!」
     水中から飛び出した瞬間、蜂の巣にされプールに浮かぶハリー・クリントン。
     デーン
     殺ったのはRB団スレイヤーの黒咬・昴だ。
    「バナナは貰うが慈悲は無い、RB死すべし」
    「わーい! ニホンのRB団のサインもらえたー!」
    「シ、シー!」
     子供と話す見知った声に昴がその方向を見れば、アッシュ・マーベラスにサインをねだられている刑一がいた。
     昴の口が歪む。
    「サンキュー!」
     刑一に手を振り去って行くアッシュ。
    「ハハハ、見逃してくれるつもりは……」
    「もちろん、ないわね」
     始まるバトルの中、女の子同士でプールを渡り始めるのはリオン・ウォーカーとホワイト・パールのペアだ。
     泳げないホワイトをリオンが肩車し渡って行く。
    「ん……ありがと」
    「しっかり掴んでて……って大丈夫そうですね」
     ギュッと握ってくるホワイトを、なんとも愛らしく感じるリオンであった。
     ハラハラしながら渡るはシュウ・サイカだ。共に参加しているリューズ・バレスタインの服がプールで透けて……ドギマギだ。
     途中、チラリとでもリューズを見た者を所属無用に気絶させつつ、最後の最後でかなり神経を使ったシュウであった。
     もちろん個人でプールに挑む参加者もいる、橘・愛美などがそうである。
     服を着たまま泳ぐのは動きにくいが過去の経験を駆使してプールを泳ぎきる。
     一方、プールを泳ぎ切る前にRB団と激闘を繰り広げているペアがいた。
     ミハイル・オルダノフと東郷・香澄、抹殺リア充リストの上位ペアだ。
     もちろん簡単にやられる2人では無く。
    「体が軽い……こんな幸せな気持ちで戦うなんて初めて!」
    「RB団は便所に追い詰め、花子さんの餌食にしてやる」
     背中合わせで戦いは続く。
     さて、プールが本格的に地獄と化したのはこの後だった。
     リア充の息継ぎに合わせてデスソースを水鉄砲で直撃させるRBラッコ、じゃない天ヶ瀬・爽子。
    「君たちの幸せに……グッナいぶふっ!?」
     喋っていた口にデスソースが直撃しプールの藻屑と化す爽子。
     それをしたのは爽子と同じくデスソース水鉄砲でRB団を撃ち倒していた戦戦研の葵璃・夢乃だ。
    「そろそろ最『臭』兵器の出番ね。皆、離れて! 今から自爆技を仕掛けるから!」
     シュールストレミングを開かられ、強烈な匂いが広がる。
     臭いから逃れるよう誰もがプールに潜る中。
    「くらえぃ! ダイダルウェィーブ!」
     流阿武・知信が水面をハンマーで思い切り叩き大波を起こす、プールのデスソースが拡散、無差別に大参事。
    「あ、あれー?」
    「だー! ヒリヒリする!」
     強引にプールを泳ぎ切った刀牙・龍輝が服を脱ぎ捨て。
    「着替えるのもいいや! このまま行こう!」
     だがさらなる悲劇がプールを襲う。
    「ツムギおにーちゃん♪ 待ってたよ♪」
     プールに入ろうとした所で麻古衣・紬の前に現れたのはフリフリメイド服のセシル・レイナードだった。
     いつもの調子で紬にちょっかいをかけていた遊亀・夜弥亜も硬直。
     さらにセシルが紬に抱きつけば、ワラワラとRB団が集まってくる。
    「い、今のは違うっ! って、動けないんですけど!?」
     夜弥亜がトリモチネットで紬をぐるぐるにしていた。
     ついでに白粉が撒かれ周囲が真っ白に。
     さらりと逃げるセシル。
    「ひぎゃあ!?」
     と、そこで夜弥亜が悲鳴を上げる。
     悲鳴の原因はプール内にあった、いつの間にか大量のワカメがプール内で増殖していたのだ。キモい。
     ワカメだらけのプール内で鮎宮・夜鈴がリア充の足を掴んで船妖怪のごとく水中へと引きずり込む。
     だが。
    「ワカメが絡まって、身動きができないのですわ!?」
    「ひじきも追加なのじゃーって、にゃあ!? ワカメ気持ち悪い! 誰か助け、ぎにゃー! ワカメのお化け(夜鈴見て)なのじゃー!」
     動けなくなった夜鈴に、同じく行動不能のシルビア・ブギ(ワカメ主犯)。
    「くっ、待ってろシルヴィ!」
     プールサイドからリア充を機械式水鉄砲で狙い撃っていた素破・隼が飛び込む。
     その時、紬の手にあった火炎瓶の中身の油がプール表面に流れだしていた。
     その時、隼の機械式水鉄砲は不具合を起こし、水面に到達時に火花が――。

    『あ゛』


     参加者が続々と最終トラックへと戻ってくる。
    「拙者、フラれ続けててRB団に狙われる心配ござらん」
     結構悲しい事を呟きつつトラックへ入ったのは阿久沢・木菟、妨害せず、巻き込まれず、悪くないペースだ。
     だがこれはRBクロスカントリーだ。妨害を行なう者は多い。
    「さぁさ、これを使いなされ」
    「ぎゃあー」
     走りながら格闘の指輪を拾った木野山・天音が、協力するフリをして前の走者に投げつけ吹っ飛ばす。
     そんな均衡が崩れたのはある人物の発言だった。
    「男女ペアだけど僕たちはそういうんじゃない! 確かに僕は燈が好きだけど片思いさ!」
     思わず言ってしまったのは識守・理央、即座にRB団達が殺到する。
    「……あ、すみません、今の聞かなかったことにして下さい」
    『リア充爆発しろー!』
    「くっ、燈、ここは僕に任せて先に行けっ!」
     ほへ? と茫然としていた廿楽・燈が我に返り。
    「え、あ、いやいやいや、理央くん置いてはいけないし!」
     大乱戦へと突入。
     その混戦を先頭集団が抜ける。
    「邪魔を……するなぁ!」
     先陣を切るのは鴻上・朱香、さらにピタリと後ろに九凰院・紅。
     無言で無駄な動きなく混戦を抜け、紅が朱香に並走する。
     ちらりと朱香が紅を見て。
    「最後まで、全力でいかせてもらう」
     紅も僅かに、本当に僅かに口の端をあげ「ああ」と返す。
     そんな先頭集団にR8と書かれた黒いサバト頭巾が紛れていた。
     だが次の瞬間、サバト頭巾を飛んできたロープが縛る。
    「せっかくの運動会、RB団は邪魔しちゃダメだよ?」
    「高貴なる血筋の私が、戦戦研は最後の砦!」
     それは新城・七葉と須野元・参三だった。
     しかし本気で焦ったのはサバト服だ。
    「ち、違います! この格好ならRB団に邪魔されないと思って!?」
     慌てて頭巾を脱ぎ捨てる薛・千草。
    「ほ、ほら、恋人から貰った指輪です! 私、リア充です!」
     指輪を掲げる千草に、納得した戦戦研の2人が拘束を解く。
     一安心の千草。
     ズキュンッ!
     ガキンッ!
     響く銃声から千草を庇ったのは参三だった。
     狙撃したのは屋上でこの機を待っていた天倉・瑠璃。
    「チッ、最後まで厄介な」
     舌打ちし次の手へと移る瑠璃。
     そんな間も競技は続く。
     先頭集団内で木製籠手を獲物にライバルを投げ飛ばしつつ順位を上げるは乾・舞斗、力の限り1つでも上へ……。
     一方、妨害をせず、妨害を受けても耐えて無視して競技を真面目に続けてここまで来たのは大山田・小太郎、童貞魔法使いを目指す男(この情報いるか?)。
     そして先頭集団には個人ではなくペアのままデッドヒートを繰り広げる者もいた。
    「お前には……負けられないんだぜ!」
     息も上がって今にも倒れそうなを気合で押し込め、一歩でも前へ進むはクーガー・ヴォイテク。神速の男。
    「俺だって、てめぇにだけは負けたくねぇんだ!」
     卦山・達郎も最後の力を振り絞る。
     好敵手、全力の勝負、そして友情……だが、これはリアルバウトクロスカントリーだ!
    「これで全員壊滅だ!」
     先頭集団の1人、銃沢・翼冷が叫ぶと同時、どこからか大量のボールを撒き散らす。
    『!?』
     先頭集団の半数が転倒。
    「正攻法で俺が連合を優勝に!……嘘! ただ楽しいからやった!」
     やがて見えてくるゴールテープ。
     だが、そのテープの前にワカメを頭につけた少女が1人。
    「召集が無い間、ボクはずっと鍛えてたんだ!『さあリア充と義勇軍、お前達は誰1人ゴールさせない!』」
     柿崎・法子が徒手空拳で構える。
    「RB団か! 最後の最後まで性懲りも無い! 高貴な私が鉄槌を下してやる!」
     参三が何かを投げ込み、ゴール前で太陽拳並みの光が参加者の眼を潰す。
     だがRB団も負けてない。
    「あはははっ! チャンスだよ若ちゃん!」
    「イエスししょー! リア充爆破ー! 慈悲は無いっ!!」
     六玖と若が突撃して来るのが声だけで解る。
    「瑠璃さん、これを」
    「OK」
     屋上付近の狙撃場所で佐奈がスナイプしていた瑠璃に大量のロケット花火を渡し。
    「覚悟……!」
     一斉に火のついたロケット花火がゴール付近へと打ち込まれる。
     さらに追加分の花火を取りだし次弾を準備する佐奈。
     だが。
     ズキュン!
     打ち込まれた弾丸が手元の花火を引火させる。

     遠く屋上での爆発を見ながら、シーバーを片手に狭霧が呟く。
    『柳瀬先輩、お疲れ様です』

     真っ白な世界でそれでも先頭集団はゴールを目指す。
     しかし。
     ――ピッ!
     ゴールテープが切られる……『目を押さえてヨロけた法子』によって。
     やがて審判がやって来て言った。
    「きみ、スタートしてないから失格ね」
    『!?』
     そう法子はスタートせず(逆走して)ゴール前で待っていたのだ。
     他の参加者の視線が一斉に集まる中、法子はしれっと。
    「『よくあること』だよね?」

    『ねーよっ!!』

     全員の総ツッコミがハモる。
     優勝は法子の次にテープを切った八葉・文となった。
     清濁合わせ持った作戦を立てた中で、特にスタートダッシュでそれを決めたのが勝因だったのだろう。
     そうして波乱のRBクロスカントリー2014は幕を閉じたのだった……。

    作者:相原あきと 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年5月25日
    難度:簡単
    参加:113人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 2/素敵だった 9/キャラが大事にされていた 18
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