●今年のライブ&ゲームへ
「学園祭、本当に楽しいよね。あれ? もうこんな時間?!」
千歳緑・太郎(高校生エクスブレイン・dn0146)は盛り上がる学園祭を楽しみながら、ふと時計を見た。楽しい時間は過ぎ去るのが早いというけれど、気づけばもうこんな時間だ。
みんな、お土産は十分にもらえただろうか。美味しいものはたくさん食べただろうか。そして、様々な会場を楽しみつくしただろうか。
年に一度の学園祭だ。
きっと、みんなも楽しんだに違いないと、太郎は笑顔を浮かべた。
「太郎君、楽しんでる?」
「こんにちはー!」
すれ違う生徒達と笑顔で挨拶を交し合う。みんな、笑顔でとっても楽しそうだ。
太郎は嬉しくなり、ニコニコと廊下を歩いていく。
さて。
目的の場所を見つけ、太郎が立ち止まる。
「えっと、クラブ企画『ライブ&ゲーム』部門はこの辺りだよね」
彼の手には、クラブ企画『ライブ&ゲーム』部門の人気投票結果がしっかりと握られていた。
今年は、こんな大役を任されたのだと、改めて思う。
持っていたくまのぬいぐるみを握り締め、太郎は緊張した表情で歩き出した。
●第3位~光画部~
マグロ積みゲーム! コスプレもあるよ!
コスプレの衣装並ぶ衣裳部屋、そして、転がるマグロたち。
光画部では、コスプレ衣装を着ての写真撮影とマグロ積みゲームを企画していた。
太郎はそんな光画部の企画部屋へ入っていった。
コスプレ衣装を着て写真撮影を楽しんでいる生徒達の姿が見える。衣装はダイスで決めるという事で、格好良い衣装からスポーティな衣装、そして、なにやらセクシーな衣装まで幅広い写真が出来上がっている様子だ。
そして、である。
「こんにちはー。って、ああ、マグロが?!」
積みあがったマグロが太郎の目の前で倒れた。
周辺で待機していた生徒達が、すぐに転がったマグロを積み上げ始める。
「積める物なのか……」
「マグロって積むものだったんずらか……」
と、少々疑問に思う声もあるが、そこはそれ、皆懸命にマグロと向き合っていた。
「あら、こんにちは。太郎もマグロを積みに来たの?」
太郎に気づいた保戸島・まぐろ(無敵艦隊・d06091)が、にこやかに声をかける。
「バランス、難しそうだねーって、そう、実は光画部さんが『ライブ&ゲーム』部門の人気投票で第3位になったんだよ! そのお知らせに来ました」
「あら?!」
太郎が言うと、マグロを積んでいた生徒達も、写真撮影を楽しんでいた生徒達も、一斉に振り向いた。
「おめでとうございます!」
教師風の衣装を着た鈴虫・伊万里(黒豹・d12923)が拍手をする。コスプレ写真ブースで撮影していたようだ。
「マグロを積んだかいがあったな」
文月・咲哉(ある雨の日の殺人鬼・d05076)はマグロを抱えながら頷く。
そして、周辺からはお祝いにと、拍手が巻き起こった。
「ありがとう!」
まぐろが周囲へ答えるようにお辞儀し、両手を広げた。
「さあ、まだまだマグロを積むわよ! もちろん、写真撮影もね」
「あ、僕も、マグロ積んでみたいな」
ちょっとドキドキだけど、と、太郎が手を上げる。
「どうぞどうぞ」
部員達が手招きした。
太郎はしばしマグロ積みを楽しみ、光画部を後にした。
●第2位~☆ 星空芸能館 ☆~
歌声喫茶☆Star light song2017☆
さて、次に太郎が訪れたのは星空芸能館の『歌声喫茶☆Star light song2017☆』だった。
「『歌声喫茶☆Star light song☆』へようこそ♪♪」
すぐに星野・えりな(スターライトエンジェル・d02158)がメニュー表をもって現れた。
「こんにちは! わあ、喫茶店のメニューって、星座の名前が入っているんだね!」
見ると、アルゴ座のスリーピーストースト、うさぎ座のプリン、おとめ座のフルーツジュースなどなど、星をモチーフにしたメニューがずらりと並んでいる。
「お気軽にオーダーしちゃって下さいね」
「うーん。いっぱいあって、迷うなー。どれも美味しそう! じゃあ、『おおぐま座&こぐま座の北極星しろくまフラッペ』ください!」
「はい、少々お待ちくださいね♪」
太郎はうきうきしながらテーブルについた。
「めずらしいな、いらっしゃい」
すぐに、テーブルにいた師走崎・徒(流星ランナー・d25006)が太郎を見る。
「ライブにビンゴ大会、盛り上がったみたいだね」
「ああ、いろんな人が着てくれたからな」
タイムスケジュールを見ると、様々なユニットがライブをし、最後にはビンゴ大会も開催したようだ。
「イベント、全部、終わっちゃうと、やっぱりちょっとさびしいですね」
えりながフラッペを持ってやってくる。
「わあ、かわいいー!! 僕くま大好きなんだよ。それに、ひんやりして美味しそう」
太郎は可愛く盛り付けられた『おおぐま座&こぐま座の北極星しろくまフラッペ』を見て、感激の声を上げた。
「どうぞ召し上がれ♪」
うんうん、と。頷きかけたところで、太郎は顔を上げる。
「その前に、お知らせです。『ライブ&ゲーム』部門の人気投票で星空芸能館さんが第2位に選ばれました!」
「ええ?!」
「そうなんですか! 良かったです」
太郎が発表すると、えりなと夢前・柚澄(淡歌する儚さ消える恋心・d06835)は手を合わせて喜び合った。
他にも、星空芸能館の部員達が喜びの声を上げる。
「よかったですね!」
「おめでとう! がんばれ がんばる 武蔵坂、みんなで歌ったもんね!」
周囲からは、温かな拍手が起こった。
企画していたイベントは終わったけれど、まだまだ歌声喫茶は続くようだ。
「おめでとう! そして、ごちそうさまでした!」
太郎は、盛り上がる店内を楽しそうに眺めて、『おおぐま座&こぐま座の北極星しろくまフラッペ』を堪能し、次の企画へ向かった。
●審査員特別賞~武蔵坂軽音部Secret Base~
音楽遊園地~武蔵坂軽音部LIVE2017
音楽遊園地の演奏ステージからは、軽快なリズムと、美しい歌声が響いていた。
部室の一角で、LIVEのタイムテーブルが紹介されているようだ。
太郎はタイムテーブルを確認した後、そっと観客席に座りステージを見る。
次々に演奏される曲は、楽しくて、可愛くて、胸がキュンと締め付けられる。
「胸がキュンとするッス!」
「とても愛らしい演奏だった」
客席からも、惜しみない拍手と、温かな感想が聞こえてきた。
また一曲、演奏が終わる。
太郎も、周囲の生徒達に合わせるように、拍手を送った。
「よう、めずらしい顔じゃん。聞いてくれたのか?」
さて、演奏の幕間に万事・錠(ハートロッカー・d01615)が現れた。観客席の様子を見に来たようだ。
「こんにちは! ライブ聞かせてもらってます! なんだか、胸が温かくなったよ!」
「そりゃ、よかったな!」
周囲の生徒達も、今演奏されていた曲を噛み締めるように頷いている。
「それでね! 今年の学園祭、武蔵坂軽音部Secret Baseさんが『ライブ&ゲーム』部門の審査員特別賞に決定しました!」
「マジか!」
太郎が言うと、錠が驚いた顔を見せた。
「そうなのか!」
「おめでとうございます」
「楽しませてもらってます」
東雲・藜(静寂の刃・d26935)、井瀬・奈那(微睡に溺れる・d21889)、迅・正流(斬影輝神・d02428)他、観客席から次々に祝う言葉が広がっていく。
「みんな、サンキューな! さ、次のステージだぜ!」
錠はそう言って、嬉しそうにステージに走っていった。ステージ裏から、部員達の歓声が聞こえてくる。
「本当に、楽しいライブだよね!」
太郎はしばしライブを楽しみ、次の企画場所へ移っていった。
●第1位~MM出張所~
MM出張所-三題-悲劇 ~ロミオとジュリエット
ヴェローナの街にはモンタギューとキャピュレット、二つの名家が存在した。
モンタギュー家の跡取り、ロミオ。
キャピュレット家の愛娘、ジュリエット。
目出度い筈のパーティの日に、二人の運命は動きだす。
看板に書かれた文字を追い、太郎がMM出張所のロビーを見た。
喜劇あり、悲劇あり。昼、夕、夜と、様々なロミオとジュリエットが、舞台で演じられたようだ。
「演劇1本3時間で3本……うわ、9時間か。そりゃ疲れるよな……」
どこからか、そんな声も聞こえてくる。
部員全員で、劇を作り上げたようだ。
「お、太郎くんだ。いらっしゃい。さあ、お土産、どうぞ。三本入りだよっ」
「わあ、ありがとう!」
一恋・知恵(喜劇の語り部・d25080)からお土産を受け取った太郎が袋の中身を眺める。ジュースとジュースと、何だろうか、ジュースではない何かが入った瓶が見えた。
中身の吟味を二人でしていると、舞台衣装を身に纏った部員達が寄ってくる。
「やあ、いらっしゃいませ」
九形・皆無(ロミオ・d25213)はきらびやかな舞台衣装を纏い、心なしかロミオ口調で挨拶をした。
「こんにちは! ロミオさん!!」
太郎は間近で見るロミオに興奮し、期待の目を皆無に向ける。
「いらっしゃいませ。珍しいお客さまですのね」
そして、黒嬢・白雛(ジュリエットに幸せの花束を・d26809)も姿を見せた。
「ジュリエット?!」
ますます、太郎の瞳がキラキラと輝く。
「うん、それで、どうかしたの?」
「そうだった! あのね、『ライブ&ゲーム』部門の人気投票でMM出張所さんが見事第1位に選ばれました! おめでとう!!」
太郎が言うと、ロビーにいた他の部員や生徒達からいっせいに歓声が巻き起こる。
「そうでしたか。それは、ありがたい事だね、ジュリエット」
「ええ、うれしいですわ、ロミオ」
ロミオとジュリエットが微笑みあう。
ああ、今もなお、あのロミオとジュリエットの舞台を見ているようだ。
周囲から、温かな拍手が沸き起こった。
「本当に、本当にお疲れさまでしたの!」
「おう、おつかれさんだな」
シャーリィ・グレイス(喜劇のマキューシオ・d30710)、三崎・鮪(喜劇のロミオ・d06900)と、演者たちも次々にロビーに顔を出し、喜びを分かち合う。
「本当におめでとう! それから、素敵な舞台をありがとう!」
太郎が言うと、もう一度、一位を祝う拍手が広がった。