轢走ロードローラー

    作者:六堂ぱるな

    ●迫りくる圧倒的暴力
     必死で駆ける足音を掻き消すように、ごるごるごるごると振動を伴う音が疾駆する。その重量からは考えられない速度を出し、人の頭部がついたロードローラーが夜の港ぞいの道で、獲物を追いかけていた。
    「逃がさないんだよね♪」
     ロードローラーに容赦なく追いまくられながら、餃子が全力疾走中だった。
    「わけわかんないべさ!」
     否。厳密には頭部が餃子の人が全力疾走中だった。
     料理でもするのか紺の作務衣に割烹着、しかし今は包丁を握っている場合ではない。
    「明日は道の駅で即売会っしょ。量産しないとだし今夜はちょっとタンマ!」
    「待たないんだよね♪」
     エンジンが音高く噴かされたと思うと、加速したロードローラーが餃子をとらえた。
     ぷち。
     冗談のようにぺったり轢かれた餃子から、ぽろりと具の甘エビとタコが転がり出る。
    「初志貫徹なんだよね♪」
     楽しげな声をあげて、ロードローラーは闇の中へと走り去っていった。
     
    ●地味に精神的にも暴力
     六六六人衆事案であるにも関わらず微妙にずれる緊張感を、埜楼・玄乃(中学生エクスブレイン・dn0167)はとりあえず認識しないようにしているようだった。
    「六六六人衆の中でも謎の『???(トリプルクエスチョン)』により、灼滅者の外法院・ウツロギ……外法院先輩が闇堕ちしたことは周知の事と思う」
     誕生したのは序列二八八位『ロードローラー』。『クリスマス爆破男』灼滅以後の空席を、彼が埋めてしまったわけだ。彼の稀有な才能ゆえであろう。
     序列二八八位『ロードローラー』は五色展開中で、しかも各々が分裂する。日本各地に散ったその分裂体の一体こそ、今回捕捉した敵だった。
    「今回発見したのは、餃子怪人を轢き潰そうと追い回している黄色いロードローラーだ。すまんがひとつ直面してきて欲しい」
     玄乃は予知から全力で逃避を試みているらしいが、成功している様子もなかった。
     
     出された地図は北海道。北部の海沿いの町を指し、玄乃が眼鏡のブリッジを押し上げる。
    「場所は羽幌町。『羽幌えびタコ焼き餃子』を推進中だが、その怪人がいたようでな」
     ちなみに『羽幌えびタコ焼き餃子』は、北海道産小麦を使った皮をパリッと焼き上げること、具には羽幌町近海産の甘エビとミズダコを使うこと、などの規定がある。近年B級グルメとして認知をあげているところらしい。
     ロードローラーが何故餃子怪人にこだわるのかは謎。問題は序列が高いだけに強敵、という点だろう。
     場所は羽幌町の漁協を出てすぐ、港ぞいの道でのことだ。フェリーターミナルから海水浴場のある南西方向へ爆走してくる。海水浴には早いので、港で人払いさえすれば一般人の心配はない。
    「羽幌えびタコ焼き餃子怪人――長いな――彼は切羽詰まっているので、共闘を持ちかければ一も二もなく乗るだろう」
     理由は翌日のイベント用の餃子の量産で疲れているから。
    「ロードローラーの撃破後に怪人をどうするかは、諸兄らの判断に任せる」
     余勢を駆ってやれないことはないという。怪人は今は人に食べさせることに頭の十割を使っているため、体力と腕力を活かしてイベントなどでの餃子量産が主な活動だとか。
     説明を終えた玄乃は、地図と航空券を渡しながらうーんと唸った。
    「にしてもヘルシーな具だな……いや、諸兄らの健闘を祈る」
     餃子が気になっているようだった。


    参加者
    伊舟城・征士郎(弓月鬼・d00458)
    真純・白雪(白蛇の神子・d03838)
    淡白・紗雪(六華の護り手・d04167)
    赤秀・空(道化・d09729)
    楓・十六夜(闇魔蒼氷・d11790)
    綾河・唯水流(雹嵐の檻・d17780)
    逢見・黎(それが代役だとしても・d25449)
    山泉・桧(翠の小太刀・d25785)

    ■リプレイ

    ●とまどいと期待と
     フェリーターミナルから伸びる道路沿い、暗い海を臨む岸壁で、いくつもの灯りが動いていた。ライトをコンクリートの上に置き、自身も首からライトを提げた楓・十六夜(闇魔蒼氷・d11790)がため息をつく。
    「……またロードローラーか……相変わらずだな」
     その呟きもむべなるかな、彼は一度黄色いロードローラーと対峙している。いまいち考えが読みにくい相手であることは否めない。
    「先読みできればいいが……」
    「知りたい事は山ほどあるけど……取り合えず、何で餃子?」
     仲間の凶行を黙って見過ごすわけにはいかない、とやってきた綾河・唯水流(雹嵐の檻・d17780)がうーんと首を傾げた。恐らく学園の皆が抱えている疑問であろう。
    「まずは分裂体減らすとこから、なのかなっ?」
     何故餃子怪人を狙うのか、どうすれば本体出てくるのか、色々つっこみたい淡白・紗雪(六華の護り手・d04167)としても、他に方法は見いだせない。持参した大きめのランタンを十六夜のライトから離して置き、こくんと首を傾げてみる。
     玄乃から渡されたファイルを確認している真純・白雪(白蛇の神子・d03838)が、脂汗を浮かべているのも無理からぬところであった。なにしろロードローラーに顔だ。
     横から覗きこんでいる山泉・桧(翠の小太刀・d25785)が真面目な顔で文章を読めているのが不思議なほどだった。
    「ウツロギくん……実は彼、いつの間にか僕のクラスの隣の席に移動してきていたんだよね」
    「……いつの間にか……」
     逢見・黎(それが代役だとしても・d25449)が戦闘準備を整えながら呟いた言葉に、一瞬ロードローラーで想像してしまった白雪である。頭をぷるぷる振ってその想像を頭から追いだし、持参したミリタリーマグライトを取り出した。
     夜になれば気温一ケタもまだある地域、きっちりと厚着してきた伊舟城・征士郎(弓月鬼・d00458)は地図を確認してライトの位置を直した。
    「外法院様とは直接お会いしたことはありませんが、(色々と)有名な方なので一方的に存じておりました」
     常に礼儀正しい紳士たるこの少年でさえ、一瞬何かが漏れる。噂だけでもその破壊力が窺い知れるロードローラーである。
    「救出へと繋がるお手伝いが出来るのなら願ったりですね」
     今は分裂体を灼滅するしかない。だがその積み重ねが本体へと繋がるならば重ねよう。
     LEDライトを設置し終え、腰に提げたハンドライトのスイッチを入れて、赤秀・空(道化・d09729)は闇の向こうへと目をこらす。
     かすかに響く振動と、悲鳴じみた声。
    「おいでなすったようだ」
     まずは手短な交渉から。
     灼滅者たちはライトを設置した場所を離れ、こちらへ向かう振動の源へと向かった。

    ●夜の埠頭の暴走者
     ごるごるごるごるという音を背に、ニンニクくさい羽幌えびタコ焼き餃子怪人が全力疾走していた。必死の形相……なのかは頭が餃子だからよくわからないが、戦う意思がないのは潔い逃走態勢で明らかだった。
     なにしろ後ろからは鼻歌まじりでえげつない速度で迫るロードローラー、しかも顔つき。その殺意も強さも見ればわかる。分からないのは理由だけだ。
    「餃子のおにーさん、だいじょーぶっ?」
     不意に横合いからかけられた声に、餃子怪人はびくっとして顔を向けた。気がつくと数人が並走している。声をかけたのは綺麗な白いウェーブヘアの少女――紗雪だった。
    「ボクたち、あのロードローラー倒したいんだけど、一緒に戦わない?」
    「えっ、あんたら灼滅者だべさ!」
     餃子怪人が裏返った声をあげる。彼の混乱を思うと、白雪はいささか気の毒になった。
     ……ついでに言えばこの餃子、頭を見る限り美味しそうかも。改めてロードローラーの現物を見た感想としては、女子らしい素直なものしか出てこない。
    「なんて言うかスゴく、濃いね。とりあえず今はあれを何とかすることを最優先にしよ?」
     あれ、とロードローラーを指さしながらの白雪の言葉に、餃子怪人は周囲を囲む灼滅者たちを落ちつかなげに見回した。察した征士郎が、疾走しながらも丁寧に口を添える。
    「貴方様と敵対する意思は此方にはありません。宜しければ外法院様を退けるまで共闘と行きませんか?」
    「アレは共通の敵だし、死にたくなければ手を組もうか」
     空がしっかりと目を合わせて言えば、桧も劣らぬ速度でついてきつつ頷く。
    「助太刀いたします。お代は餃子で構いませんので」
    「あ、お土産に餃子欲しいんですけど、女の子に渡すから一応ニンニク、ニラ抜きのもお願いします!」
     仲間の視線を浴びて「いや、先に言っとかないと……」とうろたえる唯水流の様子を見て、やっと餃子怪人は己の餃子が求められていることを実感した。えびとタコのつまった焼き目も香ばしい餃子の頭を振って怪人が絶叫する。
    「手貸してくれ! 俺も目一杯けっぱるべさ!」
     交渉成立だ。
     灼滅者たちの大外を固めていた十六夜と黎が、ロードローラーと餃子怪人の間に割りこんで進路を阻む。闖入者を認識したロードローラーが急ブレーキをかけ、距離を置いて灼滅者と羽幌えびタコ焼き餃子怪人が足を止めた。
     設置したランタンやライトに囲まれた、港沿いの道路上。予定した位置での仕切り直しは、灼滅者の狙いどおりとなった。

    ●言うなれば存在が暴力
     相対してみると、やはりロードローラーの姿がもたらす衝撃はなかなかのものだった。いささかヨレた声で白雪が呟く。
    「あんまりにもインパクト強すぎて夢に出て来そうだよ……説得して助けられるわけでもないし、せめて上手く灼滅しなくちゃね、うん」
     その点、全員異存はない。既に紗雪がサウンドシャッターを展開して戦闘の音が外へ漏れないように対応済み。一般人が近づかぬよう、十六夜も殺気を放って人払いをしている。
    「龍撃振破、来い、タロウマル! ジロウマル!!」
     唯水流のスレイヤーカードの解放を合図に、征士郎の傍らにはビハインドの黒鷹が姿を現し、灼滅者たちが各々武装を整える。ロードローラーはエンジンかけっぱなしのようにぷるぷる震えながら律儀に待っていた。
    「と言うわけで、はじめまして。連雀通りキャンパス 高校3年2組の逢見黎だよ」
     注意深く観察しながら黎が自己紹介をすると、ロードローラーについた顔が笑った。
    「はじめましてで、さようならなんだよね♪」
    「来るぞ!」
     黎の警告と同時、あり得ない初速でロードローラーが飛び出してくる。と同時に噴き出した濃密な殺気が灼滅者を襲い、ロードローラー自身をも包みこむ。
    「させないっ!」
     避け損ねた唯水流を呑み込もうとする殺気の前へ紗雪が立ち塞がる。
     素早く退きながら、征士郎は唇を噛んだ。複数の仲間を庇う盾サイキックの用意がない――咄嗟に桧へ盾の護りを加えながら黒鷹へと指示を飛ばす。黒鷹が顔を晒す反対側から路面を蹴り、十六夜が蒼魔終葬を閃かせた。
    「……無に還れ……」
     黒い刃に纏わりつく黒い冷気が、ロードローラーを包むどす黒い殺気を引き裂いて姿を露わにする。敵の初手を十六夜は予想していた。
     すかさず唯水流の紡ぐ魔力がロードローラーの熱を奪い氷結させる。その傍らを飛び出した紗雪の小さな左の拳が雷光の尾を引いた。
    「くっらえぇーっ!」
     ロードローラーを打ち上げる勢いでジャンピングアッパーを喰らわせる。がごんとアスファルトへ落ちてきた重機へ、空の足元から滑り出た影が絡みつくと絞め上げた。積み重ねていけば攻防共に有利になっていく。
    「フットワークの軽いロードローラーってちょっと怖すぎだよね!?」
     軽い悲鳴を上げながら白雪から紗雪を癒す光が放たれ、黎の断罪輪から放たれるオーラの方陣が、前衛たちに破邪の加護を与えた。ため息まじりにロードローラーへ肩を竦める。
    「……って、今は別人なんだっけ。早く直接会話できる日を楽しみにしているよ」
     お返しとばかり桧からもどす黒い殺気が放たれ、ロードローラーを押し包む。それには羽幌えびタコ焼き餃子怪人が張った煙隠れの煙幕も加わり、灼滅者たちの気配を気取られにくくしていく。

     重ねられる影の絡みつきや、外殻を蝕む氷のダメージは着実にロードローラーの行動力を削いでいった。黎のばらまいた鉛玉の雨を突っ切りロードローラーがドリフトで襲いかかるが、かわしそこねたのは征士郎と餃子怪人、それも怪人への攻撃は黒鷹が受け止める。
    「……破魔残光……その果てを視ろ、殺戮者」
     剣の紋章を蒼黒く光らせ、十六夜が疾風の如く斬りつけた。彼と十文字の軌道を描いて唯水流の龍砕斧が振りかぶられる。
    「私のタロウマルと押し合えると思わないでください!」
     小柄な身体から想像しがたい重い斧の一撃が、ロードローラーを断ち切らんばかりに捻じ込まれる。がごんと音をたてて震えたロードローラーへ肉薄し、征士郎と紗雪が火の粉を纏った蹴りを同時に喰らわせた。あがる炎が黄色い外殻を焼く。
    「何でも良いのでさっさと帰って来てください」
     目の前の相手にではなく、ウツロギに届けと征士郎がため息まじりに呟けば、黒鷹を癒す白雪の傍らを抜けた空が距離を詰めていた。軋む音を立てる巨大な籠手で殴打。
    「これが知り合いってんだから、怖い人たちだべな」
     ぽつりと餃子怪人が嘆いている。
    「困っちゃうんだよね♪」
     事ここに至っても呑気なロードローラーの言葉に、唯水流が声を張り上げた。
    「ウツロギさん、お話してください!」
    「いいよぉ♪」
    「いいのか?!」
     軽い返答に、炎をまとった斬撃を加えながら思わず黎がツッコんだ。
    「あまり信用できそうではないですね」
     死角へと回りこんだ桧が前輪ロールのシャフトへと致命的な斬撃を加えると、一瞬でエンジンを噴かして跳ねるように距離を取り、次の瞬間高速回転しながら餃子怪人を狙う。あまりの速さに動けない怪人の前へ滑りこんだのは紗雪だった。
    「させないっ、てばっ!」
     凌ぎ切ったものの小さな身体が悲鳴をあげ、思わずその場に膝をつく。
    「大丈夫?!」
     白雪からとんだ柔らかな癒しの光が彼女の身体を包むと同時に、征士郎のシールドバッシュがロードローラーを傍から弾き飛ばす。
    「会話は無駄のようだな」
     蒼魔終葬の魔術回路に青い光が走ると、芒と光る魔法陣が展開された。凝縮された魔力が輝きを放って撃ち放たれる。直撃を受けて震えるロードローラーへ、ジロウマルを構えた唯水流が迫って告げた。
    「ならば今は語る気もありません……無用な火種にならないよう、この場で打ち倒す!」
     したたかに叩きつけられる衝撃から、流し込まれる魔力の爆発。
     全ての温度を奪う桧の氷の呪いが足を止めたところへ、黎が加えたガンナイフの銃弾の雨がとどめとなった。
     ロードローラーは派手な爆発で、その姿を消した。

    ●ひとときの交流
     共闘――というより救出――された羽幌えびタコ焼き餃子怪人は、コメツキバッタ並みの勢いで灼滅者たちに頭を下げた。
    「いやぁなまら助かった! 俺だけならあわくって逃げるばっかりで、絶対やられてたと思うんだわ。約束のお礼させてくれねえべか!」
     生粋の道産子だったとみえて、北海道弁全開だ。弱そうとはいえご当地怪人、十六夜と桧は油断なくその動向を窺う。しかし当初からの十六夜の見込み通り、ここで疲れた灼滅者を襲おうという思考は怪人にはないようだった。
    「そりゃあ、明日の楽しみがなくなるからね。それより全国の餃子怪人と連携したらどうかな。互いに疑心暗鬼になるより、協力して対応した方が良いよね? 餃子大会でも開けば、奴等も釣られるかも知れない」
    「餃子大会! スケールでけえ……俺みたいなローカルから発信だとプレッシャーだけど、俺以外にもアレに追っかけられてる奴いるんだべなあ」
     空の提案に餃子怪人が腕を組んで考え込む。そこへ征士郎が丁重に切り出した。
    「ロスした時間を取り戻す為にお手伝いをしましょうか?」
    「いやぁそこまでは甘えらんねえべさ。気持ちはありがたいけど、羽幌えびタコ焼き餃子の旨さを広めるのは俺の使命だもな! したっけまた明日な!」
     そこはご当地怪人の意地というものらしい。餃子怪人は道の駅で行われるイベントのパンフレットを残すと、港へと全力疾走で餃子の仕込みに戻っていった。

     ということで翌日、というか10時間後。イベント会場では着ぐるみと勘違いされながら、一心に餃子を焼く餃子怪人が人気を集めていた。皮の焼ける香ばしい匂いや音、それを楽しむ人々の声が溢れかえっている。
     灼滅者たちの姿を見つけると、餃子怪人は上機嫌で全員分の餃子をふるまった。ニンニクのきいた挽肉とニラの餡には大きめに切られた甘えびとタコが混ぜ込まれていて、えびの甘さとタコの歯ごたえが存分に味わえる。
     意外な美味しさに白雪が目を瞠り、空は玄乃が餃子を気にしていたことを思い出した。
    「これ、お土産に持ち帰れないかな」
    「したっけパックに詰めるわ。あ、ニンニクとニラ抜き、これだべさ!」
     唯水流に注文の餃子のパックを渡して、餃子怪人が忙しそうに灼滅者へお土産用の餃子を渡し始めた。クラブの仲間と玄乃へのお土産に、唯水流は嬉しそうに頬を緩める。
    「美味しそう……いいお土産ができました♪」
     実は餃子が好きだし、喜んで貰えると嬉しいなあ、という想いがあった。餃子怪人の顔をしげしげと眺めて、唯水流が真顔で訴える。
    「食べてくれる人の笑顔、嬉しいですよね……だから、貴方の餃子愛ともう一度向き合ってみてください」
     闇堕ちから救済出来ないかと願った言葉に、餃子怪人は嬉しげな声で応じた。
    「うまいって言われると嬉しいなあ。もっと皆に食べて貰えるようにけっぱるべさ!」
     食べる人の笑顔に気付いてくれれば、という唯水流の気持ちが届いているかはわからなかった。灼滅者とダークネスはその性質上、相容れない。けれど敵対する意思がないなら無理に争う必要はないだろう、と征士郎は餃子を食べながら思う。
     たとえ相手がご当地怪人で、いつか倒さなければならない敵だとしても。一度でも共闘した相手へ相応の礼儀は必要な気がする桧は、餃子を食べながら怪人を見上げた。
    「羽幌えびタコ焼き餃子、たくさん売れるといいですね。……頑張って下さい」
    「おう! そこの三人も遠慮すんでねえぞ!」
     出される餃子に黎と紗雪が戸惑ったように顔を見合わせ、十六夜がふいと目を逸らす。

     夏まだ遠い、北海道の海辺の町は日差しも柔らかい。
     人と灼滅者とダークネス、まだ見えぬ『共存』の形は初夏の蜃気楼のようで。
     未来のどこかで、そんな美しい結末があるのか――全ては行動する者が定めてゆく。

    作者:六堂ぱるな 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年6月1日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 2/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 5
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ