●血飛沫・罵楽VSロードローラー
血飛沫・罵楽と言う六六六人衆がいる。序列は六六〇。
六六六人衆きってのストーカーを自称している罵楽の手口は、いつも決まっている。
標的と定めた人間をストーカー行為(主に尾行)を続けて追い詰め、自分を罵倒させた上で殺すと言うもの。
そして新たな標的を定めた罵楽の姿は、解体工事の現場近くの路地にあった。
もうすぐ、標的のOLが終電に乗る為に帰りを急いで路地を通る。それを工事現場に追い立てるのだ。
標的が来るまで後数分――その時、罵楽が予想もしていなかった異変が起きた。
バキッメキョッガゴッゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
破砕音やら潰れる音やらを響かせて現れたのは、緑のロードローラー!
まあ、人の顔が付いてるけど。
ロードローラーは、罵楽に唖然とする暇すら与えずに、罵楽を工事現場へと追い立てる。
資材やら瓦礫を掻い潜り逃げる罵楽に、それらを尽く潰して追うロードローラー。
普段は『追う』側の罵楽が、完全に『追われて』いた。
「どこのどいつか知らないけどさぁ……邪魔だよ」
それは罵楽にとって我慢のならない事であった。故に、身を潜めた後に反撃に移る。
両手に片手サイズの斧を握り、瓦礫を蹴って跳び上がる。
「スクラップに――してやるよぉ!」
ロードローラーの真上から斧を振り下ろし――その時、罵楽は見た。
ローラーの上に付いた顔が、笑う様に舌を出しているのを。
●倒すのは誰だ
「サイキックアブソーバーが俺を呼んでいる……決着の時が来たと!」
神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)がこんな感じなのはもういつもの事なので、本題に入れと促す灼滅者達。
「『ロードローラー』の事は、もう聞いているか?」
謎に包まれた六六六人衆『???(トリプルクエスチョン)』。
その者は灼滅者『外法院ウツロギ』の特異な才能を見抜いて彼を闇堕ちさせ、分裂という稀有な特性を持つ六六六人衆を生み出した。
それこそが、新たな序列二八八位。あの『クリスマス爆破男』の空席を埋めた、その六六六人衆の名は。
「『ロードローラー』だ!」
以上、前置き終わり。
「分裂したロードローラーは日本各地で事件を起こしているんだが、その1体が、今度は他のダークネスを襲う」
今回のロードローラーの狙いは、倒したダークネスのサイキックエナジーを利用して、さらなる分身体を生み出す事にある。
「その前に、追い立てられたダークネス――六六六人衆をお前達の手で倒して来て貰いたい」
そして、追い立てられるダークネスは過去に学園と交戦経験がある相手だった。
「序列六六〇の、血飛沫・罵楽と言うストーカー野郎だ」
学園と交戦したのは、去年の冬の事。
ストーカーの末に人を殺そうとした罵楽と戦い、その被害を最小限に抑える事に成功した。
あれから、1年と少し。
「罵楽はずっと同じ手口を繰り返していた様だ」
追い詰められた者が自分に向ける罵倒。そして、殺す際の血飛沫と骨が砕ける音。
罵楽の享楽であるその3つを一度に満たす、それだけの為に。
その手口に拘るあまり、闇堕ちゲーム等にも関わらずに序列も変わらず、エクスブレインの予知にも今日までかかる事はなかった。
「だが、ロードローラーが関わった事で事情は変わった」
決着の時、とはそう言う意味だ。
「俺の全能計算域(エクスマトリックス)が導き出した、お前達が待ち伏せるべき場所は此処。解体工事の現場だ」
すぐ近くの別の工事現場でロードローラーに襲われた罵楽が、一旦撒いて逃げ込んで来るのが其処だ。
「但し、10分だ。10分以内に、罵楽を倒せ。でなければ、ロードローラーが来てしまう」
もしそうなったら撤退すべきだ、とヤマトは続けた。
「撤退しなければ、ロードローラーは交戦中のお前達に、背後から襲いかかって来るだろう」
ロードローラーが罵楽よりも強いのは、恐らくだがほぼ確実だ。
かと言って、攻撃対象をロードローラーに変えれば、罵楽は迷わず逃げ出すだろう。
そうなると、状況的に、勝つのはほぼ不可能と言わざるを得ない。
「今回は罵楽との決着を最優先にしてくれ。罵楽と決着を付ける、恐らく最後の機会だからな」
もし灼滅者達が撤退すれば、ロードローラーは罵楽を執拗に追い詰め、倒すからだ。
「お前達はあれから強くなった。今のお前達なら、罵楽はもう勝てる相手だ。ロードローラーに譲る必要はないぜ」
六六六人衆を倒すのは、ロードローラーじゃない。
灼滅者だ。
参加者 | |
---|---|
織元・麗音(ブラッディローズ・d05636) |
高峰・緋月(全身全霊の突撃娘・d09865) |
七峠・ホナミ(撥る少女・d12041) |
高柳・一葉(ビビッドダーク・d20301) |
鷹嶺・征(炎の盾・d22564) |
韜狐・彩蝶(白銀の狐・d23555) |
フーゴ・クラフト(ヴィントシュトゥース・d24450) |
セシル・レイナード(ブラッドブリード・d24556) |
●10分間の殺し合い
夜の街の片隅で、ガコッだのベキョだの何かを潰すような音が何度も響いていた。
その音はしばらく続いていた、やがて唐突に静まる。
「はぁっ……はぁっ……くそっ。何だったんだよぉ、あの重機野郎は」
それからしばらくして、解体工事の現場に息を切らせて走り込んできた男が1人。
「どうにか撒いた……か?」
後ろを気にするその姿は、髪は激しく乱れて着ているスーツもあちこち無残に千切れていると、ボロボロであった。
「あー……ったく。私の計画が台無しじゃないかぁ。今日は、あの女を追い詰めて罵倒されて殺してあげるつもりだったのになぁ」
うんざりした様子で口にしたその言葉が、男の正体を物語る。
六六六人衆、血飛沫・罵楽であると。
「計画を練り直して追いかけるところからやり直すか……あぁ、でも早く罵倒されて殺したいなぁ」
ぼやく罵楽はその瞬間を想像しているのか、恍惚とした表情を浮かべていた。
「今から追いかけるか……或いは、どこか行って適当に別の人間を殺――っ!?」
突如、罵楽の姿を強い光が照らし出す。
(「ロードローラーに追われる六六六人衆なんて滑稽だねー」)
胸中でそう呟いた韜狐・彩蝶(白銀の狐・d23555)が、隠れていた足場から飛び降りながら手にしたタイマーのスイッチを入れて「灼き尽くせ」と小さく呟いた。
着地する頃には、その姿は見上げる程に大きな獣――白銀の毛並みを持つ九尾狐の姿へと変わる。
「アンタみたいな気分が悪くなるひとも珍しいわ。どこにも行かせない。アンタ、今夜でおしまいよ」
突如現れた獣の姿に罵楽が何か言うより早く、七峠・ホナミ(撥る少女・d12041)がその後ろから飛び出した。
罵楽を睨みつけながら、摩擦で生み出した炎を纏った脚で蹴り飛ばす。
「ああ、絶対逃がさねえ。確実に、迅速に。殺してやろうぜ」
別の物陰から飛び出したセシル・レイナード(ブラッドブリード・d24556)も明確な嫌悪を露わに罵楽を睨みつけ、冷たく鋭い氷を飛ばし罵楽に突き刺さる。
「はぁ? 重機の次は、灼滅者ぁ? 今夜は一体どうなって――」
また罵楽に最後まで言わせず、鬼の様に巨大な拳が立て続けに2つ、罵楽の背後に振り下ろされる。
「とても楽しい愉しい遊びが出来そうなお相手ですね。さあ……殺し合いを楽しみましょう?」
笑顔を浮かべた織元・麗音(ブラッディローズ・d05636)の鮮やかなピンクの髪が、衝撃で揺れる。
二撃目を入れた鷹嶺・征(炎の盾・d22564)は、口元に小さく笑みだけ浮かべて無言で罵楽を見据えていた。
「なん……」
「今回は良い機会だって……事だよ。六六六人衆を減らしておくね! キャリーカート君!」
2人に向き直った罵楽の死角を駆け抜けた高柳・一葉(ビビッドダーク・d20301)が、縛霊手の爪で罵楽の手足を切り裂く。
名を呼ぶと同時に軽々と跳び上がると、ライドキャリバーの機銃が弾丸をばら撒いた。
「次から次へと」
機銃の弾丸を斧で切り払い、周囲に視線を巡らせる罵楽。
「逃がさないよ!」
上から飛び降りた高峰・緋月(全身全霊の突撃娘・d09865)が、空いていた方向を塞ぐと共に、大地に眠る『畏れ』を纏った刃を振り下ろす。
「六六六人衆の中で全く変動が無いそうだな?」
フーゴ・クラフト(ヴィントシュトゥース・d24450)の足元で散った火花が、一瞬で炎に変わった。
「凄い事にも思えるが……下位の微妙な数字だから狙われないだけか?」
「あぁ?」
炎を纏った脚で蹴り飛ばされた罵楽は、空中で身を翻し――放置されていた鉄骨の上に立つと、灼滅者達を見下ろした。
「さっきから聞いてればさぁ……私に勝てるつもりでいるのかい? 序列が下だからって、舐められたもんだなぁ」
「マゾ豚が。罵られるのは好きだってのに、追い詰められるのは嫌いなのか?」
苛立ちを表に出し始めた罵楽に、セシルが更に言葉で追い討ちをかけた。
その直後。
「ふぅん」
ざわりと、空気が変わる。目を細めた罵楽が灼滅者達に、殺気を向ける。
「思い出したよぉ。前にも、灼滅者に邪魔された事あったなぁ……次があったら殺そうって思ったんだぁ」
いつの間にか、その両手には片手サイズの斧が握られている。
「今夜は色々欲求不満だからさぁ……殺しちゃうよぉ?」
ニタリと笑みを浮かべた罵楽の手が、斧を投じた。
●残り8分
耳障りなモーター音を響かせ、緋月がチェーンソー剣を振り上げる。
飛び上がりながらの一撃は、罵楽の斧に阻まれ更に耳障りな金属音を響かせた。
「ああ、惜しいねぇ。残念だったねぇ」
阻んだ刃越しに、嘲る様に罵楽が笑う。緋月を挑発し、己を罵らせようとしているのだろう。
「お生憎様。罵って欲しいんだろうけど、何も言う事はないよ」
「じゃあ、痛くしないとダメかなぁ?」
後ろに跳んで膠着を脱した緋月を、罵楽が斧を手に追う。骨まで断ち切る勢いで振り下ろされた斧の前に、征が割り込んだ。
口元だけの作り笑いを浮かべたまま掲げた腕で斧を阻むと、足元から鎖の様な形を取った影を数本伸ばす。
絡みついた影は刃の様に鋭い先端から膨れ上がり、罵楽を影の中に飲み込んだ。
「すぐに癒すわね」
「あー、もう! こう言うのはさぁ。要らないんだよぉ」
だらりと片腕を下げた征の背中に、ホナミが癒しの力を込めた矢を放つ。
同時に、大いに苛立った様子で叫び、罵楽が影の中から飛び出す。影が見せたトラウマは何であったのか。
「つまんないよ、君たち」
「テメェを喜ばせる気は無ぇよ」
大鎌を手に、セシルが駆ける。
「それに何よりオレは元々口下手だからよ。言葉じゃなく、コイツで抉らせて貰うぜ?」
罵楽の急所を狙って、そこを抉るように大鎌を振るう。
「おっと。そんな大振りじゃ、当たらないよぉ」
湾曲した紅い刃を大きく跳んで避けた罵楽が、嘲る様な口調で言いながら鉄パイプを蹴って更に上へ跳び上がる。
人間を己の欲求を満たす対象にしか見ていない罵楽の様なダークネスに対し、セシルが向けるのは憎悪か不快感くらい。
当たる見込みが高くないのは判っていたが、攻めるしか考えていなかった。
舌打ちするセシルの視界の先で、白銀の影が罵楽を追い越す。
「うるさいよ貴様」
「がっ!?」
冷酷な声と共に、彩蝶が左の前足に装着した杭打ち機に炎を纏わせ、その背中に容赦なく叩きつけ杭を打ち込んだ。
「そんなに罵倒して欲しいんだ? Mと言うか、変な人だね」
ステップを踏む様に、工事用に組まれた鉄板に鉄パイプを蹴って来た一葉が、空中でくるりと前転しながら縛霊手の拳を叩き込む。
霊力の網が罵楽を絡めとった所に、麗音も跳び上がって来た。
「罵倒がないと楽しめませんか? 此方は貴方とのお遊び、なかなか愉しいですよ?」
跳躍した空中で長い髪を翻し、麗音は身体ごと大きく縛霊手を振るい、その爪で罵楽の手足を切り裂いた。
「一々吹っ飛びすぎだ。追いかけるのも面倒だ」
更にフーゴが追い討ちをかけた。星の輝きと重さを纏った蹴りを見舞い、罵楽を地面に叩き付ける。
「クソッ! いらいらさせる連中だなぁ」
立て続けに灼滅者達の攻撃を受けて、罵楽の顔から笑みが消える。
罵楽が好む罵倒は、あくまで己が優位に立ち、追い込んだ獲物が向けてくるものに過ぎない。
今、灼滅者達が向けている言葉は、罵楽の怒りを助長しかしなかった。
「……もう良い。せめて血飛沫だけでも上げてろ!」
強い怒りを浮かべた罵楽の身体から、どす黒い殺気が次々と湧き上がり取り囲む灼滅者達へと襲い掛かった。
●残り5分
「罵楽め。思ったよりも此方を狙って来る……仕方ないな」
2回目の殺気を受け、フーゴが溜息と共に大量の生命維持用の薬を煽るように飲み込む。
罵楽が得意とする距離はどちらかと言えば近接戦の筈だが、後衛の灼滅者達に狙いを集中し始めていた。
灼滅者達の包囲を崩す事を優先に考えたのだろう。
(「残り時間は、後半分か……」)
「まだ、倒れるには早すぎるわね!」
ホナミは手にしたタイマーに一瞬視線を落としてから、自身を含む罵楽を包囲する輪の外周へと夜霧を展開させた。
「大丈夫?」
「んむ! ……まだまだ守り手として頑張っちゃいます」
気遣う彩蝶にしっかりと頷いて、一葉が縛霊手の指先に集めた癒しの力を自身へと向ける。
ついでに反対の手は、どこに持っていたのかクッキーを口に運んでいた。
戦いの中でも、何かを食べずにいられない一葉。既に3枚目だったりする。
が、それで動きが悪くならないもこれまでの戦いで実証されているので、彩蝶は特に何も言わずに罵楽へと駆け出した。
身を盾にして貰ったのだ。ならばその分は、刃を持って報いれば良い。
彩蝶の右前足に装着された刃が、罵楽の手足の関節を正確に斬り裂いた。
「くそっ」
灼滅者達が疲弊する一方で、罵楽の動きも明らかに悪くなっていた。
「ほら楽しめよ、楽しんで見せろよ! ドM野郎!」
串刺公と呼ばれた者の名をつけた紅の刃に、死の力を宿らせて。セシルが振り下ろした断罪の一撃は、治り難い傷を罵楽に刻み付けた。
死に続くのは、破邪の白光。
「ロードローラーから逃げ、僕たちの様な半端者からも逃げ……逃げてばかりですね」
輝きを纏った剣で斬りつけながら、征はくすんだ血の様な赤い瞳で見据えつつも表情を変えずに淡々と罵楽を挑発する。
「もっと私とも遊びましょう?」
炎を纏った蹴りを叩き込むその瞬間、ドレスの裾が鮮やかな軌跡を描く。
麗音が見せる、バトルマニアとしての一面。この程度では、まだ物足りない。
「そうね。逃げる事しか出来ないの?」
緋月は本来、戦いはあまり好きでないのだが――戦う覚悟も傷つく覚悟も、既に固めている。
挑発を重ねながら、獣化した腕を罵楽に付きたて、引き裂くように振るう。
「るさいなぁ……そろそろ死んじゃっていいよ!」
そう罵楽が吐き捨てるように言った直後、数人はその姿を見失った。
高速で横っ飛びに灼滅者達の視界から外れると、すぐに戻って背後を取る。
「お望み通りだ。遊んであげるよぉ!」
その声に背後を取られたと麗音が気付いた直後、鈍い金属音が響いた。
「ちっ……一輪車か」
側面から斧をまともに受け、ライドキャリバーが沈黙する。
狙った標的でなかった事に舌を打つ罵楽だったが、その肩ははっきりと大きく上下していた。
●残り2分
大きく弧を描いて飛んだ斧が、ホナミの背後から肩に突き刺さる。
戦場に滴り落ちた血の跡が増えるに連れて、時間の余裕は減っていく。
「こっちはまだ大丈夫! 攻撃に専念して!」
肩に食い込んだ斧を引き抜いて、ホナミが声を張り上げる。
タイムリミットが迫りつつある中、皆の攻め手を欠けさせる訳には行かない。仲間と自分自身を鼓舞しながら、癒しの力を己へと向ける。
庇いきれなかった事に内心で小さく舌打ちした征は癒しの風を招こうとして、その言葉で留まった。
再び征の影が鎖の形を取り、罵楽へ絡みつくと膨れ上がって飲み込む。
「そろそろ、終わらせる」
「オレたちで殺してやるよ、バラク!」
彩蝶が右前足の剣を、セシルが紅い大鎌を、左右から同時に罵楽の手足の間接を狙って振るった。
急所を切り裂いた2人の斬撃が、一時罵楽の動きをその場に封じる。
「この位の量でやってみるか」
大量の薬物を口に含んだフーゴが、それを噛み砕いて飲み込みながら地を蹴る。
同時に、腕につけた杭打ち機から上がるジェット噴射。
「私が灼滅者なんかに……!」
「人間の執念ってやつを……あまり舐めるなよ」
振り上げた罵楽の斧に斬られながら、フーゴが叩き込んだ杭は罵楽のバベルの鎖の薄い一点を貫いた。
その衝撃にふら付く罵楽を、畏れを纏った緋月のチェーンソー剣が斬り裂き、麗音の鬼の拳が殴り飛ばす。
「がっ! こ、の……」
一葉にとっては六六六人衆は宿敵である反面、親近感を覚える部分もあれば、一緒にされたくない気持ちもある。
だからこそ。
「此処で消すよ。人の為にね!」
殴り飛ばされ宙に浮いた罵楽の背中に、一葉が深々と縛霊手が突き立て、引き抜いた。
「ああ……くそっ。こんな……」
罵楽の手から抜け落ちた斧が、カランと乾いた音を立てる。
「それでは、またいずれ――あちら(地獄)でお会い致しましょう」
消え行く罵楽に背を向けて、麗音が呟く。
(「ロードローラーさんとも遊んでみたいのですが、またの機会ですね」)
とその直後。2つのタイマーのアラーム音が鳴り響いた。
「間に合ったー! さっさと撤退しよ。ボク、轢かれるのは勘弁したいし」
いつもの姿に戻った彩蝶が明るい口調で告げて、急かすように尻尾をパタつかせる。
「ロードローラーか……本体は一体どこにいるのでしょうね」
「私は、ロードローラーが誰かの思惑で動いているのか、六六六人衆としての本能で動いているのか。それが気になりますね」
「ほらほら、長居は無用よ。速やかに帰」
ロードローラーの動きを気にする征と緋月へ、促すように手を叩いたホナミは腰のライトを消そうとし――ライトの照らす地面、つまり彼女の足元に。割と大きめの蛾を見つけてしまった。
「どうしたんだ?」
「……?」
突然固まったホナミを、セシルとフーゴが不思議そうに見やる。
「す、速やかに! 帰るわよ!」
「お腹空いたの? クッキーなら持って……あれ。もう全部食べちゃったかな?」
大慌てでその場から離れたホナミを、ポケットを探りながら一葉が追いかけ、他の仲間も後に続く。
そして――。
灼滅者達が去った工事現場にロードローラーが現れる事はなく、夜が明けるまで静寂に包まれていた。
作者:泰月 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2014年5月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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