わふわふ! わんことお茶わふぅ

    作者:一縷野望

     このドックカフェは少し変っていた。
     具体的にいうと、所謂『猫カフェ』のわんこ版。愛犬家が集ってお茶を楽しむというよりは、お店に待機してるわんこと好きに戯れるのがメインのお店。
     シベリアンハスキー、コーギー、ゴールデンレトリバー、柴犬、雑種の仔もいたり……大小元気なわんこが勢揃い! もちろん、わんこ同伴OK!
     愛犬家だけでなく、一般の人にも気軽に来て欲しいと企画された期間限定ドックカフェ『わふわふ』
     みんなの憩いの場『わふわふ』に、ブエル兵の魔の手が伸びようとは……。
     

    「猫ばっかずるい! そう思ってた時がオレにもありました」
     鮮やかな薄紅髪の青年、佐々木・紅太(プロミネンス・d21286)は神妙にうんうんと頷いた。
    「今は、違うん……ですか?」
     機関・永久(中学生ダンピール・dn0072)の問いに紅太は首の動きを止める。
    「犬が脚光を浴びるのは嬉しいけど、危険がピンチは嫌だなー」
    「だよね」
     灯道・標(小学生エクスブレイン・dn0085)は、文庫本めいた手帳を捲ると切り出す。
    「んっとね、わんこと戯れるカフェ『わふわふ』の店長さんの知識を狙ってブエル兵が現れるんだ」
     さて、ここでおさらい。
     ブエル兵とは、ある人物の知識を元に実体化する眷属である。獣の顔に足が鍵についていて、非常に不気味である。
     ブエル兵に知識を奪われた人は、昏睡し約15分後には死亡する。それまでに灼滅者達がブエル兵を倒せば、助けるコトができるのだ。
    「今回ターゲットになったのは、わんこカフェの店長・林田さん」
     30代半ばの男性。ペットショップ勤務から犬好きが高じて、わんこと安全に遊んでもらえる店づくりを考えて、この店を実験的に開くに至った。
     予知では店内でブエル兵が実体化し、店員二人とわんこたちを巻き込んだ悲惨な事件へと発展してしまう。
    「そんなの絶対放っておけねー」
     拳を握る紅太に永久もこくこくと頷く。
    「ボクも同意だよ」
    「けどよ、店の中で戦うわけいかねーよな」
     首を捻る紅太に標は「安心して」と微笑みかける。
    「ちょっとコンビニまでって、店長さんでてくるんだよ。で、戦うに丁度いい空き地のそばを通る」
     そのタイミングでブエル兵が実体化するので、15分以内に倒してしまえばOK。
     出てくるのは1体だし、灼滅者8人で掛かれば負ける相手ではない。さっくりと倒してしまおう。
    「その後は、店長さんを店に送るついでに、ドックカフェでわんこと思う様遊んでくるといーよ。他にお客さんもいないしね」
    「……むしろ送るのが、ついで、ですよね?」
     永久のつっこみをまぁまぁと紅太は流し、拳を握っておーっとふりあげる。
    「ブエル兵をぶっとばして、わんこと遊ぼうぜ!」
     もふもふわふわふ……そんな幸せな一時を過ごすため、ちょっとだけ頑張っちゃおうではないか。


    参加者
    偲咲・沙花(疾蒼ラディアータ・d00369)
    椿森・郁(カメリア・d00466)
    仙道・司(オウルバロン・d00813)
    帆波・優陽(深き森に差す一条の木漏れ日・d01872)
    エミーリア・ソイニンヴァーラ(おひさま笑顔・d02818)
    由比・要(迷いなき迷子・d14600)
    亜寒・まりも(メリメロソレイユ・d16853)
    佐々木・紅太(プロミネンス・d21286)

    ■リプレイ

    ●ブエル兵成敗!
     体の芯を無くしたように崩れ落ちたドッグカフェ店長の林田を、帆波・優陽(深き森に差す一条の木漏れ日・d01872)素早く駆け込み受け止める。
     林田を庇うように位置取り、由比・要(迷いなき迷子・d14600)と偲咲・沙花(疾蒼ラディアータ・d00369)は、音封じの結界と人避けの殺意を放出する。
     にやり。
     ぐるり獣足を旋回させるブエル兵へ小柄な体のナツが負けじと唸る。
    「知識ってその人のかけた時間とか努力の結晶だから、渡せないよ」
     むぅと睨み槍を構える椿森・郁(カメリア・d00466)に、仙道・司(オウルバロン・d00813)は物々しく頷いた。
    「早く可愛いわんこさん達と戯れたいボクの邪魔をしないで下さいっ!」
     それぐらいリラックスがいいかと佐々木・紅太(プロミネンス・d21286)は、空色の一房揺らし背後へ振り返る。
    「笹さん、回復よろしくな」
    「ナノー」
    「わふ~っ♪」
     あわせるように元気な声はエミーリア・ソイニンヴァーラ(おひさま笑顔・d02818)。
    「ブエル兵なんて『がいしゅういっしょく』です」
     どういう意味だろうと側の機関・永久(中学生ダンピール・dn0072)が首傾げ糸を引き出す。
    「よーし、ガンガン倒しちゃってわんこちゃんと遊んじゃおー!」
     亜寒・まりも(メリメロソレイユ・d16853)が拳をあげる横で、魚を咥えた熊がぐいんと頷くように揺れる、キャリバーのヘペレだ。
     タイムリミットは15分、前のめりに攻撃開始!

     ブエル兵1体など、気合いに満ちた灼滅者8人の手に掛かればものの数ではない。
    「犬さんと店長さんをいじめるブエル兵なんて、いなくなれです~っ!」
     首もとの『わんこ』を揺らし、エミーリアは家紋入りのドスから鋭い一撃を放つ。続けてナツの眼差しそして笹さんのハートで元気百倍! 紅太は蓄えた魔力を杖の先から一気に流し込んだ。特に狙った沙花と郁をはじめ、他の面々からの戒め蓄積により避けようもない。
    『グッォオオ』
     苦しげに顔を歪めたブエル兵は、てしてしてしっと優陽の肩へ回転お手をかます。
    「そんなの効かないわよ」
     振り払った腕は無傷。そのまま膨れあがった拳は見事顔面にクリーンヒットだ!
     トラウマの内容を伺う暇もなく倒しそうと、派手な魔の競演に優陽は瞬き一つ。追従するように要と司の魔力が遠近から同時に炸裂したのだ。
     郁と永久の影と糸が交差するように更に縛る縛る。
     どっかーん!
     ヘペレ漢前の突撃に負けじと、まりもも剣と変じた蒼腕で思い切りよく斬り裂いた。
    「……」
     だらしなく垂れる獣の蹄を見下げるように近づくは蒼ざめた同種のモノ。静かに忍び寄った沙花は、地を蹴り生まれた炎でブエル兵の命を灼ききった。

    「……ん、うーん。あ、あれ?」
     身を起こした林田は、心配そうに見守る8対の瞳に吃驚。
    「少しお疲れですか?」
     気遣うような郁の隣、要は安寧感じさせる笑みでコンビニ袋を差し出した。
    「お怪我はありませんか?」
    「ええ」
    「いいえ。もし行き先がお近くならお送りさせて頂けないでしょうか」
     優陽の申し出に「すぐそばの店ですから」と申し訳なさそうに手を振る。
    「わふっ、もしかしてわんこのお店です?」
     エミーリアの問いに頷けば、丁度行きたかったのだとぱっと笑顔が花咲いた。
    「それは嬉しいですね。歓迎しますよ!」
     ……犬の飼い方やどんな仔がいるのか等、短い道中も話はめいっぱい尽きる事なし。

    ●わんこと遊ぼう!
    「ヤベェ、結構のびのび遊べそうだぜ」
     室内は建物の見た目より遙かに広く、皆から感嘆の言葉が溢れる。
     わんこを傍らにお茶とちょっとしたスイーツを楽しめるカフェコーナーと、ダイナミックにわんこと遊べる広大なコーナーで、沢山のわんこたちが待機中。
    「どの子も可愛いねぇ」
     大きな子、小さな子、目移りする要につられ薄紅飾りもふわりゆらり。
     わくわくが胸いっぱい、そんな所へ誘っていた大切な人達や、噂を聞きつけた学園の仲間が顔を覗かせる。
    「ヘイ! 部長! おっつかれさーん! お、エミーリアっちもいるな」
    「わふ~♪ マサムネにいさま、お元気でしたか~?」
     ぺちっとタッチしはしゃぐ2人に紅太もへんにゃり笑い更にタッチ。
    「皆さん、おつかれさま」
     待ち人ゆりこの柔らかな金糸がふわり、照れたような幸せ笑顔で紅太は奥へ。
    「んじゃわんわんお触りまくりパーティーといくッスか?」
    「わふぅ」
     ふっふっふー。
     にんまりなエミーリアは背高のマサムネに隠れるように遊技スペースへ……と、思ったら?
    「わっふぅ!」
     隙を見てごーるでんなわんこに変身。でもってわんこの海へ、と・つ・げ・き!
    「お、なるほど」
     仔犬5匹で追いかけっこ☆ すっかり紛れたエミーリアに、マサムネはぽふっと手を叩き自分も柴犬へ変身! 追いかけっこに更にもう1匹ご案内ー。
    「イシュ」
     賑やかな店内に浮かぶ要の笑みが、黒と赤の鮮やかな幼なじみを見つけますます深くなる。
    「あ」
    「こっちこっち」
     カフェの席に腰掛けた修太郎は実は一番乗り、手招くのはもちろん大切な郁。
    「いつも一緒してくれてありがとう」
    「お疲れ様、じゃー遊ぼっか」
     手を振り近づいてくる彼女、いつも通りの始まりが嬉しくて。
    「お誘いありがとうございます」
     続けて顔を出したラピスティリアに、軽く会釈する沙花と大はしゃぎのまりも、対照的だ。
    「まりもが犬用のケーキ食べたいって」
    「ぱんぱかぱーん!」
     自慢げに掲げるケーキ箱、でもドッグカフェのショウケースのケーキにも目を奪われてみたり。
    「……何か人間も食べられそうだし」
     修太郎の呟きに、
    「美味しそうだよねー」
     左右の髪をひょこひょこ、屈託無いまりも。
    「わんちゃんと同じ形のケーキやクッキーもありますよ」
    「わ、やっぱりあるんだ」
     店員さんの説明に郁瞠目。修太郎と、あれやこれやと選び出す。人間用と混ぜないようにしないとね。
    「あのあのっ、わんちゃんと遊べると聞いて……」
    「はい、どんな仔がお好きですか?」
     めがね越しのおずおずと彷徨う瞳に、受付にいる林田が楽しげに対応する。
    「良かった、大丈夫そうだね」
     怪我もなく元気そうな林田に胸を撫で下ろした優陽は傍らの永久に呼びかける。
    「永久君はどんな犬種が好き?」
    「えっと……」
     黙り考え込む永久を、優陽は近づいてきたコリーのブラッシングをしながら待つ。
     しゅ、しゅ……しゅ。
     細い毛が絡まぬように丁寧に。耳の先が小さく折れたコリーは気持ちよさそうに瞳を眇めてじっとお座り。
    「……雑種、かな」
     艶めき掌に吸い付く手触りに仕上がり満足な優陽の元に、ようやく声が響く。
    「ちょっと、この仔に似てた、かも」
     懸命に探り出した欠片、撫でればその感触が確かにあった記憶だと後押ししてくれる。
    「この仔はコリー。優しい顔をしてるわよね」
     足下に転がるボールを手にすれば、とんに揺れ出す尻尾。投げて投げてとねだるようで、優陽は思わず吹き出した。
    「おいで~♪」
     かもーん!
     司が広げた両手に一番に飛び込んできたのは、長い胴体にちんまり生えた足が愛らしいウェルシュコーギー。
    「わんっ」
     背伸びするように見上げてくる仕草らぶりー。めろめろの司はぎゅうのすりすり! シベリアンハスキーと並んで大好きな種類だからもう念入りに。
    「どの子も可愛いねぇ」
     がっしり秋田犬の内側の白い毛をもふもふしつつ、要は幸せ空間を満喫中。それを遠巻きのイシュテムには小首を傾げる。
    「……って、イシュは一緒に遊ばないの? もしかして怖いとか?」
     困ったようなアクアマリンに助け船、要も司も「良く慣れてるから」と安心させるように語りかける。
    「わふぅ!」
     そこへひときわ懐っこいゴールデンレトリバーが尻尾振り振りやってきた。
    「あ、この子なんてどうかな?」
    「わふ~」
     おひさま色のぽかぽか暖かな抱き心地を分けるように、そっとイシュタムに近づける。
    「……」
     勇気をだしてちょんと撫でれば、レトリバーは嬉しげに喉を鳴らす。
    (「なでてもらうの、すっごくすっごく、だいすきなの~!」)
     実はエミーリアだったり。
    「ボクも抱っこしていいかな?」
    「うん、本当に良く慣れている」
     要と司の腕を行ったり来たりのエミーリア、幸せわんこ。
    「お、居た居た」
     そんなハグの真っ最中、司と要はヴィランの声に顔をあげた。
    「シベリアンハスキー……じゃない?」
    「ああ、アラスカンマラミュートだ」
     般若な縁取りはシベリアンハスキーを思わせるが、それより丸みあるボディに、なによりくるんと巻いた尻尾がラブリー。
    「わふぅ」
     僕もかまってとこつんと当たる鼻っ面、司の元に到着シベリアンハスキー。
    「じゃーあー、一緒におやつたいむ!」
     司が取り出したおやつにますます瞳きらきら。
    「あ、まりもも一緒にあげたい」
     カフェ席から飛び出してきたまりもの後に、仕方ないなぁと続く沙花。腕にはナツとハスキーの仔犬がぶらさがる。
    「ふふ」
     ラピスティリアは、チョコレート色の細身の仔を膝からおろすと、実は嬉しげな沙花を見透かし口元を綻ばせる。
     イタリアン・グレーハウンドは、ラピスティリアの後をちょこちょこついていく、お膝が気に入ったらしい。
    「みてみて、可愛いでしょー!」
     箱をあければクリームたっぷり、とてもとてもわんこ用とは思えない。
    「わふぅ!」
     エミーリア、期待に瞳がきらっきら!
    「わんこちゃんとも半分こ!」
     いただきますと口に運んだまりもの首が、かこんっと傾く。
    「……あんまり甘くないね」
     エミーリアも同じ感想のようだ。
    「あまり無理して食べないで、残ったのは犬にあげようよ。まりも」
    「うん」
     床に座り、再びナツさんとハスキーの仔犬をふるもっふな沙花に促され、まりもは小皿にケーキをいっぱいわけわけ。近くにいた仔達に大盤振る舞い。
    「君、すごいイケメンだね」
    「くぅ?」
     涼やかナツさんの隣でハスキーが首を傾げた所で、たまらずラピスティリアが吹き出した。
    「……でれでれですねぇ、沙花君」
     艶々の毛になりグレーハウンドは誇らしげに尻尾をぱたり。まるで相づち打つようで、ますます笑みが深くなる。
    「なんというか、幸せすぎて顔が……あ、あんまり見ないでおくれよ」
     エミーリアと転がるように駆けだしたまりもを見守る素振りで、実は照れてる沙花さんである。
    「永久さんはコーギーが好きなんですね」
     優陽から聞いた司は、コーギーを目で探した。
    「他のわんこも……好き、かも」
    「日本犬も素朴で可愛いよね」
     うんうんと頷く要は、先ほどの秋田犬を永久の膝にのせる。
    「あ、けっこうー、重い……そうだ、要さん」
     あっちにもっふもふわんこがいたと永久情報。さっそくと足を向けた要は俯く幼なじみに気づく。
    「緊張しちゃった?」
     安心させるように顔を覗き込めば、ようやく笑顔と共にこくんと首が揺れ一安心。
    「よしよし」
     一方ヴィランはしゃがみ優しく包むように荒らすカンマらミュートの頭を撫でていた。
     はた、はたはた。
     徐々に揺れ出した尻尾は友愛の印。答えてハグすれば抱き心地しっかりな骨太ボディ、ああ至福!
    「伏せ」
     す。
     身を床に近づけたわんこは「いつまでかな?」と伺うようにヴィランをじー。
    「よし……いい仔だな」
     なんて落ち着いた口調で口元はもう可愛さにゆるみっぱなし。
    「大型のわんちゃん達もカッコ良くて素敵ですけど……」
     そんな様を横目にするあずみの膝にぽてりと前足をのせるのは柴犬2匹。
    「わぁ、かわいらしいです」
     ときめきながらお腹を撫でるとお兄ちゃんがころん。
    「きゅう?」
     あたしも撫でてと妹もころん。あずみは両手でもふもふもふもふ、幸せの感触です。
    「シベリアンハスキーってよく見たら可愛い?」
     じーっと修太郎と目を合わせるハスキーに、郁がぽつり。
     ひょい。
     修太郎が出した掌に、
     ぽすり。
     お手、というより握手。
    「椿森さんと同じぐらいの体格か……え?」
    「ぷ、ふふふふ」
     吹き出す郁を修太郎は怪訝そうに伺う。。
    「見つめ合ってる大條くんがかわいくて」
    「……ッ」
     ハグした時の感触は彼女の方が好きだなんて浮かべたから、ますます頬は熱を帯びた。
    「大條くんの髪もやわらかそうって思う……撫でたいかも」
     おずおずと伸ばされた掌に捕まって、なすがまま。
    「おすわり!」
     しゅたん。
     お店の隅っこ、黄金色の垂れ耳ゴールデンレトリバーが行儀良くおしりを下ろす。
    「ふせ!」
     しゅ。
     指示に従う仔を前に、桐人は隣の霧江をちらり伺う。
    (「満足そう……には見えるけど」)
     妹を映した彼女へ、桐人は指を伸ばす。
    「霧江、こう」
    「……」
     犬の近くへ掌を導いた桐人は、すかさずレトリバーへ「お手!」と指示。
     ふかっ。
     穏やかな面差しの仔は霧江の手へ柔らかなにくきゅうをのせた。
    「やった」
    「……」
     小さく首を傾けた霧江は無邪気な兄とレトリバーの暖かさに微笑んでいるようで、桐人の胸に大きな喜びが生まれる。
     兄妹と反対の隅から立ち上るのはココアの甘い香り。
    「猫もかわいいけど、やっぱり犬も捨てがたいよねぇ……♪」
     セトラスフィーノの膝に豆柴がよじ登ろうとじたばた。カップを置いて抱き上げれば、撫でてとねだるつぶらな瞳。
    「わふぅっ!」
     あたたかな雪のようなポメラニアンと、コセイに似た淡い夕陽のコーギーがしっぽはたはた。悠花を見上げる瞳には「撫でてかまってー」と描いてある。
     もふもふ。
     掌に当たるあたたかな感触に瞳細め、悠花さん満喫。
    「コセイも楽しんでくださいねー」
    「わふっ」
     元気にお返事する隣、コーギーがひっくり返って足をじたばた。コセイはまんまる瞳で「わぅ?」
     ……コセイの前足でお腹ぷにぷにされて喜ぶコーギー、すっかりお友達らしい。
    「はい、おやつですよー」
    「わん!」
     元気にぱくり、一番乗りはポメ。すかさず出したもう1個のおやつにわんこ鈴なり。
    「ナーノ!」
    「笹さんもおつかれさま」
     端っこに移動した所で笹さん大好きなゆりこにぽふん。
    「あら笹さん犬が怖いの?」
    「ナノ」
     そのまましっかと離れない笹さん連れて、わんこに掌の臭いを嗅がせる紅太に視線を移す。
     鼻をひくつかせていた柴犬は「くうっ」と一鳴きすると紅太のおやつにかぷり。
    「永久は犬好き?」
    「はい。さっき……好きだと」
     思い出しましたと笑んで、紅太の手からおやつを食べる柴犬に瞳を細める。
    「じゃじゃーん、ゆりこの手作りロープ」
     興味をそそられたか、柴犬がもう1匹。噛み応えのあるロープを引っ張りあいっこ!
    「あーもうマジヤバいくらい可愛い、もちろん笹さんも可愛いよ!」
    「ナノー?」
     付け足しみたいと紅太の膝で膨れるのを、小さな柴犬を撫でながらゆりこは見守る。
    「なぁ」
     好きな犬種を聞かれ懐かしげに頬を緩め大型犬と返した。
    「昔、祖母の家では犬を飼ってて、賑やかだったのよ」
     大好きな祖母が死んでしまった時は本当に辛かったと、懐かしさが寂寞へ変わる。
    「つらいことあったら我慢しないでさ、な?」
     率直な紅太の眼差しに、過去を語った面映ゆさが熱を孕む。
    「オレ呼んでくれたら、いつでも行くから!」
    「いつでも行くからって……本気にしてしまいそう」
     優陽はボールやフリスビーを手に、色々なわんこと交流中。
    「わふぅ!」
     ぱしっ!
     フリスビーに元気に食らいついたのはゴールデンレトリバー。
     したっ!
     ボールを咥え取ったのは柴犬。
    「…………もしかして、エミーリアちゃんとマサムネくん?」
    「わふぅ~」
    「わん!」
     元気な返事にぷっと吹き出す優陽。
    「エミーリアおねーちゃん、バレちゃったね」
     まりもの台詞が決定打! もう声あげて笑いながら2匹の頭をわしゃわしゃっと撫で、もう一度おもちゃをぽーいっ!
    「わんこさんもふもふです……て、あれ?」
     桜は先ほどまで隣にいた南子が消えたときょろきょろ。
     おや、南子さん、狼形態でちゃっかり優陽さんからわんこおやつもらってますよ?!
    「すごいね~みんな綺麗なわんこばっかりだよ!」
     好奇心を刺激されきょろきょろ見回す朔和。
    「確かに……毛並み、つやつや、ですよね」
     永久もこくり。
    「うちの近所の犬は、みんな、お尻どろんこだよ! お、スタンダードプードル」
     前足タッチ、小柄な朔和の肩に軽く届く前足を取り、ふと。
    「わんこの肉球をくんくんしちゃダメとか、そんな決まりあるの?」
    「どー、でしょう?」
     嫌がらなければ大丈夫かと顔を見合わせていた所にエミーリア突撃! にくきゅうどぞと差し出した!
    「わ、ひとなつっこいな!」
     負け時と南子狼も。
    「梅の飾り……? おしゃれ、ですね」
    「成程」
     正体を悟った沙花は南子を抱え込むと情熱の撫で撫で撫で!
    (「……一緒に遊んでいて楽しそうなのです」)
     こそこそーっと南子の影で兎変身。真っ赤なリボンの垂れ耳うさぎに「桜ちゃんたべ」と言わんばかりに南子すりすり。
     ここで朔和と永久もようやくここに居る仔達の殆どが学園の仲間だと気づく。
    「おやつ食べるか?」
     プードル以外には人間おやつをわけわけこ。
     一方桜は、
     もふっ。
     もふもふっ。
     ふるもっふー。
    (「南子さんー」)
     近い視線の仔犬達に埋もれてリボンのおみみへにょーん。
     ――弾ける人々の笑顔と、瞳きらめかすわんこ達。掛け替えのない絆を守り抜いた灼滅者達は、楽しい一時過ごすのであった。

    作者:一縷野望 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年5月31日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 9/キャラが大事にされていた 6
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