グラン・ギニョール戦争 ファーストアタック

    木元・明莉 VS第8位ランキングマン
    ●走馬燈使い
     遡ること数日、武蔵坂学園の旧校舎ではミスター宍戸の尋問が行われていた。
     先の黄金闘技場での戦いで死んだミスター宍戸だが、その死体は灼滅者達によって持ち帰られている。
    「損傷が激しくなかったのは幸いだな」
     鈍・脇差(ある雨の日の暗殺者・d17382)が『走馬燈使い』を使うと、既に冷たくなっていた宍戸の死体の頭の傷が修復され、生前の姿に戻った。
     しばし待つと、目を覚ましたミスター宍戸は、拘束された自分と周囲を取り囲む灼滅者達の姿に、たちどころに状況を理解したようだった。
    「なるほど、どうやら私は死んだようだね」
    「状況が分かっているなら話は早いな」
    「こういうことが出来るとは聞いていたからね。情報漏洩を恐れるなら、私の死体を破壊しておくべきだったのはあちらも分かっているだろう」
     いくらでもESPを使える灼滅者を相手に、一般人である自分が抵抗しても無駄だと理解しているのだろう。ミスター宍戸の口は軽かった。
    「すまないが、水と、それからサングラスを貰えるかな。ゆっくり話そうじゃないか」

    「こちらの質問にだけ答えてもらおう。簡潔にな」
     宍戸に好きなように話させていると、確実に相手のペースに翻弄させるだけになる。
     そう判断した脇差に言われ、ミスター宍戸は渋々といった様子で頷いた。テレパスを使っている者も控えているので、宍戸が嘘をついたとしてもすぐに分かる。
    「どうやってダークネスのことを知ったんだ?」
    「昔、運営していた闇格闘ネットワークの選手が他の選手を拳だけで爆発四散させて姿を消したことがあってね。そういう存在がいるというのは知っていたよ。それで博多で隠遁していた時に、六六六人衆に出会ってね。殺されそうになったが、より面白い殺しをプロデュースすると言ったら話に乗ってくれた」
    「そんな簡単なものか?」
    「まあ、私には実績があったからね」
     幸運もあったのは間違いないが、過去、闇の格闘ネットワークを運営していたミスター宍戸ならではだろう。
    「殺人衝動に駆られる中でも『満足のいく殺し』を望む六六六人衆は多いが、それを続けるためには、一定の質を確保できる環境が必要だ。だからこそ、私のような一般人が、楽しい殺しをプロデュースする組織運営要員としての利用価値を認められたわけだ。問題が出たらいつでもクビを飛ばせるのだからね」

    「ともあれ、最初はHKT六六六を結成して色々やっていたんだが、君達との戦いなどもあって限界が見えたし、正直飽きたのでね。組織を分割して、それぞれをゴッドセブンに任せて私は離れた」
     その辺りの経緯は(飽きたという理由はともかく)灼滅者達も知るところだ。
    「だが、君たち武蔵坂学園がガイオウガを倒して本格的に脅威になって来たから、個別に活動せず組織化して自衛しようとランキングマン辺りが思い付いたのだろう。だが、上位陣に組織運営のノウハウを持つ者がいないので、私に白羽の矢が立ったわけだ」
     六六六人衆のハンドレッドナンバーの中には、六六六人衆と見れば殺さずにはいられないような者もいたため、そうした者達は暗殺武闘大会を通じて排除している。
     以降は似たような理由で組織化を進めることを望んでいたアンブレイカブルと手を組み、合同組織の設立へと至ったということらしい。

    ●Q:上位の六六六人衆について
    「疑われても不思議はないが、実のところ『最強戦力』の者達と私はそこまで親しいわけではない。知っての通り、彼らがまともに動けるようになったのは君達がサイキック・リベレイターを撃った後のごく最近で、まともに戦える状態ではなかった。
     黄金闘技場にいたのは、ジークフリート大老の戦いを自分の目で観戦する目的もあったんだが、それで死んでしまうとはハッハッハ。
     ……まあその上で、ある程度知っているのは、ランキングマンだね。
     ランキングマンは、先ほど述べた『満足のいく殺し』がしたいという衝動の弱い、例外的な六六六人衆だ。彼の望みはランキングの維持管理を徹底すること。その過程でどれだけ死のうと興味は持たない。
     あらゆる能力を使うと称されているが、実際のところ戦闘用サイキック以外は模倣できないんじゃないか? 分裂能力だったり他の密室殺人鬼の特殊な密室だったりを使えたら、もっと別のやりようがあったのではないかと思う。
     もっとも、状況に応じて最善の技を用意できるというのは六六六人衆としては相当な強みではあるんだろう。得意技に特化した者が多いからね。
     あとは投石使いの21位ゴリアテ殺し、毒使いの38位ローズマリー・クメール、槍使いの44位ザ・ナイトといった辺りが、グラン・ギニョールに常駐しているメンバーだな」
    「戦神アポリアはいないのか?」
    「戦神アポリア? 彼は逃げたよ。重要な護衛対象を殺されて、粛清されるのを恐れたのだろう。ああいう失態を演じたら別の者にハンドレッドナンバーになってもらうしかない」
     合同組織に所属する他のハンドレッドナンバー達も、常にグラン・ギニョールに留まっているわけではなく、指示が無い限りは各地で好きに修行や殺しを行っているようだ。
    「まあ、最強戦力で勝てなければ、他のハンドレッドナンバーが何十人かいたところで結果は変わらないと思うがね」
     戦争は数だよ、とミスター宍戸は真面目くさった顔で言った。

    ●Q:他のダークネス勢力の動向
    「爵位級ヴァンパイアには、君達がこちらに攻撃を仕掛けて来たら、その間に武蔵坂学園を攻撃してもらうつもりだった。だが、銀夜目氏も私も死んだ以上、そう上手く連携は取れないだろうな」
     もともと銀夜目・右九兵衛や直属の上司である黒の王を除いては、合同組織と組むことに乗り気だったのか疑わしい、と宍戸は見ていた。
     灼滅者達は宍戸に伝えていないが、エクスブレインは時間をかければ爵位級ヴァンパイア勢力が合同組織を吸収にかかると予測している。
     その前に建御雷大老を倒せるか、あるいは他の強力なダークネス達を灼滅できるかは、グラン・ギニョール戦争の焦点となるだろう。
    「ご当地怪人は君達と組みたがっているようだし、他は動ける状況ではないだろう。タタリガミは組織化されていないはずだしね」
    「スサノオは?」
    「コンタクトを取って来たことはあるが、特に売れるような『義理』も無いし、お引き取り願ったよ。さんざん武蔵坂学園に協力して来たスサノオと今さら手を組むのは怖過ぎる。土壇場で裏切られたら台無しだ」
    「ああ……まあそうなるか」
    『義理固い』と言われるスサノオだが、実績を他の勢力から見ればこんなものだろう。
     実際、彼らを信用して胎蔵界に引き入れたノーライフキングは決戦の場においてスサノオのせいで被害を被っている。
     この様子では、スサノオはグラン・ギニョールの場所すら知っているか怪しい。
    「私以外に積極的に他の組織とつるもうとか考える者は……少なくとも上位連中にはいないな。他の勢力が介入してくれば楽しそうだが」
     既に死んでいるからだろう、宍戸は他人事のようにそう言った。

    ●滅びの雷
    「日本を灰にする雷とのことだな。移動しながら触れたものを灰燼に帰していく、『生きた雷』というのが正しいだろう。直撃を受けた一般人やサイキックを使えない生物は蒸発し、直撃しなくても機械装置は破壊される。その間にどれだけ事故や事件が起きるかは想像もつかないな」
     滅びの雷は、1週間を待たずして日本を蹂躙すると宍戸は聞いているようだ。
    「まあサイキックを持つ者なら即死する心配はない。地下深くにいれば一般人でも死ぬことは無いらしいので、私も発射の際には、海外かグラン・ギニョールにでもいるつもりだった」
     その影響で、多くの人が死ぬことは疑う余地も無い。
     大深度地下への避難、もしくは海外への避難か。
     いずれにしても、発動したが最後、被害が生じるのが避けられない。
     そのことは、灼滅者達にも容易に理解できた。

    ●殺戮劇場へ
     そして、9月24日。
     9I薔薇による行政への働きかけによって、サンシャイン60を中心とした一帯からは、日曜日にも関わらず人の気配が消えていた。
     すぐ近くを走る高速道路も、一時的に封鎖され、遠くからは避難誘導を行う警察の声や、パトロールカーのサイレンの音が聞こえて来ている。

     3C桜主導のもと、武蔵坂学園と、池袋のライブハウスを会場として行われた壮行会を経て、灼滅者達はサンシャインシティの大駐車場に集まっていた。
     既に9月も下旬に入り、浴衣等を着用しての壮行会は、戦いを前に、灼滅者達の心を和ませるものがあったようだ。

    「あったぞ、これだ」
     ミスター宍戸の尋問とエクスブレインの未来予測から得られた情報を元に、駐車場の一角の壁に隠されたパネルを操作する。
     その下から現れるのは、さらに地下へと向かう階段だ。
     巣鴨プリズン改め、殺戮劇場グラン・ギニョール。
     六六六人衆とアンブレイカブルからなる合同組織の拠点の入り口だ。

    「殲術再生弾(キリング・リヴァイヴァー)ッ!!」

     木元・明莉 (楽天日和・d14267)の号令と共に、殲術再生弾は発動した。
     色濃い死の気配を感じながら、灼滅者達は階段を駆け下りていく。

    ●まぼろしのガルニエ宮
     階段の先に広がっていたのは、フランスのパリにある歌劇場『ガルニエ宮』を思わせる、壮麗なネオ・バロック様式の建造物だった。
     ただし、その内部を彩る装飾は天使やニンフ達ではなく、血を思わせる赤い装飾と殺人の光景だ。
    「悪趣味な……」

     赤に染まった劇場へ乗り込む灼滅者達に、オペラ座の怪人の声が響く。
    「まだ開場すらしていないうちに乗り込んで来るとは、なんと無礼な!」
     行く先からは、歌劇に登場する『オペラ座の怪人』を思わせる扮装をした六六六人衆が次々に現れていた。
    「どれが本物だ?」
    「多分、どれでもないのではないでしょうか」
     フランスの作家ガストン・ルルーが執筆した『オペラ座の怪人』をモチーフにしているのか、あるいはルルーの書いた内容が本当に史実であったならば、当人なのか。
     それを知る術は、灼滅者達にはない。
     ただ必要なのは、一般人を救出することだ。
     既に各所に散った灼滅者達は、観客席や大道具室などに、一般人が囚われているのを把握していた。
     囚われた彼らは灼滅者達の姿に、驚きと喜びの混じった視線を向けて来る。
    「敵は私達が! 9I薔薇は、一般人の救出を急いでください!」
     そう告げるとクレンド・シュヴァリエ (サクリファイスシールド・d32295)は突進、突然虚空に現れたシャンデリアを叩き落とした。
    「やはり『オペラ座の怪人』になぞらえたサイキックを使いますか」
    「おお、クリスティーヌ……私に君の歌声を聞かせておくれ」
     オペラ座の怪人が持つ杖の先端に彫られた女性の彫刻が、嘆きの歌声を発し始める。
    「しばらく耐えなくてはいけませんね」
    「持ちこたえるとしましょう」
     華宮・紅緋 (クリムゾンハートビート・d01389)のいうように、このグラン・ギニョールはほとんど一本道に近い構造だ。
     先へ進む者達の帰り道を守り、そしてより多くの一般人を救出するためにも、どれだけ耐えられるかは重要となる。
     6F菊の灼滅者達は可能な限り持ちこたえるべく、戦いに臨んでいった。

    ●巌流島の老剣士
     迷宮めいた歌劇場から、さらに下へと向かう階段を発見するのは、ミスター宍戸の情報があれば難しいことではなかった。
     だが、階段を下った灼滅者達が見たものは、ごつごつとした岩で出来た階層だ。
     のぞき窓から見えるのは、打ち寄せる波と、岩の小島。
     地下に広がる海の光景は、灼滅者達に目を疑わせた。
    「どこかで異空間に繋がったか……?」
    「何か密室とかを使っているのかも知れませんね」
     建築技術の無駄遣いとしか思えないが、そういうこだわりでもなければグラン・ギニョールなど作るまい。
     そうして進む灼滅者達の前に現れたのは、刀を携えた老剣士だ。
    「我が名は佐々木・小次郎……ランキングマンの『第6位』を譲り受けし新たなる裁定者。故に、汝らに裁定を下そう。すなわち『殺し』をもって汝らにこたえよう」
     言うが早いが、灼滅者達へと切りかかって来る老人を、御伽・百々 (人造百鬼夜行・d33264)は先手をとって七不思議を呼び出し、退ける。
     だが、通路の奥から続々と現れる六六六人衆の中には、百々の足元で消滅していく老人と同じ顔をした者が混じっていた。
     それが、この巌流島を支配する『佐々木・小次郎』であろうことは、疑う余地も無い。
    「全くロードローラーにクリスマス爆破男……この手の増殖連中には困ったものだ」
    「分体には遠距離攻撃は無いようっすけど、本体はどうか分からないっすね」
     襲い掛かる老侍を無敵斬艦刀『剥守割砕』で切り裂いて、ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)は敵の動きを見る。

    ●位階を守る者達
     ランキングマンの『密室』である『十の戒め』の攻略方法は、既に灼滅者達に露見していた。
     それを的確に利用し、5E蓮の灼滅者達は密室へと突入、そこに巣食う亡者達を破ると密室を突破することに成功していた。
    「きちんと把握して120人以上揃えれば、簡単に破れますね」
     戒道・蔵乃祐 (逆戟・d06549)は先の黄金闘技場でのことを思い出しながら呟く。
     武蔵坂学園の挑むような大規模戦闘で役立つ能力ではないようだ。
     だが、既に己の『密室』が破れられることは敵方も予期していたのだろう。
     多数の六六六人衆やアンブレイカブルが、ランキングマンの周囲を固めている。
    「第一の言葉、奮戦せよ」
    「へいへいっと。さて、長老のお仰せだ。ここらで一つ、良いとこ見せとけよ!」
     ランキングマンの言葉を受けて、投石器(スリング)を持った男が、配下の六六六人衆やアンブレイカブルに告げた。
     矢継ぎ早に巨大な岩塊が虚空に現れ、灼滅者達へと飛来する。
    「21位『ゴリアテ殺し』か……」
     木元・明莉 (楽天日和・d14267)は、9I薔薇が宍戸から得た情報を思い出しながら、飛来する岩塊を叩き割る。
     だがどこから湧いてきたものか、実体を持って飛来する岩は、ゴリアテ殺しの動きと同調し次々と湧いて出ていた。
    「投石はいかなる場所でも人を殺すために投げられて来た。だから『人間がいる場所ならどこでも石はあって当然』だ」
    「……さすがにハンドレッドナンバー、一筋縄ではいかないか」
    「第二の言葉、退去せよ。『嵐は旅人の衣を剥ぐ』」
     灼滅者達を退けるべくランキングマンが放つ嵐は、灼滅者達を吹き飛ばすべく荒れ狂う。だが、黄金闘技場でランキングマンと直接交戦した者達は、彼の状態が完調ではないことを感じていた。 「黄金闘技場で交戦した時ほどではないな……」
     ダメージが多少なりとも残っているのだろう。
    「今のうちに、先に向かう人達を通しちゃいましょうか」
     加持・陽司 (炎と車輪と中三男子・d36254)の提案に、5E蓮の者達は前進し、さらに下へ向かう者達を通させていった。

    ●プリズン・ケイオス
     プリズン・ケイオスは、この地がかつて多くの戦争犯罪者が収監された巣鴨プリズンのあった土地であるという過去だけでは説明のつかない、禍々しい気配に満ちて、7G蘭の灼滅者達を出迎えていた。
     血の臭いと腐ったような臭いが立ち込める中、シエナ・デヴィアトレ (治療魔で被虐嗜好な大食い娘・d33905)は、階段の最も近くにあった牢獄を覗き込む。
    「一般人……囚われた人ですの?」
    「アア……ウゥゥゥ……」
     椅子に座り、忘我の表情で呻き続けているのは全裸の男性だった。
     サイキックで治療を施されたらしく、体には傷痕はまるでない。
     だが、男の周囲を汚す血はいまだ乾ききらず、男がどれだけの拷問を受けて来たのかを物語っていた。他の牢にも、一般人の存在が確認され、灼滅者達は救助に当たる。
     だが、同行していた9I薔薇の灼滅者達を呼び寄せている間、ミカエラ・アプリコット (弾ける柘榴・d03125)は、嫌な予感を覚えていた。
    「……敵は?」
     呟いた瞬間、不意に空気が揺らぐのを感じた。
    「危ない!」
     叫びまでの時間で反応できたものは僅かだ。飛来した『ハンマー型のエネルギー体』の直撃を受け、何人かと一般人を庇ったディフェンダー達が吹き飛ばされる。
    「一般人を守ろうとするとは、立派な心がけですね」
    「いいよねーそういうの。余裕あるっぽくてさ」
     花をあしらったドレスに身を包んだ女性を伴い、現れたのは巨大なハンマーを携えた女性だ。
    「第2位マンチェスター・ハンマー……それに38位ローズマリー・クメール、ですか」
     言葉の間にも、マンチェスター・ハンマーは続けざまにハンマーを振るっていた。
     そのたびに、先ほどと同様のエネルギー塊が飛び出し、灼滅者達を打ち据えてくる。
    「こうも早く強い連中が出て来るとは……!」
     既に上層で戦いが起きていることには気付かれていたのだろう。
     敵は、こちらを完全に迎え撃つ体制で待ち受けていた。

    ●オペレッタ・グラン
     8H百合の灼滅者達が足を踏み入れた大劇場は、プリズン・ケイオスと対照的に、しんと静まり返っていた。
     走り込んだレオン・ヴァーミリオン (鉛の亡霊・d24267)達の視線の先、劇場の舞台に立つのは、白い服を来た老婆だ。
     それが第1位パラベラム・バレットであり、これまでに対峙してきたダークネスの首魁達の中でも、単体の力では上回っているであろうことをレオン達は知った。
    「個体の実力では極めて高いと言われる六六六人衆。その頂点に立つ存在か……」 「よく来た……といいたいところだが、せっかく精鋭を揃えたのに、その人数じゃあ物足りないねぇ。まあリハーサルというところかね」
     パラベラム・バレットが合図をするとともに、彼女を守るように黒鎧の影が現れる。
    「殺し尽くせ!!」
    「迎撃しろ!!」
     ザ・ナイトと夢幻・天魔 (千の設定を持つ男・d27392)の声がぶつかり合う。
     たちまちのうちに、劇場内が戦いの喧騒に満ち溢れる中、パラベラム・バレットの銃の音が響く。
     パラベラム・バレットが銃の引き金を引くたび、悪い夢のように組連合内から抽出した精鋭の灼滅者達が倒れていった。
     上層での戦いで奇襲が関知され、一本道を抜けて来る間に敵は迎撃の態勢を整えていた。奇襲のアドバンテージが薄い中での戦いは、灼滅者達にとっても厳しいものだ。
     だが、それでも先へ向かった者達が戻るまでの時間は稼がねばならない。
    「サイキックアブソーバーを奪って、何をするつもりです!?」
    「決まっとる。あたしらにとって『楽しいこと』さ」
     仙道・司 (オウルバロン・d00813)への返答は、銃弾と共に返された。

    ●建御雷祭壇
     オペレッタ・グランやプリズン・ケイオスでの戦況から、既に敵が迎撃態勢を整えつつあることは、2B桃の灼滅者達も察していた。
     グラン・ギニョールの最下層、建御雷大老の座す祭壇へと殴り込みをかけようとした彼らを待ち受けていたのは、古風な装いをしたアンブレイカブル達だ。
    「建御雷大老の弟子……というところか」
     不動峰・明 (大一大万大吉・d11607)は、アンブレイカブルの様子からそう判断する。
     どこか雷神を思わせる装い、そしてそれぞれの手に宿る雷の剣。
     他にも、和風の姿の拳士たちの姿が祭壇への道を阻んでいた。
    「建御雷大老の手を煩わせるまでも無い!!」
     勇んで挑みかかって来るアンブレイカブル達の中に、建御雷大老の姿は無い。野良・わんこ (小学七年生・d09625)
    「この様子では、妨害とはいかないようですね」
    「なら、可能な限り削って撤退でいいわね?」
    「それでいきましょう。上層の様子からも、あまり長保ちはしない感じです」
     黒揚羽・柘榴 (魔導の蝶は闇を滅する・d25134)の確認に、椎那・紗里亜 (言の葉の森・d02051)は頷くと八卦妖槍を振るい、斬りかかってきたアンブレイカブルを貫く。
     そして可能な限りの敵を灼滅すると、2B桃は上層へ退いていった。

    ●助けるための戦い
    「まるで野戦病院だな……いやそのものか」
     サンシャイン60内に設けられた救護拠点。
     白石・明日香 (教団広報室長補佐・d31470)の周囲では、救出されてきた一般人や、奇襲時に敵の反撃を受けて手傷を受けた灼滅者達が治療を受けていた。
     一般人の多くは、戦いに巻き込まれながらも庇った灼滅者達の奮闘の甲斐あって傷を受けている者は少数だ。残る負傷者もサイキックですぐに治療できた。
     だが、精神的な傷ばかりは、灼滅者達にもすぐに治せそうにない。
     特にプリズン・ケイオスから救出された一般人の中には、不自然に目覚めない者が複数混じっていた。保護されたので、衰弱死することは避けられそうだが。
    「拷問のせい? それだけでもなさそうだけど」
    「マンチェスター・ハンマーの能力があるのかも知れないでありますね」
     松原・愛莉 (高校生ダンピール・d37170)とヴィント・ヴィルヴェル (旋風の申し子・d02252)は、8H百合の灼滅者達からの情報も合わせ、そう判断する。
     プリズンに『魂すらも収監する』。
     それを可能としているのが六六六人衆第2位マンチェスター・ハンマーの力ならば、彼らを真の意味で救い出すには、マンチェスター・ハンマーを灼滅するしかないのだろう。
     激戦の予感を感じながらも、日本を灰にするという滅びの雷の発射を防ぐため、灼滅者達は再び地下へと向かう……。


    組連合 ファースト
    アタック
    ファーストアタック結果
    1A梅 (3)奇襲 (3)巌流島牢獄の敵戦力が300減少!
     敵戦力の2割程度が『佐々木・小次郎(分体)』。小次郎に限らず、神秘に弱い相手が多いようです。
     
    2B桃 (11)奇襲 (11)建御雷祭壇の敵戦力が100減少!
     敵は和風の装いのアンブレイカブル多数。
    3C桜 テンションアップ 敵戦力500までスルー可能に!
     武蔵坂学園と池袋のライブハウスでの秋祭り(壮行会)を開催しました。
    4D椿 救護準備 全ての戦場で、KO時の重傷/死亡率が6%減少!
     救出されてきた一般人多数は、治療の後に避難させています。
    5E蓮 (8)奇襲 (8)十の戒めの敵戦力が200減少!
    『密室』を突破し、ランキングマンへの道のりの先鞭をつけました。ランキングマンの他に21位ゴリアテ殺しが存在。
    6F菊 (2)奇襲 (2)まぼろしのガルニエ宮の敵戦力が400減少!
     一般人を救出した他、ガルニエ宮内の構造を把握しました。
    7G蘭 (9)奇襲 (9)プリズン・ケイオスの敵戦力が100減少!
    マンチェスター・ハンマーの他に毒使い38位ローズマリー・クメールが存在。一般人の中には、命はあるものの動かない者が複数。
    8H百合 (10)奇襲 (10)オペレッタ・グランの敵戦力が50減少!
    パラベラム・バレットの他に護衛役の44位ザ・ナイトが存在。戦力は多くないようだが、精鋭が集まっている。
    9I薔薇 一般人救出 重傷からの復活率が8%上昇!
     ミスター宍戸の尋問を行いました。また下層奇襲への同行により、多数の一般人を救出しました。行政は避難に協力してくれていますが活動に限界があり、滅びの雷が撃たれた場合の被害は避けられないでしょう。

    ●今回のテンションアップ

    残りの敵戦力が「500」以下の戦場をスルーできます。

    ●今回の不滅の兜情報

     統合元老院が灼滅され、長く切り離されたことで、次の元老を求める不滅の兜が『闇堕ちさせる力』を強めているようです。

    ・ノーライフキング勢力が察知していた爵位級ヴァンパイアの一覧
     剣樹卿アラベスク(公爵級)
     十字卿シュラウド(侯爵級)
     無限婦人エリザベート(侯爵級)
     黒の王(伯爵級)
     殺竜卿ヴラド(子爵級)
     黒翼卿メイヨール(子爵級)
     魔女バーバ・ヤーガ(子爵級)
     絞首卿ボスコウ(男爵級)
     アラベスク、シュラウドについては『胎蔵界情報収集』等で得られた以上の情報は無い。

    ・パラベラム・バレットの三敗
    『多人数で襲ってきたハンドレッドナンバー相手に不利に陥ったので「今回はあたしの負けにしといてやる」と宣言して逃亡(なお位階の変化はなかった)』
    『戦いをすっぽかして不戦敗』
    『何度撃っても死なないジークフリート大老相手に敗北宣言して逃亡』
     というものらしい。

    ・マンチェスター・ハンマー
     ハンマーを使う六六六人衆。ハンマーに殺した相手の魂を蓄え、それを他の生物に注ぎ込んで超生物を生み出す技も持つ。
     性格は享楽的だが(多くの上位六六六人衆に共通するように)全ての目的は殺人に帰結する。

    ・滅びの雷について
     統合元老院が知る範囲に情報は無かった。過去に実際に撃たれたことがあるのかも不明。

    ・ガイアパワー
     ご当地怪人が使うと言われている力。
     スサノオが使えるようになるかは不明。

    ・ノーライフキングが作った六六六人衆監視装置の利用法
     サイキックアブソーバーに組み入れられるか統合元老院は知らない。
     元老が使用していた時の手順は分かったが、灼滅者達が同様の手順を踏んでも反応は無かった。

    ・憑竜碑
     ガイオウガと大地の力を切り離すもの。
     楢山御前の死と共に失われたとの情報を得ている。
     以降、質問が多岐に渡るため不明瞭。

    ・力の森林の情報
     虚空蔵図書館内部にバックアップは存在する。
     該当領域への元老によるアクセス方法は判明したが、こちらも灼滅者達の実行は反応が無かった。