運動会2014~ウォーターシューティング

    作者:天木一

     今年も熱き戦いの日がやってくる。
     5月25日は武蔵坂学園の運動会の日である。
     組連合の力を集結し、勝利を求めて全力で戦い抜くのだ!
     熱く燃え盛る闘志を胸に、戦いの火蓋が切られようとしていた。
     
     壁に背を預け、片膝をついてハンドガンを構える貴堂・イルマ(中学生殺人鬼・dn0093)は壁越しに気配を探る。
    「すーはー……よし!」
     深呼吸をしてイルマは一気に飛び出す。そこに狙い済ましたように銃撃が放たれる。
     だがイルマは着弾よりも速く駆け抜け、跳躍と共に銃口を向けて引き金を引いた。
    「わ、わぁっぷ」
     直撃を喰らい、水浸しになった能登・誠一郎(高校生エクスブレイン・dn0103)がライフルを下ろす。胸に着けていたゼッケンが水に濡れて破れていた。
    「どうやらわたしの勝ちだな」
     イルマは笑顔で誠一郎へと近づく。体操服の二人が手にしているのはカラフルな玩具の銃。撃たれた弾丸は水だった。
    「あー、びしょびしょだよ。やっぱり僕にスポーツは合ってないねぇ」
     誠一郎は濡れた眼鏡を拭い溜息を吐く。滴り落ちる水滴がグラウンドの土に吸い込まれる。
    「誠一郎先輩は普段から運動をしていないせいだと思う。だからもっと練習しよう!」
     やる気満々なイルマを見て、どうすれば解放されるだろうかと誠一郎は視線を彷徨わせる。
    「あ、ほら、みんな集まってきたみたいだよ。説明をしないと」
    「むぅ、もうそんな時間か。なら仕方ないな」
     イルマの意識が逸れた事に誠一郎は安堵して銃を置く。振り向いた先には灼滅者達が集まっていた。
    「こんにちは。今年も運動会の季節がやってきた。いろいろと楽しそうな種目があって、どれに出ようか悩んでしまうな」
     そしてイルマは水鉄砲を見せる。
    「それでだが、去年に続いて今年も水鉄砲バトルが開催される。他の競技で熱くなりすぎた体をクールダウンするにはちょうどいいだろう」
     日中の気温は日に当たるだけで汗ばむほどだ。
    「試合形式は組連合ごとにチームに分かれ、全チームが一斉に戦う。全滅したチームから順位が決まり、最後に残ったチームが優勝だ」
     数が多いチームが有利だが、それだけで勝利できるというものでもない。
    「選手にはこのゼッケンを身に付けてもらう。このように水に濡れると破れてしまう。破れた選手は退場となる」
     手にしたゼッケンに試しに水を掛けると、あっとうまに破れて縮む。
    「使用できる武器はこの3種。ハンドガン、ライフル、バズーカだ」
     ハンドガンは片手武器で射程は短いが引き金を引くだけで撃て、機動性が高い。多少機動力は落ちるが二挺拳銃にする事も可能だ。
     ライフルは両手武器で射程が長い。だがポンプ操作をして圧力を掛けなければ撃てないので、補給時の隙が大きい。
     バズーカは両手武器でライフルほどではないが射程も長く、範囲攻撃が可能だ。だが弾数が少なく、ポンプ操作も必要なので攻撃可能時間が短い。
    「それと今年は新しい武器がある」
     そう言ってイルマが見せたのは手のひらサイズの風船。ぱしゃんぱちゃんと付いている紐を揺らして遊ぶと、壁に向けて投げた。ぶつかると風船は破裂し、中に入っていた水がぶちまけられる。
    「見ての通り水風船だ。申請すればサブウェポンとして一人に一個だけ支給される」
     手で投げるので遠距離での命中率は低いが、使い方によっては有用だろう。紐が付いているので腕にかけたり、武器に引っ掛けたりして銃撃の邪魔なく所持出来るが、激しい運動をすると自滅する可能性もあるので、持たないのも一つの手だ。手で持てば安全に運用できるので、ハンドガン向けかもしれない。
     武器は全て譲渡できない。自らの限られた武装で戦い抜くのだ。
    「説明は以上で終わりだ。わたしも参加するので同じチームの人は共にがんばろう! 他のチームの人も、当日は全力で勝負を楽しもう」
     灼滅者達は頷き、それぞれのクラスで作戦会議を開こうと教室に帰っていく。
    「では、わたしはもう少し練習をするかな」
     イルマが視線を向けると、そこにはこっそり立ち去ろうとしていた誠一郎の後ろ姿があった。
    「僕は出場しないから、練習しても意味が……ああ、引っ張らないでっ」
     その後、全身水浸しの誠一郎が盛大なくしゃみをしたのだった。


    ■リプレイ

    ●運動会
     グラウンドに銃を持った140人程の戦士達が集う。
     熱気に包まれているのは快晴の所為か、それともこれから始まる戦いの所為か。
     チーム毎に赤、桃、白、橙、黄、黄緑、緑、青、紫と色の違うゼッケンを付け、今か今かと待つ。銃から水滴が落ちた。
    『水鉄砲バトルを開始します!』
     ピストルの破裂音と共に一斉に動き出す。

    ●戦端
     先陣を切ったのは3C桜組。2B桃組へと侵攻する。
    「さあ、今年は勝ち残りますよ」
    「ああ、去年のリベンジだ。今年こそ残るぞ」
     緋頼は水風船を投げると囮となって飛び込み、白焔は現われた敵に二挺拳銃を撃ち込んだ。
    「これでも早撃ちには自信があるんだ」
     久良は銃を抜き撃つ。
    「よっし。いっちょ三人で暴れてやろーぜ! 徒、天摩!」
     和真の声に3人は動く。
    「背中は任せたよ。 行きます!」
     前に出た徒は敵の攻撃を回避していく。
    「援護は任せるっすよ」
     フォローに天摩がライフルを撃つ。
    「乱れ撃つぜっ! ……なんてなっ♪」
     天摩が移動すると背を守るように和真が二挺拳銃で弾幕を張る。
    「さ、エミーリア。攻め込むわよっ」
    「レンちゃんを狙う敵には容赦しないの」
     フローレンツィアと瑞葵はライフルを構えて敵を狙い撃つ。
    「御都ちゃん! 9時の方向から敵2名、おねがい!」
    「そこでストップですよ。ここより先は行ってはダメです」
     エミーリアの声に、御都はバズーカを撃ち、続けてフィリアがバズーカを向ける。
    「……それ以上は近づかせない」
    「今、撃てる!」
    「……了解!」
     夕月を狙おうとした敵に、アヅマがバズーカをお見舞いした。二人はやったと笑うと次の敵を狙う。
    「御理さん、はっけんですよー!」
    「華月さんに背中は任せますね!」
     華月と御理は合流し協力して戦いを始める。
     2B桃組も抗戦に移る。
    「敵多数! 迎撃を始めます!」
     真が膝を立てライフルを射撃する。
    「射撃戦は苦手ですが、精一杯頑張るのです」
     愛美も身を隠しながら銃を撃つ。
    「この私の頭脳を持ってすれば弾道計算などお手の物だ」
     参三が曲射でバズーカを放つ。上から降る水に敵は散開した。
     だが戦力差は圧倒的だった。2B桃組は一気に制圧されていく。
    「状況は不利ですが最後まで戦い抜きましょう」
     真は諦めずに撃ち続ける。
    「この私がやられただと?」
    「冷たいのです」
     参三と愛美が背後からの攻撃に被弾する。1A梅組が参戦したのだ。
    「のっすぃ~見つけた! 勝負!」
     澪が早速銃を撃つ。
    「私、当てにくいですよ」
     翡翠はジグザグに動くと、澪も身軽に跳ね攻撃を避ける。激しい攻防に互いの水が切れた。
    「終わりです」
     翡翠は隠していた銃を撃つ。澪はギリギリで躱す。
    「あ……」
     激しい運動に胸元に隠していた水風船が飛び出し、破裂して二人共ずぶ濡れになった。
     2B桃組は壊滅した。

    ●東部戦
     1A梅組は勢いに乗り3C桜組に牙を剥く。
    「参加する以上目標は優勝、MVPね。無様なやられ方だけは認めないわよ」
     鏡花の宣言に仲間達は頷いた。
    「それじゃ、負けない努力はしようか」
     芯は安全をキープしながら仲間の援護を行なう。
    「やっぱりこういうのは大勢でやると燃えるわね♪」
     二挺拳銃を手に眞白は楽しそうに前線に出る。
    「すみません、大人しく当たって下さいねェ」
    「珈琲焙煎のように緻密で繊細、そして正確なタイミングで撃ち抜きます!」
     真はバズーカを撃ち込む。逃れようと動いた敵へ花梨はライフルで狙撃した。
    「援護するよ、今の内に補給を!」
     弾切れの仲間を守るように渚緒が銃を構える。
    「濡れて涼しいのはむしろ望むところです……が、どうせならある程度勝ちを狙いにいっても、良いんじゃないでしょうか」
     真冬の言葉にやるからには勝とうと返事が起きる。
    「こ、怖い、けど。クラスの皆と一緒だし、頑張らなきゃ……!」
    「雪那、ボクを壁にしていいから」
     雪那に任せろと小郎がバズーカを構える。
    「それじゃ、皆の水補給の時間稼ぎしてくるの」
     美海が突撃し両手の銃を撃ちまくる。
    「では始めましょう」
     舞斗が水風船を遠投する。放物線を描き敵陣に落ちた。そして二挺の銃を構える。
    「撃ちぬいちゃうよー! 覚悟ー!」
     静かに気合を入れて奏恵は引き金を引く。
    「ふふー勝負は非情なのです!」
     誇らしげに悔しそうにする相手を見た。
    「今年から二丁使えるのですね……やはりこっちのほうがしっくりきます」
     公平は馴れた様子で二挺の銃を操り戦場を駆ける。
    「数撃ちゃ当たる!」
     とにかく撃ちまくるとクレイはバズーカを撃っては補給を繰り返す。
    「近づかせませんよ」
     理緒は水風船を投げて敵の足を止めると、ライフルを構える。
    「ここは通さんのじゃ」
    「フフフ……吉祥寺のシモヘイヘと呼ばれたい、このユーナにお任せであります」
     八重香が銃で迎撃し、優奈は不気味に笑いながら狙撃を行なう。
    「お姉ちゃんみたいにいかない、ですけど……真似っこくらいならできるです!」
     後方から仙花がバズーカを撃ち込むと、敵は慌てて動く。
    「今ですよ、2人とも! 畳み掛けるなら今なのです!」
    「任せるのじゃ!」
    「ふぁいやいんざほー、であります」
     二人は敵に水風船を投げつけた。
     3C桜組も必死になって防戦を行なう。
     久良が引き金を引くが水が出なくなる、そこに敵が姿を現す。
    「弾切れだと思った? 悪いけどもう1つ持ってるんだよね」
     久良は銃を持ち変えると弾幕を張り続ける。
    「射撃はあんまり自信が無いんだよね、だから足を活かすよ!」
     徒がダッシュで接近し、天摩と和真が背中合わせで防衛する。
    「和真っち……この移動の方法なんかちょっと目回らないっすか?」
    「ちょっとな」
     二人はニヤリと笑いながら、敵に反撃する。
    「あわわ、ぬれてしまうのですよー」
    「華月ちゃん隠れてください!」
     御理は華月を庇うように前にでて銃を撃つ。
     2B桃組の陣地を確保した1A梅組が優勢だった。

    ●西部戦
     9I薔薇組が8H百合組に攻撃を始めた。
    「七葉、星流、遊撃を狙ってる相手を優先的に狙って落して」
     状況を見て逢紗が次々と指示を飛ばす。
    「ん、邪魔はさせないよ」
    「了解だよ」
     七葉と星流は敵の隠れて居そうな板を目視する。
    「結月、七波、ストレリチア、右翼から展開して叩いて!」
    「了解なのーっ♪」
    「さて、今回も指揮通り動きますよ」
    「ふふ、オニさんこーちらー♪ ですのよー!」
     3人が一斉に動き出すと、敵も警戒して応戦を始める。
    「シルビア、ここが見せ場よ。今年もMVP、取ってみなさい」
    「今年もMVPを取ってせ見るのじゃ! にゅふーん!」
     シルビアは仲間が追い込んだ敵にバズーカを撃ち込むべく、仲間の後を追う。
    「なんて面白そうな競技でしょう」
     秋沙は楽しそうにバズーカを構えて敵陣に向かう。
    「ふふふ、私達のコンビネーション見切れるかな?」
     紫が銃を向けると敵もまた銃口を向けてくる。そこへ殊亜が撃ち込む。
    「1秒でも隙を見せたら命はないよ」
     二人は視線を合わせると次の敵へ向かう。
    「去年2位だったのが伊達じゃないって事を見せてあげるわ」
     巫女は目の良さを生かして前線から離れた場所に潜伏する。
    「良いか、俺がやられても気を取られるんじゃないぞ。その時にはお前が代わりに生き残れ」
    「舜、このタイミングで言うと完全にフラグだから!」
     舜の台詞にアスールがツッコミを入れる。飛んで来る水を避け二人は反撃に移る。
    「こういった競技は、去年も経験いたしましたので……それを活かしましょうか」
     流希は仲間と協力して弾幕を張る。
     スケッギョルドがバズーカを放ち、茉莉が二挺拳銃で近づく攻撃を迎撃する。
    「あれ……この戦法、意外といけますか? 羽花鶏さん、これ、このまま勝ち残れるかも」
    「ほ、ほんと? だったらこのまま濡れずに済みそう?」
     騙され白い布を纏ったスケッギョルドに、茉莉は大丈夫と太鼓判を押した時、背後から敵集団が迫っていた。
     一瞬にして制圧され、濡れ濡れの二人が残る。
    「こ、このまま、離れないでくださいねっ……」
    「……風邪ひかないように、このまま少し温まるのも、いいかも」
     茉莉とスケッギョルドは抱き合うように密接して透ける服を隠し合った。
    「スナイパーを名乗る以上この競技だきゃあ外す手はねえ!」
     高明は濡れた女の子を想像して燃え立つ。
     迎える8H百合組も防衛線を築く。
    「水鉄砲で勝負だねっ」
     凛華は元気にライフルを向ける。
    「しっかし服が濡れると気持ち悪そうっすね……べ、別に女子の濡れ姿なんて気になったりしませんし!」
     冷たい視線を受けて狭霧は誤魔化すように視線を逸らした。
    「そういやクラスの初陣か、これは俄然やる気が上がるってもんだなちょうがんばる!」
     祝は仲間をフォローするように位置取ってライフルを向ける。
    「ねらいうつわよっ!」
     鈴音も板に隠れながらライフルで敵を迎撃する。
    「味方の娘っ子らを水浸しになんざさせやせんぜ! 水浸しになんざ! させやせんぜ!」
     大事な事だから2回言いながら娑婆蔵は銃を持って前線に出る。
    「っしゃ、祭りだ祭り! カチコミだぜ!」
     セシルが速攻で敵に向かうと、二挺拳銃で踊るように戦場を駆ける。
    「皆のサポートをします!」
     紫鳥も向かってくる敵に水風船を投げて威嚇した。
    「機動力重視だ、ここは通さない!」
    「ガンノスケさん、ブラボー!」
     雁之助は動き回って銃撃して敵の足を止め、隙の出来た相手をリュカが撃ち抜く。
    「引いてください!」
     後ろから太郎が敵の集まった場所へバズーカを撃ち込む。
    「あう~。やっぱり銃系の武器は使い慣れないアル。殴ってきちゃダメアル? ……ダメアルよね」
     明は思うように当たらないバズーカを抱えて板に隠れた。
    「戦闘訓練と思い、真剣に容赦なく頑張ります」
     小太郎は機動力を活かし、攻撃を避けながら敵陣に迫る。
    「雹くんは僕が守るね」
    「僕も悠さんをフォローしますから!」
     雹は悠に良いところを見せようと気合を入れた。

    ●南部戦
     6F菊組が5E蓮組に向けて進撃を開始する。
    「よし、クラスのみんなとがんばるぜ!」
     清和はぶっしーにかっこいいとこを見せようと張り切る。
    「パンダだけに、ささっ(笹)と素早く動いてぱんぱん撃つんだよ」
    「笹だけにささっとって、くすくす。力が抜けてしまうよ、ましろ。はっはっは」
     パンダフードを被ったましろの意気込みに、タージは大笑いする。
    「弾幕はパワーだぜ! 牽制しかしてないけど!」
     和志が前衛に立って二挺拳銃を撃ちまくる。
    「正面から突破するぜ!」
     清和は水風船を高く投げ走り込んで銃を撃つ。そして落下した風船が破裂した場所へ一気に突貫した。
    「去年は団子の神の加護で優勝だったもんな。今年は神本人が来てるんだ、負ける気がしねぇ!」
     遊はみたらし団子を食べながら荷福を拝む。
    「お、拝まないでっ」
     和菜が慌てて遊の頭を上げさせる。
    「昨年に引き続き、今年も1位を狙いますよー!」
     気合の入った嘉月は板に隠れライフルを構える。
    「行くぜみんな! スケスケ体操服バンザーイ!」
    「おう、スケスケ万歳!」
     由宇の本音丸出しの呼びかけに玲も叫ぶ。女子からの冷たい視線にもめげずに胸を張った。
    「ううん、聞いていた水鉄砲合戦と違う。何か凶悪なんですけど?」
     紅緋は素早く板から板へと前進していく。
    「勝ちにいきますよ」
     和夜は周囲を警戒して敵の動きを探る。
    「ハンドガンの使い方はガンナイフで慣れてますから」
     春は素早く移動しながら給水ポイントを確保して攻撃していく。
    「火力こそパワー!」
     知信はバズーカを構え、火力支援を行なう。
    「ハーッハッハッハア!」
     高笑いと共に突っ込むレイチェルは二挺の銃で弾幕を張る。
    「あーばよ、とっつぁーん」
     そのままは走り去り、水の補給へ向かう。
    「店長をフォローします、頑張りましょう!」
    「店でも戦闘でも同様のコンビネーションの高さを見せてやる!」
     智優利と達郎の息の合った連携。だが達郎に悪戯心が芽生えた。
    「……おっと、手が滑った」
    「ひゃぁんっ!」
     達郎がわざとらしく水を飛ばすと、智優利に直撃して水が滴り悩ましい声をあげる。
    「……はっ!? これはいかん!」
     我に返り達郎は誰にもこの姿を見せたくないと、智優利をお姫様だっこして逃げ出した。
    「頼りにしてんぜ、リオン!」
    「はい、頑張りますね!」
     イオとリオンは声を掛け合って動く。
     戦力で劣る5E蓮組は苛烈に抗戦する。
    「攻めてきたよ! 気をつけて!」
     空は身を隠しながら近づく敵を撃つ。
    「さて。今年こそは勝ちますヨ、メルキューレ」
    「負けたままではいられませしんね」
     ラルフの言葉にメルキューレは頷く。
    「ヘタな鉄砲もなんとやら! 乱れ撃っちゃうよーっ!」
     水風船を投げ銃を乱射する。
    「準備は出来た。なら往くのみだ」
    「ボクも行っちゃうよー!」
     ジュラルはバズーカを持って特攻する。続いて刄銀も二挺拳銃を構えて突撃する。カミカゼの如く水を撒き散らしながら敵の集中砲火を受けて撃沈した。
    「数が多い、持ち堪えられるか」
     イルマは何とか敵の足を止めようと銃を撃って牽制する。

    ●挟撃
     そこへ7G蘭組が6F菊組の背後から攻撃を始める。
    「俺が盾になるぜ! 倒すのは任せるぜ?」
     板を引っこ抜いたクーガーは盾として攻撃を防ぐ。だが板は持ち難くかった。投げ込まれた水風船を防げず被弾する。
    「今のうちに全力で攻撃するよ!」
     その間にライムは敵に近づき銃撃する。
    「一気に行きます」
    「……援護するわ」
     亜梨子は水風船を投げ二挺拳銃で強襲する。そこへアルビナがライフルで反撃しようとする敵を狙い撃った。
    「最初から全開だ」
     蔵人は二挺の銃を手に少ない敵から狙い始める。
    「確実に仕留めていこう」
     銃を一挺だけ持ち黒秋は機敏に近づき敵を狙う。
    「紅虎くん勝負!」
    「勝負だッ! 負けねェぞ……!」
     駆け寄った麦が顔目掛けて銃を撃つ。紅虎は前転で避ける。
    「この距離なら直接……!」
     麦は近距離まで迫る紅虎の胸を狙う。だがその水は腰に当たった。紅虎が跳躍したのだ。
    「くらえっ! ひっさーつ……真空乱れ打ちッ」
     空中で逆さになり麦の背中を撃ち抜いた。
    「ふははッ! どーだ! オレの必殺技ッ」
    「すごかったよ、超たのしかったー!」
     どや顔の紅虎を麦は大笑いで賞賛する。
    「それにしても……軽快に動くイオさんカッコイイです……って言ってる場合ではなかったです!」
    「気をつけろリオン!」
     イオが敵の攻撃を顔面で受ける。見蕩れていたリオンも気付いてバズーカを撃つ。
    「顔面はセーフだよな」
    「ありがとうございます!」
     輝く笑顔で言うイオにリオンは嬉しそうに頭を下げた。
    「僕がまず、相手の足を撃ち抜き動きを止めるから、そこで香名が確実に心臓に三連射を……」
    「あの、マハルさん。残念ですけど、このライフルでは3連射は出来ませんよ?」
     タージの振ったボケにきょとんとした顔で香名が真剣に返事をした。
    「あれれ? 水がきれちゃったでござるか。補給しなきゃねって、ポンプが重くて……うまく出来ないよ~」
     武士は涙目になりながら焦ってポンプを動かす。
    「舐めるな、俺がやられるとでm、ウボァー!?」
     跳び込み過ぎた和志は敵味方の集中砲火を受ける。
    「東雲、そっち行ったぞー」
    「よっしゃ、この華麗なる動きに見とれよ!」
     遊が動き回って霍乱すると、由宇は左右の銃を撃ち込んでは避ける。
    「荷福さん、後方から敵接近です! 終夜君と協力して対処してください」
     敵に気付いた嘉月は声をかける。
    「おーけい、行くぞ荷福!」
    「い、一緒に行動!?ちょ、ちょっとま…わぷっ」
     玲について行こうとして慌てた和菜は敵の攻撃に晒されてずぶ濡れになった。
    「本当の戦争を見せてあげます」
     和夜は牽制しながらジグザグにダッシュして攻め込む。
    「徹底的に響かせますよ」
    「まだまだ! これからだ!」
     春と知信は水風船を投げ迫る敵を迎撃する。
    「こういう時は度胸と手数だぜ」
     レイチェルは死中に活を求めて弾幕に飛び込んだ。
     挟撃されながらも6F菊組は持ち堪え、数の多さで勝つかと思われた、そこに4D椿組が参戦する。
    「皆で頑張りましょうー」
     真琴の声におーと返事して気合を入れた。
     潤子は銃を片手に敵に斬り込む。敵の迎撃を真琴の援護が抑える。
    「ありがとう!」
     そう言いながら潤子は一気に突っ込んだ。
    「あぶなーい!」
     ヒオは敵の攻撃から身を挺して真琴を庇う。
    「ヒオさん!」
    「ここはヒオに任せて先にいってくだせぇ……がくり」
     満足そうにヒオは倒れた。
    「さて、始めましょうか……」
     健護は注意深く死角から敵へ接近していくと、奇襲を仕掛ける。
    「先手必勝だよ……って、何やってるの琥珀」
    「いちるぅー……み、水、入れ過ぎて重っ……い!」
     ふらふらする琥珀を壱琉が抱きとめる。そこへ敵集団がやってくる。
    「琥珀! 風船投げて!」
    「せ、せーの!」
     二人は水風船を投げ、銃を撃ちまくって敵を追い払う。
    「やられないよう頑張ってみるよう♪ あははは♪」
     来留は笑顔を絶やさずに銃を撃つ。
    「補給が済んだら、援護を頼むわよ」
     玉緒は水を補給する仲間を守るように弾幕を張る。
     混戦となり泥沼の戦闘へと落ちていく。

    ●北部戦
     主戦場から離れた場所ではクラブ宵空の面々が戦っていた。
    「えへへ、ちょっと博打だけど……今年は逃げるが勝ち作戦でいってみよ」
     要は全力で逃げ出した。
    「……下手にウロウロしてたら危ないな」
     葵は板に隠れて様子を窺う。
    「さて、どこに隠れてるのかしらね?」
     板に背を預けた七は顔を出して確認すると、朔之助の姿が見えた。
    「気をつけろ後ろだ」
    「うぉっ」
     嵐の声に朔之助は飛び退く。すると水が通り過ぎた。
    「いいわね、生きるか死ぬかの真剣勝負!」
     七は板を移動しながらライフルを撃つ。距離を取ろうとした朔之助の前に葵が現われる。
    「あ、あそこあそこぉー」
     ヤバイと朔之助が適当に指差した先には、こそこそと逃げる要の姿があった。思わず目が合うと、全員の思惑が一致し要を追い駆けた。
    「まって! 皆の事大好きなのに……俺のこと……撃つの……?」
     瞳を潤ませる要。だがその背後には銃を隠していた。
    「許せ要よ……これも致し方な──」
    「ウン」
     朔之助を遮って嵐が撃った。要の手からぽとりと銃が落ちる。思わず動きの止まった朔之助のゼッケンを七が撃ち抜いた。
     嵐がにっこり笑って撃つと、葵も七を狙う。七が葵に反撃すると葵は体勢を崩しながらも七を討ち取る。そこへ嵐が狙い撃った。避けられないと葵は水風船を投げる。葵のゼッケンが破れ、嵐もずぶ濡れになった。
     離れた場所で股旅館のメンバーが戦いを始めていた。
    「手の内を知れている奴ほど、油断はできないな」
     ヒナが敵を探して歩いていると、式夜が襲ってくる。
    「ひゃっはー! 戦争の時間だぜー!」
     式夜の攻撃をヒナが躱して銃口を向ける。
    「当たらなければいいのだろう?」
    「ふふふ、水も滴る良い男の本気を見せてやろう」
     睨み合う二人。その時式夜の背後に人影が現われた。
    「悪く思わないでね。僕も優勝は逃したくない」
     莉都が離れた位置からライフルで式夜を撃ち、銃口をヒナに向ける。
    「終わりだ」
    「見つけたぜ!」
     そこへ爽太は水風船を投げる。莉都の目が奪われた隙に接近して銃を突きつけて撃つ。
    「ヒューッ! 格好いいぜ俺!」
     莉都を倒して得意そうにしたところへ、ヒナが銃を向けた。
    「油断大敵」
     気付いていなかった爽太は驚いた顔で倒れた。
    「見っけ。手加減なしがルールです、いざ!」
     クラブCcの面子を見つけた依子が銃を手に接近する。
    「いざ尋常に勝負!」
     篠介は依子にバズーカを放つ。だが依子は躱して銃を向ける。そこへ昭子が横から割り込んだ。
    「真剣勝負と参りましょう」
     互いに銃を向けて撃ち、避ける。
    「見つけた! さあ紅坂壱子、推して参ります!」
     硬直しそうな戦況に壱子が割り込む。
    「わたしにかまわず撃ってください」
     昭子の言葉に篠介が3人が固まる場所にバズーカを撃った。壱子と昭子に直撃し、依子は何とか逃れた。だがその背後から水を喰らってしまう。
    「部の皆と……今日はライバル」
     一つ頷きサズヤも加わり、残った篠介に攻撃を仕掛ける。
    「来るか!」
     篠介は引き金を引く。だが水は出なかった。
    「弾切れじゃと!?」
    「んん……情けは無用」
     サズヤの一撃がゼッケンを貫いた。
    「見つけましたよ。静姉さん、勝負です!」
    「受けて立ちますよ、しんちゃん!」
     梁山泊の心太と静菜が出会う。心太が攻め、静菜が隙を突こうと避ける。互いに譲らぬ戦い。そこに水風船が投げ込まれた。
    「一人減らせればと思ったんだがな」
     現われた小次郎はライフルを構える。警戒していた二人は水風船を避けていた。
    「不意打ちが来ると思ってましたよ、丹下先輩」
    「来ましたね、小次郎さん。三つ巴戦です!」
     3人はそれぞれ撃ち合うが、決定打とならない。
    「……3すくみだと決着がつかん、なら」
     小次郎が空中に向けて打つ。雨のように降る水に心太が一気に飛び出し、静菜は板に隠れた。運は心太に味方し、静菜は雨に濡れる。
     迫る心太に小次郎はライフルを向ける。心太はそれを避け弾切れの銃を捨ててもう一挺の銃を構えた。ライフルが腕を、銃が胸を撃ち抜き、心太がガッツポーズを見せた。
    「さあ、くろがねっち! ついてくるのです!」
    「はい! 一緒に遊びに……もとい勝ちましょう!」
     たんと徹は元気良く牛野姉妹を探しに駆け出す。
    「その絶壁に水風船をプレゼントしてあげるわ、うふふふふ」
     邪悪に哂うランプはかるびを追い詰め、水風船をぱちゃぱちゃと鳴らす。
    「待ってランプちゃん!」
    「ダーメ」
     投げようとしたランプの背を水が打ち抜く。
    「油断したほうが負けるのですよ」
     驚き振り向くとたんの姿があった。
    「ふはは、ランプちゃん、これも勝負というものなんだよ!」
     嬉しそうにかるびは絶壁を反らして笑う。そこに背後から銃を突きつけられた
    「牛野のお姉さん……とくにうらみはありませんが牛野と僕と4D椿の勝利のために!」
    「これはチャンスねー!」
     ショボリがそこへバズーカを向ける。
    「あ、アタシは仲間じゃないか……まて、まつんだショボリちゃん」
    「ショボリ、ちびでバズーカだからかるびおねーちゃん濡れ濡れでも仕方ないねー!」
     バズーカが3人を薙ぎ払う。残ったショボリはVサインを掲げた。

    ●激戦
     9I薔薇組が8H百合組を倒し南部に仕掛ける。
    「イルマさん! さあ、勝負しましょう!」
    「いいだろう、受けて立つ!」
     紅緋がイルマを見つけると、歓迎の一撃を放つ。イルマも躱しながら反撃の一撃を放った。
    「隙を見せないように、隙を逃さないように。ラルフさん、背後は任せました」
    「お任せを、必ず守ってみせますヨ」
     メルキューレとラルフは隙を作らないよう交代で補給しては撃つ。
    「あ、やられちゃった。あの、体操服、透けそうなんですけど……」
    「ああ、わたしもだ……」
     相撃ちで終わった紅緋とイルマは互いの服を見て、身を隠すように退場した。
    「好弥ちゃん、夏奈ちゃん、一緒に行くよ~」
    「こちらから音が聴こえます」
     織姫と好弥が前衛となって近づくと水が飛んでくる。
    「織姫ちゃん好弥ちゃん大きいのいくよ~当たらないでねっ」
     夏奈がバズーカを撃ち逃げる敵を二人が襲う。
    「隙見せましたな」
     じっと隠れていた飛将はライフルで狙撃した。
    「びちょびちょです」
     直撃した好弥は濡れた体操服を見下ろす。
    「好弥ちゃん!? どこから……」
    「わー保科先輩だ! でも今は敵同士だから手加減とかしないからねっ負けないよ~!」
     織姫が周囲を見ると夏奈が指差した。
    「さて、次はどちらにしようかな、と」
     飛将は接近してくる織姫を狙う。放たれた水を織姫は跳んで避けた。だが着地したところを次弾で撃たれる。
    「ファイヤー!」
     飛将が残り一人と振り向いた時、夏奈が撃った大量の水が降り注いだ。

    ●決戦
     勝ち残った1A梅組と9I薔薇組。互いに戦力を減らしながらも士気は高い。
     最後の勝者を決める戦いが始まった。
    「全力で勝ちにいきましょう」
     秋沙は水を撃ち込む。
    「こっちだよーっ」
     結月が逃げながら敵を誘導する。
    「なるほど、これがガンカタというやつですね」
     スタイリッシュな回避を行いながら二挺拳銃で七波は反撃した。
    「そっち行っちゃダメ」
     七葉は敵の進行方向に着弾させる。
    「一発必中一撃必殺」
     そこへ星流が狙撃した。
    「トドメじゃ!」
    「合体、バズーガン!」
     シルビアとストレリチアが合わせて水をぶちまけた。
    「殊亜くんを狙うなんて……私がいる限りさせないよ!」
    「ありがとう紫さん。二人で最後まで残るよ!」
     二人は背中合わせに迫る敵を迎え撃つ。
    「来るぞアスール、構えろ!」
    「了解! 舜も、当てられるなよ!」
     二人はライフルを撃ちまくり、敵を押し留めた。
    「まずは……1人」
     じっと待っていた巫女は射程に入った敵に引き金を引いた。
    「よーし透け透けにしてやるぜ!」
     高明がライフルで女子を狙い撃つ。水は胸に直撃したゆませた。
     攻める9I薔薇組に1A梅組は決死の特攻を行なう。
    「私は一人でも、道連れにします……! みんなに、珈琲の幸あれ!」
    「最後の手段――水風船っ!」
     花梨と渚緒が自爆攻撃を行なう。
    「ひゃ~数が多いじゃない!」
     眞白は必死に弾幕を張って敵の動きを封じる。
    「二兎は追わない主義なんだよ、俺」
     芯はとにかく生き残る事を優先して動き回る。
    「……うぅ。なかなか当たらない」
     雪那はそれならと水風船を手にした。
    「こ、これなら、当たるはず……っ」
     全力で投げたそれは小郎の後頭部に直撃し、跳ね返った水が自分のゼッケンをも濡らした。
    「……雪那、前、ちゃんと見て投げよう」
    「……うん。ご、ごめんなさい…」
     小郎と雪那は仲良く退場する。
    「ひゃっはー、なの」
     美海は調子に乗って突撃すると待ち構えた敵に集中砲火を受けた。
    「ぐぬぬ、なの」
     全身を濡らし両手を上げて参ったとポーズを取った。
    「ツッキー! もらったぁ!」
     クレイがアズマの背後を襲う。
    「アヅマ君!」
    「夕月さんっ」
     夕月がそれを庇って被弾し、アヅマはクレイにバズーカを叩き込んだ。
    「そこ、背中が丸見えですよっと」
     理緒は背後から撃ち抜いた。
    「欲をかくと、ろくなことになりませんからね」
     公平は無理せずに少ない敵を相手にしていく。
    「水にぬれる女子って色っぽいと思わない?」
    「海の底深くにずっと沈んでて下さいね」
     このはのぼやきにちゆは冷たく返し、バケツの水をぶっかけようとする。だが先に体を抱きしめられた。
    「去年と同じ手はくわないよー」
     そのまま抱えてバケツを取り上げる。
    「せ、セクハラは……! あの、訴えますよ……!」
    「え、あ! うわぁああ!?」
     顔を真っ赤にしたちゆは背負い投げから銃を撃つ。このはは倒れて水を滴らせた。
     両軍の激突の末残ったのは僅かに5名。
     鏡花、芯、真冬が一斉に攻撃すると、紫と七葉が散開しながら反撃する。ライフルを構える七葉に鏡花が迫る。交差する弾は両者外れる。だがそこに真冬のバズーカが叩き込まれた。
     ずぶ濡れの七葉、その隙を突き紫が駆けると擦違い様に真冬を撃ち抜いた。鏡花がそれを追い駆けながら撃つ。紫は右へ左へと避けながら背中越しに銃を撃つ。慌てて避ける鏡花に紫は振り向いて対峙する。その時、紫の背中に水が掛かった。隠れていた芯がライフルを下げて姿を現した。

    ●勝者
    『今年度の優勝は1A梅連合です! 二位9I薔薇連合、三位6F菊連合となります』
     歓声が上がり1A梅連合の皆が喜びに沸く。
    「やったわね!」
     芯の肩を鏡花が叩く。すると仲間達が次々と集まり芯はちょっと待てと言いながらもみくちゃにされる。
    「皆さん、お疲れ様です」
     眼鏡を拭きながら公平は輪に加わる。
    『MVPは9Ⅰ薔薇連合の紫選手です!』
    「おめでとうよく残れたわね」
    「おめでとう紫さんっ」
     巫女と殊亜が祝うと紫は照れたように笑う。
    「これも殊亜くんが庇ってくれたお蔭だね!」
     参加した選手達も皆満足そうな顔で輪を作る。
    「みんなお疲れ様ーっ」
    「わー♪ かんぱーいだよ!」
     ましろがオレンジジュースを配り、武士が乾杯の音頭をとる。
    「勝ち負けじゃなくて楽しんだほうがいいだろ?」
     和志はジュースを手に笑う。
    「おや、サービス良いんだな」
    「更衣室までなら見てて良いですよ」
     白焔は緋頼の濡れた姿に目を奪われると、緋頼は平然とした様子で濡れた髪をかき上げた。
    「きゃっ!」
     エミーリアに水風船が当たった。
    「最後に皆でエミーリアちゃんを濡れ濡れにするって話だったの」
     瑞葵の言葉に皆も悪戯が成功したと笑みを浮かべる。
    「もー! 恥ずかしいよ!」
     エミーリアは濡れて透けるのを屈んで隠した。
    「皆さんお疲れ様でした。楽しかったですねー」
    「みんな、お疲れ様!」
     嘉月はタオルを配り、受け取った由宇はスケスケの体操服を脳裏に刻むように眺めていた。
    「それにしても……水で濡れて透ける女子の体操服って良いよな、終夜」
    「うむ、水鉄砲様々だ、七瀬」
     親指を立てる遊に玲も返して笑いあう。しかし過ぎれば目の毒だとジャージを脱いだ。
    「……これ、上に着とけ」
    「ありがと」
     和菜はそっぽを向いて受け取る。だが袖を通す顔は嬉しそうだった。
    「涼しくなる心算が逆に熱くなっちまったわい」
    「びしょ濡れはお揃いね」
     依子から篠介はタオルを受け取る。
    「……サズヤ先輩大丈夫?」
     くしゃみをするサズヤに壱子が声を掛けた。
    「んん……夏風邪は困る」
     サズヤは濡れた頭を拭く。
    「真剣勝負、よいものです。残りも全力で参りましょう」
     昭子に同調して皆も頑張ろうと気合を入れる。
     まだまだ運動会は続く。水で濡れた地面もすぐに乾き、ひと時の涼も終わる。熱い戦いに胸躍らせ、選手は次の戦いに向かう。

    作者:天木一 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年5月25日
    難度:簡単
    参加:138人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 10/感動した 2/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 12
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