新潟白米キャビア怪人、姉妹都市ロシア化指令!

    作者:飛翔優

    ●新潟丼キャビア怪人スヴェートキャビャーの策
     たれカツ丼などが有名な、ロシアの姉妹都市新潟県新潟市。
     穏やかな時が流れるこの場所に、いつの頃からか小さな変化が生まれていた。足跡を辿ったなら、一人の男に辿り着くだろう。
    「……」
     名を、新潟丼キャビア怪人スヴェートキャビャー。白米の入った丼の頭、胸元に輝くキャビア缶型のバッジ。そして、光り輝く純金の巨大スプーンを持つこの男は、日々丼屋にて活動する。
     要件は短く、キャビアを使え。
     タレカツではなく、牛肉でもなく鶏肉でもなく、キャビアを使え。ご飯の上には、キャビアが良い。キャビアを乗せて、お米の味を楽しむのだ! ……と。
     それだけを伝えた後、スヴェートキャビャーは押し黙る。ただただ店主を睨み続け、折れるのを何時間でも待ち続ける。
     全てはロシアンタイガー様のため、名物たるお米をロシア化してしまうため、ロシアの姉妹都市をロシア化してしまうために!
     全ては世界征服に繋がるのだ! と……。

    「まさか本当に、日露姉妹都市を点々と移動しているとはね」
     甘味処でロシアンタイガーに関する調査メモを纏めていた黒蜜・あんず(帯広のシャルロッテ・d09362)は、一旦手を止め盛大なため息を吐き出した。
     スプーンを広いパフェに口をつけながら、これからの行動を頭のなかに浮かべていく。
     冷たく甘いアイスをメインに、ほろ苦いチョコレートソースに甘酸っぱいストロベリー。一口、一口味わいながらパフェを平らげた頃、行動予定も整った。
    「それじゃ、伝えに行きましょうか。ロシアンタイガーの案件を進展させるためにも」
     立ち上がり、会計を済ませた後に目指す場所。それは、エクスブレインの待つ場所で……。

    ●夕暮れ時の教室にて
    「それじゃ葉月ちゃん、後はお願いね」
    「はい、あんずさんありがとうございました! それでは早速、説明をはじめさせていただきますね」
     あんずに頭を下げた後、倉科・葉月(高校生エクスブレイン・dn0020)は灼滅者たちへと向き直った。
    「あんずさんの調査により、ロシアンタイガーが日露姉妹都市を転々と移動していた事がわかりました」
     ロシアンタイガーの現在地は不明。しかし、ロシアンタイガーが立ち寄った都市では、ロシア化怪人によるご当地パワーのロシア化が始まってしまっている。
    「このまま放置すれば、ロシアンタイガーが力を蓄えて復権するかもしれません。それを阻止するためにも、そして、ご当地のロシア化を防ぐためにも、ロシア化ご当地怪人の灼滅をお願いします」
     概要説明を終えた後、葉月は具体的な内容へと移っていく。
    「今回、皆さんに向かってもらう都市は新潟県新潟市。ご当地グルメ、たれカツ丼などが有名でしょうか?」
     活動するロシア化ご当地怪人の名は、新潟丼怪人スヴェートキャビャー。白米の入ったお丼の頭、胸元に輝くキャビア缶型バッジ、巨大な黄金スプーンを持つ怪人で、日々食事処にて活動を行っている。
     曰く、米の上にはキャビアを乗せろと。たれカツや牛肉、鶏肉などではなく、キャビアを乗せろと。
    「ロシアのおみやげとしても有名なキャビアを広めることで、ロシア化を図ろうとしているみたいですね」
     灼滅者たちが訪れた時も、牛丼チェーン店に対してその交渉の真っ最中。何とかして外に引きずり出し、戦いを挑むという流れになるだろう。
     敵戦力はスヴェートキャビャーただ一体。
     力量は八人で何とか倒せる程度に高く、戦いの際は防御面に意識を割いている。
     技は、毒や呪縛などを浄化しながらのスプーンによる大立ち回りキャビャー演武。遥かな空より降り注ぐ魅力的なキャビアの雨キャビャードーシチ。治療を弱めるお米の輝きキャビャースヴィルカーチの三種。これらを使い分けてくる。
    「以上で説明を終了します」
     地図などを手渡し、葉月は言葉を続けていく。
    「あるいは、ロシアンタイガーに迫ることができるチャンスなのかもしれません。また、困っている方も大勢います。なにせ、キャビアは珍味とはいえお高い……普通のお店が普通に提供することなど、恐らくは望めないものなのですから」
     だからこそ、と葉月は締めくくる。
    「どうか、全力での灼滅を。何よりも無事に帰って来て下さいね? 約束ですよ?」


    参加者
    冥賀・アキ乃(永未闡提・d00258)
    陽瀬・すずめ(雀躍・d01665)
    佐渡島・朱鷺(佐渡守護者かっこかり・d02075)
    黒蜜・あんず(帯広のシャルロッテ・d09362)
    焔野・秀煉(鮮血の焔・d17423)
    カリル・サイプレス(京都貴船のご当地少年・d17918)
    天草・水面(神魔調伏・d19614)
    綾辻・刻音(ビートリッパー・d22478)

    ■リプレイ

    ●静かなるスヴェートキャビャー
     人々がぽつぽつと仕事に戻り始めていく、午後一時過ぎの新潟県新潟市の繁華街。剣呑な雰囲気を漂わせている牛丼チェーン店を横目に、陽瀬・すずめ(雀躍・d01665)はスマホをいじっていた。
    「キャビアって高いんでしょ? 食べたことないけどそれくらいは知ってるよ!」
     仲間と共に通行人を装いながら、雑談の種としてこの度の相手……とか新潟白米キャビア怪人スヴェートキャビャーに関わる話題を上げていく。
     返事を受け取りながら、会話を更に発展させた。
    「急にキャビア使えなんて言われたらそりゃ困るよねぇ。牛丼屋さん可哀想」
     戦いの後に牛丼でも食べに行こうかとの算段を立てながら、事態が動くのを待ち望む。
     通信待機のさなかにふとを顔を上げてみれば、ちょうど呼び出し組の準備も整ったようだ。

     シャツにベストにブルージーンズ。カメラバッグを肩に下げ、ビデをカメラを担いでいく。
     カメラマンを装いて、冥賀・アキ乃(永未闡提・d00258)心の中で小さなため息。
     ご当地怪人の、目的と手段が混線している所業。その意味不明なノリに何で付き合わなければならないのか、と。
     もっとも、そうしなければ呼び出すことなど叶わない。表情には笑みを張り付かせ、件の牛丼屋へと突入するルポライター役を務める黒蜜・あんず(帯広のシャルロッテ・d09362)を見送った。
     あんずは店内へと入るなり、ぐるりと周囲を見回した。
     カウンター席に、お昼を食べに来たであろうサラリーマンが五人ほど。けれど丼の姿はなく、何かから逃げるように携帯やスマホをいじっている。
     奥には困った笑みを浮かべる店主と思しき眼鏡の男と、白米の入った丼の後ろ頭……スヴェートキャビャーが向かい合っていた。
     概ね重苦しい。気に留めることもなく、あんずはスヴェートキャバーに話しかけていく。
    「あなたがスヴェートキャビャーさんですね? 私、今話題のロシアングルメを取材している黒蜜あんずと申します」
    「む……」
     スヴェートキャビャーが振り向けば胸元のキャビア缶バッチが、巨大金スプーンがキラリと光る。
    「カメラマンを待たせてますので外の方でインタビュー宜しいでしょうか?」
    「……」
     無言のまま、スヴェートキャビャーは何かを探るような視線を向けてきた。
     あんずは構わず外を示し、ついてくるよう促し歩き始めていく。
     足音が、ついてきてくれていることを教えてくれた。
     アキ乃との無事に合流を果たし、あんずは改めて向き直り質問を始めていく。
    「流行のキャビア丼、あなたが仕掛け人と伺いましたが、こだわりや一押しポイントを伺っても宜しいですか?」
    「……」
    「っ!」
     何か言えよ! と、アキ乃は喉元まで出かかった突っ込みを必死で抑えた。
     ついでによくよく観察してみれば、スヴェートキャビャーの瞳には険しい光が宿っている。少なくとも、喜んであんずに付いて来たという風体ではない。
    「……なあ」
    「貴様らの事情はわからない」
     警戒が必要だと伝えようとした時、スヴェートキャビャーが口を開いた。
    「だが、どこからともなく私の名を知り、わざわざ会いに来た不審な者だということは分かった。事情、話してもらうぞ。このスヴェートキャビャー様に」
    「っ、あんず!」
     警告を発するとともに、アキ乃は武装を整える。
     あんずも一足遅れて変身し、スヴェートキャビャーから距離を取った。
     平和であるはずの繁華街で、新潟の丼飯を巡る戦いが開幕する。

    ●キャビアの輝き
     諸横消滅・饒慈愍心・畢竟成佛と刻まれた槍に影を宿し、アキ乃はスヴェートキャビャーに殴りかかる。
     巨大金スプーンに弾かれるも鍔迫り合いへと持ち込んだ。
    「目的と手段が混線してるクセに、ノリが悪い、なぁ!」
    「あるいは、他の怪人ならば騙されかもしれん。相手の性質を良く見極めること、だっ!」
     弾かれ開いた両者の間、靴を炎熱させたあんずが飛び込んでいく。
    「キャビア丼には惹かれるものがあるんだけどね。でも、やることは変わらない。ブリュレになりなさい!」
     蹴りが肩へと突き刺さりスヴェートキャビャーが炎上した時、人払いの力を発していた佐渡島・朱鷺(佐渡守護者かっこかり・d02075)が駆けつけた。
     彼女は勢いのままに腕を肥大化させ、丼頭目掛けて殴りかかっていく。
    「あるがままの新潟を変節させるような所業、何人たりとも見逃せません!」
    「遥々、ロシアから日本まで来て敗走、ご当地怪人の幹部とやらもたいしたこたなかったな!」
     同様に、戦場へと到達した焔野・秀煉(鮮血の焔・d17423)は背中から炎の翼を広げていく。
     さなかに発した言葉が癇に障ったのだろう。スヴェートキャビャーが振り向いてきた。
     構わず、秀煉はニヤリと笑った。
    「次は手下にサイキックエナジーをコソコソ貯めさせて。逃げ帰る算段か? 惨めなもんだな」
    「……」
    「前等ロシアン怪人達は、口先だけでそんなもんなのか? なんか言ってみろよ!!」
     挑発の傍らビハインドの飛雄威に、霊撃を放つよう命じていく。
     朱鷺の拳を、飛雄威の得物を両肩で受け止めたスヴェートキャビャーは、低い声音を響かせた。
    「無礼な男だ。敵に礼をわきまえよとは言わぬが、限度がある……が、まあいい。口先だけでない事を示してみろ、キャビャードーシチ!」
     言葉の終わりに、前衛陣へと降り注ぐキャビアの雨。
     耐えていく仲間たちを支えるため、勝手口の位置関係から逃すのは無理と判断し合流した天草・水面(神魔調伏・d19614)が巨大な法陣を展開する。
    「まずは全員合流を果たしてからだな!」
    「そう長い時間はかからないはずだけど、それはともかく……」
     ちょうどキャビャードーシチが止んだタイミングで前線へと突入したすずめが、回転のこぎりに紅蓮のオーラを走らせながらにじり寄る。
    「キャビアってそんなに美味しいの?」
    「無論だ。日本でも、国民的な男性アイドルが山盛りにして食べていた記憶が新しい」
    「でもさ、白米は白米だからいいんだよ! キャビア抱えてさっさとロシアに帰れっての!」
     返答を否定しながらの、一閃。
     硬質な音が響いた時、霊犬のヴァレンと共に前線へとかけてきたカリル・サイプレス(京都貴船のご当地少年・d17918)が賞賛の声を上げていく。
    「さすがご当地怪人さん、再起の作戦も戦いもばんぜんなのですね! ですが思い通りにはさせないのです。タイガーさんに追いつくのですよ!」
     言葉の終わりにヴァレンと視線を交わし、カリルは間合い一歩手前で立ち止まった。
     変わらずヴァレンが駆ける中、影を縄状に分裂させ放っていく。
    「ヴァレン!」
     手足を軽く捉えた所に、ヴァレンが斬魔刀による斬撃を。
     大きく体勢が崩れることはなく、拘束もすぐさま振りほどかれた。
     構わない、と、カリルはヴァレンを手元に引き戻す。白の装甲に埋め込まれた祭壇の起動作業を行いながら、元気に問いかけていく。
    「タイガーさんと合流する予定などあるのでしょうか? 僕らも追いかけているので、伝言があればお伝えしますですよ!」
    「……貴様等には関係のないことだ。話す必要性も感じない」
    「では、姉妹都市は北に多いのになぜ新潟なのですか!」
    「知らんな」
     回答はやはりけんもほろろ、取り付く島もない様子。
     互いに警戒し合い、牽制し合い、スヴェートキャビャーとの関係は悪化の一途を辿るまま戦いは続いていた。
     開幕から三分。漸く最後の一人、戦場として確保しておいた繁華街外れの駐車場に待機していた綾辻・刻音(ビートリッパー・d22478)が到達する。
    「ん、前半楽した分、戦闘は頑張るよ」
     幸い、今のところはまだ、両者に目に見えた差は感じられない。いくらでも優位に持って行く事ができるはずだと、彼女はスヴェートキャビャーの背後を目指し駆けて行く。
     しかし……。

     炎や呪詛、影縛などの、相手を不利に追い込むための力。スヴェートキャビャーが巨大金スプーンで舞い踊るかのように周囲をなぎ払うたび、問題のない程度まで祓われた。
     対する灼滅者側も随時治療を行いながら、スヴェートキャビャーに挑んでいた。
     結果、戦況は悪化するではなく、かと言って良化するでもなく……拮抗した状況が続いている。
     消耗は、飛雄威とヴァレン。そして、開幕から前衛を勤め続けているあんずがやや大きい。
     朱鷺も悲鳴を上げ始めた体に鞭打って、スヴェートキャビャーに殴りかかる。
    「これは脇に避けられたタレかつの恨み! 次も二枚目のタレかつの恨み! 最後に三枚目のタレかつの恨みです!!」
     一撃一撃に、たれカツの恨みを込めながら。
     倒すとの想いを込めながら!
     そんな彼女たちを水面は法陣にて支えながら、強い語調で言い放つ。
    「そもそも、新潟ならすでにいくらを使った立派な鮭茶漬けがある。キャビアが美味いのは分かるが、場所柄ってモンがあるだろ」
     そもそも、キャビアが美味いから店で出せではなく、キャビアを使ってくださいお願いします。それが、物の頼み方。その時点から間違っていると水面は憤っていた。
     また……。
    「輸出用の缶詰とかは保存の為とは言え塩味が濃すぎる。モノホンは原産国もしくは直接輸入の専門店でしか食えねーよ。日本で生産しているのは未だベステルを使った養殖品だけ。似て非なる物だ。それを知っててこんな真似してんのか?」
    「それに、キャビアなんて高級品使ったら、ファストフード店が潰れちまうって、簡単な話がわかんないものかねぇ?」
     知識を総動員しての糾弾に、秀煉もまた乗っかりながら炎の右ストレートを放っていく。
     スヴェートキャビャーは胸で受けた上で、ただ静かに言い切った。
    「全て、本物だ。俺が、責任を持って流通させる」
     水面から、そして秀煉から視線を外すと共に、再びキャビアの雨を降らしてきた。
     空より降り注ぐ黒い粒を捌ききれず、飛雄威が一時的な消滅を迎えていく。
     戦力の減少、戦況の変化に表情を変えることもなく、刻音は車輪状の得物を片手に静かな想いを巡らせる。
     正直、キャビアというものはよくわからない。
     珍しい味であって美味しいのとは違うのに、高い食べ物。そんなものよりは、目の前のごちそうの方が楽しみだと。
    「それじゃ、刻んで……いや今回は料理してあげるって言った方が良さそうかな?」
    「好きにしろ」
     返答に対し小さく頭を下げた後、刻音は車輪状の得物で斬りかかる。
     巨大金スプーンに阻まれるや身を翻し、胴体を横に切り裂いた。
     なおも退く様子を見せぬスヴェートキャビャーは、丼の頭から眩いほどの光を放っていく。
    「キャビャースヴィルカーチ……貴様らの愛する、米の光だ」
     輝きに負け、ヴァレンが小さな鳴き声を上げると共に消え去った。
     悲しげに眉を下げながらも、カリルは杖を振り上げる。
    「さすがなのですよ……でも!」
     気合と共に振り下ろし、肩を強打し爆破!
     僅かに体勢を崩れさせた所に、あんずが螺旋状の回転を加えた槍を突き出した。
    「フレンチクルーラーにしてあげる!」
     幾重にも力を重ねた刺突は、誤ることなくスヴェートキャビャーの脇腹を貫きえぐる。
     呻き声を上げることもなく、スヴェートキャビャーは槍を掴んだ。
    「っ!」
    「逃がさん、キャビャー演武」
     演武と共に振り回される巨大スプーンが、あんずの後頭部を強打する。
     限界値を超えたのだろう。突き刺したままの槍から手を離し、あんずはその場に昏倒した。

    ●真の新潟ご当地へ
     サーヴァントを、あんずさえも叩き伏せたスヴェートキャビャー。
     されど、少しずつでも削っていくことができているはずと、秀煉は乱れそうになる呼吸を何とか引き戻しながら篭手に炎を走らせていく。
    「そろそろ辛ぇだろう? 安心しな、俺が燃やして料理してやるからよぉ!」
    「っ!」
     右ストレートは巨大金スプーンに阻まれるも、炎を伝わせ炎上させることに成功した。
     反撃とばかりに演武が描かれるも、これ以上は倒れさせぬと水面の法陣が前衛陣を包み込む。
    「スヴェートキャビャーも辛いはずだ! 最後まで諦めずに攻め続けてくれ!」
    「消されてはいるけど、それでも、少しずつ蓄積してるはずだしなぁ!」
     頷くアキ乃が槍を振るい、スヴェートキャビャーを斜めに切り裂いた。
     一歩退いたと見るや猛追し、更に一斬、すれ違いざまに刻んでいく。
    「く……」
     今こそが攻める好機だと、体中から血を流すすずめが拳に光を宿して跳躍した。
    「ここが決め所、一気に行くんだよ!」
    「そこです!」
     飛びかかったすずめが拳を連打する傍ら、朱鷺は晴香な上空へと飛び上がる。
    「佐渡朱鷺急降下キック!」
     大自然を悠々と飛ぶ時が上空から獲物に向かって舞い降りるように、遥かな空から急角度のキックを胸元へと突き刺した。
    「そして……」
    「ぐぁ……」
     膝を曲げて背後へと転がり込む。
     すぐさま身を起こし、背中から腰元を掴みとった。
    「佐渡金山ダイナミック!」
     枯れたとはいえ、未だに金山の痕跡を残す佐渡島の雄大な山並みを彷彿と刺させる、力強いバックドロップ。
     硬質な音が響くとともに、丼頭が砕け散った。
     スヴェートキャビャーは倒れた後、ふらつきながらも立ち上がる。
    「私の負けか……だが、キャビアの火も、ロシアの火も消えることはない。ロシアンタイガー様に、栄光あれ!!」
     言葉の終わりに倒れ込み、激突と共に爆散。
     後には何も残さずに、この世界から消え去った。
     やがて風にさらわれ見えなくなるだろう煙を眺め、刻音はひとりごちていく。
    「貴方の音、聞こえなくなっちゃった、ね」
     それは、この地に平和が取り戻された確かな証。
     耳をすませばほら、聞こえてくる。忙しなく営業を再開していく牛丼屋の喧騒が……。

     あんずを助け起こし、命に別状はなく、しばらく休めば回復する。
     ばらまかれたキャビアも消え、周囲に被害はない状況。
     安堵の息を吐きだして、カリルが牛丼屋へと向き直った。
    「無事終わってよかったのですよー。それはそれとして、キャビアより普通のご当地ご飯が食べたいのですよー」
     他のものも、何かを食べていくことに異論はないらしい。
     あるものは迷惑をかける形となった牛丼屋に、あるものはたれカツを出している店へと移動して、それぞれの時を過ごしていく。
     正しい新潟の丼飯。それこそが、ご当地の正しい楽しみ方なのだろう。

    作者:飛翔優 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年6月3日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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