武神大戦獄魔覇獄 ファーストアタック

    泉明寺・綾VSアガメムノン

    ●獄魔覇獄、開戦

     20年の春頃から始まった『武神大戦』は、全国各地で行われた『天覧儀』経て神奈川県横須賀市で『獄魔覇獄』の決戦を迎えようとしている。
     横須賀中央駅周辺では、今回の戦いで救護準備を担当する【4D椿】連合の者達が拠点の設営を行っていた。
     場所が鉄道の駅ということもあり、物資の搬入等も比較的容易であり、拠点の設営自体は滞りなく進められていた。
    「問題は、戦況がどう動くかだな」
     救護拠点の確認を進めながら、敷島・雷歌 (炎熱の護剣・d04073)はそう呟く。
     先の前哨戦でも斬新コーポレーションが見せたように、敵となる獄魔大将の軍勢は、市内各所を戦いながら動いていくことになるだろう。
     最悪、この駅が陥落しないにせよ、攻められる可能性は考えられる。
     横須賀中央駅から主要道路周辺を一旦は制圧した石見・鈴莉 (偽陽の炎・d18988)をはじめとする【3C桜】の者達は、公園などを一般人の避難場所として定め、各種のESPを利用して活動を開始している。
     だが彼女達にしてみても、それらの場所がいつ戦闘に巻き込まれるかは分かったものではなかった。
     主要道路の制圧時には市内の監視を行っていたとみられる斬新コーポレーションの強化一般人やカンナビス配下のアンデッドも目撃されている。
    「そういえば、ブエルも一般人をブエル兵化できるんだっけ」
     鈴莉は前哨戦でも確認されている敵の行動を思い出す。
     『模倣体』を操るとされるブエル、カンナビス配下のアンデッドなどもおり、この2勢力に対しては注意が必要であろうと推測されていた。
     メインストリートとして指定した者の全てに戦力を配置するなど不可能である以上、警戒は厳にする必要がありそうだ。

     【8H百合】が定めた『撤退条件』も多様な敗北の可能性を並べており、戦況が大きく動く可能性を示していた。
     いかなる形であれ、武神大戦獄魔覇獄自体は殲術再生弾の効果時間中には確実に決着がつくと予測されている。
     だが、その後にも何かが起こることは確定的だ。
     武神大戦自体を企図した業大老の存在を考えれば、あまり喜ばしい事態は起きそうになかった。
     灼滅者達は、そうした事態に撤退も視野に入れる形で動いていたが、それは撤退すれば大きな被害を伴うような事態となった際、撤退を望む者と戦闘を継続する者とで動きが分かれる危険を孕んでいたかもしれない。
    「この人達に、避難生活を送らせるような事態にならなければ良いのですが……」
     仙道・司 (オウルバロン・d00813)は駅舎に避難して来る市民を案内しながら、そう思考する。

    ●アガメムノン

     【1A梅】、【2B桃】、【6F菊】、【9I薔薇】連合の四連合は、異形の軍勢をその視野に収めていた。
     横須賀市内にその数を増しつつある悪夢めいたシャドウ達の先陣を切って進む金色の巨人こそが、シャドウの獄魔大将、大将軍アガメムノンだ。
     シャドウ達は、その数を次第に増しつつあった。
     敵は開戦を前に、横須賀市民のソウルボード内から現実に進出しつつあるのだ。
    「どうやら、横須賀市民のソウルボード内に拠点を設けていたようだな」
     不動峰・明 (大一大万大吉・d11607)は住宅街から湧き出て来るシャドウ達を見下ろした。
     相手は本来、ソウルボード内に引っ込んでいるシャドウ達だ。
     サイキックアブソーバーの存在によって、現実世界での活動を極端に制限されているシャドウが大手を振って活動している背景には、アガメムノンの獄魔大将化があるのだろう。
    「元より大勢力の一員だったアガメムノンには、自軍を参戦させるための力が与えられたということっすかね」
     事件として報告され、灼滅者達が灼滅した数を大きく上回るシャドウが、ギィ・ラフィット (カラブラン・d01039)の眼下には集っていた。ダイヤのシャドウによる現実進出事件は、獄魔大将の力を試すための実験でもあったのだろう。
     他の勢力の中にはクロキバのように無尽蔵に眷属を発生させる能力を与えられている者すらいる。戦力を整えるための底上げなのだろうが、それを考えるとアガメムノンに与えられた能力は、まだ小さい方と言えなくもない。
    「かといって、あいつらが弱いとはいえへんけどな……」
     泉明寺・綾 (不死の翼は風に暴遊ぶ・d17420)は釘バットを素振りしながらそう呟く。
     放っておけば、出撃すべき全シャドウを現実に出現させた後、進撃を開始すると思われた。
    「あとは、コルネリウス勢力が上手いこと動いてくれることを願うばかりやな」
     アガメムノンの主である『歓喜のデスギガス』と同じく、強大な力を秘めた四大シャドウ『慈愛のコルネリウス』は、デスギガスと敵対している。
     彼女の申し出によれば、こちらの奇襲攻撃に合わせ、慈愛のコルネリウス』勢力はソウルボード側で奇襲を仕掛けてくれるはずであった。
     獄魔大将ブレイブを含めた数人の灼滅者達は、前哨戦の際に横須賀市民のソウルボードでコルネリウス勢力と思われるシャドウの援護を受けており、口約束とはいえ申し出は守るであろうと思われている。
    「何か連絡とる手でもあればなぁ」
     タイミングに関しては慈愛のコルネリウスを信じるしかない状況ではあった。
     これまで、灼滅者達が最も敵対の意志をぶつけているであろうシャドウを信じるというのは奇妙な話ではあるが……。
     と、綾は自分が『選ばれた』ことを感じ、【7G蘭】で何やら決めていた内容を思い出して首を傾げた。
    「獄魔大将さんやないんか? ま、やるしかないか!」
     綾は指先を地面に突きつけると共に、力強く宣言する。

    「キリング・リヴァイヴァー!!」

     横須賀市の空を裂いて、光の柱が降り注ぐ。
     武蔵坂学園の切り札、殲術再生弾の発動であった。
    「色々な思惑はあれども、皆あっての学園の強さ。今までの依頼の結果、相談があっての今。ただ前を向いて進むのみ!ラグナロクの少女を救うでござるよ!」
     光の柱が落ちるのを見たのであろう、獄魔大将ブレイブからの通信が各灼滅者達の耳に届く。

     四つの組連合は、それぞれの作戦に沿って、連携を取りながら攻撃を重ねていった。
     その攻撃は、確実にアガメムノンが率いるシャドウや眷属の戦力を削り取っていく。
     だが、その奇襲の勢いを削ぐように降り注いだのは、金色の閃光だった。
     灼滅者達の前に立ちはだかる巨体……それは、獄魔大将アガメムノン本人に他ならなかった。
     彼は呵呵大笑しながら灼滅者達との交戦に突入する。
    「流石であるな、武蔵坂学園! 我が名はアガメムノン、『歓喜のデスギガス』様より軍を預かりたる大将軍である!」
    「あれは……各自、後退の準備を。本番前に被害を受けるわけにはいかないっす」
    「ライドキャリバー隊、お願いします!」
     大音声を挙げながら、金色の巨躯が迫るのを見てギィが眉を寄せ、華宮・紅緋 (クリムゾンハートビート・d01389)も事前の決定通りに連絡を送る。
     ライドキャリバー達がアガメムノンとの間に一斉に割り込み、灼滅者達の壁となった。
     巨人の繰り出した黄金の右腕はそれらを容易く突き破っていく間に、灼滅者達はアガメムノンの出現に対する動揺から立ち直り、シャドウの軍勢は奇襲から態勢を立て直す。
    「それにしても、獄魔大将が自ら出て来ますか……」
    「我は『獄魔大将保護結界』によって死なぬのだから、当然であろう!! お前達のような情報強者と戦うことができて嬉しく思うぞ、灼滅者よ!」
     ここまでの果断ぶりは、アガメムノンの将器を示していると言えたかも知れない。
     その口ぶりには、灼滅者達と戦うことに喜びを抱いていることがありありと感じ取れた。
     アガメムノンの背にした後光のような物体が無数の砲門を形成、奇襲を仕掛けて来た灼滅者達へと光爆を打ち放つ。
     それでも果敢に攻め立てる灼滅者に対し、態勢を立て直したシャドウ達が反撃を繰出さんとした時だった。
     駆け寄ってきたシャドウが不意にアガメムノンへと何事かを耳打ちすると、アガメムノンの金色の顔に驚愕が滲む。
    「『ザ・ハート』だと? 奴は武蔵坂学園と敵対していたのではなかったのか……!?」
     気がつけば後続のシャドウの現実への出現が止んでいる。
    「『慈愛のコルネリウス』の軍勢が、ソウルボード内で攻撃を仕掛けはじめたか」
     敵の攻撃が明らかに緩んだのを、灼滅者達は見逃さなかった。
    「敵は動揺しています、一撃を加え、後退を!」
     コルネリウス軍の参戦にシャドウ達が動揺したのを見て取った灼滅者達は、即座に行動に移った。
     さらにシャドウや眷属を灼滅した後、大きな被害もなく撤退する。

    「あと2つも組連合を投入すれば、アガメムノンをやれたかも知れないな」
     突出して来たアガメムノンの姿を思い返し、交戦した灼滅者達はそう思う。
     強力なシャドウの獄魔大将とはいえ、灼滅者達にはより強力な爵位級ヴァンパイアを滅ぼした実績がある。勝ち目のある相手には違いないだろう。
    「まあ、あれだけ戦力を削ればアガメムノンにラグナロクが渡ることはまず無さそうですね」
     シャドウ達に大きなダメージを与えることに成功した四つの組連合の灼滅者達は、速やかに横須賀中央駅へと退いていった。

    ●ブエル

     今回の戦いにおいて、獄魔大将を擁する各勢力の正確な位置に関する情報は得られていない。そのため、奇襲攻撃を行おうとする組連合は、まず敵勢力の現在位置を特定する必要に迫られていた。
     士気をあげる役目を負った【7G蘭】は、色々と手を出そうとした挙句、獄魔大将クロキバに宣戦布告するという目的で相手を探していたようだが……。

    「まあ、今は他の組連合よりも、こちらの活動を優先しましょう」
     アリス・バークリー (ホワイトウィッシュ・d00814)はそう判断すると、再び双眼鏡で市街を見渡す。
     索敵という意味で最大の困難を強いられていたのは、ソロモンの悪魔ブエルの居場所を探す【5E蓮】であった。
     前哨戦の段階で市内にブエル兵が出現しており、悪魔教団の拠点でもあるのかとも思われていたのだが、ブエルの本陣の位置はなかなか掴めずにいた。
     そんな中、調査を行っていた綱司・厳治 (真実の求道者・d30563)は、空間が波打つように歪むのを目にしていぶかしげに目を細めた。
    「なんだ……?」
     そして、厳治の見ている前で、ブエル兵の軍勢が忽然と姿を現し、道路上を転がり始めると、続けてブエルに従っているのであろうソロモンの配下達も現れ、周囲を警戒に入る。
    「ブエルの術か何かか……? 前哨戦の段階から、横須賀市内にも仕込んでいたと見るのが妥当か」
     ブエル兵達の出現は、他の地点でも確認されていた。出現地点を逆算することで、『見えない玄室』の複数ある入口も、おおよそ特定されていく。
     そんなことは露知らず、ブエル兵が耳障りな声で告げる。

    「ブエル様のお言葉を伝える!
     焦る必要はない。
     この戦いの勝者は、最も敵を倒したものではない。
     最後にラグナロクを得た者に他ならない。
     『見えない玄室』に留まり、好機を狙いラグナロクを奪う以上の戦術はない!」

     ブエルの狙いは、他の勢力の疲弊であった。
     強大なるソロモンの悪魔は、秘術によって生じた隠蔽空間に完全に戦力を隠すことで、他の勢力が疲弊するのを待ち、勝利を掴もうとしているのである。
     カンナビスがナミダの軍勢を何らかの手段で根こそぎ奪い取ろうとしていることを知っていれば別の動きもあったのだろうが、それを知り得るのはサイキックアブソーバーがかき集める情報と、それを解析できるエクスブレインを擁する武蔵坂学園だけだろう。

    「だが、こうして見つけたからにはこちらのものだ」
     やがて発動した殲術再生弾を受けた5E蓮の灼滅者達は、急ぎブエル兵達への攻撃に入る。
     他よりは強いとはいえ、やはり眷属である。ダークネスを主体とした軍勢に比べれば、強敵とは言い難い。
     ブエルの軍勢に打撃を与えると、灼滅者達は速やかに一旦退き、続けての作戦行動に移っていく。
     武神大戦獄魔覇獄は、ここからが本番だった。


    組連合 ファースト
    アタック
    ファーストアタック結果
    1A梅 (7)奇襲 (7)アガメムノンの敵戦力が2088減少(全組連合合計)!
     慈愛のコルネリウス軍の奇襲攻撃により、重複選択による効果減衰無し&効果3倍!
     現在の(7)アガメムノンの戦力は全勢力中最低です。
    2B桃 (7)奇襲 (7)アガメムノンの敵戦力が2088減少(全組連合合計)!
     慈愛のコルネリウス軍の奇襲攻撃により、重複選択による効果減衰無し&効果3倍!
     危険視される『現実世界に現れたシャドウ』であり、個体戦闘力は高いようです。
    3C桜 一般人救出 全てのターン、重傷からの復活率が5%上昇!
     横須賀市内の避難活動を行いました。獄魔大将の動きには警戒が必要そうです。
     灼滅者を応援する人々の声が聞こえます……!
    4D椿 救護準備 全ての戦場で、KO時の重傷/死亡率が5%減少!
    5E蓮 (2)奇襲 (2)ブエルの敵戦力が350減少!
     敵はブエル兵が中心で質はそれほど高くありませんが、『見えない玄室』による隠蔽を行っている他、他の勢力から『模倣存在』なるものを帰還させつつあるようです。
    6F菊 (7)奇襲 (7)アガメムノンの敵戦力が2088減少(全組連合合計)!
     慈愛のコルネリウス軍の奇襲攻撃により、重複選択による効果減衰無し&効果3倍!
     アガメムノン本人の砲撃はトラウマを誘発します。
    7G蘭 テンションアップ 敵戦力『300』までスルー可能に!
     多様な行動をとろうとした結果、効果が散漫になったようです。なお、『三竜包囲陣』のために動いているクロキバ勢力への宣戦布告は失敗しています。
    8H百合 撤退条件 今回の撤退条件を決定しました(下記参照)。
     条件を満たした場合、プレイング画面に『撤退』が表示されます。
    9I薔薇 (7)奇襲 (7)アガメムノンの敵戦力が2088減少(全組連合合計)!
     慈愛のコルネリウス軍の奇襲攻撃により、重複選択による効果減衰無し&効果3倍!
     アガメムノンを含め、術式、次いで神秘に長ける敵が多いようです。

    ●今回のテンションアップ

    残りの敵戦力が「300」以下の戦場をスルーできます。

    ●今回の撤退条件

    【進攻状況による撤退条件】
    ・第3ターン終了時に「(4)クロキバ」を制圧できなかった時
    ・第5ターン開始時に攻略不可能な陣営がラグナロクを握っている時
    ・第5ターンの終了時までに武蔵坂学園が「ラグナロクのいる陣営」を制圧できなかった時
    ・事前情報に基づかない、想定外の状況及び強制重症ないし闇落ちをさせられた(させられる攻撃を受けた)時

    【その他の撤退条件】
    ・獄魔覇獄で学園勝利での決着後に不慮の事態または継続戦闘が起こった時
    (なお、決着後に「何かが起こる」のは既に予知されています。もしそれが、上記撤退条件にある「不慮の事故もしくは継続戦闘」だった場合、撤退を決めた人は戦闘に参加できないため、戦力が分散される危険性が発生します。予めご注意ください)