学園祭クラブ企画 結果発表!

    天野川・カノン
    ●仁左衛門と出かけるよ!
     辛い物を食べて、一息ついた後。
     天野川・カノン(中学生エクスブレイン・dn0180)は、投票結果を手にした。
    「おお、なるほど!! 今回はそこが入賞したんだね」
     結果を手にして、カノンは仁左衛門に乗って、また学園祭の喫茶店の連なるエリアへと向かう。
    「さて、早くみんなに知らせないと、だね!」
     いつになく、弾んだ表情で。
    「みんな、喜んでくれるかな?」
     にっこりと微笑んだ。

    ●3位は、股旅館のおとぎの国のまたたび館だよ! おとぎの国へようこそ!
     ここは、股旅館の運営する喫茶店、おとぎの国のまたたび館だ。
     たどり着いたカノンは仁左衛門から降りて、そっと中を覗く。
     そこは異世界になっていた!!

     一つは、おとぎ話をモチーフにしたフードが食べられる喫茶エリア。
    「はーいっ!! えーっと『オオカミと七匹の仔山羊シチュー』と『ここほれワンワン』入りましたーっ!」
     店員の烏丸・奏(華麗なるラプンツェル・d01500)が、佐藤・晃平(昼行灯・d07571)
    の注文を読み上げる。
     ちなみにオオカミと七匹の仔山羊シチューとは、パイ生地で蓋をしたシチューで、裂けば石のようにごろごろ野菜が沢山入っているものだ。それと、ここほれワンワンとは、塩釜焼きで、中身は空けてからのお楽しみ、である。
    「晃平のお連れ様は……魚だね。鯛かな。おめでと、良かったね。塩で包んであるけど、しょっぱくなく、でもほどよい塩味が絶品だそうだよ」
     どうやら、晃平の注文したここほれワンワンは、篠崎・壱(非定型ステップ・d20895)に渡されたようだ。
    「良かった、お魚だわ! ……たいへん……」
     壱は思わず、隣で巨大デコレーションプリンこと、大きなカブと格闘している遠野森・信彦(蒼狼・d18583)と目があった。
    「はっはっはっは、プリンがいっぱいだーすごーい……」
     それを見ていたカノンは。
    「可愛い感じかと思ったんだけど……そこは武蔵坂クオリティ?」
     そっと喫茶エリアから目を移した。

     そう、この喫茶店には、もう一つのエリアが設けられている。
     その名もコスプレ!!
     童話にちなんだ衣装はもちろんの事。
    「こんなのもあるんだ、へえー」
     真っ赤なチャイナ服に、純白のウェディングドレスまで揃っている。
     と、更衣室から、げへへという笑い声が響いてきた。
    「も、もしかして、あそこに部長さんがいるのかな?」
     戸惑い気味にカノンはそっちの方へと近づいていく。
     突然、更衣室の扉が開き、そこに現れたのは。
    「はあ、はあ、……獅之宮はキャラ変わってないか!?」
    「何というか、姉御って雰囲気のスタイリッシュさで格好よいな!」
     無理やりドレスを着せられた夜鷹・治胡(カオティックフレア・d02486)と、蒼いチャイナ服を着たエウロペア・プロシヨン(舞踏天球儀・d04163)であった。
    「げへへ、気のせいだぞ、げへへ! 良いよー美人だよ!!! 元が良いからドレスめっちゃはえるー!!!!!」
     そういって、嬉しそうに治胡の髪をブラシで梳いているのは、部長の獅之宮・くるり(長靴をはいたネコ・d00583)だった。
    「あ、あのー」
    「ん? カノンじゃないか! カノンもドレス着ていくかー!?」
    「いえいえ!! 今回はこれを伝えに来ました!!」
     きらーんと目が光ったくるりに、カノンはばんと紙を渡す。
    「喫茶巡り3位、おめでとうございますっ!!」
     紙を受け取り、きょとんとしていたくるりだったが。
    「おおおおっ!! いやったーーー!! 治胡をドレスにした甲斐があった!!」
     それは違うんじゃとカノンは突っ込みたかったが、喜んでいるのなら、いいだろう。
     騒ぎに紛れて、任務を終えたカノンはそっと、その場を後にしたのであった。

    ●2位は、撫桐組事務所の任侠喫茶『シャバの空気』だよ! シャバの空気は美味しいね!
     ここでは、一風変わったドリンクが置かれている。
     義理と人情秤に掛けたベジタブルジュースや、あの日交わした五分盃のレモンスカッシュなどなど。
    「任侠気分を味わえるんだよね!」
     かくゆうカノンも、組員に扮した学生達に姉御と呼ばれ、熱烈なおもてなしを受けたりしていた。そんな様子を思い出していると。
    「いやぁ、賑やかな所であるなぁ!」
    「こちらでしょうか? 改めてたのもーーー。識守さんと燈さんと一緒に遊びに参りましたの」
     草木院・栄斎(サンドイッチマンなハゲ・d25468)に識守・理央(メイガスブラッド・d04029)と廿楽・燈(花謡の旋律・d08173)とで入ってきた船辻・佐奈子(大和撫子のたまご・d01347)が席に座って行く。
    「みなさんお勤めご苦労様です! ご注文がまだの方はガンガン出してくだせえ! シャバの空気一同誠心誠意おもてなしさせていただきやす!」
     灰色・ウサギ(グレイバック・d20519)がばたばたと何やら、パスタとソーセージらしきものを持ってやってきた。
    「違うんだ組長、あっしは本当に何もしらねえ! 姐さんを殺ったのが誰かなんてわかんねえんだよお! 許してくれよお! 畜生! 畜生ーッ!!」
     そう言ってウサギは、ずばーーんとケチャップ入りのソーセージを包丁で割った。とたんに飛び出す赤いケチャップがパスタに、ばばっとかかる。
    「以上、極道の妻殺しを疑われた若頭風でお送りしました!! ケジメパスタ一丁!」
     そう、パフォーマンス込みでのケジメパスタが、この喫茶店でのおすすめメニューだ。
     こんな風に、普段味わえない体験ができるのも、学園祭ならではというところだろう。
    「……あれ? 映画もやってたんだ」
     カノンが訪れた時にはなかった、観客席が残されている。
     どうやら、ここで任侠映画が放映された様子。
     喫茶だけではない、楽しみを入れるところが人気の秘訣かもしれない。

    「こんにちはー、また来たよー」
    「おや、姉御! またお勤め終わらせてきたんですかい?」
     出迎えるのは、撫桐組事務所の部長、撫桐・娑婆蔵(鷹の目・d10859)だ。
     黒い任侠風な着物を着て、接待にいそしんでいる。
    「うん、今日は伝えることがあってきたんだよ。娑婆蔵さん、喫茶巡り2位、獲得おめでとう!」
    「え? ええ!? あ、姉御、それは……本気(マジ)ですかい!?」
     驚く娑婆蔵に、カノンは嬉しそうに、力強く頷いて見せたのだった。

    ●審査員特別賞は、蝉時雨の蝉時雨喫茶だよ! ハイ&ロー!!
     ここは、ちょっと変わった喫茶店だ。
     ダイスを振り、その目で注文が決まるという。
     そのような喫茶店は他にも、数多く存在していたが、ここの特筆すべき点は……時間限定で当たっても外れてもちょっとアレなメニューが出てくるというところだろうか。
    「それに、店員さんとダイス目を競うっていうのも、楽しかったんだよ」
     ちなみにカノンは、ここで刺激的な唐辛子ケーキを引き当てて、かなり辛い思いをしたのはここだけの秘密。

    「こんちはー。今日の運試しに来てみたぜ。……うーんと……『ハイ』でいく!」
    「いらっしゃいませー。ではでは勝負なのです!」
     加美・さやか(鞘牙と呼ばれし者・d28333)が、店員の灰音・メル(悪食カタルシス・d00089)と勝負して……。
    「おっし! 俺の勝ち!」
     ぎりぎり、さやかの勝利。
    「僅差で負けたぁ! んでは『特大のチーズケーキ』になります」
     残念そうな表情で、メルは特大のチーズケーキをどんと、さやかのテーブルに乗せる。
    「全然手伝えなくてすみません、顔出しと勝負だけでもと思って来ました。『ロー』でお願いします」
     今度は、若宮・想希(希望を想う・d01722)と。
    「想希君、いらっしゃいませ。では私と勝負と参りましょうか」
     トランド・オルフェム(闇の従者・d07762)が勝負して……。
    「お品は……『とろとろのフルーツパフェ』ですね」
     トランドがメニューを確認しながら持ってきたのは、得体のしれないソースのかかったパフェ。そう、想希は残念ながら負けてしまったのだ。
    「ああ、うん……俺、今年の学園祭今のところハイロー勝負は全て負けてるんですよね……このソース何から出来てるのかなぁ……」
     ちょっと遠い目をしている様子。

     そんな中、カノンは、裏方で仕事している村雨・嘉市(村時雨・d03146)に声を掛けた。
    「こんにちはー、嘉市さん」
    「あれ、カノン? また来てくれたのか?」
     手を休めて、嘉市はカノンの方へとやってくる。
    「うん、でも今日は伝えたいことがあってきたんだ。わたしね、この喫茶店を審査員特別賞にすることに決めました!」
    「俺の店を? いいのか?」
    「だって、楽しかったからね! ちょっとあのケーキは辛かったけど」
     そういうカノンに嘉市は。
    「それなら甘いのも食ってくか? 皆には内緒で」
     その一言でカノンは嬉しそうに瞳を輝かせて。
    「いいの? ありがとうっ!!」
     ありがたく、甘いものをいただくのであった。

    ●1位は地下秘密クラブ「夢兎眠」の水喫茶『むーみん』だよ! わあ、プールだ!!
     甘いものを貰って、ご満悦なカノン。
     足取りも軽いものだ。
     次に彼女が訪れたのは、きゃっきゃと楽しげな声が聞こえる喫茶店。
    「こんにちはー。また来ちゃった」
     笑顔で声をかければ、受付係の 笙野・響(青闇薄刃・d05985)がいち早く駆け寄ってくる。
    「いらっしゃいませ。また来てくれたんですね、カノン様。今回はどちらへ?」
     そう、この喫茶店には、3つのスペースが設けられている。
     1つはカフェスペース。その喫茶店を一望できる静かな席だ。
    「お待たせ致しました……シェス猫のトロピカルドリンクになります」
     黄色と黄緑のグラデーションが鮮やかな甘酸っぱいジュースをテーブルに置くのは、高宮・綾乃(運命に翻弄されし者・d09030)。
    「ども、いただきまーす……あっちの企画も賑やかそうだね」
     少しずつ、もう一つの方のエリアを見ながら、そう話すのは一之瀬・梓(始まりの空へ・d02222)だ。
    「ええ、少人数がいい場合はこちら、大人数がいい場合はあちらになるかと……そういえば、自クラブの企画との事でしたが…そちらの手応えはいかがでした?」
    「そっちかぁ…うん、そっちも企画自体は喫茶店でな。お客さんもいてそこそこ盛り上がってたんだけど……俺は……こーいう衣装で……………立ち上がっては倒されてた」
     梓は、綾乃に携帯電話で撮った写真を見せながら、そう話をしている。
     そう、このカフェスペースは1対1対応の喫茶店なのだ。その分、細やかなサービスが出来ている様子。

     他にも、受付の必要がない自由な空間『おんぬば!』は、日夜、騒がしい声が絶えない。
    「ダチがいるなら一度は顔ぁ出さねぇとなぁ! っしゃぁ、せっかくの祭りだ、騒ぎ倒そうぜ!!」
    「なんだここは!!! さわがしーな!!! 私も混ぜるんだぞー!!!」
    「おんぬぬぬぬぬっ!!」
     鋼丈寺・半蔵(押して駄目なら打ち壊す・d04250)や、八之字・龍虎(トラ猫格闘家・d26949)、キャロル・コリンダ(てきとー天使てげりおん・d23958)らが騒がしくしている中。「うむ、うむ。祭りとは真、楽しき物よ。これから出し物に勤しむ者も、頑張るが良い、カッカッカ!」
     楽しげに烏丸・才蔵(気紛れに生かされた者・d23469)が檄を飛ばす。
     このように、いろんな者達が集まって、わいわい騒いでいる場所なのだ。

     そして、最後にもう一つ。この喫茶店が、なぜ水喫茶と呼ばれているかというと……。
    「うおー! すっげー! 地下なのに、こんなでっけープールがあるなんて!!」
    「案内ありがとう、本格的なプールね。あまり泳ぎには自信ないんだけど楽しませてもらうわ」
     去年の海水パンツをはいてきょろきょろする真月・誠(道産子くせっ毛ガキ大将・d04004)と、蒼崎・鶫(星屑の軌道・d03901)の二人。
    「おふたりさまでデートかの? こちらは飲食も可能となっておりますじゃ。メニューはこちらに置いて起きますで、ご利用くださいじゃ。……なん? どうかなされましたかの?」
     監視員の風祭・千里(最後の忍道・d02945)が声をかける。驚いて、鶫は千里の後ろに隠れた。どうやら、二人はデートという訳ではないらしい。
    「……って、で、デートなんかじゃねぇよ! つか、おめーは何やってんだよ」
    「べ、別に気にしないで、ココがちょっと居心地いいだけだから」
     そんな二人を生暖かく見守る千里の側で、エシール・ハルメルト(小学生エクソシスト・d20229)はうとうとしながら、浮き輪に捕まって流れている。
    「……ん?」
     くすくすとカノンは微笑みながら、響に案内されつつ、部長の七里・奈々(ある意味はずれの女子大生・d00267)の方へと向かった。
    「あら、カノンちゃん! また来てくれたの?」
    「うん、今度は良い知らせをしに来たんだよ」
     そういうカノンに、奈々はもしかして……と言葉を濁す。
    「おめでとう! 喫茶巡りの1位は、水喫茶『むーみん』になったよ!」
    「あ、ありがとう、カノンちゃんっ!!」
     ちょっぴり涙をにじませながら、奈々は嬉しそうに微笑む。
    「これは、あとで皆とお祝いしないといけないわね」
    「めいっぱいお祝いしちゃって! 本当におめでとう! 奈々さん」
     カノンに祝福されながらも、奈々は急いで、皆の方へと向かって行く。それをカノンは見送った。

    「今日も楽しい学園祭だったね。次はどんな企画に出会えるのかな?」
     もうすぐ夕焼け。そろそろ学園祭が終わる頃だ。
     仁左衛門に乗ったカノンも次の場所へと移動していく。
     学園のみんなともっともっと楽しむために。