サイキックアブソーバー強奪作戦 ファーストアタック

    絞首卿ボスコウVS津島・陽太
    ●爵位級侵攻
    『少々、手間を甘く見ていたな。避難の規模は想定より抑える必要がありそうだ』
    「では、準備してあるハザードマップに従う方向でいきましょう。主要な交通路と、学園周辺は避ける形で……」
     しばし2B桃の不動峰・明 (大一大万大吉・d11607)と状況の確認の電話を行い、通話を打ち切ったアリス・バークリー (ホワイトウィッシュ・d00814)は息をついた。

     灼滅者達は武蔵坂学園大学主導での避難訓練という名目を押そうとしていたのだが、事前に告知する時間が無かったこともあり、それに唯々諾々と従う者は皆無だった。
     市内には入院患者を多く抱える病院もあり、移動させるべきかどうかの判断も難しい。
     それ以上に問題となったのは、止めようにも外部からどんどん人が流入して来てしまう吉祥寺駅や三鷹駅、武蔵境駅、幹線道路周辺だ。
     表向きの理由にこだわっていてはもう間に合わないことが行動を開始して早々に発覚したため、『ラブフェロモン』や『殺界形成』連打でのゴリ押しによって避難は進められていた。
     灼滅者達は大型車を運転できる教師達の運転するバスに人々を誘導し、避難所として定めた市内の他大学等へ送り届けている。
     だが、強引であっても人命保護のためには避難が必要であったことを、灼滅者達はすぐに知った。
     一般人の避難と敵への警戒を兼ねて市内に散っていた2つの組連合の灼滅者達から、次々と連絡が入ったのだ。

    『日輪です。殺竜卿ヴラド配下の竜騎兵団が井之頭通りを高速で進軍中! 車が次々と破壊されて……無茶苦茶ですよ、あれ!』
    『こちら明鶴、吉祥寺駅にボスコウ軍の侵攻を確認。略奪と破壊活動を行いつつ武蔵坂学園に向かっている。一般人を避難所に送った後、学園に撤退する』
    『こちら飛行偵察班の海川。タトゥーバットの大群が学園に向かっています。その後方には小屋を確認。飛行偵察班、行動継続は困難。後退します』

     世界は、ダークネスに支配されている。
     ダークネスが望んだ時、力なき人々に抗う術は無い。
    「バベルの鎖で情報は広まらないとはいえ、こうもあからさまに攻撃を仕掛けて来るか……!」
     周囲の仲間達との連絡を取り合い、一般人避難を行っていた灼滅者達は学園への後退を開始する。

    ●学園内戦闘開戦!
     侵攻を開始した3人の爵位級ヴァンパイアの軍勢は、あたかも獲物に巻き付く三匹の竜の如く、武蔵坂学園周辺を包囲していった。
     上空から降下して来る眷属達に光景を見ながら、ラブリンスターとの連絡を取りつけていた9I薔薇の津島・陽太 (ダイヤの原石・d20788)が指先を振り上げる。
    「頼みますねラブリンスター……それじゃ、こっちも始めましょう!」

     指先を足元に突きつけると共に、力強く宣言する。

    「キリング・リヴァイヴァー!!」

     宣言する声と共に、武蔵坂学園の上空から光の柱が降り注いだ。
     ラグナロクが体内に秘めた膨大なサイキックエナジーを吸収した時、サイキックアブソーバーに装填される武蔵坂学園の切り札、「殲術再生弾(キリングリヴァイヴァー)」。
     その発動と共に、武蔵坂学園へ侵攻した灼滅者達の反撃は開始された。

     学園の北側を封鎖しつつあった殺竜卿ヴラドが、配下達に指示を出す。
    「あれが武蔵坂学園の切り札か。各部隊長に警戒を強めるよう伝えよ」
     ヴラドの意を受け、伝令が走っていく。

     だが、最初に戦いが始まったのはヴラドが布陣した学園の北側ではなく、学園南側だ。
     最初の戦場となったのは学園の南側グラウンド。8I百合の灼滅者達を目撃し、攻撃を仕掛けようと降下した『鶏の足を持つ小屋』の群れが、着陸と同時に落とし穴にはまりこむ。
    「よし誘導班撤退ー!」
     サイキックでない以上、眷属も帯びるバベルの鎖によってダメージはゼロとなるが、バランスが崩れたところへ灼滅者達の攻撃が集中する。小屋から現れたバーバ・ヤーガ軍のヴァンパイア達の反撃を受け、学園内部へと後退していく。

     コンテナの側面に描かれたイラストは、このトラックがラブリンスタープロダクションのゲリラライブ用トラックであることを示している。
     開いたコンテナの上で、ラブリンスターがマイクを手に笑顔を見せる。
    「皆さん、こんにちはー! ラブリンスターです!! 今日はラブリンプロダクションのみんなで、武蔵坂学園の皆さんのために、突撃ライブを開催しちゃいまーす!!」
     ラブリンスターがポーズを決めると共に、淫魔の集団が絞首卿ボスコウ配下の奴隷たちへの攻撃を開始したのだ。

    ●魔女達の狙い
     一方、ヴァンパイア魔女団に攻撃を仕掛けた6F菊連合の灼滅者達は、奇妙な光景を目撃していた。
    「何でしょう、この模様は?」
     校舎内に赤々と描かれた紋様は、何らかの大規模なサイキックを仕掛けるためのものなのだろう。
    「サイキックアブソーバーを強奪する手段、だそうよ?」
     声と共に、巨大な鋏が灼滅者達を斬り裂いた。
    「──ッ!? 六六六人衆!?」
     華宮・紅緋 (クリムゾンハートビート・d01389)が斬り裂かれた腕を押さえ、現れた敵からの距離を取る。
    「なんで六六六人衆が……」
     六六六人衆五一二位『大鋏姫』チェネレントラ・フラーヴィ。
     彼女は灰色にくすんだワンピースをひらめかせ、夢を中を揺蕩うような足取りで灼滅者へと大鋏を振るう。
    「全く、余計なところにまで顔を出す……!」
    「王子様を探さなくてはならないの。だから、邪魔しないでね?」
     この狂気じみた六六六人衆が、どのようにバーバ・ヤーガに自らを売り込んだのかは分からないが、とにかく敵軍に加わっていることは間違いない。それよりも、重要なのは先程口にしていた内容だ。
    (「サイキックアブソーバーをどのように運び出すのかと思っていましたが……」)
     短時間で解体して運び出す手段については6F菊連合の灼滅者達にとっても謎だったが、どうやら稼働状態のままで運び出すつもりのようだ。
     と、何かに興味を引かれたのか、チェネレントラはふらふらと校舎を灼滅者達とは逆の側へと去っていく。
     拍子抜けしつつも、6F菊連合の灼滅者達は攻撃を再開した。

    ●絞首卿の力
    「ちょっーと厳しいですねー。灼滅者さん達、なるべく早くお願いしますね?」
     ヴァンパイア達の攻撃を凌ぐラブリンスターの頬を汗が伝う。
     9I薔薇連合の灼滅者達は、敷地の南側で繰り広げられる戦闘を目の当たりにしていた。
     淫魔ラブリンスターの率いるラブリンプロダクションの淫魔達と絞首卿ボスコウの軍勢、劣勢に陥っているのは淫魔ラブリンスターの側だ。
     奴隷級ヴァンパイアを中心とした軍勢は、淫魔を相手に確実な優勢を維持している。
    「愚かな淫魔達だ。私の陣地に踏み入った罪は死をもって贖うが良いだろう」
     ボスコウは攻め寄せる淫魔達を一瞥すると、指を打ち鳴らした。
    「絞首刑に処す」
     その瞬間、ある淫魔は不意に見えない縄に首を絞めつけられて絶叫をあげんともがき、また別の淫魔は首に巻き付いた首輪によって頭部と胴とを泣き別れさせられる。
    「淫魔ラブリンスターとやらも、サイキックアブソーバー下ではなかなかの強者であったようだがな。爵位級ヴァンパイアたる、この絞首卿ボスコウ邪魔をしようというのが間違いなのだよ」
     余裕の笑みを浮かべたボスコウは、不意に奴隷の一人に命じた。
    「貴様、一歩前に出ろ」
    「はい、ボスコウ様、喜んで!」
     一歩前に出た親衛隊の頭部を、飛来した魔法の弾丸が貫いた。ボスコウに降りかかろうとした血の飛沫を、ボスコウを庇うように現れた大蝙蝠が受け止める。
    「ボスコウへの攻撃は不発です! 攻撃開始!!」
     陽太の声と共に、9I薔薇連合による校舎からの攻撃がボスコウの陣地へと降り注いでいく。
     狼狽える奴隷達に、ボスコウは苛立たしげに言葉を投げた。
    「灼滅者どもが、賢しげに奇襲のつもりか……! 奴らは我が家令どもに任せ、淫魔どもへの攻撃を優先しろ。灼滅者程度に殺される者など、私の奴隷として相応しくなかったということだ!」
     ボスコウの言葉を恐れるように、統率を取り戻した奴隷達は淫魔との戦闘を再開していた。
    『そちらに親衛隊が行きました! 撤退して下さい!』
     9I薔薇の灼滅者達の元にも3C桜のフローレンツィア・アステローペ (紅月の魔・d07153)からの連絡が入り、彼らは速やかに攻撃を中断すると撤退していく。

     奇襲を仕掛けた灼滅者達が退くと、ボスコウは配下達に告げた。
    「私の命令を受け、私に奉仕し、私に従うことのできる幸運に歓喜しろ、奴隷達。
     世界を支配する貴人の一員たる私に従ってこそ、貴様らは生の意味と幸福を得られるのだ」
     ボスコウの顔には余裕があった。
     サイキックアブソーバーの力が働いている今、活動できる時間を得た爵位級ヴァンパイアである自分こそが、今現在活動しているダークネス中でも世界最強の存在であることを疑っていない。
     その確信が、ボスコウの顔に余裕を刻ませている。
    「今はラブリンスターを優先しろ。奴を倒し、私の新たな奴隷としてくれよう」

    ●戦果報告
     奇襲攻撃を仕掛けた組連合は六つ。
     その戦果報告は次々に寄せられていた。最も多くの敵を撃破したのは、『(3)朱雀門高校女子学生部隊』への攻撃を仕掛けた7G蘭連合だ。それに『(9)奴隷級ヴァンパイア団』を攻撃した1A梅連合が続く。
    「敵の強さが如実に現れているわね」
    「朱雀門部隊の力は、奴隷級ヴァンパイア団と大体同等でしょうか。殲術再生弾の力もあれば、そこまで苦戦はせずに制圧できそうに思えます」
     戦果報告を眺めながら、百枝・菊里 (アーケインワーズ・d04586)、フルール・ドゥリス (解語の花・d06006)が呟いた。

    (↑強め)
    (13)絞首卿ボスコウ
    (8)ボスコウ親衛奴隷軍
    (5)ヴァンパイア魔女団  (12)鶏足長屋
    (3)朱雀門高校女子生徒部隊  (9)奴隷級ヴァンパイア団
    (↓弱め)

    「基本的には、爵位級ヴァンパイアに近付くほど強いようですわね」
    「まあ、当然予想されてしかるべき範囲かな」
    「『(12)鶏足長屋』の敵軍勢は眷属主体だけど、ヴァンパイアもかなりの割合がいるよ。油断しない方がいいね」
     安藤・小夏 (片皿天秤・d16456)が傷を治療しつつ言う。
     4D椿が学園内部の各所にとにかく豊富な数を準備した救護施設は有効に機能していた。
     敵が分散しているとはいえ、逆に言えばこちらも戦力分散を強いられる状態でもある。
     多くの場所に救護施設を用意したのは正解だっただろう。
     遠藤・彩花 (純情可憐な風紀委員・d00221)は、陽太に顔を向けた。
    「そういえば絞首卿ボスコウのデータは取れた?」
    「あー、見ます?」
     9I薔薇がラブリンスター配下達などとの交戦状況から集めたボスコウの能力が示されると、集まっていた者達の顔が一瞬引きつった。
    「確認されたのは念動力で敵集団の頸部をまとめて締め付け続ける攻撃に、首輪で生命力を奪い尽くす攻撃。予測される能力は……巨大化ゲルマンシャークより上!?」
    「流石に爵位級ですね」
    「灼滅することができるんでしょうか……?」
     灼滅者達は、かつての戦いでご当地怪人ゲルマンシャークを灼滅することに成功している。
     だが、それ以降も力を増している武蔵坂学園の灼滅者達は、いまだに自分達の限界を知らない。

     だが、為さねばならないことは明白だ。
     爵位級ヴァンパイアの活動限界まで耐えきる、あるいは爵位級ヴァンパイアを撃破すること。
     爵位級ヴァンパイアによる『サイキックアブソーバー強奪作戦』を阻止し、武蔵坂学園最大の危機を乗り越えるのだ!


    組連合 ファースト
    アタック
    ファーストアタック結果
    1A梅 (9)奇襲 (9)奴隷級ヴァンパイア団の敵戦力が380減少!
    敵の中には品性の無さから奴隷に貶められた者もいるようです。
    2B桃 一般人救出 全てのターン、重傷からの復活率が10%上昇(2B桃、5E蓮合計)!
    武蔵野市内東側と学園周辺の避難活動を行いました。
    灼滅者を応援する人々の声が聞こえます……!
    3C桜 (8)奇襲攻撃 (8)ボスコウ親衛奴隷軍の敵戦力が180減少!
    敵の総数が少ないですが、実力は低くありません。
    4D椿 救護準備 全ての戦場で、KO時の重傷/死亡率が6%減少!
    5E蓮 一般人救出 全てのターン、重傷からの復活率が10%上昇(2B桃、5E蓮合計)!
    武蔵野市内西側の避難活動を行いました。
    灼滅者を応援する人々の声が聞こえます……!
    6F菊 (5)奇襲 (5)ヴァンパイア魔女団の敵戦力が230減少!
    サイキックアブソーバーの奪取は、物理的手段だけでなくバーバ・ヤーガによる魔術も影響しているようです。雇われたと思しき六六六人衆『大鋏姫』チェネレントラ・フラーヴィの姿を確認しました。
    7G蘭 (3)奇襲 (3)朱雀門高校女子学生部隊の敵戦力が340減少!
    朱雀門高校の部隊はデモノイドがかなりの割合を占めている模様。
    8H百合 (12)奇襲 (12)鶏足長屋 の敵戦力が210減少!
    サイキックを用いないトラップの設置には時間を要しましたが、敵への影響は皆無だったようです。
    9I薔薇 (13)奇襲 (13)絞首卿ボスコウの敵戦力が150減少!
    絞首卿ボスコウの能力を確認しました。

    ●今回のテンションアップ

    「テンションアップ」を選択する組連合が無かったため、残り敵戦力が少ない戦場であっても、スルーすることはできません。

    ●今回の撤退条件

    「撤退条件」を選択する組連合が無かったため、撤退は行われません。