垓王牙大戦 ファーストアタック

    エミリオ・カリベ VS イフリート王ガイオウガ

    ●復活の垓王牙(ガイオウガ)

     ガイオウガが復活する9月25日。
     武蔵坂学園の灼滅者達は、鶴見岳中腹のロープウェイ駅に集結していた。
     昨晩は臨海学校の宿泊地となった糸ヶ浜海水浴場で6F菊、7G蘭による合同壮行会を楽しんだ者達も少なからずいる。
     イフリート王ガイオウガを巡り、サイキック・リベレイター以前から幾度も戦いの舞台となって来た鶴見岳や別府温泉は、灼滅者達にとっても慣れ親しんだ地だ。

     学園に一時滞在していた9体のイフリート達は、ガイオウガの『協調』の意志を『殲滅』の意志に塗り潰されないよう守るべく、鶴見岳に残った。
     彼・彼女らの伝えた、ガイオウガの融合時にガイオウガ上部へ行くための場所というのが、灼滅者達のいるロープウェイ駅である。
     ここには現在、4D椿の手配した資材が次々と運び込まれ、また各灼滅者に戦闘中の食事等が入ったザックが配られていた。

    「もうすぐだ、来るぞ……!!」

     ファイアブラッドの者達は、魂の中に潜むイフリートが一瞬強く反応するのを感じ、そう声を上げる。その情報が伝わる頃になると、鶴見岳が鳴動し、山の斜面に生じたひび割れの中から赤い輝きが露出し始めていた。

     6F連合のエミリオ・カリベ (星空と本の魔法使い・d04722)は深呼吸を一つ。
     漂い始めた硫黄の臭いを感じながらも、山裾を指し示す。

    「殲術再生弾(キリング・リヴァイヴァー)ッ!!」
     その叫びと同時に大地に降り注いだ殲術再生弾(キリングリヴァイヴァー)は、着弾すると同時に炸裂し、灼滅者達を一瞬の閃光で包み込んだ。
     閃光が灼滅者達の全身に染み渡り、激戦を戦い抜くための力を与えるのと時を同じくして、鶴見岳の斜面が内側から溶けるようにして崩落した。
     崩れ落ちた場所から現れるのは、赤く煮え滾る溶岩の奔流だ。
     灼滅者達が見る前で、その溶岩流は重力に逆らい、空中に引き付けられるようにして、巨大な幻獣の姿を形成していく。
     ロープウェイ駅にいた灼滅者達の足元からもまた、溶岩が吹き上がる。駅を呑み込みながら吹き上がる流れと共に灼滅者達もまた空中へと舞い上がっていく。
    「来ましたか……!!」
    「物資を守ってください!!」
     蒼珈・瑠璃 (d28631)の声を受け、救護準備を担当する4D椿連合の灼滅者達をはじめ、アイテムポケットを活性化した灼滅者達が運んできた物資を守る。
     そのまま吹き上がる溶岩流は灼滅者達を空へと押し上げていき──気が付いた時、灼滅者達は灼熱の空間にいた。
     周囲には溶岩が流れ、足元の岩からも噴き出す噴煙や蒸気は激しい熱を帯びて灼滅者達を覆う。対策を施していなければ、この時点でアイテムポケット内以外の物資は全滅していただろう。
    「体を冷やす心配は無さそうですね」
     有城・雄哉 (高校生ストリートファイター・d31751)が制服の下に滲む汗を感じながら呟いた。この先で重傷者がどれだけ出るかは分からないが、その可能性はできる限り低く抑えたいところだ。
    「それにしても、すごい大きさだね」
     7G蘭の師走崎・徒 (流星ランナー・d25006)は、熱に顔をしかめつつ辺りを見回した。
     ガイオウガの大きさは灼滅者達が遭遇したダークネスの中でも屈指だ。比較対象は新宿上空に降臨したデスギガスあたりだろう。
    「ガイオウガもダークネスなら、元は人間から生まれたんだろうけど……」
     イフリートの集合体という性質が、いつから生じたものかは分からないが、ガイオウガ自体が相当な昔から存在しているようだ。

     偵察を担当する魔法使い達が箒を使い、敵に捕捉される前に空へと飛び立つ。
     見下ろせば、そこには巨大な『垓王牙(ガイオウガ)』の姿があった。
     岩と溶岩と火山が集まって出来たかのような、巨大な幻獣だ。

    「これがガイオウガか」
    「竜種イフリートにも似ていますね」

     ガイオウガの姿は二足歩行の恐竜のようにも見えた。竜因子を宿す『竜種イフリート』と呼ばれるイフリート達の姿にも似ていると言えただろう。
    「あれは?」
     その時、灼滅者達の目に映ったのは、脚部を駆け上って来る者達の姿だ。
     種々様々なご当地の名産品をその身に纏った彼らは、そのままに体の上部へと進出し、頭部へ至らんとする。
    「合体ダブルご当地怪人軍団が来たか!!」
     ご当地幹部アフリカンパンサーの力によって強化されたご当地怪人達。その進撃に呼応するようにガイオウガの溶岩が盛り上がる。そして現れるのは、何千という数のイフリート達だ。

    『殲滅セヨ!!』

     背に岩山の如き棘を持つ巨大なイフリートが吠えると共に、ガイオウガの体表面上での交戦は開始された。
     ガイオウガの背を舞台にした戦いは、たちまちにその規模を拡大していく。
     その両者の戦いの隙間を縫うようにして、灼滅者達は戦場を駆け抜けた。

    ●百竜包囲陣
     ガイオウガ頭部側へ向かう灼滅者達の集団では、まず2B桃が魚鱗陣を組み、百竜包囲陣の本陣へと攻め入った。
     外周部に位置するディフェンダー達の防具表面が炎を浴びて激しく燃え上がるのを、内側からメディック達が矢継ぎ早に消していく。
    「やはりイフリート。炎を使う者ばかりだな」
     不動峰・明 (大一大万大吉・d11607)は案の定と言わんばかりの表情で足を前へ進める。
     先ほど迎撃の指令を発した巨大なイフリート達の指示の元、灼滅者達の前に、次々と新たなイフリートが出現する。
     百竜包囲陣というからには、交戦中の背中全体として『三竜包囲陣』のような包囲網となっているのだろうが、イフリートがご当地怪人の対応に追われている今回の戦争では、灼滅者達に対してはまともに機能しないだろう。
    「しかし、ますます竜種イフリートが増えている気がするな」
    「ブレイズゲートにいたイフリートは、ガイオウガが竜因子に枷を架していると語っていたそうですが……」
     椎那・紗里亜 (言の葉の森・d02051)が首を傾げた。
     そのガイオウガ本体の体の上で竜種イフリートが現れるのを見るに、ガイオウガ自身は自由に竜因子を利用できるのだろう。あるいは灼滅者を『殲滅』せんとする意志が、それだけ強いと見るべきか。
    「ともあれ、ここは俺達に任せて先に行け、というところか」
    「緒戦だけどな」
     百竜包囲陣本陣のイフリート達をこじ開け、2B桃は5E蓮の者達に先を促した。

    ●垓王牙焔炉
     2B桃が百竜包囲陣の本陣に隙を作ったのを利用して、5E蓮は一気にガイオウガの頭部にまで突入した。魔法使い達が陽動を行う間に、残る者達は燃える岩肌を伝い、ガイオウガの顎を臨む位置にまで、彼らは間もなく到達する。
     ガイオウガの巨大な顎には、赤々と輝く溶岩が満ちていた。
    「あの中に落ちてもダメージは無いとはいえ、暑いことには変わりないな」
     ひりひりと肌が焼けるのを感じる木元・明莉(楽天日和・d14267)の目は、溶岩の奥へと向けられる。
     湖のように広がる溶岩溜まりの奥底には、巨大な気配が潜んでいるのが明莉たちには肌で感じられた。
    「やはり、ここに入らないと駄目か……」
     危険な気配を感じる灼滅者達は、意を決して溶岩へと飛び込む。
     奥を目指そうとする灼滅者達の目に、溶岩が膨れ上がる光景が映った。
     溶岩の中から現れるのは、無数の恐竜じみた姿だ。蒼月・碧 (碧星の残光・d01734)が驚いたように目を見開く。
    「ガイオウガ、だよね!?」
    「こいつらが焔炉の守りっちゅうわけか!!」
     東当・悟 (の身長はプラス七センチ・d00662)が槍を構えると同時、多数の小さなガイオウガ達は一斉に咆え猛り、灼滅者達を迎撃にかかった。
    「勝てない相手ではない……が、数が尋常じゃないな」
    「まずは他から来ている援軍を絶つところからか」
     そう確認すると、灼滅者達は撤退に移った。

    ●合体ダブルご当地怪人軍司令部
    「比較的手薄だな」
     灼滅者達は、ガイオウガの脚部の岩棚の一つに設けられた、合体ダブルご当地怪人軍司令部に到達していた。
     僅かな時間しかなかったにも関わらず、そこには多数の鉄板を積み上げた城のような代物がでっち上げられている。
     その司令部について仲村渠・弥勒 (マイトレイヤー・d00917)は一言。
    「……物凄く熱そうだね」
    「あのお好み焼きとタコ焼きの合体怪人っぽいのが作ったのでしょう」
     黒絶・望 (闇夜に咲く血華・d25986)が指し示す先、合体ダブルご当地怪人達がせっせと鉄板を繋ぎ合わせては、勝手にお好み焼きやタコ焼きを作り始めている。
     チャンスがあればお好み焼きやタコ焼きを焼く、彼らの本能的なものかもしれない。
    「まさか敵全部が面白担当なの? ……とにかく、やってしまいましょ」
     フローレンツィア・アステローペ (紅月の魔・d07153)の言葉と共に、基地への攻撃は開始された。
    「ホワッチャァ!! 『のんびりくん』様の御手を煩わせるまでもない! ここはこの私、皿うどんちゃんぽんチャンピオンがお相手致す!」
    「あ、やっぱり『のんびりくん』いるんだ」
    「中のようですね」
     お約束的に律儀な説明をしてくれる合体ダブルご当地怪人の言葉に敵情を確認すると、3C桜の灼滅者達は着実に敵戦力を削っていった。

    ●天槻・空斗の軍
     1A梅、8H百合、9I薔薇の、尾方面へ向かう灼滅者達は、ソロモンの悪魔達がどのようにして出現するのかを注視していた。
    「どうやって現れるのかと思ったけれど、意外と力技だねぇ」
     レオン・ヴァーミリオン(鉛の亡霊・d24267)は、出現の報告にそう応じる。
     箒に乗る、自分の羽を使う、飛行魔法。ソロモンの悪魔達は各種の手段で飛んで来ると、大悪魔の指揮に従って整然とガイオウガの上に降り立っていた。
    「まあ、俺達のように正確なタイミングを把握していたわけではないか」
     そしてイフリート達がソロモンの悪魔軍との交戦を開始したのを見計らい、レオンは8H百合の灼滅者達に進軍の合図を出す。

    「スレイヤー!!」
    「スレイヤーダ!」
    「スレイヤー、コロセ!!」

     天槻・空斗の軍に攻め込むや否や、イフリート達の目はそれまで戦っていたソロモンの悪魔達から一気にスレイヤーの方へと向いた。
    「おっと……」
    「ナニシテル! マズハアクマドモヲネラエ!!」
     軍勢の中、白い獣……天槻・空斗がそう咆えるが、灼滅者『殲滅』の意志で凝り固まったイフリート達に冷静さを求めるなど無理なことだ。
     ソロモンの悪魔達を倒すべきとは理解していても、感情が体を衝き動かしているのだろう。ここ数年で灼滅者達がどれだけのイフリートを灼滅したかを考えれば、それも当然の反応と言えた。

    ●ソロモンの大悪魔軍
     ソロモンの大悪魔ダンタリオンとビフロンスに率いられた軍勢へと攻め入った1A梅は、敵勢力の頑強な抵抗を受けていた。
     元よりイフリートからの攻撃を凌ぎ切る腹積もりで来ているソロモンの悪魔達は、灼滅者達の奇襲によって天槻軍の攻撃の手が緩んだ隙を逃さず、守りを固めに入っていた。
     先行攪乱の任を追った少数の飛行班が優先的に攻撃を受けて撃墜され、同乗していた者達や後から攻め入った者達が敵前衛との間でサイキックの応酬を繰り広げている。
    「その分、無理に攻撃を行おうとせず尻尾の方へ向かう9I薔薇を通すのは簡単そうですね」
     進路上にいる者達を敵陣に戻させるように攻撃してやれば、それは容易だった。
     ダンタリオンやビフロンズといった強力な相手も、前には出て来ていない。
    「どうにも、やりにくい相手ですね」
     だが、とは異なり、無尽蔵に湧いて来たりはしない。

    ●ガイオウガの尾
     辿り着いた尾で灼滅者達が見たものは、激しく輝く溶岩同士のぶつかり合いだった。
     溶岩の流れが対流を生み、ぶつかり合っては激しい渦を引き起こし、激しい熱を伴った輝きを発している。
     そのぶつかり合っている地点は、ゆっくりと、だが確実に尾の先端の方へ向かおうとしているように見えた。
    「これが……主導権争いということか?」
     鈍・脇差 (ある雨の日の暗殺者・d17382)は戸惑ったように滲む汗を拭う。
     灼滅者達が熱で故障する機材と格闘しながら『協調』派イフリート達との思い出の映像やメッセージなどを流していると、溶岩が一際激しく跳ねた。
     溶岩の飛び散る中から、1体のイフリートが姿を現す。
    「……」
    「イヌガミヤシキ?」
    「……」
    「エエイ、ムクチナヤツ! デタナラハヤクセツメイシロ!」
     続けて溶岩が再び大きく跳ねると、尾の光っている部分からまた別の獣型イフリートが姿を現す。アカハガネだ。空中で人間形態をとったアカハガネは、早口に叫ぶ。
    「キヲツケロ、スグニオマエタチニハンノウシテ、ヤツラガデテクルゾ!!」
     アカハガネの言葉と同時に、溶岩の中からまた新たなイフリート達が姿を現す。
     それらが灼滅者達に敵対的な意志を持っていることは、その敵意に燃える瞳を見れば一目で理解できた。
    『スレイヤー、ドウホウタチノカタキ!』
    『モウココマデキタカ……!!』
    『ミナゴロシダ!!』
     吼える竜種イフリート。それと同時に、多数のイフリート達が出現した。灼滅者達が持ち込んだ応援のメッセージが書かれた石版がたちまち爆砕される。
    「なるほどな。こいつらを片付けてしまえば、ひとまず『協調』の意志が消えるのは防ぐことが出来そうだ」
    「マカセタ! コチラハコチラデジカンヲカセグ!!」
     アカハガネとイヌガミヤシキが再び溶岩の中に姿を消すと共に、一斉に炎を噴き上げる『殲滅』の意志に染まったイフリート達。
     灼滅者達との交戦は、ガイオウガの背の火山が噴火する轟音と共に開始された。

    組連合 ファースト
    アタック
    ファーストアタック結果
    1A梅 (13)奇襲 (13)ソロモンの大悪魔軍の敵戦力が350減少!
    数はイフリート達ほど多くはないようです。守勢に専念しており、ダンタリオン、ビフロンズは敵陣中央部で指揮を執っているようです。
    2B桃 (16)奇襲 (16)百竜包囲陣の敵戦力が300減少!
     敵戦力は援軍によって増強されている他、本陣の敵は竜種イフリートが多数を占めます。事前の予測通り【炎】を使う敵が大多数を占めます。
    3C桜 (12)奇襲 (12)合体ダブルご当地怪人軍司令部の敵戦力が350減少!
     タコ焼き用の鉄板を組み合わせ、司令部らしきものが作られていました。頭部を目指し各戦場でイフリートと交戦中のため、司令部は比較的手薄のようです。
    4D椿 救護準備 全ての戦場で、KO時の重傷/死亡率が4%減少!
     物資の利用が困難な状況ですが、一定の対策は取ることができています。
    5E蓮 (17)奇襲 (17)垓王牙焔炉の敵戦力が250減少!
     ガイオウガを小さくしたような存在が多数出現しています。敵戦力はとても多く、援軍を断つのは特に有効と思われます。
    6F菊 テンションアップ 敵戦力650までスルー可能に!(7G蘭と合計)
     二つの組連合で協働し、糸ヶ浜海浜公園での壮行会で多数の催しを行いました。
    7G蘭 テンションアップ 敵戦力650までスルー可能に!(6F菊と合計)
     二つの組連合で協働し、糸ヶ浜海浜公園での壮行会で多数の催しを行いました。
    8H百合 (14)奇襲 (14)天槻・空斗の軍 の敵戦力が350減少!
    指揮官はソロモンの大悪魔軍を倒そうとしていますが、イフリート達の意識は灼滅者達に向いているようです。
    9I薔薇 (15)奇襲 (15)ガイオウガの尾の敵戦力が300減少!
    『協調』と『殲滅』の意志の争いはガイオウガ内部で行われています。戦力は(16)と同等と推測されます。

    ●今回のテンションアップ

    残りの敵戦力が「650」以下の戦場をスルーできます。

    ●一般人はいません

    今回のファーストアタックでは、『一般人救出』を行うことができません。
    重傷からの復活率は通常『一般人救出』が実行された場合の最低値で固定されます。

    ●ナミダ姫の援軍

    援軍要請は行いませんでした。