●小虎は今日もブラックタイガー号といっしょ
ピーカンな空の下。
今日も車・小虎(小学生ご当地ヒーロー・d08114)はブラックタイガー号に跨り、学園をかけて行く。
「前は喫茶店巡りだったけど、今回はライブ&ゲーム!! どんな出会いが待ってるのか、とっても楽しみだよ。ねえ、ブラックタイガー号!」
ぶるるんと頷くようにブラックタイガー号のマフラーが唸る。
「さて、まずはどこから行くのかな?」
極秘と書かれた書類を片手に、うきうきした表情で小虎はライブ&ゲームのエリアへと入っていくのだった。
●第3位
歌声喫茶☆Star light song2015☆
遠くから歌声が響いてくる。
「おっ、あそこだね。じゃあ、ブラックタイガー号はここで待ってて」
ひょいっと降りると、小虎は早速、歌声の聞こえる喫茶店へと入っていった。
「ほほう……これは凄いなぁ」
喫茶店の中にはステージが設けられ、喫茶用のテーブルがいくつも並んでいる。他にもペンライトやミニアルバムといったライブグッズも販売されているらしい。
「歌声喫茶☆Star light song☆へようこそ♪ ここは、歌声喫茶……皆で歌っておしゃべりして……そして、コンサートやゲームなどを楽しんで貰う喫茶店ですよ」
さっそく、店に案内するのは、部長の星野・えりな(スターライトエンジェル・d02158)。えりなに導かれ、小虎は席に着く。
「星座や星の名前にちなんだメニュー表になってるんだ。これは凄いね」
「良ければお好きなものをご注文くださいね」
小虎は、うしかい座の生クリームパンケーキとヴィーナス蜂蜜レモネードを頼み、席からあたりを見渡す。
「昨日は楽しいコンサートをやってたんですよ。今日はビンゴをやるんです。エントリーはもう終わってしまっていますが、良ければ見て行きませんか?」
夢前・柚澄(淡歌する儚さ消える恋心・d06835)は、小虎の前にパンケーキとレモネードを置くと、そうおすすめしてくる。
パンケーキを食べ進めていくと、ステージでビンゴ大会が始まったようだ。
「それでは第三回歌声喫茶☆Star light song☆ビンゴ大会、はじめます♪ えっと、司会進行は、私、星野えりなでお送りしますね」
次々とナンバーが読み上げられ、ビンゴカードを片手に壇上に上がっていく生徒達が増えて行く。
「えと、あの。まさか、当たるとは……びっくりだよ」
どうやら、一番最初にビンゴになったのは、蒼夜藝・瑠璃鵺(聳弧のロベリア・d00928)のようだ。
「蒼夜藝さんは1位、おめでとうございます♪ 1位の景品は私へのお願い一つ。何か考えておいて下さいね」
1位の商品はえりなへのお願い一つと副賞がもらえるようだ。他にもいろいろ面白い商品が用意されている。
小虎は、紙ナプキンで口元を拭いて立ち上がり、えりなの元へと寄っていく。
「あら、小虎さんどうかしたんですか?」
ビンゴ大会が終わって、ステージの後片付けをしているえりなが振り向いた。
「おめでとう! えりなさんの歌声喫茶☆Star light song2015☆がライブ&ゲームの投票で3位になったよ!」
そう小虎が告げると、えりなは嬉しそうな笑みを浮かべ、さっそく部員達に報告しに向かったのだった。
●第2位
【生放送ぼいらじ!学園祭SP2015】
ぶるんぶるん音を立てながら、今度は放送室へとやってきた小虎。
ブラックタイガー号に、しーっと静かにするよう告げて、小虎は放送室の中を覗いた。
「コメントに関しては、こちらにご自由にどうぞ!」
そこでは、来栖・清和(武蔵野のご当地ヒーロー・d00627)が中心となって、学園祭限定のラジオを流していた。
「いえーい、ラブリンスタァァァッ!」
「うわ、な、なんだっ!?」
清和の物凄いテンションに思わず小虎は戦く。
「前夜祭、盛り上がってたようですね!」
通りかかった坂之上・聖(健康第一・d05003)の話によると、どうやら学園祭前日から、このラジオは放送されていた……ようである。
「放送に載らない裏方作業、それこそ我らの前夜祭!!」
伏見・武(暖色戦士オーミヤイザー・d00144)が自信ありげにそう叫ぶ。
小虎は傍に貼ってあったタイムスケジュールを見た。
学園祭放送の説明から始まり、水着コンテストに参加する者達の紹介やクラブ企画の紹介、それにボイスドラマなどが予定に組まれている。
「まあ、前日からぶっ続けで放送していたら、ハイテンションになるのも頷けるよ」
またお土産に配られるバンダナは、ここを訪れた者達をある意味、驚かせているようだ。
不思議な柄なのは、気のせいだろうか?
「と、飛び入りでぇ……! 喋ってましたぁ!」
どうやら、桐原・瑠奈(踊る焔月・d01044)は飛び入り参加して、喋ってきたらしい。
「ラジオを聞いた者達がぞくぞく集まってくるな。さてと、そろそろ……」
ノックしようとして、それをやめた。
「こんなに盛り上がってるんじゃ、知らせるのは後にしておこうかな」
小虎は手紙をしたためて、そっと扉の間に挟む。
『おめでとう、【生放送ぼいらじ!学園祭SP2015】が2位になったよ! 小虎』
「うん、これでバッチリっ!」
邪魔しないように小虎はブラックタイガー号に跨ると、次の場所へと向かったのであった。
●審査員特別賞
きのこVSたけのこ
なにやら、遠くで激しい声が聞こえてくる。
小虎は思わず足を止めて、ブラックタイガー号を店の傍に置くと、そろそろと中へ入っていった。
「こっこれは……!!」
そこには、巨大なきのことたけのこが置かれており、思い思いの学生達が、小さなきのことたけのこを持って……投げ合っていた。
巨大なきのこに向かって投げるは、たけのこ。巨大なたけのこに投げるのは、きのこ。
「きのこを取るか、たけのこを取るか……さあ、選択の時間です」
そうアナウンスするのは、ディアナ・ロードライト(暁に輝く紅玉・d05023)。
どうやらここは、きのこかたけのこを投げ合うゲーム会場のようだ。
「それなのに、かなり盛り上がっているね」
中には、フォークやバナナ、パイなどを投げている者もいるようだが、そちらはカウントに入っていないようだ。
集計するディアナが大変そうだが、とても楽しげな様子。
「圧勝なんて面白く無いよな」
そう言ってきのこを投げるのは、時浦・零冶(紫刻黎明・d02210)。
「たけのこの勝利は約束されています」
ぽいっと山上・尊(山の送り人・d33248)がたけのこを投げる。
「敢えて言うなら、きのこが至高。はっきりわかっている」
今度は旅行鳩・砂蔵(桜・d01166)がきのこを投げていた。
ただただ、たけのこときのこを投げるゲームに、こんなに多くの学生達が興じているのは、そこに何か惹かれるものがあるからだろう。
「ここはあたしも投げた方がいいのかな?」
小虎が思わず手に取り、投げたのは……バナナだった。
「ま、間違えた!」
けれど、妙にすっきりした気分になるのは気のせいだろうか。
集計しているディアナの傍に行って、小虎はにっこりとほほ笑んだ。
「おめでとう、特別審査員賞は、きのこVSたけのこにするよ!」
その言葉に、ディアナは信じられないといった表情で、手にしていたペンをぽとっと落としたのだった。
●第1位
オズの魔法使い ~少女と三つの宝物~
小虎がそこにたどり着くと、物凄い拍手と歓声に包まれていた。
「どうやら、ここが最後みたいだね」
ブラックタイガー号から降りて、小虎はその大きな舞台へと近づいて行った。
そこでは、劇が行われていたようだ。
傍にあるテレビには、お昼の部である、1番初めの劇が披露されている。
モチーフになっているのは、オズの魔法使い。
「……なんだか、物凄い劇だね……」
吸い込まれるように見入ってしまう小虎。
そこには、なぜか怪力のフィオル・ファミオール(灰色の少女ドロシー・d27116)が演じるドロシーらが、朝臣・姫華(西の邪悪な魔女・d30695)が演じる悪い西の魔女を相手に戦っているシーンが映し出されていた。
かなり激しく熱い戦いが、繰り広げられている。
その隣には、午後の部である2番目の劇が披露されている。
こちらは、蜷川・霊子(アラサードロシー・d27055)演じるアラサードロシー達が、電車に乗って旅をする様子が映し出されている。
ラストには茂野・真祢(ブリキの木こり・d25117)が扮するブリキの木こりが落ちたドロシーを助けるシーンが待っていた。
そして、最後には夜の部である3番目の劇が映し出されていた。
こちらは双子の姉妹、ドロシー扮するシフォン・アッシュ(トラベラーシスター・d29278)と、オズに扮する桜井・華穂(トラベラーシスター・d26611)の素敵な冒険模様が繰り広げられていた。
途中、離れ離れになった二人が長い時を超えて、再び再会するという壮大な話だった。
「なるほど。この3つの劇が、実は一つの物語になっていたとは驚いたよ」
数多くの登場人物を過不足なく織り交ぜながら、原作とは全く違う新しいもう一つの『オズの魔法使い』を表現していた。
この劇を全部見るだけでも、時間がかかってしまうだろう。それだけ長くかつ、濃厚な物語だった。
小虎は打ち上げの焼肉パーティーをしている一恋・知恵(語り部のチェシャ猫・d25080)の元へやってきた。
「小虎ちゃん? どうしてここに? ああ、一緒に焼肉食べる?」
いそいそと焼かれた肉を皿に盛って差し出そうとする手を、小虎は押しとどめた。
「それは後でいいよ。それよりも言わせてもらってもいいかな? おめでとう! オズの魔法使い ~少女と三つの宝物~が、見事、1位になったよ! それと、素晴らしい劇だったよ!」
僅かに滲む涙をさっと拭って、小虎はにこっとほほ笑み、知恵を讃える。
「あ、ああ……知恵の、ううん、知恵達の劇が認められたんだね」
知恵も思わず涙を浮かべながらも、仲間達と一緒にその健闘を喜ぶのだった。
「……ふう、今回も楽しい企画ばかりだったよ、ブラックタイガー号!」
楽しげな様子でブラックタイガー号がエンジンをふかすと、小虎はそれに跨った。
「次回もまた、素敵な企画と巡り会えるといいな」
にっかと笑みを浮かべて、小虎は賑わいが収まらない校舎へと再び戻っていくのであった。